スピッツ大学

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192時限目:雪風

雪風


 

■40作目のシングル曲です。当シングルは、配信限定で発売されたデジタルシングルとなっています。また、後に発売されたアルバム『醒めない』にも収録されました。

 

(今回の記事は、特に脱線していることを、あらかじめお伝えしておきます。辛抱して読むか、適当に飛ばしてください、笑)

 


■まず、【雪風】は「不便な便利屋」というテレビドラマのエンディングテーマになりました。この「不便な便利屋」の監督を務めたのが、鈴井貴之という人物なんですが、知ってますかね?

 

かつて、「水曜どうでしょう」という番組がありました。こちらも、皆さん知っていますかね?名前だけは知っている、という方もいるかもしれませんね。


どんな番組なのか…それを語り始めると、それだけで一記事書けてしまうほど長くなるんですが、とりあえず「日本一馬鹿々々しい旅番組」と言っておきますかね、笑。

 

サイコロの目に従って旅をする、カブ(バイク)に乗って日本を走破する、レンタカーに乗ってヨーロッパやアメリカやオーストラリアなどを縦断・横断する、レンタカーで四国八十八ヶ所を短期間で回るなど、その旅はいつだって無謀で馬鹿々々しい。あまりにも、出演者の"ありのまま"を映すものだから、これテレビ?と思ってしまうこともしばしば。何にも映っていない真っ暗な画面に、白字で会話のテロップが出ているだけなのに面白い。出演者の大泉洋が、怖くて独りでトイレに行けないと言うから、それに同行して、う○こをするところをビデオカメラで撮り始めるところなんかは、さすが頭がおかしいとしか言いようがないけど、でも笑ってしまう、笑。

 

…などなど、語り出したらキリがないです。色んな意味で伝説の番組なのですが、当番組は、「一旦ピリオドを打つ」と、レギュラー放送を終了させました(レギュラー放送は、1996年~2002年)。それと同時に、「一生どうでしょうする」という誓いを立て(半ば立てさせられて、笑)、レギュラー放送終了を迎えた現在も、何年かおきに復活して放送をしています。

 


まぁ、その内容はともかく、この番組の出演者こそが、若かりし頃の大泉洋と、通称"ミスターどうでしょう"(しばしば、ミスターと呼ばれる)こと、件の鈴井貴之その人だったわけです。

 


■それで、スピッツと、水曜どうでしょう鈴井貴之との関わりなんですが…

 

まず、何かのラジオ番組で、草野さんがそのパーソナリティーの方に、「水曜どうでしょう」のビデオを借りた、みたいなトークをしていたのを聞いたことがあります(うろ覚えなので申し訳ない)。とにかく、草野さんが「水曜どうでしょう」のファンだというのは確かだと思われます。

 

対して、鈴井さんの方も、スピッツのファンであることが知られています。鈴井さんのツイートには、スピッツの名前が出てくることがあります。そもそも、件のエンディングテーマの依頼も、鈴井さんがスピッツのライヴを実際に観に行った後、自らスピッツにその打診をしたそうです。

 

きっと色んな縁が重なって、鈴井さんのドラマ主題歌をスピッツが務めるというコラボが実現したのでしょう。スピッツも、水曜どうでしょうも鈴井さんも大好きな僕にとっては、こういうのは本当にうれしー限りです。

 


■【雪風】に対しての、草野さんのコメントを少し紹介しておきます。

 

「(雪に縁のない)九州(福岡)育ちの男が妄想力フル稼働で作りました。初(?)の記念すべき雪ソングです」
「鈴井さんが手がけるドラマ、自分たちが絡んでなくても絶対見てましたよ!…」

 


対して、鈴井さんもコメントを寄せています。

 

「…さらにこの『雪風』を初めて聴いたとき、心が震えた。本当に震えた。ドラマの最後を飾ってくれる最高の楽曲だと思う」
「ドラマに合わせて曲をお願いしたが、今はこの曲にふさわしいドラマを仕上げなければと」

 


お互いにお互いを想い合っているのが、よく伝わってきますね、本当にうれしーです。両者のファンの僕にとっては、こういうのはたまりません!
(引用元:https://www.oricon.co.jp/news/2049971/full/

