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138時限目:8823

【8823】

  

8823

8823

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■アルバム『ハヤブサ』に収録されている曲です。”8823”というタイトルは、数字の語呂合わせで”ハヤブサ”と読みます。なので、アルバムの表題曲ということになります。言わずもがな、鳥の”隼”のことですね。

 

個人的ランキング、195曲中11位でした、惜しくもベスト10入りは逃しましたが、大好きな曲で、自分の中でもすごく印象に残っている曲のひとつです。

 


アルバム『ハヤブサ』や、その表題曲【8823】については、ここのブログですでに、存分にしゃべったことがあるので、詳しくはそちらを参照してもらえればよいかと思います。↓

 

http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/2015/07/26/080239

 

…と、言っても、少しだけ(になるかは分かりませんが、笑)、この辺りのことを改めてしゃべってみようかなと思います。

 


■このアルバム発売前にあった出来事と言えば、通称”マイアミショック”という事件(?)です。

 

この出来事は、要するに、自分たちの(スピッツの)意向とは関係なく、自分たちのベストアルバムが強行的に発売された、というものでした。

 

スピッツは、「ベストアルバムを発売するのは、バンドが解散する時だ!」と公言していました。しかしながら、ベストアルバムを発売するということが、スピッツがいないところで決定したわけです。

 

この出来事に、メンバーは、憤りや悲しみを感じたようです。レコード会社とも、良い関係を築くことができていたと思っていたそうで、その想いが裏切られた時の気持ちは、一体どんなだったでしょうか。ベストアルバム=解散、という公式が成り立っていたため、発売と同時にスピッツを解散させる、という話まで出ていたそうです。

 


しかしながら、スピッツは解散しなかったのです。色んな想いを抱えつつも、活動を続けていくことを決めたのです。まさに、スピッツの”死と再生”です。書籍「旅の途中」の中で、その辺りの心情を、草野さんは端的にこう語っています…

 


もしかすると、このとき一度スピッツは俺の心の中で”解散”したのかもしれない。そして、甦った。『フェイクファー』からずっと抱えていた悩み、気がつくと消えていた。

 


■そして、そういう経緯があって、アルバム『ハヤブサ』は作られました。それは、今までのスピッツにないとてもロックなアルバムで、まさに、先ほどの草野さんの言葉通り、スピッツの”死と再生”となった作品でした。

 

アルバム『ハヤブサ』が発売になった当時、僕は聴いてびっくりしました。自分の中に今まで染みついていた”スピッツ像”とは全然違う、今までにない、ロック色の強い、攻撃的な作品だったからです。最初は違和感を感じたのを、よく覚えています。これが本当に、自分が聴いてきたスピッツか、と。

 

しかし、何度も聴いていくうちに馴染んでいくのが、スピッツマジック、草野マジックですよね。僕の中でも、今では大好きな作品になりました。第三期(個人的な見解による)の始まりとして、このアルバムは、スピッツにとって最重要な作品と言えるでしょう。

 


■前置き長くなりました。今日紹介するのは、そんなアルバム『ハヤブサ』の表題曲である、【8823】です。

 

音的には、Aメロのギターの音と、ドラムの音が、とても心地よくて好きなんです。どうしても、タイトルが鳥の名前なので、鳥をイメージしますが、Aメロは何となく助走をつけている感じに聴こえてきます。

 

そして、サビでの音の爆発ですよ。一気に浮かび上がって、空へと飛び立っていくような、力強いサビが、テンションを上げてくれます。

 

この、Aメロとサビの緩急も、【8823】の特徴でもあります。

 


■タイトルに関しては、wiki情報によると、西岸良平さんという方のマンガに登場するキャラクターから連想したそうです。

 

西岸さんの作品で、”地球最後の日”という、SF短編集みたいなのがあるらしくて、その中に、「普通の浪人生が連れ去られて海底人に改造される」ってお話があるそうなんですが(中々、カオスな内容、笑)、その海底人の名前が8823なんだそうです。曲のタイトルは、そこからつけたそうです。

 

