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アルバム講義:13th Album『とげまる』

とげまる

13th Album『とげまる』
発売日:2010年10月27日

 


■収録曲(→の先より、各曲の紹介へと飛べます)

 

01. ビギナー
→ 147時限目:ビギナー - スピッツ大学

 

02. 探検隊
→ 90時限目:探検隊 - スピッツ大学

 

03. シロクマ
→ 68時限目:シロクマ - スピッツ大学

 

04. 恋する凡人
→ 48時限目:恋する凡人 - スピッツ大学

 

05. つぐみ
→ 95時限目:つぐみ - スピッツ大学

 

06. 新月
→ 69時限目:新月 - スピッツ大学

 

07. 花の写真
→ 134時限目:花の写真 - スピッツ大学

 

08. 幻のドラゴン
→ 173時限目:幻のドラゴン - スピッツ大学

 

09. TRABANT
→ 104時限目:TRABANT - スピッツ大学

 

10. 聞かせてよ
→ 38時限目:聞かせてよ - スピッツ大学

 

11. えにし
→ 27時限目:えにし - スピッツ大学

 

12. 若葉
→ 207時限目:若葉 - スピッツ大学

 

13. どんどどん
→ 109時限目:どんどどん - スピッツ大学

 

14.君は太陽
→ 42時限目:君は太陽 - スピッツ大学

 


■振り返ってみますと(僕自身はリアルタイムでは知らないのですが)、スピッツは、1991年3月25日にシングル『ヒバリのこころ』とアルバム『スピッツ』を同時リリースして、メジャーデビューを果たしました。

 

そこから時が経ち、2010年10月27日にアルバム『とげまる』は発売されました。2010年といえば、スピッツにとっては2011年でメジャーデビュー20周年を迎えるということで、アニバーサリーイヤーを間近に控えていました。

 

そういうわけで、アルバム『とげまる』は、スピッツのメジャーデビュー20年の集大成というべき作品と言えるかもしれません。

 

収録曲のタイアップは過去最多であるらしく、そういうところも、スピッツが特に勢力的に活動していたであろうことが分かります。ちなみにタイアップ曲は、以下の通りになります(タイアップと言えば、6曲になりますかね)。

 

【ビギナー】…ゆうちょ銀行CMソング
【シロクマ】…メナード「イルネージュ」CMソング
【幻のドラゴン】…ブリジストン『ブリザック』CMソング
【えにし】…ヤマザキ『ランチパック』CMソング
【若葉】…映画『櫻の園 -さくらのその-』主題歌
君は太陽】…映画『ホッタラケの島 ~遥と魔法の鏡~』
(【恋する凡人】…舞台の挿入歌に使われたそうです)

 


■そして、2011年3月25日、スピッツはメジャーデビュー20周年記念日を迎えます。この日には、これまでの全MVを収録した映像作品『ソラトビデオCOMPLETE 1991-2011』を発売させるはずでした。

 

しかしながら、2011年3月11日に起こった、東日本大震災という未曽有の大災害により、『ソラトビデオCOMPLETE 1991-2011』は発売延期になります。実際に発売されたのは、4月6日のことでした。

 

災害に際して、草野さんが急性ストレス障害を患ってしまい、スピッツの活動自体も一時停止してしまいます。感受性の強い草野さんのことですから、ショッキングなニュースや、人々が負った悲しみなどを、自分事に捉えた(捉えすぎた)ということなのかもしれません。まぁ、あれだけ大きな出来事だったので、誰もが色んなことを考えたでしょうけど。

 

その頃、スピッツはまさに、アルバム『とげまる』のリリースツアーの真っただ中だったため、その影響で、いくつかのライヴが延期になったりしましたが、程なく復帰したので、それは本当に良かったと思います。

 

アルバム『とげまる』の後は、スペシャルアルバム『おるたな』を2012年にリリースはしましたが、新作のリリースは2013年のシングル『さらさら / 僕はきっと旅に出る』まで、およそ3年間ありませんでした。

