スピッツ大学

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75時限目:鈴虫を飼う

【鈴虫を飼う】


鈴虫を飼う

鈴虫を飼う

 

■アルバム『名前をつけてやる』に収録されている曲です。スピッツ初期のおかしな曲です。まずタイトルから奇妙ですよね…結論から言うと、意味が分からないですからね、どっから鈴虫が出てきたのか…。

 

作詞は、いつも通り草野さんなんですが、作曲は、三輪さんです。初期の頃の曲には、稀にではありますが、ポツポツと三輪さんが作曲した曲があります。そんな曲のひとつです。

 

個人的ランキング、全195曲中188位でした。順位こそ振るいませんでしたが、初期の頃の曲は、聴いていると結構クセになってきます…てかクセになってきたのなら、あなたは立派なコアなスピッツファンの仲間入りでございます。

 


■メロディーのイメージは、ジャズっぽいといいますか、シューゲイザーっぽいといいますか、何となく浮遊感を感じられます。白昼夢でも見ているように、ふらふらとどこかに連れていかれるみたいな感覚です。

 

同アルバムに入っている、【プール】とか【あわ】とかも、何となく同じように聴こえてきます。この時期のスピッツの曲の、ひとつの特徴でもあるように思えます。

 


■肝心の歌詞の解釈ですが、まず何か情報が無いか、探してみましたが、辛うじてwikiの情報において、歌詞の中の”乗り換えする駅”が、草野さんが学生時代に利用していた国分寺駅(東京都)だということが分かったくらいです。

 

また難解な曲にぶち当たってしまいましたが、この曲を分かろうとしてみようとしてみたいと思います。

 


まず、出だしは、こんな歌詞ではじまります。

 


天使から10個預かって
小さなハネちょっとひろがって

 

まず、何を”10個”預かったのか?素直に考えると、続く歌詞が、”小さなハネ…”となっていることもありますし、タイトル通りに、預かったものは”10匹の鈴虫”となるのでしょうか。

 

ただ、鈴虫を預かるって、人生でそんな場面はあるのでしょうか、笑。そして、10”個”ですからね、”匹”ではなくて…なので、鈴虫が別の何かを隠喩しているのかもしれません。

 


そして、さらに少し読み進めていくと、こんな歌詞が出てきます。

 


もう一度会いたいな
あのときのままの真面目顔

 

この歌の主人公は、誰かに会いたがっている様子ですね。これが、冒頭に出てきた”天使”であるとしたらどうでしょうか。

 

普通、”天使”という言葉を現実に使う場面があるとしたら、恋愛感情やあこがれなど、何か特別な感情を抱いている相手を指して…具体的には、男性が思いを抱いている女性か、もしくは、自分自身の、あるいは自分に大きな関わりがある子どもを指して、”天使”と呼ぶ場面が考えられます。この歌に合うように考えるとすると、ふさわしいのは前者…男性が思いを寄せている女性のことでしょうか。

 


ということで、ここまでをまとめてみると…

 

ある特別な思いを寄せている女性=”天使”から、鈴虫を預かった主人公が、その鈴虫を見て、天使のことを思い出している。鈴虫というものが、唯一、自分と”天使”を結び付けている接点であるとして、ぼーっとその鈴虫を眺めている。

 

とまぁ、こんなところでしょうか。

 


■あとは、サビの歌詞。最後のサビで考えてみます。

 


鈴虫の夜 ゆめうつつの部屋
鈴虫の夜 のどぼとけ揺れて
鈴虫の夜 ゆめうつつの部屋
鈴虫の夜 一人きりゆめうつつの部屋

 

ここの部分は、主人公と鈴虫がシンクロして描かれています。”のどぼとけ揺れて”という言葉…鈴虫に、のどぼとけはありませんので、ここは主人公が泣いているという描写と考えられます。”鈴虫が鳴いている”と”男が泣いている”とをかけているのだと思います。

 


例えば、これと、先述の解釈とをつなげると、鈴虫は、別れ際に天使が主人公の部屋に置いていったもの、みたいな考え方ができるなぁ、と思いました。この解釈とすると、天使は=”別れた恋人”、もしくは”別れた妻”、などと考えることができます。

 

預かったものが、言葉通りに”鈴虫”だったのか、あるいは、何か別のものだったのかは分かりません。とにかく、部屋に置いていった思い出の品を見ながら、幸せだった日々を思い出し、寂しさに襲われ、男が一人泣いている、という場面が思い浮かんできます。

 


■あとは、先述したとおり、この歌の詞の中に、草野さんがよく使っていた駅が出てきているということで、草野さんはこの歌に、自分自身を投影させていたのではないでしょうか。

 


油で黒ずんだ 舗道にへばりついたガムのように
慣らされていく日々にだらしなく笑う俺もいて

 

この時期のスピッツは、まだまだ認知度も低く、草野さんも、色んな思いを抱きつつ音楽活動をされていたのだと察します。スピッツでやる曲は、全部と言っていいほど、草野さんが作詞作曲を行ったものです。特に、作詞の作業は、とても孤独な作業だと思います。

 

これも想像ですが、何となく、小さなボロボロのアパートの一室で、作詞に没頭している草野さんの姿が思い浮かびました。