スピッツ大学

ステイホームしながら通える大学です!

224時限目:ヒビスクス

【ヒビスクス】

 

ヒビスクス

ヒビスクス

  • provided courtesy of iTunes

 

■アルバム『醒めない』の11曲目に収録されている曲です。

 

この曲に関しては、アルバム発売前に新曲で聴けたんでしたよね。覚えてなかったので改めて調べてみると、スバル「フォレスター」のCMソングに起用されていました。

 

確か、この曲もシングル曲【みなと】(NTT東日本のCMソング)と同様、最初は曲名も発表しておらず、アルバムに入ることすら判明していませんでした。謎のCM曲として最初は発表され、そこから少しずつ情報が解禁されていって、曲名が【ヒビスクス】で、アルバム『醒めない』にも収録されると発表されていったのでした…確かそうでしたよね。

 


■これもまた特徴的なタイトル”ヒビスクス”ですが、とても読みにくく、造語かなとか思うのですが、これは花の名前で、僕らがよく知っている呼び名として、”ハイビスカス / Hibiscus”が有名…というよりこれでしか呼びませんよね。ハイビスカスのラテン語の呼び名が、”ヒビスクス”という解釈になるかと思います。

 

ハイビスカスというと、いかにもハワイなどの南国の植物というイメージが強いのですが、ずばり、ハワイ州の州花であるそうです。

 


それで、この【ヒビスクス】にはMVがあるのですが、このMVがまさにハワイで撮られたものなのです。ちなみに、【ヒビスクス】のMVと、そのハワイ撮影旅行のオフショットムービーが、アルバム『醒めない』の初回限定盤に付属しているDVDに収められています(MVは、【醒めない】【みなと】【ヒビスクス】が収録されています)。

 

まぁ、先述のように、”ヒビスクス”がハワイに関係の深い花だということで、ハワイでMVが撮られたという流れなんでしょうね。

 


■ところで、このヒビスクスという花について、先述の通りこれは、ハイビスカスと同義なのですが、色々と調べていく中で、”人の死”と多少関連がある花なのではないかという情報が得られました。

 

ここ日本では、ハイビスカスは”仏桑花 / ブッソウゲ”という名前でも知られています。この仏桑花は、wikiの情報をそのまま引用すると、”沖縄南部では後生花(ぐそうばな)と呼ばれ、死人の後生の幸福を願って墓地に植栽する習慣がある。”という花なんだそうです。

 

【ヒビスクス】という歌が、日本人が日本で作った曲であるということから、この話が引っかかりました。まぁ、そうでなくても、【ヒビスクス】の歌詞を読んでいくと、どうしても”死”のイメージがついてくるような気がしてなりません。

 


ちなみに、ハワイにおけるハイビスカスについても、”神様へ捧げる花”とされているようです。ただし、これには人間の死などとは直接結びついていないっぽいですね、むしろめでたいことを祝ったりするときの、神様へのお供え物という感じに思えます。

 


※余談ですが。

 

ここスピッツ大学で、以前…というより、記念すべき1時限目の講義で、【会いに行くよ】という曲の解釈を書いてみたことがありました。(最初期の記事なので、短い記事で語っていますが、最近は記事がめっきり長くなっていく一方だなぁ、ブツブツ…)

 

その中で、僕はこの歌について、”墓参り”という物語を当てはめたのでした。

 

1時限目:会いに行くよ - スピッツ大学

 

歌詞の中に、”赤い花咲く 真夏の道”という歌詞が出てくるのですが、その時はこの”赤い花”には、”彼岸花”を当てはめたんです。日本でも土葬(死んだ人を、そのまま土に埋めて供養する)が行われていた頃、お墓の周りには、”彼岸花”を植える習慣があったのです。理由としては、”彼岸花”(の球根)には毒があり、野生の動物が、死体を掘り起こさないようにするためだったんだそうです。

 

…という具合に解釈をしていったのですが、ハイビスカスについて、特に仏桑花のお話を呼んで、【会いに行くよ】の”赤い花”も、ハイビスカス(仏桑花)が当てはまったのではないか、と考えるようになりました。

 

こんな風に、ある歌の解釈を進めていくと、全く別の歌の解釈に繋がることって、まれにあるんですよ。それがまた、楽しいところではあるんですけどね。実に面白い。

 


■ということで、歌詞を少しなぞっていきます。

 


過ちだったのか あいつを裏切った 書き直せない思い出
幼さ言い訳に 泣きながら空飛んで クジラの群れ小さく見える

 

まず、こういう出だしで歌が始まります。最初は、草野さんのボーカルが目立つように、演奏も控えめに始まります。

 

さて、歌詞についてですが、この歌の主人公は、何やら”過ち”を後悔している節が見て取れます。そしてそれは、”あいつを裏切った”という、結構な強い言葉で表現されています。主人公と”あいつ”の関係は何だったのでしょうか。

 

それから、”泣きながら空飛んで”と”クジラの群れ小さく見える”という表現、ここを文字通り捉えるとすると、ちょうど海の上を、それもクジラさえ小さく見えるような、高い位置を飛んでいるような光景が浮かんできます。

 


似たような表現として、

 


悲しみかき混ぜて それでも引きずった
忘れられない手のひら

 

これは二番のAメロにあたるわけですが、ここもやっぱり忘れられない悲しみを思い返し、いつまでもそれを引きずっている表現と捉えられます。

 


