スピッツ大学

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47時限目:けもの道(個人的ランキング第1位)

【けもの道】

 

けもの道

けもの道


■アルバム『三日月ロック』のトリを飾る曲です。これぞ、スピッツロックの真骨頂、いつもLIVEでかなり盛り上がる曲です。本当にかっこ良い曲なので、スピッツファン問わず、聴いてもらいたい一曲です。

 

僕は、スピッツの全曲の中で、この【けもの道】が一番好きな曲で、苦しい時、気合が欲しい時、勇気がほしい時、気持ちが落ち込んでいる時、この曲に何度も何度も、何度も何度も何度も、助けられてきました。きっと、それはこれからもずっとだと思います。心がゆるんでいる時は、涙が出てしまうこともありました。

 


■アルバム『三日月ロック』が、偶然か必然か、アメリ同時多発テロ911テロ)のちょうど一年後に発売された作品です。草野さん本人も、911テロに影響された、と語ったそうです。

 

じゃあ【けもの道】はどんな曲なのでしょうか。上述の、テロの影響をどのように受けたのかは分かりませんが、この曲は一言で言えば、”応援歌”という印象を受けました。

 

この曲もまた、解説すること自体、野暮なだけかもしれないけど、なるべく自分の言葉を記したいと思います。

 


■この歌のサビの一部分を抜粋して記しておきます。

 


あきらめないで それは未来へ
かすかに残るけもの道
すべての意味を 作り始める

 


怖がらないで 闇の向こうへ
手を伸ばす前のまわり道
すべての意味を 作り始める

 

ここらへんに、全てが集約されていると感じます。それぞれ、一番と二番のサビの部分に当たりますが、共通して同じことを歌っていると思います。

 

それは、もう何も残されていないのではないか、自分はもうここで終わりなのではないか、という人に向けて、まだ道はあるよ、という強いメッセージです。それを簡単に言い表している言葉を、この歌から選ぶとしたら、”あきらめないで”という言葉にたどり着くと思います。

 


けもの道(獣道)とは、本来の意味は、”野生の動物が通ることによって自然にできる山中の道”というものです。

 

山の中を彷徨って彷徨って、ボロボロになりながらも、何かを探すように歩いてきた人がいる。しかし、いつかついに、ひょっとしたらもう駄目かも知れない、自分はここで終わりなんだ、と思って立ち止まってしまう、または立ち止まってしまいそうになるときが来てしまうのです。

 

それでも、行き止まりだと思っていた場所でも、微かで見つけにくいかもしれないけど、まだ道はあるから、あきらめてはダメだよ、まだ歩けるよ、と歌っているのです。

 


スピッツの歌、つまり、草野マサムネさんの作る歌のテーマというのは、何度もここでも言っていますが、「死とセックス」でした。セックス=性、そして性とは、全ての”生”の源ということで、「死とセックス」で、人の生死を、草野さんはずっと歌っているのです。

 

その一方で、草野さんは自身の死生観について、「元気に生きるよりも、ふわっと死にたい」とも、書籍「スピッツ」の中で語っています。

 

僕の勝手なイメージですが、そういう草野さんの歌・スピッツの歌に、どこか「がんばらない精神」というものを感じることがあります。ゆるくて、どこかふわっとしている。歌詞の意味をとらえづらい時があるのも、そのせいもあるかもしれません。


そう思いつつ、この歌を聴くと、少しびっくりします。これは、僕がスピッツを長く聴いてきたせいもあるかもしれませんが…この歌には、しっかりと”あきらめないで”と、真っ直ぐで強い励ましの言葉が歌われています。

 

極めつけは、この歌の終わりの部分です、”フレーフレーフレー”と、ずばりそのまま、応援の掛け声が入っていますね。

 

この辺りが、もしかしたら、911テロに影響された部分なのかもしれません。マサムネさんにとってこの時期、真っ直ぐな応援歌を作る必要があったのでしょう。悲しい出来事があって、それによって傷ついた人たちを励ますために。個人的には、この頃辺りから、草野さんの音楽に対する想いというか、綴る言葉に込める想いに、変化があったのかなと思っています。

 

あわせてこの歌は、まぎれもなくロックの”けもの道”を行く、自分たちを鼓舞するためにも作ったのかもしれません、そう勝手に解釈しています。人を励ます歌を作るには、相当なパワーがいることだからです。

 


この歌は、数ある名曲の中でも、スピッツの最高傑作のひとつだと、僕は思っています。