 


■というわけで、ようやく【雪風】がどんな歌なのか、考えてみたいと思います。

 

タイトルや、先述の草野さんのコメントの中で、"スピッツ初(?)の雪ソング"と紹介している通り、冬や雪などをモチーフにした歌になっています。

 

そういえば、スピッツの歌で"冬"や"雪"をモチーフにしたものってなかったですかね?僕は何となく、アルバム『インディゴ地平線』が"寒いアルバム"というイメージなんですが、具体的に"冬"や"雪"などの言葉は出てこないんですよね。

 


ドラマ「不便な便利屋」は、北海道の雪深い街に迷い込み、所持品を失くして帰れなくなった主人公(岡田将生)が、何故かそこで便利屋の手伝いをすることになるというストーリーなんですが、鈴井さんのコメントに"ドラマに合わせて曲をお願いした"とあるように、程度は分かりませんが、そういうストーリーを予め知った上で、スピッツが【雪風】を作ったのでしょう。

 

ただ、僕自身はドラマを少し見ただけですが、歌詞がドラマにがっつり沿っているというわけでは、どうもなさそうなんですよね。

 


■断片的に歌詞を少し抜き出してつつ、考えてみます。

 

まず、一番印象的で、歌の方向を決定づける歌詞で、この歌が始まります。

 


まばゆい白い世界は続いてた
また今日も巻き戻しの海を エイになっておよぐ

 

"白い世界"で、雪景色を思わせますが、続くフレーズは"巻き戻しの海"というものです。"巻き戻し"という言葉からイメージできるのは、"過去の回想"でしょうか。そうか、この主人公は、何か自分の過去の記憶と対峙しているんだ、思い返しているんだ、というところから解釈が始まります。

 


解釈に展開が訪れるのは、2番の歌詞。

 


現実と離れたとこにいて こんなふうに触れ合えることもある
もう会えないって 嘆かないでね

 


君は生きてく 壊れそうでも
愚かな言葉を 誇れるように

 

この辺り、どう考えるかどうかですよね。

 


まず、"現実と離れたとこ"という言葉。これは、"巻き戻しの海"と同義なのかもしれません。つまり、過去の回想の中ということになります。その中でだけ、僕は君と"触れ合える"ことができるということです。

 

過去の回想の中でだけ触れ合えるとは、どういうことか、それは結局、現実・現在では会うことができない、ということに繋がります。どういう形であれ、僕と君との別れがあったのです。

 


■じゃあ、それがどういう別れか。いつものごとく、詳細には語られていないのですが、スピッツの歌詞の中の"別れ"に、一つはやはり"死別"は付き物のような気がして、やっぱりそれが一番に思い浮かびました。

 

"君は生きてく 壊れそうでも"という言葉。これは、亡くなった君をいつまでも記憶の中でだけ想い続けている=君は僕の中でだけ生き続けている、という解釈になりました。

 

"壊れそうでも"は、何ていうか君に対する言葉ではなくて、むしろ、僕自身に対する言葉のような気がします。僕なりに言葉を変えて良いのならば、"僕は僕の中でだけ君を生かしている 妄想に入り込み過ぎたとしても"という感じです。君との思い出に浸る時だけ、僕は生を感じることができる…それは、寂しいことなのかもしれませんね。

 


または、逆に、僕が亡くなっていて、現実に残されたのが君の方だと考えることもできそうです。そうなると、死んでしまった僕が、生きている君に充てた歌、なんていう不思議な構図が出来上がりますね。

 

あとは、まぁ死別にこだわることはなく、ただ恋人関係を解消しただけとか、遠距離恋愛中の恋人を想っているなどという解釈もできそうです。

 


■轟々と吹き荒れる雪や、見渡す限りに真っ白な雪景色。それらには、時として、俗世を離れた何かを感じるかもしれません。

 

スピッツが、草野さんが、"雪ソング"に込めた想いは、そういう現実離れの想いだったのかもしれません。

 

最後にMVを貼り付けておきます。ドラマとコラボしたMVになっており、主人公の岡田将生が、雪の街を闊歩しております。期間限定で、FULL Ver.のMVもありましたが、現在はもう配信していないようです。

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