■じゃあ、主人公が後悔している過ち、あいつとの関係、主人公はなぜ空を飛んでいるのか?、そもそも本当に飛んでいるのか?などは、具体的には何なのか、ということに関してですが、やはりそれぞれが物語を想像せざるを得ませんね。まぁそれが面白いところなんですが。

 


個人的に、想像したストーリーを書いてみます。

 

まず、この主人公は、とある島に住んでいました。それを、この歌の中では、”約束の島”という表現をしています。その島には、主人公と”あいつ”なる人物も暮らしていました。

 

主人公と”あいつ”は、同性の友達か(男同士)、それとも別に”あいつ”に女性を当てはめても良いわけで、ともすると、恋人かもしれません。まぁ少なくとも、何ならかの絆で結ばれていた関係にあったのでしょう。

 

しかし、具体的なことは不明としても、主人公が”あいつ”を裏切るという事件が起こり、二人の絆は壊れてしまいます。恋人同士なら、何か悪い理由で一方的に別れを切りだしたとかってのもあるかもしれませんし、友達同士で友情が壊れる出来事ってなんですかね…それこそ略奪愛とか?

 

とにかくその結果、主人公は島を出るわけです。それが、冒頭の”泣きながら空飛んで”に当たります。島を出るということで、飛行機を使ったのか、それともここは比喩の可能性もあります。

 

それで、その後についてですが、物語の分岐としては、この主人公が島に、「帰って来たエンド」と「帰って来なかったエンド」の2つがあると思います。

 


■「帰って来たエンド」については、Aメロからサビにかけての歌詞について、

 


後ろめたいままの心が憧れた
約束の島で 再び白い花が

 

咲いた変わらずに 優しく微笑むように
なまぬるい風 しゃがれ声で囁く
「恐れるな 大丈夫 もう恐れるな」
武器も全部捨てて一人 着地した

 

というところが、主人公が自分の故郷である”約束の島”に帰って来た、という場面かなと思いました。(”着地した”が、飛行機が島に着いた、つまり島に帰って来たという描写になるか?)

 

”約束の島で 再び白い花が 咲いた変わらずに”という表現があるのですが、ここが、かなり無理やりな解釈ですが、”白い花”に”ヒビスクス(仏桑花)”を当てはめて、花の話を思い出してみると、ここも【会いに行くよ】と同様、墓参りにきたのかな、と思ったのです。

 

誰の墓参りかというと、やっぱり”あいつ”でしょうか。”あいつ”は、何で死んだんでしょうか。例えば、それこそ主人公に裏切られたショックから、自ら命を絶ったとかも考えられるかもしれません。

 

”再び白い花が 咲いた変わらずに”=”あいつ”の墓を見舞う季節がまたやって来たな、という流れになります。

 

「恐れるな 大丈夫 もう恐れるな」は、何ていうか、”あいつ”がそう言ってるように聞こえた、みたいな場面でしょうか。

 


■じゃあ、もう一つの、「帰って来なかったエンド」だとどうなるでしょうか。

 

結局、島で”あいつ”と決別した主人公は、それから二度と島に帰ることはなかったとします。すると、先程の島の光景は、主人公の回想か、”あいつ”のことを思い出している場面になるかと思います。

 

こっちの解釈だと、主人公は島を出て、そのまま一人で違う場所で暮らしているということになります。裏切った”あいつ”を後ろめたく思いながらも、例えば、自分の夢のためか、あるいは、先程ちょっと触れた略奪愛とか…。

 

そして、ある時季節を感じた際に、故郷の島では白い花が咲く頃か…あいつはどうしているかな…気になるけど、僕はもう戻らないぞ…と決意を新たにするという場面ですかね。

 


■その他としては、

 


あの岬まで セミに背中を押され
戻らない 僕はもう戻らない
時巡って違うモンスターに なれるなら

 

という部分に焦点を当てると、”あいつ”を裏切った罪悪感から、主人公は、”あの岬”なる場所から飛び降りて自殺を図っている、という場面かもしれません。

 

こうなると、”約束の島”という言葉がまた違う意味を出し始めるわけですが、つまり、主人公と”あいつ”は、島で再会をする約束をしていた、とか。

 

だけど、結局会うことが出来なかった。それはつまり、主人公にとっては、”あいつ”に許されなかったということに繋がり、自ら命を絶つという決断につながった、という風に考えられるかもしれません。

 


■あとは、これは結構たくさんの人が書いているようですが、この歌に、”戦争”だったり、”特攻隊”を当てはめている解釈が存在します。

 

ちなみに、”特攻”とは、「爆弾を、戦闘機や潜水艦などに載せて、乗り物と乗組員がそのまま自らの命と引き換えに、相手側に突撃する攻撃」のことです。

 

特に、”特攻隊”に関しては、かなり物語をつなげることができそうです。古く、第二次世界大戦の時に、アメリカとの沖縄戦でも特攻が行われていたそうで、【ヒビスクス】が、”沖縄”などの南国を舞台にしている節がありますし、歌詞の中にも、”特攻”を思わせる言葉がたくさん出てきます。

 

まぁ、この辺り解釈は、他の教授の講義にお任せしたいと思います。

 


■まぁ、とにかく【ヒビスクス】は、アルバムの中でも、とても壮大でドラマチックな歌です。

 

それゆえに、考えれば考えるほど、想像がどんどん膨らんでいく歌です。あなたはどんな物語を想像しましたか?