スピッツ大学

ステイホームしながら通える大学です!

特講:こんなに長い旅を続けてきたのに、まだそれを”途中”だとな

 

旅の途中

旅の途中

 

 

■買っちゃいました!

 

昨日、たまたま寄ったBOOK・OFFで、スピッツ単行本「旅の途中」を見つけた。この本の存在はずっと知っていたけど、探して買おうと意識したことはなかったし、実物を見たことすらなかったので、本当に実在してんのか?とか思っていた。

 

半分酔っぱらっていて、フラっと本棚を眺めていたので、見つけた時は目が覚めたような感覚だった。定価の1500円から、1000円に値段が下がっていたけど、状態は良いようで、それを持ってすぐさまレジに向かったのだった。

 

そして今日になって、もったいないので、少しずつ読もうと思っていたけど、午前中を費やして、すでにがーっと読破してしまった。それだけ夢中に、時間を忘れて読んでしまった。

 


■この本の内容は、スピッツの歴史そのものである。スピッツ史とでもいうべき内容で、スピッツというバンドが生まれたところから、スピッツが歩んできた紆余曲折な20年のバンドストーリーが、余すことなく読むことができた。(時期としてはおそらく、アルバム『さざなみCD』が発売された頃まで)

 

ということで、熱も冷め止まぬうちに、読書感想文を書こうと思ったのだが、読書感想文と言っても、この本は歴史の教科書のようなもので、例えば、日本史や世界史の教科書の感想文などを書くことは誰もしないでしょ?なので、わざわざ書くこと自体、教科書の感想文のような、つまり野暮なものになってしまうかもしれないけどね。

 

本当のところは、読んでみてね!と言えば終わりだけど。まぁ、読んだからには、少し書いてみようかというところだ。ということで、よろしくお願いします。

 

(※あんまりネタバレにはなってないと思いますが、もしもそういうのを好まない方は、ここで回れ右をしてください。)

 

 

 

 

 

■まず、この本の珍しくて面白いところは、スピッツの歴史を、スピッツのメンバー4人が代わる代わる語っている、という形で作られている、というところだ。

 

例えば、第一章は、スピッツのメンバーが出会って、結成するまでの話が書かれていたが、最初に草野さんが、リーダーに出会ったところの話をする…その次に、リーダーが、幼馴染だった三輪さんをギターに誘って加入させるところを話して…次は三輪さんが、崎山さんをドラムに誘って加入させる話を…最後は、崎山さんが入ってからのスピッツ結成の話を…っていう風に、数珠つなぎに、リレー方式でひとつひとつのストーリーを語っていくって形をとっている。

 

これはすごく面白くて、読んでいくと、同じことを4人それぞれが別の視点から書いているところもあったりしていて、メンバーによって、作品だったり出来事だったりに対する思いが、同じだったり、逆に違っていたりするところが読み取ることができる。そういう意味では、この辺りは、小説を読んでいる感覚になった、この人はこう言ってるけど、実は…ってな感じで。

 


例えば、マイアミショックと呼ばれる…これは、スピッツが、ベストアルバムをレコード会社に、強行的に発売された出来事であるが、これに対しても、メンバーがそれぞれ語っている。その中で、草野さん以外のメンバーの語りからは、強い憤りを感じたが、草野さん自身の語りからは、「まぁしょうがないんじゃない」感が漂っていた。

 

この時期のスピッツは、アメリカに音探しの旅へと出ており、それに一定の手応えを感じたため、ベストアルバムに対して、マスタリング(多分、ベストアルバムなので、従来の曲をリマスタリングするということだと思うけど)をこだわった作品で、草野さんにしては、その出来には満足した、マスタリングの基準にはなっている、と語っていた。

 


■あとは、例えば、僕は好きな作品でも、読んでみたら、作った本人たちは手ごたえを感じてなかったり、問題点があったってことが書いてあって、えー、あんなに良い作品なのに、って思ったところが多々あった。

 

例えば、『フェイクファー』とかね。草野さんは、いまだに聴きたくないアルバムというほど、好んでないそうだ。アルバムでいうと、『インディゴ地平線』と『フェイクファー』に関しては、くぐもったサウンドになっており、僕はそれはわざとだと思っていたけど、どうやらそうじゃなかったみたいだね。音に迫力を出したいって思っていたらしく、それが実現できずに、模索していた時期だった、ということが読み取れた。

 

一番売れていた時期でもあったのにね、やっぱり本人たちは、悩みや不安をかかえていたんだ。まぁ、そういう模索の時期があったからこそ、そこでスピッツが止まらずに、今でも続いているんだと思うけど。

 


■この本の中に、よく出てくる似たような言葉として、スピッツは関わってくれる周りの人たちに恵まれた、という言葉がよく出てくる。スピッツの歴史本だけど、スピッツ以外の人たちの話がたくさん出てくるのも、この本の面白いところだ。

 

スピッツが羽ばたいた時期のプロデュースを担当していた笹路正徳さん
起死回生のアルバムになった『ハヤブサ』のプロデューサー石田ショーキチさん
今でもスピッツの音楽に欠かせない存在になった亀田誠治さん
レコーディングエンジニアの高山徹さん
キーボートのクージーことクジヒロコさん

 

などなど。そういう人たちとの話も、とてもおもしろかった。

 


しかし、何より僕が一番嬉しかったのは、誰よりも周りの人々が、本当に草野さんの音楽の才能を認めて、草野さんの作った歌を好きでい続けている、ということ。だからこそ、いつかスピッツの音楽が、草野さんの歌が世の中に認められると信じて、みんなが活動してきた、ということだろう。

 

そして、その草野さんの歌を一番愛しているのが、スピッツのメンバーなんだな、っていうことが読み取ることができて、本当にジーンとした。ただ仲がいい、とかそういうことではなくて、音楽を作る人間として、メンバーが草野さんを尊敬し、草野さんの音楽を守って、それを上手に立てようとしてきたってところが、本当によく伝わってきた。



■この本は、タイトルの「旅の途中」という言葉を使って、”まだスピッツは旅の途中だ”という気持ちをメンバーが語って締まっている。

 

こんなに長い旅を続けてきたのに、まだそれを”途中”だとな。そういう思いにいるからこそ、ずっと変わらず…いや、変わっている部分もあるけど、本質的には変わらずに、スピッツらしい曲を作り続けているんだと思うし、それを僕も好きでい続けられるんだと思う。

 

僕は、一生スピッツしますよ。