 


■さて。

 

すでに何度も話していることですが、僕は個人的に、オリジナルアルバムでスピッツの活動時期をいくつかに分けています。あくまで、個人的な分け方になるのですが、ここでちょっと振り返ってみますと、以下のような感じです。

 

・第一期「スピッツの不遇な時代」
1st『スピッツ』~4th『Crispy!』
出す作品出す作品が、非常にマニアックなものの、コアなファンを着実に増やしていった(はず)。徐々に作品の売り上げが下がっていく中で、行く末を案じたスピッツは目標を「売れること」と設定したものの、中々それも評価されなかった、まさに不遇な時代。

 

・第二期「スピッツの黄金期」
5th『空の飛び方』~8th『フェイクファー』
シングル御三家の100万枚を大きく超える売り上げを筆頭に、出す作品が軒並みヒットを記録し、スピッツの名前が日本全国に知れ渡り、言葉通り”国民的アーティスト”になっていった時代。しかし、そういう華々しい活躍とは裏腹に、世間が抱くスピッツ像と自分たちの描くスピッツ像に差異を感じていたり、自分たちの音作りに満足いかなくなってきたりと、実は壁にぶち当たっていた。

 

・第三期「スピッツの死と再生」
9th『ハヤブサ』~12th『さざなみCD』
レコード会社から、ベストアルバムを発売することを強行された、通称”マイアミ・ショック”により、スピッツは一時、解散・活動休止のピンチに立たされたものの、アメリカでの音探しの旅などを経て、本当に自分たちのやりたい音楽を追い求めていくことを決意。新たにロックバンドとして生まれ変わった。

 


そして、アルバム『とげまる』より、スピッツの活動は第四期に入ったと思っています。第四期にキャッチフレーズを付けるとしたら…個人的には、「古き良きスピッツと新しいスピッツの融合」みたいな感じが似合うのでしょうか。

 

何となく、このアルバム『とげまる』辺りから、どこかに”懐かしさ”を感じることが多くなってきたように思えます。いわゆる、”原点回帰”と言うべきかもしれません。

 

しかしその一方で、第二期や第三期の楽曲とも違う曲も出てきています。『とげまる』収録曲だと、【探検隊】や【TRABANT】や【どんどどん】辺りでしょうか。長く活動を続けているのに、まだまだ新しい曲を次々と生み出していくのは、本当にすごいことだと思います。

 


”懐かしさ”を感じることに関しては、僕自身が長く聴いてきたスピッツファンであり、歳を取ったということも関係しているかもしれません…それは、僕自身もスピッツ自身もそうだと思うのですが笑 同じようなファンの方々にとっても、もしかしたら、そういう”懐かしさ”を感じる瞬間っていうのはあるんじゃないかなって思うのですが、どうですかね?

 

それは何となく、長く聴いてきたことに対する”ご褒美”をもらっているような気がして、嬉しいんですね。メンバーもリスナーも歳を取り、「やぁやぁ、よく来たなぁ、まぁゆっくりしていきなよ」っていう感じですね笑 

 

まさに僕にとってスピッツは、一緒に歳を取っていってくれるような(まぁバンドメンバーの方がずいぶん年上ですが)、そんなバンドだと感じることが、この時期から多くなってきていました。

 


■ところで、アルバムタイトルの”とげまる”についてですよ。

 

当時、アルバムのタイトルに拍子抜けしたことを覚えています。”とげまる”って、何かのゆるキャラかよって、あるいは、ハットリ君の獅子丸の亜種かよって…知らない人は良いですからね笑

 

スピッツのアルバムタイトルは、個性的な名前の方が多いのですが、その中でも特に個性的だなと、悪ふざけが過ぎたなと、思ったほどでした。それと同時に、しかし、このタイトルには何か意味があるのではないかと、想像する余地も生まれてきます。

