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アルバム講義:3rd Album『惑星のかけら』

惑星のかけら

 

3rd Album『惑星のかけら』
発売日:1992年9月26日


■収録曲(→の先より、各曲の紹介へと飛べます)

 

01.惑星のかけら
→ 158時限目:惑星のかけら - スピッツ大学

 

02.ハニーハニー
→ 135時限目:ハニーハニー - スピッツ大学

 

03.僕の天使マリ
→ 164時限目:僕の天使マリ - スピッツ大学

 

04.オーバードライブ
→ 29時限目:オーバードライブ - スピッツ大学

 

05.アパート
→ 7時限目:アパート - スピッツ大学

 

06.シュラフ
→ 66時限目:シュラフ - スピッツ大学

 

07.白い炎
→ 67時限目:白い炎 - スピッツ大学

 

08.波のり
→ 121時限目:波のり - スピッツ大学

 

09.日なたの窓に憧れて
→ 144時限目:日なたの窓に憧れて - スピッツ大学

 

10.ローランダー、空へ
→ 205時限目:ローランダー、空へ - スピッツ大学

 

11.リコシェ
→ 211時限目:リコシェ号 - スピッツ大学

 


■前作のミニアルバム『オーロラになれなかった人のために』の発売が、1992年4月25日であったので、アルバム『惑星のかけら』は、これまた短いスパンを経て発売になったことになります。今では驚くことですが、1st albumが発売になったのが1991年3月25日のことなので、デビューからここまで、たったの1年と半年の出来事なんですよね。本当にあっという間だったんです。

 

この怒涛のリリースラッシュの中で生み出された、1st『スピッツ』、2nd『名前をつけてやる』、3rd『惑星のかけら』の三枚を合わせて、”初期三部作”と語られています(書籍「旅の途中」にこのような表現あり)。そしてこれに、ミニアルバム『オーロラになれなかった人のために』を加えた4作品が、スピッツの一番コアな部分を堪能できる作品だと、個人的には(スピッツファン的にも?)感じます。最近、スピッツに少しずつ興味を持ち始めた方が居られましたら、この時期の作品もぜひチェックしてみてください。

 

ちなみに、『惑星のかけら』の読み方は、”惑星”を”ホシ”として、”ホシのかけら”と読みます。表題曲【惑星のかけら】についても同様です。ただし、スマホやパソコンなどで文字として打つ場合は、”ホシのかけら”では変換されませんので、”ワクセイのかけら”と打たないといけません…苦笑。

 


■さて、アルバム『惑星のかけら』が発売された時期のスピッツを、書籍の情報を主に踏まえて追ってみます。

 


まず、全体的に読んだ限りでは、作品の出来はともかくとして、この頃のバンドはリアルな厳しい状況に直面していたということが読み取れます。

 

これは、厳密にはアルバム発売後の話になりますが、デビューアルバムから、セカンドアルバム、サードアルバムと、結局少しずつCDの売り上げが落ち込んでいったようです。

 

スピッツというバンド自体、まぁ全然ないということはなかったと思いますが、初めから売れ線を意識してやっているようなバンドではなかったということを、初期のインタビュー記事などを読んでいて感じることができます。

 

しかし、このアルバム発売以後、それらの結果などを踏まえて、その思いが少しずつ変わっていったようです。そろそろヤバいんじゃないか…少しでも売れないと申し訳ない…そんな言葉が、書籍のこの頃の文章に目立ち始めます。

 


■そういうバンドの状況の一方で、この作品の出来については、満足していたようです。書籍の中の言葉を借りるならば、アルバム『惑星のかけら』は、”初期スピッツの完成形”と表現されています。

 

しかし、それは結局、スピッツでやりたかったことをやり切ったということに繋がりました。『惑星のかけら』までは、インディーズ時代のストック曲があったそうで、つまり、ここまででインディーズ時代の曲をとりあえず出し尽くしたということになるわけですね。

 


 インディーズ時代からやりたいと思っていたことは、三枚目の『惑星のかけら』でやりつくしてしまった、という虚脱感のようなものがあった。
 ある意味、俺の心の中では、このとき一度スピッツは終わっていたのかもしれない。ひねくれた、へんてこで、かわいいものが好きな、でも、とんがったところのあるマニアックなスピッツは。

 

この時期のことを、書籍「旅の途中」において、草野さんは上記のように振り返っています。”スピッツは終わっていた”という言葉が、胸にささりますね、本当に終わってしまわなくて良かったですけど。

 

ということで、次なる目標を”売れる”ということに設定して、四枚目のアルバム『Crispy!』へとスピッツの活動は続いていくわけですが、この辺りは次のお話ということで、また書きたいと思います。

 


■さて、ではアルバム『惑星のかけら』は、どんな作品なのでしょうか。

 

よく形容されるイメージとしては、グランジ色の強い、歪んだ音が特徴の、退廃的な作品といったところだと思います。ちなみに、”グランジ”とは、wikiの言葉に任せますが、こんな感じです。

 


グランジの音楽的な最大の特徴は、パンク・ロックのような簡素で性急なビートと、ハード・ロックのようなリフ主体の楽曲構造とが融合されていることである。また、いわゆる「静と動」のディストーションギターのサウンドも語られる。

 

一部のバンドは楽曲やアートワークに退廃的な雰囲気を内包しており、これらも1980年代のUSインディーロックからの直接の影響が覗える。また、オルタナティヴ・ロック全体に共通する傾向ではあるが、80年代にヒットチャートをにぎわせていた、産業ロックやヘヴィメタル、エレクトロ・ダンスなどに比べると、歌詞は格段にシリアスな趣となっている。

