スピッツ大学

ステイホームしながら通える大学です!

アルバム講義(特別編):Tribute Album『一期一会 Sweets for my SPITZ』

一期一会 Sweets for my SPITZ

Tribute Album『一期一会 Sweets for my SPITZ
発売日:2002年10月17日

 


■収録曲
(オリジナル曲 / カバーアーティスト)

 

01. スピカ / 椎名林檎

 

02. ロビンソン / 羅針盤

 

03. 楓 / 松任谷由美

 

04. 青い車 / ゲントウキ

 

05. 冷たい頬 / 中村一義

 

06. 空も飛べるはず / ぱぱぼっくす

 

07. 夢追い虫 / セロファン

 

08. 田舎の生活 / LOST IN TIME

 

09. うめぼし / 奥田民生

 

10. 猫になりたい / つじあやの

 

11. チェリー / POLYSICS

 

12. Y / GOING UNDER GROUND

 

13. 夏の魔物 / 小島麻由美

 


■2002年10月といえば、スピッツの活動で振り返ってみれば、シングル『ハネモノ』『水色の街』、アルバム『三日月ロック』が発売になって間もない頃になります。

 

そもそも、”トリビュート・アルバム”というジャンルの作品があるってことを、初めて知ったのがこの作品でした。

 

※トリビュート・アルバム…功績のある人物、グループに対して称賛するために作られるアルバムのこと。 複数のミュージシャンによって対象となるミュージシャンの曲をカバーしたコンピレーション・アルバムのような形式になることが多い。

 


僕はこの作品を、発売してすぐに聴いたのではなくて、発売して割と後になって聴いたと記憶しています。CDをレンタルして、MDに吹き込んで聴いていたんですけど、MDは手元にあるものの、CD本体は持っていなかったため、本体を手に入れたいなと思っていたところ、最近中古ショップで見つけて購入いたしました。

 

しかし、当時最初聴いた時は、あんまり好きになれなかったんですよ。それは、やっぱりスピッツの唯一無二感は格別なので、どの曲も違和感があるという感じだったんです。

 

でも今は、トリビュートアルバムの性質を概ね理解しつつ、そういう違和感も楽しむ作品であると、昔よりは理解したつもりなので、これはこれで良いよねっていう感じの聴き方ができるようになりました。

 


■ということで、早速1曲1曲の感想を述べていきたいと思います。

 

正直な話、失礼ながら(当時でも今でも)知らないアーティストが多かったため、自分なりに調べてみたことを少し載せていますが、付け焼刃的になってしまっているので、先にお詫びをしておきます。

 

それから、アルバム『一期一会』の音源を、ituneで見つけてブログに貼ろうかと思っていたのですが、『一期一会』がituneにはないようですので、スピッツの原曲と、そのアーティストのオリジナルの曲を1曲貼り付けることにしました。(YouTubeに公式の動画があればそちらを、なければituneの音源をアップしています)

 

 

 

01. スピカ / 椎名林檎

椎名林檎さんの音楽は、ほとんど聴いて来なかったので、初めてまともにフルで聴いたのが、この【スピカ】のカバー曲だったと記憶しています。

 

逆に、2018年に発売になった林檎さんのトリビュートアルバムで、草野さんがボーカルを務めたスペシャルバンド、”theウラシマ’S”で、林檎さんの【正しい街】という曲をカバーするなど、両者にはそれなりの接点がありそうですね。

 

カバー曲の感想ですが、まず、歌詞が”です・ます調”の【スピカ】に、林檎さんが似合っているなって思ったんです。林檎さん自身の楽曲でも、ちょっと古語調?古文調?みたいな歌詞を書かれることが多いじゃないですか、古い感じで独特な日本語の使い方をしますよね。そういう林檎さんの歌詞の特徴に、いかにも日本語らしい【スピカ】の”です・ます調”が似合ったのかな…というより、そういうところも意識して選曲したのかな、とか想像しています。

 

曲の雰囲気は、林檎さんバージョンの方が明るいですかね。キーボードやホーンの音が派手に鳴っていたり、Cメロなんかは、プログラミングを多用してかなりアレンジが成されていたりと、聴いていて面白いです。

 

youtu.be

 

youtu.be

 

 

 

02. ロビンソン / 羅針盤

羅針盤というバンドがカバーしたのは、スピッツ最大のヒット曲【ロビンソン】です。

 

本家の【ロビンソン】と比べると、ギターの音が極力少なくなっており、代わりにキーボードとシンセサイザーの音が目立って聴こえるようなアレンジになっています。

 

元々、本家の【ロビンソン】も、浮遊感というか、幻と消えてしまいそうな儚さを感じる曲なのですが、羅針盤バージョンのアレンジで、さらにそれを推し進めていったという感じです。ボーカルの声もやけにムーディーで、AOR感というかレトロ感というか、そういうものを演出しています。

 

