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187時限目:優しくなりたいな

 【優しくなりたいな】


優しくなりたいな

優しくなりたいな

 

■アルバム『スーベニア』に収録されている曲です。個人的ランキング、195曲中94位でした。

 

アルバム『スーベニア』には、割とロックな曲が多く入っている中、この【優しくなりたいな】が静かな曲であり、アルバムの中では逆に目立っています。アルバム発売前のツアーにおいて弾き語りコーナーをしたのをきっかけで、同アルバムは(wikiやインタビュー記事によると)、「伝わりやすいストレートな言葉を重視」「メロディーにおいても歌においても、ストレートなものを選ぶようになってる」などの試みから生まれた作品であったそうです。

 

【優しくなりたいな】などは、まさしくそれを体現しているような曲ですね。草野節は健在ですが、歌詞もシンプルであり、ほとんどピアノと草野さんのボーカルのみで構成されているため、美しい草野さんのボーカルが存分に堪能できる1曲となっています。

 


また、パーカッションの音(多分、ボンゴだと思われます)が入っていますが、これは崎山さんによる演奏のようです。ドラムだけじゃなく、パーカッション全般に興味を示していた崎山さんは、これを機会にボンゴを購入したんだそうです。

 


■ということで早速、この曲の解釈について考えてみます。まぁ正直なところは、この曲こそ、堅苦しい考えなどは抜きにして、すんなりと聴くのが醍醐味の曲であると思うんですけどね、苦笑。

 

まず、タイトル”優しくなりたいな”…この歌の主人公がしきりに、「優しくなりたいな」という心情を吐露していますが、僕が思うのは、優しくなりたいと思っていること自体が、そもそも優しいんですよね。優しさの始まりとでも言いますか。

 

ただ、結局のところ”優しさ”ってなんだ?という話なんですよね。それで、さらに僕は思うのは、”優しさ”ってのは、”自分”のためじゃなくて、いつも”誰か”や”何か”の為にあるものだ、ということです。BUMP OF CHICKENの歌に【ひとりごと】という歌がありますが、この歌詞の中にも、優しさについては”人と人の 心の外の中だけにあるんだ”と出てきます。

 

優しくなりたい、と思うのは、いつも大抵”誰かの為”や”何かの為”なんです。

 


■そういうことを踏まえて、この歌について歌詞を読んでみると、まず出だし、

 


君のことを知りたい どんな小さなことも
真昼に浮かぶ僕を 桜色に染め上げて

 

と出てきます。”真昼に浮かぶ僕”というフレーズがとてもきれいですよね。何ていうか、恋に落ちたことで、精神的に浮わついて、ふわふわと心地よい気分になっているような感じでしょうか。”桜色”という表現も、恋愛に繋がる表現だと思います。

 

”君のことを知りたい”と思うようになるのは、恋愛の入り口ですよね。趣味はなんだろう、好きな音楽はなんだろう、好きな異性のタイプはどんなのだろうなど、”どんな小さなことも”知りたいと思うのです。

 


そういうことがあって、主人公が心情を吐露するわけです。

 


優しくなりたいな 難しいと気づいた
だけどいつか届くと 信じてる

 

ひょっとしたら、想っている人の好きな異性のタイプに、「優しい人」なんかがあったかもしれません。そうなると、もう優しさについて考え、優しい人になろうとするでしょう。

 

ただ、僕はその辺りは少し違うことを考えています。

 

この歌の主人公は、割と恋愛には”不器用”なんだと思えるのです。恋愛をして、意中の人に近づきたい=自分が優しくならないと!なんてね、そう単純には恋愛は進みませんからね。優しすぎる!なんて言われて、フラれることもありますし(筆者談、笑)

 

優しさなんて、にじみ出るくらいでちょうどいいんです。優しくなりたいな、なんて言って迷っても出てきませんよと、この歌の主人公にそう教えてあげないといけません!優しくなりたい、と思っている君には、もうすでに”優しさ”は備わっているので、それがさりげなく溢れるように自然に振舞いなさい!とね、笑。

 


■あと、気になったフレーズを少しだけ抜き出してみると、

 


水の音を聞くたび いけない想像めぐらす
嫌いなはずのメロディ 繰り返し口ずさんでる

 

1行目は、何をいきなりさらっと変なことを言っているんだ!とも思いますが、まぁスルーします。

 

2行目は、まさに恋愛のひとつの側面ですよね。スピッツの恋愛ソングでは、【恋のはじまり】では”花屋のぞいたりして”、【スターゲイザー】では”ひとりぼっちがせつない夜 星を探してる”、【テクテク】では”優しすぎる君のメール 読み返してる”など、恋に落ちている僕の心情を表す表現がたくさん出てきます。やけに気持ちがセンチメンタルになって、普段はしないようなことをするようになるってことですよね。花や星なんて、普段きっとそんなにきにして見ないでしょうに。

 



はきだめのドブネズミとビスケットでも分け合おうか

 

この辺りは、優しさや、恋愛には関係ないように思えてきますが、どういう意図なんでしょうね。

 

個人的には、THE BLUE HEARTSの【リンダリンダ】という曲において、”ドブネズミみたいに美しくなりたい”という、一読すると、どこがどう結びついて、ドブネズミに美しさを感じるんだろうって思うフレーズがあるんですけど、何となくそれを思い出しました、笑。ひょっとしたら、草野さんも?