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54時限目:五千光年の夢

【五千光年の夢】


五千光年の夢

五千光年の夢

 

■アルバム『スピッツ』に収録されている曲です。

 

個人的ランキングも、195曲中164位でした。ごめんなさい、これもあんまり印象に残っていませんでした。

 

初期の頃の、まさに珍曲にふさわしい、これほどまでに解釈のしにくい曲はありません。まぁ、初期の曲は、細かく解釈するよりも、直感で聴いた方が楽しめるかもしれませんが…。

 


■なんでも、大正時代に活躍した、高橋新吉という詩人の作品で、その名も「5億年のくしゃみ」というのがあったらしいですが、それに近い感じで、この歌を作ろうとしたそうです。タイトルも、どことなく似ていますね。

 

高橋新吉は、”ダダイズム”という、既成の概念や常識などを、否定したり、攻撃したりする、そういう強い思想の下、詩を書いていた人であるらしいです。しかし、詩人の名前も聞いたことがなかったですし、「5億年のくしゃみ」という作品についても知りませんでした。調べてみましたが、作品は見つかりませんでいた。ますます、気になってきます。

 


ただ何よりも、理系の僕には気になるのが、「年」は時間の単位ですが、「光年」は距離の単位です。「光年」=1光年で、光が1年間に進む距離、という意味なので(1光年=9460730472580800 m らしいです)。

 

あと、個人的には、谷川俊太郎の詩「二十億年の孤独」が思い浮かびましたが、草野さんが公式に「5億年のくしゃみ」について言及していますので、そちらが元なのでしょう。

 


■まず、歌詞を全文読んでいただければ、感じるかと思いますが…どうですか、謎でしょう?結構、デビューアルバムの中の曲は、こういう謎の歌詞が多いです。というより、国語の教科書とかに載っている、現代詩みたいな感じですね。

 

特に初期の頃の歌は、草野さんの詩のテーマ「死とセックス」の通り、”死”か”セックス”のどちらかをテーマとした詩が多いです、ほとんどの曲が、どちらかに大別できると思っていますが、どうでしょうか。この歌詞の場合はどちらでしょうか、まず考えてみました。

 


■この詩を、”死”をテーマとした詩として、まず考えてみます。

 

まず、この解釈は、”五千光年の夢”=”死後の世界”じゃないかな、と思い立ったところからはじまりました。どれくらい距離が離れているとか、そもそもそういう概念で、死後の世界を表すことは、きっとできないと思うんですが、だからこそ、五千光年という、生きていても決してたどり着けないような、途方もない距離で表したのでしょうかね。

 


その上で、注目した歌詞は、この部分です。

 


頭ガイコツの裂け目から 飛び出してみよう

 

まず、出ました、漢字で書けるようにカタカナで書くシリーズ。骸骨とかけばいいものを、ガイコツと書いていると。何かを意図しているのか、ただの言葉遊びなのかは不明ですが。気になりますが、今回はそこはあまりこだわらず、全体的なフレーズ自体の解釈を考えるとします。

 

かなり独特な表現になっていますが、僕のイメージでは、頭の先から、魂が抜け出していくようなイメージです。まぁ、”魂”という概念自体も曖昧なものですが。

 


■あとは、”頭ガイコツの裂け目”の”裂け目”という言葉の意味です。色んな人の解釈を参考にもさせていただきましたが、これは文字通り考えて、”頭ガイコツ”がパックリ割れてしまっている、とイメージしてみます。こういう状況になる可能性としては、ひとつ”飛び降り自殺”が思い浮かびます。高い場所から飛び降りて、頭を地面に打ち付けて、パックリ割れちゃってると。

 

確かに、飛び降り自殺を示唆する表現として、出だしに、

 


五千光年の夢が見たいな うしろ向きのままで
涙も汗も吹き飛ぶ 強い風に乗って

 

という歌詞があり、当てはまるような気がしますね。

 


■ただし、なぜこの人が、飛び降り自殺を図る必要があったのかは、明確に説明することは難しいです。フレーズとしては、

 


すべてが嘘だと分かった
お弁当持ってくれば良かった

 

というのが出てますが、”お弁当…”の下りは、言葉遊びと簡単に解釈を片づけるとして、”すべてが嘘だと分かった”という部分は、最後まで気になるままです。自分の中の死生観を揺るがす、何らかの出来事があって、それが行き過ぎて”生”の否定へとつながったのかもしれませんが、具体的にはどうなんでしょうか。

 


■とにかく、魂、とか、死後の世界、とかいうフレーズが出てきて、哲学的というか、宗教的というか、そういう感じがします。曲自体が、すごく楽しそうな雰囲気な分、それと歌っている内容のギャップがかけ離れてて、びっくりしますよね、さっぱりと爽やかに、すごいこと歌ってるなって。

 

あとは、”頭ガイコツの裂け目”を、男性器の先っぽと訳した解釈も考えました、”五千光年の夢=”絶頂”と訳して進めていくわけですが、今回は自重しておきます。上述の解釈が、しっくりきたので…。