失礼ながら、この羅針盤というバンドを、僕は知らなったのですが、3ピースのフォークロックバンドだったようです。バンドのドラムを担当していた、西浦真奈さん(チャイナと呼ばれていたそうです)が、交通事故によりお亡くなりになったことで、バンドは解散してしまったということです。

 

youtu.be

 

youtu.be

 

 

 

03. 楓 / 松任谷由美

スピッツ往年の名バラードの【楓】は、大御所の松任谷由美さんによってカバーされました。

 

何よりまず、ユーミンの声と歌い方が独特なので、ユーミンが歌うだけでもう、世界観がユーミンっぽい楽曲になっちゃいますよね。もうこのまま、ジブリ映画のエンディングの楽曲に使われてても似合っちゃいそうな感じです。

 

ユーミンバージョンの【楓】は、ホーンやフルートの音がたくさん使われているアレンジになっており、本家の【楓】とはかけ離れて、派手で陽気な曲になっています。そういうわけで、本家の【楓】は”死別”を思い浮かべるのですが、ユーミンバージョンでは、あまりそこまで悲しい感じではないですね。

 

youtu.be

 

youtu.be

 

 

 

04. 青い車 / ゲントウキ

元々は、スリーピースのバンドだったそうですが、紆余曲折あって2人組になったり、3人組になったりを経て、現在は田中潤という方のソロプロジェクトになっているようです。このバンドも、一番最初の結成から数えると、もう20年以上も活動している古いバンドのようです。

 

本家の【青い車】は、解釈としては、”男女の心中”というものが広まっています。一方で、別に人によっては、”男女がドライブデートに行く”という解釈もありますし、僕自身もそれも当てはまるのではないか、と思っています。

 

そういうことを考えると、このゲントウキバージョンの【青い車】は、後者の”男女のドライブデート”としての【青い車】のイメージですね。曲のテンポも大いに変わっており、かなりおしゃれなアレンジになっているので、カーステレオからこの歌が流れている、という感じで聴けば、素直に青い車で男女が海に出かけたという光景が浮かんでくるようです。

 

youtu.be

 

youtu.be

 

 

 

05. 冷たい頬 / 中村一義

中村一義さん(と100s)は、ある時急激にはまったときがあって、その時にアルバムをまとめて大人買いしたことがあります…と言っても全部中古でしたけど。

 

何ていうか、このカバー曲の、特にAメロからは、にじみ出る【キャノンボール】感がありますよね。”エッジオンオンオン…”って聴こえてきそうな…(あそこ何て言ってるんですっけ?)

 

本家の【冷たい頬】は、Aメロがあって、サビでちょっと雰囲気が変わって盛り上がっていくという感じの曲なんですが、中村一義バージョンでは、それをもっと極端にしている感じです。それが、すごいかっこいいんですよね、さすがです。

 

それから、トリビュートカバーにおいて、楽曲の構成として、Aメロ・Bメロやサビの位置を少し変えながら歌うということは、よくあると思うのですが、この歌に関してはそれに加えて、歌詞まで変えて歌っているというところがあります。具体的には、サビの”壊れながら 君を追いかけてく”が”くずれながら 君を追いかけてく”に変わっているのですが…どうなんですかね、考えようによっては、歌詞替えは禁忌を破った感がありますね。

 

youtu.be

 

youtu.be

 

 

 

06. 空も飛べるはず / ぱぱぼっくす

ぱぱぼっくすというバンドも、知りませんでした。調べてみたところ、ギターボーカル、ギター、ドラムという構成のスリーピースのバンドらしいですが、もう20年以上も活動をしている、スピッツと同様長く活動をなさっているバンドのようです。

 

オフィシャルのサイトから、楽曲がいくつか聴けたのですが、この【空も飛べるはず】のカバーもそうですが、にじみ出る”みんなのうた”感がありますね。それは特に、このバンドのボーカルのさわだともこさんという方の、優しくて丁寧な声が作り出す世界観なのだと思いますが、楽曲の雰囲気に関しても、スピッツっぽいところを感じる部分が少しあります。

 

何ていうか、こういう知る人ぞ知るという感じのバンドを探せば、素敵なバンドはたくさんあるのでしょうね。日本の音楽界の奥深さを感じます。

 

youtu.be

 

youtu.be

 

 

 

07. 夢追い虫 / セロファン

セロファンというバンドも知りませんでした。1993年に結成後、現在は活動休止中、西池崇と河野薫はタマコウォルズというバンドで活動中のようです。ただ、このタマコウォルズというバンドも、2013年くらいから止まっている…?

