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115時限目:夏の魔物

夏の魔物

 

夏の魔物

夏の魔物

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■アルバム『スピッツ』に収録されている曲です。その後、2作目のシングル曲として、シングルカットされました。個人的ランキング、195曲中46位でした。初期の楽曲の中でも、特に大好きな曲のひとつです。タイトルからして、夏に聴きたく・歌いたくなる曲です。

 

曲の感じは、何て説明したらいいか分からないですけど、白昼夢を見ているような、そんな不思議な気持ちにさせてくれます。後述する2つめの解釈とつながりますが、何か子どもの頃を思い出すような、そんな懐かしい気持ちにもさせてくれます。

 

この曲は、2016年1月1日に発売された、武道館ライヴのDVDにもLIVE映像が入ってましたね、すごく良かったです。草野さんの声も変わってますし、いつも言うようですが、クージーのキーボードが入るだけで、本当に今でも聴ける、新しい曲に生まれ変わりますよね。

 


■この曲の解釈ですが、まず、本当かどうかは別として、ある有名な解釈がほとんど定着しています。それはずばり、”妊娠していた赤ちゃんを中絶する”あるいは”流産してしまう”という解釈です。個人的に考えた結果、流産の方がしっくりくるかなと思ったので、その解釈を説明します。

 

つまりは、タイトルにもなっている”夏の魔物”というのが、”生まれてくるはずだった赤ちゃん”ということになるのです。例えば、

 


幼いだけの密かな 掟の上で君と見た
夏の魔物に会いたかった

 

というフレーズ。”幼いだけの…”というフレーズから、もしかしたらこの歌で歌われている妊娠は、若気の至りといいますか、いわゆる”できちゃった子ども”である可能性もあります。

 

そういう場合だと、中絶するという解釈にもつながりますが、ここには”会いたかった”というフレーズも出てきますので、子どもを堕ろすつもりはなかったけど会えなくなった、という流れが自然のような気がします。

 


何より、このサビの部分は、

 


殺してしまえばいいとも思ったけれど 君に似た
夏の魔物に会いたかった

 

僕の呪文も効かなかった
夏の魔物に会いたかった

 

などとも表現されています。”殺してしまえばいいとも…”(最初は堕ろそうとしたが断念した)や、”僕の呪文…”(赤ちゃんが死なないように祈っていた)とあるので、流産の解釈につながります。

 


■個人的に、キーとなる歌詞は、この部分だと思います。

 


大粒の雨すぐにあがるさ
長くのびた影がおぼれた頃
ぬれたクモの巣が光ってた 泣いてるみたいに

 

この部分は、流産してしまった場面の描写だと思っています。何か、具体的な事故によって(例えば、転んでしまったとか)流産したのかは分かりませんが、この部分の歌詞は、すごく不穏なイメージを含んでいます。

 

草野さんの書く詩の中には、時々”クモ(蜘蛛)”が出てきます…すぐ思いつく歌だと、【プール】、【スパイダー】ですか。そして、それらの曲に共通しているのが、曲全体で何か怪しい雰囲気が漂うということです。具体的に言えば、”クモ”は、何らかの性の象徴であるような気がしています。

 

この曲に関して考えれば、例えば、”クモの巣”ですから、女性器と考えてみるとどうでしょうか。それが、”泣いてるみたいに”、ですからね、生まれるはずだった赤ちゃんを失ってしまって、泣いてるように見えた、ということでしょうか。

 

”大粒の雨”とか、”長く伸びた影”なども、何かしらの隠喩になっているのかもしれないですが、とにかく不穏な雰囲気ですね。

 


■ということで、上述のような、”赤ちゃんを流産してしまう”解釈が、自分の中にも定着していますので十分なんですが、他にも、この曲を聴いて個人的に思い出すことがあるんです。というより、流産の解釈を知るまでは、僕は後述のようなことを思い浮かべながら聴いていました(まぁ今でもですが)。それを、最後に話させてもらいます。

 


小さい頃の話なんですけど、まぁ誰しもが経験あると思うんですけど、子どもの頃って、変な遊びとかうわさ話が流行ることってありますよね。

 

例えば、僕の場合だと、近所に大きな公園があったんですけど、その公園の周りをぐるりと取り囲んでいる排水路の中を探検する、という遊びが、ある時は流行ったことがありました。

 

排水路は、大人でも普通に歩いて通れるくらい道幅も天井も広く、中は真っ暗でじめじめしていて、まるで洞窟みたいでした。その排水路の中を歩いて奥へと進んで行って、誰が一番奥まで行けるか、などと競っていました。

 

排水路の最奥は、貯水池に繋がっていましたが、ある時ついに、その最奥まで辿りついた勇者が現れました…確か2人組だったかな、だから勇者たちか。その勇者たちは言ったんです…「最奥に、巨大なアメーバが居た!アメーバ星人だ!」と。何のこっちゃ?と思いはしましたが、僕は怖くて奥まで入れなかったので、正体は不明のままです。もしかしたら、本当にアメーバ星人が潜んでいて、地球の侵略の機会を狙っていたのかもしれません。

 


他にも、色々ありました。

 

誰かがUFOを見たと言い出したら、それから(何故か、笑)周りの友だちからUFOの目撃例が続出したり。そしてそこから、山の向こうには、UFOの秘密基地があるという噂が立って、山の中を冒険したり。

 

学校のトイレの便器から、緑色の手が出てきたと大騒ぎになったり。確か、これは、女子が緑色のゴム手袋を見間違えたのが発端だったような気がします。

 

町の片隅には、古びた小屋があったんですけど、そこが人焼き場だなんて噂がたったり。それを目撃したって輩も現れました。

 

などなど、言い出せば、本当にきりがありません。

 


…まぁ、分かると思いますが、ほとんどが、子どもたち(つまり、子どもだった僕たち)が空想した、作り話ばかりです。

 

僕は、【夏の魔物】を聴くたびに、そんな空想や子どもの頃を思い出します。全ての空想話の舞台が夏だったわけではありませんが…まぁ、「アメーバ星人事件」は、夏だった記憶がありますが、笑。

 

夏の魔物”とは、アメーバ星人かもしれないし、UFOやトイレの幽霊かもしれませんし、または人焼き場かもしれません。何ていうか、幼かった故の、想像力豊かな僕らが作り上げた、作り話や空想など…この曲を聴いて、それらを追いかけていた子ども時代を思い出します。

 


あなたにとって、”夏の魔物”とは、何でしょうか?