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57時限目:砂漠の花

【砂漠の花】


砂漠の花

砂漠の花

 

■アルバム『さざなみCD』に収録されている曲です。スピッツ屈指の名バラード、まぁ、そんなバラードっぽくないですが、この曲はすごく印象に残っています。

 

アルバムの中でも、偶然にも前回紹介した【漣】の次の曲が、【砂漠の花】になっています。【漣】を聴いて胸がぎゅっとなっているところに、この曲がトリに控えていて、有終の美を飾ってくれます。この、【漣】→【砂漠の花】コンボは、本当に素晴らしい流れだと思います。

 

個人的ランキング、195曲中32位。うん、良い順位ですね、大体この辺かなって思えます。

 


■前回、【漣】を紹介した時に、ライブDVD『JAMBOREE TOUR 2009 ~さざなみOTRカスタム at さいたまスーパーアリーナ~』について少し触れたけど、この【砂漠の花】のLIVE映像も、このDVDに収録されています。この映像も、また素晴らしいんです。

 

見どころは、まず、草野さんが何にも持たずに歌っているところです。それで何となく、右手が所在なく動いているのが好きです。そして、抜群に安定しているボーカルです。いわゆる、”喉からCD音源”ですね、ほんとにこれ、CD音源みたいに、全然ぶれないんですね。まぁ、どの曲もいつも、草野さんは易々と歌いますけどね。

 

あと、三輪さんの、泣きのギターですね。特に、ギターソロが、本当にギターが泣いているような、そんな感傷的な演奏になっています。

 

そして、やっぱりすごい、クージーの鍵盤の音です。このLIVEは、本当にクージー無しでは考えられないですね。

 


■さて、歌詞の感想・解釈です。

 

僕は、この曲は、何となく【漣】と対をなしているような、そんな歌だと思っています。前回、【漣】という曲が、”想い人の後を追って、入水自殺をはかる歌”だと説明しました…まぁ本当のところは分かりませんが。とにかく、想い人の死(別れ)によって、”俺”が選んだ答えは、”死”だったということです。

 

それと対になっている、ということで、つまり【砂漠の花】という曲は、想い人との別れが訪れて、それでも”僕”が選んだ答えは”生きること”だったということです。想い人との別れが、死別がどうかっていうのは、よく分かりません。ひょっとしたら、ただ恋人関係を解消して別れただけなのかもしれません。

 


■そのあたりの解釈などの根拠を示すべく、いくつかフレーズを上げてみます。

 


君と出会えなかったら
モノクロの世界の中

 


砂漠の花の 思い出は今も
僕の背中をなでる 生きていく力をくれたよ

 


砂漠の花の 思い出を抱いて
ひとり歩いていける まためぐり合う時まで

 

それぞれ、Aメロ、出だしの部分の歌詞、終わりの部分の歌詞です。どれも、すごくきれいな歌詞だなぁって思うんですが、どうでしょうか。

 


まず、タイトルにもなっている”砂漠の花”という言葉が、何を示すのか。

 

サビの部分で、”砂漠の花の思い出”となっているので、おそらく”砂漠の花”は、過去にあった何らかの出来事を表している言葉だと考えることができそうです。そこに、このAメロの言葉が合わさって、その出来事が、”君との出会い”だと、つなげることができます。しかし、”思い出”となっているので、何らかの形で”君”とは別れた、と考えるのが自然でしょう。

 

”砂漠の花”…長く続く、苦しい砂漠の旅。のどが乾いても、水もない。ただ単調な景色が続くだけの、繰り返すだけのつまらない日々。そんな時に出会った、花。自分に”生きていく力をくれた”、花。それがまさしく、君だったんだよ、と歌っているのでしょう。

 


■そして、ここの表現。

 


はじめて長い 夢からハミ出す
考えてやるんじゃなくて 自然にまかせていける

 

ここの意味は、過去との決別、といったところでしょうか。

 

先述した通り、【漣】では、過去にすがりついて、その思い出にとり憑かれて、”死”を選んでしまいました。

 

しかし、それに対して、【砂漠の花】は、”はじめて長い 夢からハミ出す”と…サビに、”生きていく力をくれたよ”という表現があったので、それと合わせて、夢=過去の思い出、そこから離れて、生きていくという決意の表れと捉えた方が自然だと思います。

 


■あと、僕のお気に入りとして、このフレーズを紹介しておきます。

 


ずっと遠くまで 道が続いてる
終わりと思ってた壁も 新しい扉だった

 

ここの歌詞が、すごく好きです。”終わりと思ってた壁も 新しい扉だった”という表現、歌詞という域を越えて、人生の格言のように思えますね。どんな絶望も、どんなピンチも、生まれ変わるチャンスなんだと。そういう強い気持ちを、ここから受け取りました。