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スピッツ大学

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44時限目:黒い翼

【黒い翼】

 

■アルバム『Crispy!』に収録されている曲です。アルバムの最後を飾る曲であってか、ストリングスが加わっていたり、最後のコーラスが神々しかったりして、とても壮大な感じの曲になっています。

 

あんまり、特にこだわって聴いた記憶はないけれど、これを書くのに改めて聴いてみると、この曲にも色んな思いが込められているんだなって気付かされました。

 


■まず、タイトル【黒い翼】ということで、真っ先に思い浮かんだのは、”カラス”でした。歌詞の中に、

 


嵐の午後に ゴミ捨て場で目覚めたら
焦げた市街地をさまよう僕にさよなら

 

という部分がありますが、【黒い翼】と、「ゴミ捨て場」「市街地」というフレーズなどから、”カラス”を連想しました。

 

”カラス”という生き物に、どんな印象を抱いているでしょうか。ゴミ捨て場を荒らす厄介者・嫌われ者、真っ黒な姿は不気味で悪魔的、といったところでしょうか。おそらく、あんまり好まれずに、邪魔者として、邪険に避けられる存在なのでしょう。

 


■サビを読んでみます、例えばここの部分。

 


黒い翼で もっと気高く
無限の空へ 落ちてゆけ

 

先ほど書きましたが、僕はこの歌から”カラス”という生き物を連想しました。僕は最初、この歌に出てくる人物は、自分を”カラス”に例えて、厄介者・嫌われ者と、自分を自虐的に揶揄して、そこから変わろうとしているんだ、と解釈していました。

 

しかし、何度もこの曲を聴いていくうちに、そうじゃないかもしれない、と思うようになりました。つまり、このサビのフレーズにもあるように、”カラス”である自分を、気高く思っている、”カラス”として生きていくプライド、覚悟みたいなものを感じたんです。

 


■あとは、「無限の空へ 落ちてゆけ」というフレーズを、どう解釈するか、ということに関してです。

 

空へ落ちてゆけ、ですからね。”空”というと、普通くっついてくる言葉としては、例えば”飛ぶ”や”はばたく”ですからね、”落ちる”という言葉は、あんまりくっつかない言葉のような気がします。

 

まずは、これを、ただの言葉遊び、草野さんの独特な言い回しに過ぎないと捉えて考えてみます。つまり、空を飛ぶ、と単純に訳して考えると、どうでしょうか。

 

ゴミ捨て場で目覚めて、そこから力強く【黒い翼】をはばたかせて、空へ飛び立っていく姿。”カラス”として生きている自分への、プライド、覚悟を感じますね。ゴミ捨て場=自分の部屋と置き換えたり、嵐=自分に降りかかってきた困難と置き換えたりなどすると、さらにリアリティが増すのではないでしょうか。

 


■別の解釈として、落ちてゆけ、というフレーズを、文字通りの意味で考えてみます。ずばり、空に落ちてゆく=高いところから飛び降りて落ちている、と訳し、この人物は飛び降り自殺を図っている、という解釈につなげます。

 

ただし、やはりこの解釈でも、”カラス”として生きてきたプライドを感じました。邪魔者だ、嫌われ者だと、不遇な扱い(それを表わしているのが、おそらく2番のAメロに当たる部分だと思いますが)を受けて、苦しんだことはあるかもしれませんが、最後には自分が自分だということを気高く感じているように思えます。

 

しかし、自分が自分であることを守るために、この人物が最後に選んだ手段としては”死”でした。”死”を以って、自分として”生”きていく・”生”きてきたことを貫いたのです。

 


■補足としては、この曲が収録されているアルバム『Crispy!』というのは、バンドとして結果を出さなければいけない、という責任感から、草野さんが”売れ線”を狙って作った楽曲が多く含まれている作品だそうです。

 

しかし、売れ線を狙ったはずの作品があまり売れなくて、草野さんはひどく落ち込んだそうです。自分の声や曲は、一般受けしないのではないかと。

 

しかし、結果として、このアルバムあたりから、スピッツは全国的に認知されるようになっていきます。

 


そういう流れを汲んで、改めてこの【黒い翼】を読んでみると、はたと思います。「僕にさよなら」しているのは、紛れもない草野さんなのかも、と。売れ線の曲を作る、ということは、つまり今までの自分の音楽からの脱却を意味しています。そういう自分の状況に対する、覚悟だったり、葛藤だったり、そういうものが、この曲に込められているのかもしれません。