153時限目:プール
【プール】
■アルバム『名前をつけてやる』に収録されている曲です。個人的ランキング195曲中24位でした。スピッツの初期の曲の中でも、本当に大好きな曲のひとつです、本当に素晴らしい曲です。
曲のイメージは、何と形容したらよいでしょう、決して明るいわけじゃないんですけど、不思議な感じですよね。白昼夢でも見ているような、幻として消えてしまいそうな、浮遊感のある曲、とでも言っておきましょうか。
現在進行中の、スピッツランキング企画(まだまだ絶賛投票受付中!)においても、途中結果で、何と第9位という結果を残しています。これには、本当に意外でしたね、意外と【プール】ファンの方はたくさん居られるようで、とても嬉しかったです。このまま、上位をキープできるか!?
それから、去年発売されました、武道館ライヴのDVDにも、【プール】のライヴ映像が収録されていました。これがまた、素晴らしかったですね。これが、ほんとに25年以上も前の曲ですか!って感じですけどね、古い曲を今やっても、本当に絵になります。
ということで、あまりこれという情報もないですし、早速どんな歌であるか、歌詞を少しなぞりながら考えてみたいと思います。
■まず、出だしが、こんな感じです。
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君に会えた 夏蜘蛛になった
ねっころがって くるくるにからまってふざけた
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歌詞に、”蜘蛛(クモ)”が出てきています。スピッツの曲に出てくる蜘蛛は、個人的には、性的な部分も含めて、とにかく怪しい雰囲気の象徴だと思っています。
例えば、【スパイダー】とかね、タイトルにもろに蜘蛛が入っていますが、曲の感じもいかにもって感じですけどね。他にも、【夏の魔物】とか、僕はこの歌を、”子どもを中絶する歌”と訳しましたが、そういう不穏な雰囲気の歌の中に出てきます…”ぬれたクモの巣が光ってた 泣いてるみたいに”という具合にです。
この【プール】という歌も、それらと同様に、何となく(具体的になんだ、とちゃんと説明はつかないですが)怪しい感じが漂っているような気がします。
個人的には、まず”夏蜘蛛”になって”からまってふざけた”わけですからね、これはSEXの描写かなぁと感じました。
他にも、性的な描写としては、
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孤りを忘れた世界に 水しぶきはね上げて
バタ足 大きな姿が泳ぎ出す
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孤りを忘れた世界に 白い花 降りやまず
でこぼこ野原を 静かに日は照らす
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などが挙げられると思います。”バタ足”なんかは、いかにもSEX中の描写のような気がしますし、”でこぼこ野原”は、女性の体や女性器を比喩したものでしょうか。それに降ってくる”白い花”ということは、”精液”なども考えられますね。
■あとは、こういう歌詞も出てきます。
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街の隅のドブ川にあった
壊れそうな笹舟に乗って流れた
霧のように かすかに消えながら
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この辺りからは、少しずつ消え入ってしまいそうな、儚い雰囲気を感じます。最初の部分の解釈ともつながるんですが、(正確には、”僕”などの自称は出てこないですが、)僕が君に出会ったという描写がありますので、自然と恋愛関係をイメージするんですが、どうでしょうか。
しかし、全体的に漂う怪しい雰囲気や、消え入ってしまいそうな雰囲気から、一筋縄ではいかない恋愛をどうしてもイメージしてしまいます。
■個人的にはまず、”若い恋愛”や”若気の至り”というものをイメージしていました。
勝手にストーリーを妄想してしまいますが…季節はもちろん夏ですね、それで若い男女が出会うと。何となく、男女とも、俗世からちょっとかけ離れて生きている感じですかね、孤独とはちょっと違うかもしれないですけど。そういう男女が出会い、互いが互いを拠り所にするように、身体を重ねるわけですよ。
それは、若いだけの、未来なんて何にも約束されていない、今にも”壊れそうな笹舟”に過ぎないかもしれないけど、流れに任せるように(というより、それしか方法はなく)愛し合っている、と。
そんな風に、お互いの合意の上であれば、まだ救われる余地がありますが、もっと不穏な感じに突き詰めて考えていけば、ストーカー的なものも想像できます。そうすると、【スパイダー】の解釈に近づいていってしまいますが…。
”夏蜘蛛”という言葉は、あまりきれいな言葉ではなく、何ていうか、野蛮な感じがしますよね。巣を張って、じっと獲物を待つような、そんな雰囲気です。そういうところから、清楚な女性をストーカーして待ち伏せして、挙句の果てには、無理矢理犯すというような、そんな想像もできます。
まぁ、とにかくすごい曲ですよね、【プール】ってタイトルなのに、【プール】っていう言葉なんて一回も出てこずに、でも何となく、【プール】っぽいなって思えちゃうんですもんね。