スピッツ大学

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特講:小さかったヒバリは、大きなハヤブサに進化したのだ

今回は、少し趣向を変えて、一曲に焦点を当てるのではなく、もっと広くスピッツの活動を見て、その解説を含めて、僕のスピッツへの思いを記してみようと思います。

 

記す時期としては、1999年~2000年あたりのことです。この時期のスピッツの活動を考えることは、非常に重要なことなのです。

 

 

まず、1999年にあったことと言えば、スピッツの初のベストアルバム「RECYCLE Greatest Hits of SPITZ」が発売されたことです。このアルバムは、200万枚以上売れ、確かスピッツで一番売れたんじゃなかったっけな、とにかく売れに売れました。もう社会現象と言っても良いでしょう。

 

しかし、それとは裏腹に問題だったのは、このアルバムが、メンバー・バンドの意向にそぐわずに発売されたアルバムだった、ということです。

 

解散までは、ベストアルバムは出さない、と明言していたメンバーは、これに対して嫌悪感を抱き、悔しさをあらわにします。僕は直接見たことはないですが、そういう意図のことを、ファンクラブの通信などに記したそうです。

 

たまに、なんかこういうことがありますよね、宇多田ヒカルとか、HYとかもそうじゃなかったっけな。その辺の事情は色々あるのでしょうけど。

 


ということで、このアルバムはメンバー非公認のベストアルバムということになりました。そんなアルバムが、先に述べたように、結果として200万枚以上売れちゃうとは、何とも皮肉なものです。

 

ちなみに僕は、発売した当時は、そういう背景を知らぬまま、このアルバムを購入しました。当時の僕は知らない曲も入っていたりして、事情などを知らずに、手放しに喜んだものです。

 

余談ですが、大学の時に、このアルバムを友達に貸したまま、そのまま返ってきていません、笑。もう会うことはないと思いますし、会ったとしても、返してもらおうとは思っていません。全ての事情を知った上で、都合よく手放す口実ができ、バンドの意向を尊重できたと…結果的にそうなったということですかね、笑。

 


そしてこれも、僕が後に知ることですが、メンバーはずっと、世間が抱くスピッツ像と、自分達が目指す、ロックバンドとしてのスピッツ像との、矛盾や差異に悩んでいたそうです。それは、前オリジナルアルバム「フェイクファー」の発売、ベストアルバムへのアンチ作品となった「花鳥風月」、そして強行的に発売されてしまったベストアルバム「RECYCLE Greatest Hits of SPITZ」の発売を経て、ますます大きくなっていったようです。

 

そして、果てには、当時メンバーの中で、引退や解散などといった言葉も浮かんでいたらしいです。

 


そういう背景があって、2000年、オリジナルアルバム「ハヤブサ」が発売になりました。このアルバムは、メンバーにとっては、やりたいことをやろうと作ったアルバムだそうです。

 

かつて、スピッツはパンクロックバンドでした。今では聴くことは困難な曲が多いですが、インディーズの曲は、ブルーハーツを思わせるパンクな曲が多くあります。そこからデビューして、少しずつバンドの音楽は変わっていきましたが、いつだってメンバーの根底にあったのは、ロックンロールだったのでしょう。アルバム「ハヤブサ」を通じて、純粋なロックというものへの気持ちを取り戻し、表現したかったのでしょう。

 

僕は、この「ハヤブサ」を、高校1年生の時に聴きましたが、本当にこれがスピッツ?と思ってしまうほど、ロック色を強く感じました。一曲目の「今」、そこから続く「放浪カモメはどこまでも」「いろは」、表題曲の「8823」、そして「メモリーズ・カスタム」など、これまでのスピッツのイメージを一転させるような曲が多く入っていました。

 

そういう意味で考えると、僕が抱いていたスピッツ像もまた、メンバーのそれとはずれていたのかの知れません。しかし、何度も聴いていくうちに、あぁ、きっとメンバーがやりたかった音楽って、こういうのだったんだ、と少しずつ理解することができました。



アルバム「ハヤブサ」とは、原点回帰の作品でもあり、これまでのスピッツへの遺書的な作品でもありましたが、それが結果的に、新しいスピッツへはばたくきっかけになりました。解散・引退への道をたどらず、むしろ進化したのです。


どこで見たか、このアルバムについての、こんなキャッチフレーズが、よく思い出されます。

 

”小さかったヒバリは、大きなハヤブサへと進化したのだ”

 

正確には覚えていませんが、似たような表現だったと思います。しかし、すごく印象に残っています。言わずもがな、ヒバリとは、スピッツのデビューシングル「ヒバリのこころ」を意味しているのでしょう。

 


バンドの音楽の方向性が変わっていく、ということは、何も珍しいことではありません。僕の好きなバンド・好きだったバンドも含めて、音楽性が変わってしまったバンドもたくさんあります。その変化によって、そのバンドが自分にフィットしなくなって、結果聴かなくなってしまった、ということは、これまで多くありました…具体的に名前は出しませんが。

 

しかし、スピッツは…いや、スピッツだけは違いました。大きな変化を見せながらも、最初から、現在に至るまで、ずっと好きなのです。一番最初に好きになったバンドであり、今でも一番好きなバンドでもあるのです。

 

僕にとっては、スピッツに出会った場面が2回あったと思っています。1回目は、初めて小学生の時に「チェリー」を聴いた時、2回目は、アルバム「ハヤブサ」を聴いた時です。



僕は、どの場面で切り取ったスピッツも愛しています。これまでも、そしてこれからも。