 

”とげまる”…とがっているようで丸い、丸いようでとがっている。これはまさに、スピッツを表している言葉なのではないでしょうか。

 


■まず、先程も書いたように、この頃のスピッツは、”懐かしさ”と”新しさ”を融合させつつあると、個人的には感じました。

 

”懐かしさ”と言うと、第二期に代表されるような、ポップ色の濃い、優しい感じの曲ですよね。あの時期のシングル曲は、どれも優しい雰囲気の曲ばかりだったように思えます。

 

スピッツの代表曲と言えば、未だに(というより多分永遠に…)シングル御三家が根強いですが、この辺りを聴けば、スピッツは優しくて聴き心地の良い歌を歌うバンドなのだというイメージになると思います。実際に、最初は僕もそういう感じでスピッツを聴いていました。

 


一方で、”新しさ”というと、第三期からのロックに目覚めたスピッツに当たると思います。”マイアミ・ショック”を経て、スピッツはロック色の濃い曲を作るようになりました。

 

特に、アルバム『ハヤブサ』以降の作品ですよね。第二期の作品とは違う、ロックな曲が多くなってきました。それには、最初は違和感を感じるほどでしたが、ちゃんとそれが新しいスピッツらしさに変わっていくのは、不思議というか、心地よかったのです。

 


ということで、”懐かしさ”=まる、”新しさ”=とげ、とすると、その融合ですから、”とげまる”ということになるのかなと、勝手にですが思いました。

 

スピッツの曲を聴けば明らかだと思いますが、例え激しくても、優しさを感じるし、逆に言えば、優しい歌の中にも、どこか暗い部分や過激な部分を潜ませているものが多いんですよね。そういうところを、”とげまる”と表現したのかなと思ったのです。



■あるいは、草野さんの書く詞についても考えてみました。

 

草野さんの書く詞のテーマとして、「セックスと死」というものがあります。特にそれは、初期の頃の曲に顕著であると思います。

 

”セックス”とは、人間の欲求の中でも、根元的なものの一つを表していて、かつ、人間の生命の誕生をも意味している言葉だと思います。つまり、”性”=”生”ということになります。

 

一方は、”死”です。これは、言わずもがな、人間に限らず、生命の終わりを意味しています。それは、肉体的にも、精神的にも言えるかと思いますが、とにかく”終わり”を意味しています。

 

ということで、この「セックスと死」で、草野さんは、人が生まれて死んでいくという、根元的なことを歌ってきたのだと、個人的に思って聴いています。そして時には、輪廻転生や生まれ変わり、死後の世界など、死を超越した何かをも歌っているようにも思えました。

 


そして、自分が何かで読んだのか、その何かを読んだ誰かに聞いたのか、それはもう何も定かではないのですが、草野さんの書く詞を読んでいると、とがっているものに「性的なイメージ」を、まるい物に「死のイメージ」を感じることがあるのです。

 

たくさんあるのでキリがないと思いますが、ざっとすぐに想い返せるものを、ちょっと挙げてみますね。歌のタイトルは伏せておきます、考えてみてください笑

 


<例:とがっているもの>

 


君がこのナイフを握りしめるイメージを
毎日毎日浮かべながらすごしてるよ

 


とんがったゴミの中
かたくなる身体をよせ合って

 


隠したナイフが似合わない僕を
おどけた歌でなぐさめた

 


いつか跳ねたいな 二人して 三日月 夜は続く
泣き止んだ邪悪な心で ただ君を想う

 


そんなのもうバレバレ キザに 狂った今を生きていこう
ハチの針だけ隠し持って イキがれ

 


<例 まるいもの>

 


機関銃を持ち出して 飛行船を追いかけた 雨の朝
あわになって溶け出した 雨の朝

 


真赤な月が呼ぶ 僕が生まれたところさ
どこだろう
黄色い月が呼ぶ 君が生まれたところさ
湿った木箱の中で

 