 

そのまま、アルバム『惑星のかけら』のイメージに合うのではないでしょうか。特に合う曲としては、例えば、【オーバードライブ】【アパート】【シュラフ】【ローランダー、空へ】などでしょうか。ちょっと、シューゲイザーっぽいところもあるかもしれないですね。

 

あとは、何と言っても、表題曲の【惑星のかけら】ですよね。これもまた、これまで(前作『オーロラ…』まで)のスピッツにはない感じの曲で、きっと当時リアルタイムで聴いていたとしたら、驚いたでしょうね。歪んだギターの音から曲が始まって、かと思いきやAメロになってドスの効いたベースやドラムなどの重低音が目立つようになり、それに合わせて草野さんがボソボソと歌い出す…このアルバムの特徴を凝縮させたような曲だと思います。

 


■それでは、アルバム『惑星のかけら』でどんなことを歌っているのかという、精神的な部分に関してですが、『惑星のかけら』に対しては、先述した”グランジ”、”歪んだ音”、”退廃的”などという評価に加えて、SF、ファンタジー、妄想的などの評価もあります。

 

書籍「スピッツ」には、”SFファンタジーロック”や”SFラヴ・ソング集”なんていう言葉も出てくるのですが、草野さんのインタビュー記事においても、インタビュアーが、草野さんの妄想癖について尋ねた際に、草野さんの返答が色々と載っています。

 


「もうガキの頃から。空を飛ぶというのが大体基本になってるんですけど。絵に描いたりして。空想したことを絵と文章に書く、というのは今でもやってるんですけど」

 


「小学校3年生ぐらいかなあ、あの、つたが壁をはい回ってる家ってありますよね? それが福岡の海岸のあたりにあって……っていう空想を膨らまして。で、本当にそこにあるはずだっていう気になっちゃって。実際見に行ったらなかったという(笑)」

 

後者に関しては、個人的にですけど、何か【アパート】に通じるものがあるなって思ったりもしました。

 


■個人的な感想ですが、僕はこの『惑星のかけら』を聴くと、何ていうか、”短編小説”でも読んでいる気分になるんです。

 

先述の通り、そのほとんどは、草野さんの妄想の物語のようですが、全てが妄想であるわけではないとも思います。リアルと妄想を混ぜた物語っていいますか、当時付き合っていた恋人を思い浮かべてとか、その時の自分の生活を基にしてとか、リアルの自分の状況を設定して、そこから色々と妄想を加えていく感じ…そこには「こうあって欲しいなぁ」みたいな、願望なども含まれていたのかもしれません。

 


このアルバムの象徴は、やはり”惑星のかけら”という言葉だと思います。

 

僕はこの言葉を、「夢や妄想だったり、死や性(生)だったり、そういう何ていうか、この世界の”真理”や”概念”をぐちゃぐちゃにまとめたようなもの」と解釈しました。一筋縄で、”こういうものだ”というのではなくて、草野さんの妄想を、ごちゃごちゃにまとめたもの(世界)っていう感じですね。

 

1曲目【惑星のかけら】は、本の表表紙・プロローグ的な感じです。やけに、歌詞がごちゃごちゃしていて、性的にも取れる表現も出てきますが、何か妄想の世界に入り込んでいく、その入口を表しているように感じます。

 

最後の【ローランダー、空へ】と【リコシェ号】は、本の裏表紙・エピローグです。僕は、【ローランダー、空へ】に、”魂が成仏していく場面”という解釈を与えましたが、妄想の入口が【惑星のかけら】ならば、こちらは出口ですね。

 

【ローランダー、空へ】の歌詞の中にも、”惑星”という言葉が出てきて、具体的にはこの歌で”ローランダー”は、いよいよその”(棕櫚の)惑星”へ向かって飛び立っていくのです。出口というより、その妄想の核心に入り込んでいくという表現の方が近いのかもしれません。

 


そして、2曲目【ハニーハニー】~9曲目【日なたの窓に憧れて】が、その妄想のストーリーに当たるわけです。

 

結局、ラヴソング(”You&I世界”の歌)が多いですよね。不倫や体を売る女性との恋愛など、一筋縄ではいかない恋愛を描いているような【ハニーハニー】や【オーバードライブ】、恋人を天使に見立てた【僕の天使マリ】、恋人とのイヤーンな場面を描いたような【白い炎】や【波のり】、当時のリアルな草野さんの願望が描かれているような【日なたの窓に憧れて】などがあります。

 

あとは、【アパート】と【シュラフ】は、不穏な空気・狂気を感じます。個人的には、【アパート】は大好きなんですけどね。

 


■正直な話、アルバム『惑星のかけら』は、苦手な作品でした。これと比べるならば、『スピッツ』や『名前をつけてやる』の方が好きだったんです(まぁ、これは今でも変わらないかもしれないな)。

 

ただ、グランジとか、退廃的とか言われる作品ですが、改めて聴いてみると、そんなに暗い作品ではないんですよね。3050LIVEツアーで、生で【惑星のかけら】を聴きましたが、本当にかっこよかったですよ、もうしびれましたね。【日なたの窓に憧れて】も素晴らしかったです。

 

個人的には、”初期三部作”(『スピッツ』、『名前をつけてやる』、『惑星のかけら』)は、少しずつ好きになっていった作品です。こういうことがあるから、長くスピッツを聴いていてよかったなって思うんです。