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アルバム講義:15th Album『醒めない』

醒めない(初回限定盤)(DVD付)

15th Album『醒めない』
発売日:2016年7月27日

 


■収録曲(→の先より、各曲の紹介へと飛べます)

 

01. 醒めない
→ 216時限目:醒めない - スピッツ大学

 

02. みなと
→ 214時限目:みなと - スピッツ大学

 

03. 子グマ!子グマ!
→ 217時限目:子グマ!子グマ! - スピッツ大学

 

04. コメット
→ 218時限目:コメット - スピッツ大学

 

05. ナサケモノ
→ 219時限目:ナサケモノ - スピッツ大学

 

06. グリーン
→ 220時限目:グリーン - スピッツ大学

 

07. SJ
→ 221時限目:SJ - スピッツ大学

 

08. ハチの針
→ 222時限目:ハチの針 - スピッツ大学

 

09. モニャモニャ
→ 223時限目:モニャモニャ - スピッツ大学

 

10. ガラク
→ 215時限目:ガラクタ - スピッツ大学

 

11. ヒビスクス
→ 224時限目:ヒビスクス - スピッツ大学

 

12. ブチ
→ 225時限目:ブチ - スピッツ大学

 

13. 雪風
→ 192時限目:雪風 - スピッツ大学

 

14.こんにちは
→ 226時限目:こんにちは - スピッツ大学

 


スピッツの結成年月日としては、1987年7月17日が知られています。この日に現スピッツのメンバー4人が、文化服装学園の文化祭にて初めてライヴを行ったことで、この日が結成日として位置付けられているようです。

 

それから、本当に長い長い時が経ち、2017年7月17日、スピッツは結成30周年を迎えました。長くスピッツを聴いてきた僕自身も、ファンの一人としてとても喜んだことを覚えています。これまで行ったことがなかった、スピッツのライヴにも参加することができ、昨日のことのようにその様子を思い出します。

 

結成30周年を目の前にして、さまざまな記念すべきイベントやリリースがありましたが、そんな30周年イヤーを控えた2016年に、15枚目のアルバム『醒めない』が発売になったのです。と言うより、このアルバムで、記念すべき30周年イヤーへとスピッツが動きはじめた感じですよね。

 

そんな、記念すべきアルバム『醒めない』を実際に聴いて、また、アルバムの情報を色々と得ていく中で、このアルバムにスピッツが込めた想いを、2つ受け取ることができました。それらを中心に、アルバムを紹介していきたいと思います。

 

 

■一つ目
「ロックやバンドに対する気持ちを、”醒めない”でずっと持ち続けてる」

 


まず、いつも通りながらアルバムタイトルが、”醒めない”というとても特徴的なものになっています。

 

アルバムが発売される前から、すでに語られ始めていたのですが、この”醒めない”という言葉に込められた想いは、要するに、草野さんが・スピッツのメンバーが、「ロックやバンドに対する気持ちを、”醒めない”でずっと持ち続けてる」ということでした。

 

先述の通り、スピッツは2017年に結成30周年を迎えました。しかも、未だに第一線で活躍している、日本の音楽史に残るロックバンドになりました…という言い方も、もう全然誇張ではないですよね。

 

件の結成30周年のライヴにおいても、僕が参加したのは広島公演(1日目)でしたが、その時にも草野さんが、「30年やってきましたが、まだ通過点です。これからも面白い歌を作っていきますので、よろしくお願いします」という風に、声高らかに宣言をしていたのを、とても印象深く覚えています。

 


そして、そういう想いが凝縮されているのが、表題曲の【醒めない】ですね。

 

アルバム『醒めない』の発売に先立って、表題曲【醒めない】のMVが公開され、いち早く聴くことができました。確か、Mステのスペシャルライヴでも、アルバム曲であるのに、珍しく【醒めない】を披露していました。



カリスマの服真似た 忘れてしまいたい青い日々
でもね 復活しようぜ 恥じらい燃やしてく

 


まだまだ醒めない アタマん中で
ロック大陸の物語が
最初ガーンとなった あのメモリー
今も温めてられてる さらに育てるつもり

 

【醒めない】において、印象に残ったフレーズを引用してみました。

 

前者。ここは、かつてパンクロックバンドとして(大成することを目指して)活動していた、自分たちを歌っているのでしょうか。そこから、ブルーハーツショックなどにより、自分たちの音楽の方向性を変えていったという歴史もあります。

 