 

カバー曲については、本家【夢追い虫】がいぶし銀で重たい感じのロックだったのに対して、かなり軽い感じの、おしゃれなアレンジがなされています。

 

youtu.be

 

youtu.be

 

 

 

08. 田舎の生活 / LOST IN TIME

こういう言い方をするのはふさわしくないかもしれませんが、僕は【田舎の生活】に関してだけは、本家スピッツよりも、このLOST IN TIMEのカバーバージョンの方が好きです。

 

何ていうか、新しい意味というか命というか、そういうものを吹き込んだ、本当に素晴らしいカバーだと思っています。それは、決して原曲の意味を変えてしまったとかそういう次元ではなくて、何ていうか、完全にLOST IN TIMEの曲にしてしまっているような感じです。

 

個人的に言わせてもらえば、本家の【田舎の生活】からは、”死”の雰囲気が漂っていて、曲調とも相まって、ただただ悲しい感じがするのです。しかし、LOST IN TIMEの【田舎の生活】からは、”死”の雰囲気はあんまり感じなくて、むしろ、前向きな別れのようにも捉えることができます。

 

最初のドラムの音が、ローカル線が走る音を表しているように聴こえてくるし、アウトロの盛り上がりや(この時のLOST IN TIMEのギタリストは、榎本聖貴という方だったのですが、この方のギターの音がまた泣ける)、本家には無い”さよなら”の連呼もとても印象に残ります。何ていうか、こっちの【田舎の生活】は、田舎から上京していく光景が浮かんでくるようです。

 

youtu.be

 

田舎の生活

田舎の生活

  • provided courtesy of iTunes

 

 

 

09. うめぼし / 奥田民生

これはもう、ピッタリなカバーですね。2007年に、スピッツ奥田民生の【さすらい】をカバーするのですが、どちらがどちらの曲をカバーしても似合うなっていう感じです。

 

【うめぼし】カバーに関しては、てっきり弾き語りになるのかなと思いきや、最初アカペラで始まりはすれど、途中からがっつりバンドサウンドになっていて、それがまた男くさいというか、渋い感じがして、これはこれでありだなと思うのです。何より、民生さんのボーカルがこの歌に合っていて、これもナイス選曲だなと思います。

 

youtu.be

 

うめぼし

うめぼし

  • provided courtesy of iTunes

 

 

 

10. 猫になりたい / つじあやの

つじあやのさんと言えば、ウクレレミュージシャンで有名な方ですよね。ジブリ映画「猫の恩返し」の主題歌の【風になる】は、きっと多くの方が知っている曲なのではないでしょうか。

 

これもナイス人選&選曲ですね。つじあやのさんの作り出す雰囲気が、【猫になりたい】の世界観にばっちり合っていると思います。ウクレレの音の他に、クレジットによると、ウッドベースとパーカッションの音が加わって、のんびりとした雰囲気を作り出していて、本当に耳心地が良いカバーです。

 

youtu.be

 

猫になりたい

猫になりたい

  • provided courtesy of iTunes

 

 

 

11. チェリー / POLYSICS

POLYSICSもほとんど知らないんですけど、何かの夏フェスで(SETSTOCKくらいしか行ったことないので、多分それ)、わけも分からず”レッツダバダバ”をした経験はあります笑

 

アルバムの中だったら、一番原曲と雰囲気が違っているカバーなのではないでしょうか。プログラミングやシンセサイザーをめいっぱい使って、どこか違う世界にでもワープしてしまそうな感じです。途中でテンポが変わったり、かと思えばまた戻ったりと、めまぐるしく面白い曲ですね。

 

youtu.be

 

youtu.be

 

 

 

12. Y / GOING UNDER GROUND

この作品のカバーアーティストの中だと、一番思い入れが強いバンドです。大学生の頃にこのバンドのことを知ってから、本当に大好きになりました。自分が音楽サークルに入って、下手くそながら弾き語りでカバーをさせていただいていました。

 

この時代のGOINGは、初期の5人組だったんですよね…それを思うだけでも、今となっては、もうおじさんは泣けてきちゃうのです…。

 

GOINGの【Y】は、原曲とはかなり変わっています。本家スピッツの【Y】は、もう王道バラードでしたが、GOINGの【Y】は、イントロからキーボードの音がふんだんに使われて、ドラムのリズムとも相まって、行進曲でも聴いているような感じです。そのため、本家の【Y】に内包されていた悲しい雰囲気はありません。

 

youtu.be

 

Y

Y

  • provided courtesy of iTunes

 

 

 

13. 夏の魔物 / 小島麻由美

小島麻由美さんも、失礼ながら知らなかったのですが、調べてみると、ワンピースの映画『ONE PIECE FILM GOLD』にて、【GOLD & JIVE ~ SILVER OCEAN】という劇中歌を歌っていたようです。映画は見たのですが、知りませんでした。

 

このカバー曲も、先程のぱぱぼっくすの【空も飛べるはず】のカバーと同様、”みんなのうた”感が強いですね。本家の【夏の魔物】には、とある不吉な解釈が広まっていますが、小島さんの【夏の魔物】は、子どもの頃の夏の思い出を歌っているような、そんな懐かしい感じのする曲だと思います。

 

youtu.be

 

夏の魔物

夏の魔物

  • provided courtesy of iTunes