タマシイころがせ
チィパ チィパ チィパチィパ
タマシイころがせ 虹がかかるころに

(※これのタイトルは、【ビー玉】です)

 


いつもの交差点で見上げた丸い窓は
うす汚れてる ぎりぎりの 三日月も僕を見てた

(※とがっているものと、まるいものが、両方出てきていますね)

 


どうでしょうか、他にもたくさんあるかと思いますので、ご自身で見つけてみてください。

 

とがっているものに関しては、そもそも”スピッツ”という言葉自体が、ドイツ語で”とがっているもの”という意味だそうで、それ自体に、ロックなイメージや、過激で性的なイメージを連想させるものに繋がるかもしれません。


ということで、”とげまる”=「セックスと死」を具現化したもの、とも考えられるかもしれません。ここで言うところの、”とげ”=性的なイメージ、”まる”=死のイメージ、という感じですね。

 


■長く書きましたが、『とげまる』の収録曲に全く触れていませんね笑 まぁ、詳しくは、個々の記事に任せるとして、何曲か印象に残っている曲を紹介しておきます。

 


まず、1曲目の【ビギナー】について。

 

アルバムの中だと、この曲が一番好きだし、印象に残っています。この曲は、アルバム発売に先立って、シングルとして発売されましたが、その前にデジタルシングルとしてリリースされたんですよね。僕は、初めて、ネットで曲をダウンロードするということを、この【ビギナー】でしたんです。

 

個人的には、今も必要な時にしか曲をダウンロードするということはしないのですが、あの頃から考えても、そういうことがさらに身近になりましたよね。

 


当時、確か社会人になって2年とちょっとくらいだったと思うんですが、もう辞めてしまっているのですが、その会社の説明会で、新卒者に対して話をしてほしいということで、代表であいさつをしたことがあるんです。

 

新卒者はもちろんですが、僕自身も当時は社会人になって間もない頃だったので、初心者・初級者を意味する”ビギナー”という言葉を冠したこの歌は、何か親近感が湧いたのです。

 


同じこと叫ぶ 理想家の覚悟 つまづいた後のすり傷の痛み
懲りずに憧れ 練り上げた嘘が いつかは形を持つと信じている

 

この辺とかね、グッときましたよ。どっしりと構えているような演奏に、草野さんのボーカルがとてもきれいに聴こえる曲です。

 


■あとは、【えにし】という曲も印象に残っています。これはあれですね、ランチパックのCMで流れていた曲です。

 

例えば、2018年に結成30周年を迎えたスピッツですが、結成30周年の記念ソングといえば【1987→】、結成20周年の記念ソングと言えば、個人的には【ルキンフォー】、という風に、そういう”節目ソング”みたいなのがあると思います。

 

そういう意味でいうと、この【えにし】は、メジャーデビュー20周年の記念ソングなのかなと思っています。

 

タイトルが”縁”ということもありますが、長く続いてきたスピッツというバンドのことや、それに関わってきた人たちへの想いを歌った歌なのかな、という解釈を個人的にしました。

 


錆びた街角で 日だまり探して
しかめ面で歩いた 汚れ犬の漫遊記

 


伝えたい言葉があふれそうなほどあった
だけど愛しくて忘れちまった
はずかしい夢見て勢いで嘘もついた
そして今君に出会えて良かった

 

”汚れ犬の漫遊記”という言葉には、スピッツファンは反応してしまいますよね。ここは、スピッツのことを表しているのではないかと、思ったりします。

 

スピッツに関わってくれた人たち、何よりスピッツメンバーたちへ、そして、スピッツをずっと聴いてきたファンたちへ、ありがとうと、そして、これからの決意を歌った歌であると思っています。

 

まぁ、ファンからすれば、「こちらの方こそありがとうございます、これからもよろしくお願いします!」という感じなんですけどね。

 

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