一方で、この【醒めない】のMVでは、アニメ―ションのキャクターにデフォルメされた、過去の姿のスピッツメンバーや、(MVの最後には)革ジャンを着たスピッツメンバーを見ることができます。この辺りは、多少自虐的に、原点回帰を試みた結果でしょうか。


後者。ここはもう、先述したような、”醒めない”自分たちの想いを歌っている部分ですよね。まさしく、自分たちがロックに出会って衝撃を受けた時から、ずっとロックに対する想いを醒めずに持ち続け、しかも、まだこれからもその想いを育てていくんだと、その未来のことまで、力強く歌われています。

 

ちなみに、印象的な”ロック大陸”という言葉は、2018年に始まった、草野さんがパーソナリティーを務めるラジオ番組のタイトルにも使われています。

 

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■それから、アルバムの中に【モニャモニャ】という曲が入っていますが、曲の内容はともかく、独特とも思えるこの”モニャモニャ”も、ロックに対する想いを代弁したものになっています。

 

”モニャモニャ”の正体は、アルバムのジャケットに写っている、猫ともウサギとも(個人的には、ネバーエンディングストーリーの聖獣ファルコン)見える、巨大な生き物のことですが、スピッツはこの生き物の物語に、自分たちが育ててきたロックやバンドの物語を重ねたのです。

 

音楽雑誌MUSICAのインタビュー記事において、”モニャモニャ”について説明を求められた草野さんは、このように語っています。

 


草野さん「…このジャケットのモニャモニャとこの子は小さい時から一緒にいて、その頃はこの子に抱かれるくらい小っちゃかったモニャモニャがこんなにデカくなっても、こうやって一緒に『醒めない』でいられるっていう」

 

個人的な想像も含めますが、つまり、小さかったモニャモニャが大きくなっていった=バンドやロックに対する気持ちを育てていった、ということになるわけでしょうね。

 

 

 

■二つ目。
東日本大震災のことにも通じる、”死と再生”の物語」

 


一つ目については、1曲目の【醒めない】や、”醒めない”という言葉自体に込められた想いなどを考えても、草野さんやスピッツのパーソナルな部分を歌っているというイメージが強くありました。

 

ただ、【醒めない】に関しては、アルバムの中でも最後にレコーディングされた曲であるらしく、元々このテーマに向かってアルバムを作っていったというよりは、おそらくアルバムを作っていく上で湧き上がってきた想いを、最後に締めるという形で作られた曲なのかな、と想像しています。アルバムのタイトルが『醒めない』になったことすらも、後の方だったと書いてありました。

 


その一方で、実際にアルバムを聴いてみると、全部の曲ではないですけど、同じような場面だったり、あるいは、曲をまたいで物語が続いているような場面を感じる部分があったりします。

 

その辺りについては、再びMUSICAのインタビューにおいて、草野さんが語っておられることとも一致していました。

 


草野さん「まぁ、『小さな生き物』が旅に出る前の不安と期待が入り混じったアルバムだとすると、”雪風”は再生を匂わすものになっていたと思うんで、そういう意味ではアルバムのスタートにはなっていると思いますね。」

 


草野さん「…そこからコンセプトに囚われた時期に入っていって。まぁ結果的に今回はコンセプトアルバムってほど縛りのあるものではないんですけどね。そうやってひとつのテーマでストーリーを構築するんだったら『死と再生』で作るのが今の心境なのかなって思ったんですよね」

 

例えば、その”死と再生”と関連があるものと言えば、やはり未だに東日本大震災があるのかな、と思います。直接の明言はないものの、先程紹介したインタビューの中でも、『小さな生き物』は”旅に出る前の不安と期待が入り混じったアルバム”、【雪風】が”再生を匂わすもの”になっていると語られています。【雪風】が、アルバム『醒めない』に至る入り口のような曲だったとすると、この想いはそのままアルバムへと引き継がれたのではないでしょうか。

 

アルバム『小さな生き物』は、震災があってまだ間もない頃だったので(と言っても、2年以上経っていましたが)、曲調としては明るい中にも、歌詞を読むと悲しみが潜んでいたりして、先程の草野さんのインタビュー通り、”不安と期待の入り混じった”気持ちを表していたのかもしれません。

 

一方で、アルバム『醒めない』は、もちろん震災の悲しみは完全には消えていないのかもしれないけど(完全に消すことはできないとも言える)、曲を聴いた感じでは、別に取り立てて震災を思い起こすようなものにはなっていなくて、それよりはむしろ、その後どういう物語があったか、というものを描いているような気がしています。それを、コンセプトとして、”再生”と表現しているのだと思います。

