93時限目:チェリー
【チェリー】
■13作目のシングル曲です。アルバムとしては、『インディゴ地平線』に収録されています。個人的ランキング、195曲中42位でした。僕にとっても、非常に思い出深い曲です。詳細については、別記事を参照していただければ、よく分かるかと思います↓
http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/2016/01/03/004402
長いので簡単に説明しておくと、早い話、僕がスピッツで初めて好きになった曲が【チェリー】だったということです。あれは、小学5年生の時でしたが、その頃に【チェリー】という曲を知ってから、もうかれこれ20年以上もスピッツを聴き続けているのです。全てのきっかけになった曲として、本当に思い入れの強い曲です。
■僕だけではなくて、スピッツファンならずとも、この曲を知っている人は多いと思います。
オリコンチャート1位獲得はもちろん、総売り上げ枚数161万枚という、爆発的な記録を打ち立てました。スピッツで、ミリオンヒットを記録したシングルは、【空も飛べるはず】【ロビンソン】【チェリー】の三作品ですが(個人的に、僕は”シングル御三家”と呼んでいます、笑)、その中でも二番目にたくさん売れたシングルが【チェリー】です。ノンタイアップでこれだけ売れたらしいです、曲自身が素直に評価されたんですね。
未だに、カラオケで歌われる曲のランキングの上位に入っていますし、色んなアーティストに愛されてカバーされたりと、国民的ヒットソングとして、本当に色んな人に愛され続けています。そんな僕も、その中の一人なんですけどね。
■スピッツ関連の書籍、その名も『スピッツ』という本の中に、この歌について、割と色んなことが書かれていたので、紹介しておきます。ちょっと長いかも…。
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(イ:インタビューアー 草:草野さん)
イ「で、この曲はどんなシチュエーションで生まれたんですか。」
草「う~ん、これはツアーが始まるちょうど前、秋頃に自転車を買ったんですけども、その自転車乗ってる時に浮かんだメロディーなんです。まあ、全体のイメージとかそういう時に浮かんで。で、自転車に乗るのなんて久しぶりだったからやっぱ学生の頃のこととか思い出しちゃって、その青い頃のこととか思い出しちゃって、その青い感じかもしれない(笑)。自転車っていうのからこう導き出された青い感じ」
イ「初恋っぽいほのかな恋愛感情みたいなのを反映しているわけですか。」
草「うん。やっぱそれを28歳の人間が振り返りつつという(笑)。振り返っている人間はあくまでも28歳なんだけど」
イ「でも、この曲ってラヴ・ソングにも聴こえるけど、スピッツの今の状況がそのまま表れてるんですよね。」
草「うん。」
(中略)
イ「例えばこれまでの草野さんの曲って、「風景」を描いてたのに対して、この曲の場合は、これからこうしていこうっていう「意志」みたいなものがあって。私はデビュー曲の”ヒバリのこころ”に近いものを感じたんですよ。」
草「ああ、なるほど。」
(中略)
草「うん、あの”歩き出せ、クローバー”みたいな感じですよね。だから、”歩き出せ、チェリー”みたいな。チェリーってやっぱり意味的にはヴァージンとかそういう風な意味もあるじゃないですか? そういう部分とか、あとまあ桜は春に咲く花だし、そういう意味でも何かから抜け出すというか出発するような…(略)」
イ「1回そういう出発の気持ちをどっかで作りたかったんでしょうか。」
草「そうかもしんないけど、無意識でそういう風になっちゃったのかもしんない」
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本当に、長きに渡って書いてあるので、このくらいにしておきます。興味がおありの方は、どうにか書籍『スピッツ』を手に入れて読んでみてください。
■印象的だったのが、インタビュアーが言った、”第二のヒバリのこころ”という発言でした。
本の通り書くと、この頃のメンバーは、”陽のミスチル、陰のスピッツ”と、自分たちを揶揄していました、笑。
しかし、ちょうどこの時期、シングル【空も飛べるはず】が、セカンドブレイクして、ご存じの通り、売上100万枚超えを達成しました。売り上げもこんな風に上がっていく中で、本当にたくさんの人の耳に、自分たちの曲が届くようになったわけですね。もう、”陰”なんて言っていられない、と。
wikiの情報や本の内容によると、この曲はツアーの最中に作られた曲で、ツアーで色んな土地を回る経験が大きく影響されたらしいです。CDもたくさん売れて、忙しい毎日の中で、ふっと息をついた時、先述の自転車の話もそうですが、自分の学生の頃とか、まだ売れていなかった頃の自分とかを思い出したりしたのでしょう。昔の自分と今の自分とを比べたりなんかして、また気持ち新たに歩いて行こうと、出発の意味も込めて、この曲を書いたのでしょうか。
初々しい気持ちを思い出すためにも、そういう思いを【チェリー】という言葉に託したのではないでしょうか。
■歌詞を見てみると、まず出だしは、
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君を忘れない 曲がりくねった道を行く