(ちなみに、西岸良平という方は、映画化して有名になった、あの有名な”三丁目の夕陽”を書いた人だそうですね。初めて知りました。)

 


タイトル自体にあまり意味は無く、マンガのストーリーが曲に大きく関わっているというよりは、スピッツのパーソナルな部分が関わっている部分の方が多いと思います。つまり、”死と再生”ですね、そんな想いをこの曲に込めたのではないでしょうか。

 


■ということで、今までの話を意識しながら、もう何度も何度も読んできた歌詞ですが、今一度読んでみます。

 



さよならできるか 隣り近所の心
思い出ひとかけ 内ポケットに入れて

 

これが、出だしの歌詞になります。”入れて↑”で、いきなり高音になるのがポイントですね。

 

歌詞の意味はどういう感じでしょうか。まず、”さよなら”という言葉が出てきますが、誰が、誰に・何に、言おうとしているのでしょうか。

 

やはり、”誰が”に当たるのは、スピッツ自身、ひいては草野さん、ということでしょうか。”誰に・何に”に当たるのは、例えば、今までの自分たちだとか、今まで信じてきたレコード会社とかが考えられますね。しかし、”さよならできるか”ですからね、決断はしているでしょうけど、ちゃんとさよならできるか、まだ悩みはあるようですね。

 



あの塀の向こう側 何もないと聞かされ
それでも感じる 赤い炎の誘惑

 

ここも印象的ですよね。何となく、音楽業界に縛られていたスピッツ像を思い浮かべます。「ここよりいいところはないよ、こんなに塀に守られて、ここから出ていくなんてとんでもない!」と、ずっとスピッツは言われていたのだと想像してみます。しかし、そうやって、自分たちのことを守ってくれていたレコード会社に、結局は裏切られることになるわけですね。それで、初めて、塀の向こう側に意識が向くわけです。

 


あとは、サビの歌詞、

 


今は振り向かず8823 クズと呼ばれても笑う
そして 君を自由にできるのは 宇宙でただ一人だけ

 

最後の大サビの歌詞を書かせてもらいましたが、最期のところに”8823”というフレーズが出てきます。過去に別れを告げて、未来へと飛んでいく決意が、この辺りからうかがえます。

 

そして、何度も出てくる、”君を自由にできるのは 宇宙でただ一人だけ”という表現。別の部分では、”君を不幸にできるのは 宇宙でただ一人だけ”となっています。君を自由にできる存在=君を不幸にできる存在、ということになりますが、これも自分たちのことを言ってるんですかね。

 

恋愛に関したことだとしても、音楽的な活動に関したことだとしても、自分という存在が、良くも悪くも、君にとって唯一無二なんだと、あるいは、そうなりたい、と歌っているのでしょう。だから、ついてこいよ!と、そう力強く歌いたかったんでしょうね、世間では癒し系バンドだと思われていたはずの、あのスピッツが…ね。

 


スピッツにとって、この【8823】という曲は、本当に大切な曲なんです。まさに、スピッツの"死と再生"を象徴する曲だと思います。

 

生でライブを見に行ったことはないですが、DVDなど見ている限りでは、毎ライブこの曲をやっている感じですね。BUMP OF CHICKENの【天体観測】のように、the pillowsの【ハイブリッドレインボウ】のように、どんなバンドにも一曲はあるであろう、そのバンドの魂となっている曲。スピッツにとって、【8823】とは、そんな位置付けの曲なんだろう。

 

これからスピッツのファンになりたい、と思っている方は、チェックしておくべき曲だと思いますよ!

 


ちなみに【8823】は、アルバム『ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN COMPILATION 2009』にも収録されています。アジカン主催のライブフェスで”NANO-MUGEN FES”というのがあって、それに主演したアーティストの楽曲を収録した、コンピレーションアルバムです。

 

大学の時、アジカン好きな友達が居て、そいつが俺の家でこのアルバムを流した時に、スピッツの【8823】を聴いて驚いていました…これスピッツ?という感じでしたね。その反応が、何だか懐かしくて、嬉しかったです、笑。