スピッツ大学

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198時限目:ランプ

【ランプ】

 

■アルバム『小さな生き物』に収録されている曲です。

 

前に出るような派手な曲ではなく、静かな曲ですが、草野さんの綺麗な弾き語りが引き立って聴こえるので、それが存分に堪能できる曲です。

 

エレキギターアルペジオも美しく、メンバー以外の演奏としては、CDのクレジットによると、オルガン(は分かったのですが)とファゴットが使われているようですが、その演奏も印象的に聴こえてきて、この曲の雰囲気を高めています。

 


■もう何度も同じようなことを語っていますが、個人的に思うことも踏まえて、話をさせていただきます。

 

アルバム『小さな生き物』は、東日本大震災後に作られた、スピッツにとっての初めてのアルバムでした。タイミングがタイミングなだけに、随所に震災の影響を感じざるを得ませんでした。それは、震災によって心に負った悲しみはもちろんですが、(僕が言えることでないかもしれませんが)復興に対する希望や応援も含めています。

 

何かのラジオで、そこまで気にしていない、と本人たちは語っておられましたが、実際に聴いてみて、皆さんどうですかね?影響を受けていない、と思うことの方が何だか不自然のように感じます。

 

ここスピッツ大学でも、『小さな生き物』に収録されている曲をたくさん紹介してきたのですが、ほぼ全曲を通じて、このアルバム全体から受け取ったイメージはいつも共通していました。震災によって感じた悲しみや無力感、被害を被った方々や関係者へのいたわりや鎮魂、そして、その未曽有の災害からの復興を果たすべく立ち上がろうとしている人々へ希望を与えるべく歌われた応援や労いの言葉など…無意識だとしても、草野さんの込めたたくさんの想いが、アルバム『小さな生き物』にたくさん詰まっています。

 


■そこへ来て、今回の【ランプ】という曲です。大別すると、個人的には”悲しい曲”だという印象を受けましたが、どうですかね。

 

そして、タイトルにもなっている”ランプ”という言葉についてですが、僕はこの歌の中で、2つの意味で使われていると思っています。

 


一つ目。

 

まず、出だしの2行の歌詞を紹介します。個人的には、この2行で、この歌で歌いたいことの”半分”は伝えているという印象です。

 


ただ信じてたんだ無邪気に ランプの下で
人は皆もっと自由に いられるものだと

 

ここは、何ていうか、今の生活が当たり前にずっと続いていくんだと思い込んでいる、まさに僕たちのことを表しているような歌詞だと感じます。特に、日本人に関しては、”平和ボケ”という言葉が使われたりしますよね、そういうことを歌っているのだと感じます。

 

そして、ここでの”ランプ”は、その当たり前に続くと思われている生活の象徴として書かれています。広義に”灯り”という風に訳せば、今の僕たちは、よほどのことがない限りは、自分の生活圏にある”灯り”が消えてしまうということは思わないですよね。それはそれで、幸せなことなのでしょうけど。

 

しかし、そこへ来てあの未曽有の災害です。僕たちはそこで気付いたわけですよ、命の脆さと尊さとともに、今の自分の生活が当たり前にあるものではないんだなっていうことに。灯りや、ひいては、電気が当たり前のものではないということに。

 

当時どこかで見たことですが、日本っていう国は”豆腐の上に立っているようなもの”だそうですね、要はそれだけ日本が、地震が多く、揺れやすい国だということのようです。そういうことも、実際に直面して、僕は初めて知りました。

 


■それから、二つ目。

 

Bメロからサビにかけての歌詞を紹介してみます。

 


取り残されるのは 望むところなんだけど
それでも立ってる理由が あとひとつ

 

あなたに会いたいから どれほど 遠くまででも
歩いていくよ 命が 灯ってる限り

 

まず、”取り残される”という言葉があります。ここは、大切な人と何か理由があって離れて、自分が取り残された、と考えることができます。

 

その理由としては、その後に”命”という言葉が使われていたり、ずっと書いている震災云々の話から、やはり震災によって別れた、と繋げて考えました。震災で別れると考えると、必然的に”死別にもつながると思います。

 

ここから続いて、”あなたに会いたいから”という歌詞に繋がっていくので、ひょっとしたら、”自らも命を絶って会いに行く…”となるのかな、と最初は思ったのですが、さらに読んでいくと、”歩いていくよ 命が 灯ってる限り”とあるので、精一杯生きて自分の生を全うして、いつかあの世であなたに会う、という解釈の方が似合うような気がします。

 


そして、ここにもうひとつの”ランプ”がありました。”命が 灯ってる限り”という歌詞がありますが、つまりは、”ランプ”=”命”そのものを表しています。

 

人一人に、ひとつずつ与えられた灯り…すなわち命。その炎は微かで、時には簡単に吹き消されてしまう弱々しいものです。しかし、だからこそ、何より尊く(尊くないといけない)、強い(強くないといけないのです)のです。いつか消えてしまう灯りの儚さと、それでも灯り続ける灯りの強さ、”ランプ”という言葉にはそのどちらも込められているのだと感じます。

 


■それともうひとつ。

 

これはずっと思っていたことですが、この時期に書かれたスピッツの歌詞に、共通して出てくる単語があるんですが、それがこの【ランプ】にも出てきます。少し書き出してみますね。

 


傷つけられず静かに 食べる分だけ
耕すような生活は 指で消えた

【ランプ】より

 


ゆがんでいることに甘えながら
君の指先の 冷たさを想う

【さらさら】より

 


ムダな抵抗も 穴を穿つはず
指先で ふれ合える

【遠吠えシャッフル】より

 


森が深すぎて 時々不安になる
指で穴あけたら そこにはまだ世界があるかな?

【スワン】より

 


指の汚れが落ちなくて
長いこと水で洗ったり

【僕はきっと旅に出る】より

 


お分かりですかね、これらは全部『小さな生き物』に収録されている曲ですが、共通して”指”という単語が出てくるんです。同じ時期に、これだけ共通していますからね。無意識なのか、それとも、意図があるのなら、どんな意図があるのでしょうか。

 

まぁ、曲によって、同じ単語でも違う印象を受け取りますけどね。”指先”とかっていうと、何ていうか、”届くか届かないかそのぎりぎりの距離”みたいな印象を受け取りますし、【さらさら】だったら、”冷たさ”や”寒さ”を表すように”指先”という単語を使っていますよね。実際は、どうなんでしょうね。