生まれたての太陽と 夢を渡る黄色い砂
二度と戻れない くすぐり合って転げた日
きっと 想像した以上に 騒がしい未来が僕を待ってる
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こんなきれいなフレーズで始まりますが、ここでいう”君”は、若かりし頃に恋をした相手を指している、とも想像できますが、ひょっとしたら、自分自身を君と置き換えているのかもしれません。自分の過去を振り返って、もう戻れないんだな、と少し感傷に浸りつつも、しっかりと未来へ歩いていくという意思を感じ取ることができます。
二番で印象的なのは、このフレーズです。
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少しだけ眠い 冷たい水でこじあけて
今 せかされるように 飛ばされるように 通り過ぎてく
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ここら辺は、もろにこの時期の自分たちを表しているのでしょうね。せかされるように、飛ばされるように、自分たちの毎日が過ぎていく様子です。色んな人に歌が届くようになって、もちろんそれを喜ばしく思ったのでしょうけど、忙しい毎日の中で、本当に色んなことを考えたんだと思います。
その流れで、サビのフレーズ。本の内容などを読んで、今一度サビのフレーズを読むと、また色々と印象が変わってきます。この部分をピックアップします。
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「愛してる」の響きだけで 強くなれる気がしたよ
ささやかな喜びを つぶれるほど抱きしめて
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ここのフレーズは、ラブソング的にも聴こえますよね。片思いをしている相手や、恋人に、好意を伝えられ喜んでいる様子がイメージできます。
あとは、例えば、「愛してる」を、ファンからの応援メッセージなどと考えてみるとどうでしょうか。よくありますね、どんなに疲れてても、同期の仲間とか、接客業をしている人ならばお客様だとか、そういう人から感謝や労いの言葉をかけてもらうと、その疲れがふっ飛んじゃう、みたいなね。
草野さんも、自身のCDの売り上げが上がったり、二番の歌詞に”手紙”の話がありますが、ファンレターや直接にファンから言葉をもらったりすることで、自分の、自分たちの活動に、確固たるものを感じることができたのではないでしょうか。
■見方によっては、ラブソングとして捉えることができますし、上述のように、その頃のスピッツそのものを表した歌と捉えることもできます。僕なんかは、別記事に書いたように、小学校の高学年の頃に流行った歌なので、卒業の歌、というような印象も持っています。
あとは、これも有名な解釈なんですが、この歌は若い男女の初体験を歌った歌だという解釈があります。これは、”チェリー”という名前のラブホテルがあって(調べてみると、静岡県の藤枝市に実在する、ラブホテル”チェリー”をモデルとしている説がありました)、それが歌詞の通り”曲がりくねった道”の先にあるそうなので、そういうところから、この歌が「初体験を終えた男女の歌」という解釈が生まれたそうです。
そう言われると、”生まれたての太陽”とか意味深な表現に見えてきますけどね。草野さん本人も言ってますが、”チェリー”という言葉自体に、”ヴァージン(処女)”という意味がありますしね。
本を読んだ限りでは、そういう解釈は読み取れなかったですが、もしかしたら、草野さんが裏にそういう解釈を隠しているのかもしれませんね、そうだとしても何ら不思議ではありません、笑。
ますます、解釈は人それぞれだ、と言わざるを得ませんね。まぁ、それを言ってしまえば、このブログの存在すら危ぶまれますけどね、笑。
あなたにとって、この【チェリー】という歌は、どんな歌に聴こえるでしょうか。
■最後に、カバー&動画のコーナーです。
まず、ひとつめ。女性アーティストのaikoが、スピッツの【チェリー】をカバーした音源を見つけたので、載せておきます。やはり、スピッツの歌は、女性が歌っても素敵だなとつくづく思います。
チェリー aiko カバー
https://youtu.be/HZAHUM7A63Q
続いて、海外のALLiSTER(アリスター)というバンドが、【チェリー】をカバーしたものです。これに関しては、すごく衝撃的だったなぁ、ちょっと笑ってしまいましたもん。ALLiSTERは、もともとパンクバンドなので、パンクロック調の【チェリー】という変わったものが聴けます。
ちなみに、ALLiSTERのボーカルのScott Murphy(スコット・マーフィー)は、最近発売になった、ハチミツトリビュートアルバムの中で、【俺のすべて】をカバーしています。
チェリー ALLiSTER カバー
https://youtu.be/e9CFWqRJpoM
最後に正真正銘、本家の【チェリー】のPVです。これに関しては、何も言うことはないですが、一番草野さんの”きのこ感”が強い時期だったということが、見て取れますね、笑。
チェリー スピッツ 本家