 


■ちなみに、アルバム曲(アルバムで初めて聴けた曲)としては、【醒めない】をはじめとして、【子グマ!子グマ!】【コメット】【ナサケモノ】【グリーン】【SJ】【ハチの針】【モニャモニャ】【ヒビスクス】【ブチ】【こんにちは】があります。

 

そして、インタビュー記事には、こんなことも書かれてもいます。

 


草野さん「…一緒に写っている人とモニャモニャとの物語みたいなのが自分のイメージとしてあったんです。だから曲によって、この人が歌ってる曲、モニャモニャが歌ってる曲っていうふうに視点を変えようって最初は思ったんです。実際そうやって聴いてもらえると、『これはモニャモニャの視点かな?』『これは私の視点かな?』って思うと思うんですけど」

 

つまり、一つの物語で曲たちがつながっているのではないか、と考えると、これはかなりロマンを感じてしまいますし、そういうことならば、繋げてみたいなぁ…とか思っちゃうんですよね笑。

 


■ということで、勝手ですが、僕はこんな感じの物語を想像しながら、いつも聴いています。まとめてみますね笑

 


1-①
便宜上、モニャモニャの飼い主を”モニャ子”とさせていただきます笑 子どもの頃から、モニャ子とモニャモニャは、いつも一緒にいました。それは、飼い主とペットという関係よりも深い、親友関係でした。(【モニャモニャ】で語られているのが、その回想シーン)

 

 

1-②
雑誌のインタビューにも、「くまの子 ジャッキー」のストーリーを追っているようなことを語っていましたが、どういう場面でか、モニャ子とモニャモニャが離ればなれになる出来事が起きてしまいます。(【子グマ!子グマ!】がその別れのシーン)

 

 

1-③
離ればなれになった場所では、結局モニャモニャは、自分らしく振舞うことが出来なかったのです。そういうわけで、モニャモニャは、自分らしく生きられる場所へと帰っていくことになるわけです。つまり、大好きだったモニャ子の元へ戻っていくわけです。いかにも、モニャモニャは空を飛べそうな出で立ちですから、空を飛んでモニャ子の居る所へと帰ったかもしれません。(【グリーン】は、まさに窮屈な場所から抜け出した喜びを感じているシーン)

 

 

1-④
そして、モニャ子とモニャモニャの再会です。もしかしたら、お互いの生死や居場所も分からない状況であり、この再会そのものにも、またドラマがあったかもしれません。(これが最後の【こんにちは】)

 


大筋の物語としては、こんな感じですかね。あとは、難しいのが、【コメット】と【ナサケモノ】と【SJ】のラインをどう位置付けるかですね。ひょっとしたら、別ラインでの物語があるのかもしれません。例えば、モニャ子と別れている間の、モニャモニャと新しい飼い主との日々だとか…。

 


2-①
モニャ子と別れた後、モニャモニャは新しい飼い主に引き取られます。その飼い主にも愛されようと、しっかりと尽くすわけです。(【ナサケモノ】で語っていることか?)

 

 

2-②
何ていうか、やっぱりモニャ子と別れた後のモニャモニャは、自分らしく振舞うことが出来なかったような感じですね。しかし、それでもモニャモニャは、新しい飼い主と生きていくことを誓うわけです。(【SJ】か?)

 

 

2-③
そして、モニャモニャと新しい飼い主との別れですね。結局、上手くいかずに、新しい飼い主とも別れてしまいます。これが結果として、モニャ子の下へ帰るという決意に繋がったのだとしたら…(これが【コメット】かな?)

 

こうだとすると、2のストーリーは、1-②と1-③の間でしょうか?それとも、やはり2のストーリーも、モニャ子との話なのか、うーむ…と考えることが、もうこの上ない楽しみなんですよね笑

 

ちなみに、番外編として、【ハチの針】は”モニャモニャが夜の店に行って大人になる”みたいなストーリーを妄想していますが…まぁこれは別に良いです笑

 


■ただ、このモニャモニャの物語も、先程紹介したように、スピッツの物語や、ひいては、震災に離ればなれになった人たちの再生・再会の物語に置き換えられると思います。

 

大筋としては、離ればなれになった状況から、最後の【こんにちは】で再会した、という展開を考えれば、これはとても壮大で感動的な物語を想わざるを得ません。


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