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168時限目:魔女旅に出る

魔女旅に出る

 

魔女旅に出る

魔女旅に出る


■3作目のシングル曲であり、アルバム『名前をつけてやる』からの先行シングルとして、発売されたそうです。個人的ランキング、195曲中12位でした。

 

僕は、20年以上も前にスピッツのファンになりましたが、古い曲から聴いていったってわけじゃないんですよね。だから、初期の頃の曲を聴いたのは、スピッツファンになって、随分も後のことでした。

 

そんな初期の曲の中でも、この【魔女旅に出る】は、特別好きな曲でした。今では、そんなに珍しくないのかもしれませんが、当時は、バンドサウンドとオーケストラサウンドが一緒になっているような曲は、僕自身も聴いたことがなくて、珍しくてとても印象に残ったんです。間奏のオーケストラとか、本当にきれいですよね。

 

あと、歌詞もすごく印象的ですよね。サウンドとも相まって、何かメルヘンチックな絵本でも読んでいる感じになります。歌詞に関しては、後述します。

 


■この曲が発売になった時の状況を、wikiや書籍「旅の途中」を参考に、少しまとめてみたいと思います。

 


まず、デビューアルバム『スピッツ』が発売になってから9カ月という短いスパンを経て、2枚目のアルバム『名前をつけてやる』は発売されました。

 

書籍「旅の途中」によると、計画性のないレコーディングだった、デビューアルバム『スピッツ』から学んで、2枚目のアルバム『名前をつけてやる』は、しっかりとプリプロモーション(レコーディングの準備のようなもの)を行った上で、レコーディングに取り掛かったようです。

 

そんなレコーディングのことを、本の中で、「記憶にない二枚目のレコーディング」という記述がありました。周辺には、「…ライヴがままならない反動だったんだろうか。とにかく、勢いで飛ばして、スッキリしたことだけは覚えている」という記述もありました。

 


そんな、『名前をつけてやる』発売1か月前、アルバムから先行して、シングル『魔女旅に出る』が発売されました。

 

その【魔女旅に出る】(のレコーディング)には、編曲者(アレンジャー)として、長谷川智樹という方が参加しました。先述した通り、【魔女旅に出る】は、バンドサウンドとオーケストラサウンドが融合したような曲になっていますが、これは長谷川智樹さんのプロデュースによるものだそうです。

 

この【魔女旅に出る】での試みが、さらに大きく反映されたのが、次作のミニアルバム『オーロラになれなかった人のために』です。続いて、長谷川智樹さんをアレンジャーに起用して、丸々一枚コンセプトを設定して、バンドサウンドとオーケストラサウンドの融合をさらに進めたこの作品は、何と言うか、スピッツの全アルバムの中でも、色んな意味で異質な作品になっていますよね。

 

そして、『オーロラになれなかった人のために』だけではなくて、これ以降のスピッツの曲には、ホーンやストリングスの音が派手に鳴っている曲が、割と出てくるようになりました。(例えば、【裸のままで】とか【ドルフィン・ラブ】とか【恋は夕暮れ】とかですかね)

 


こんな風に、【魔女旅に出る】という曲は、スピッツにとって、初期のひとつの大きな試みになったのですね。

 


■ということで、この曲がどんなことを歌っているのか、考えてみます。

 


まず、タイトルが素敵ですよね、ただ”旅に出る”じゃなくて、”魔女”旅に出るですからね。

 

そんなタイトルから、僕はずっと、スタジオジブリの作品「魔女の宅急便」を思い浮かべながら、この曲を聴いてきました。しかしながら、実際は草野さんはこの曲を、アメリカのドラマ「かわいい魔女ジニー」という作品をイメージして作った歌だそうです。


でもまぁ、「かわいい魔女ジニー」を見たことがない自分にとっては、やっぱり「魔女の宅急便」の映像が流れてくるんですよ。

 

具体的には、「魔女の宅急便」の冒頭で、キキが嵐の夜に、黒猫ジジを連れて旅立つシーン…よりも、物語の最後に、キキが飛行船からトンボを助けたあとに、エンディングで、キキが街に馴染んでいる様子が流れているところをバックに、歌が流れてくるんですよね。EDテーマは、松任谷由美さんの「やさしさに包まれたなら」ですが、まさにあそこの映像に、【魔女旅に出る】が流れているイメージです。

 


■タイトルには、”魔女”という言葉が使われていますが、まぁそれはイメージとして置いておくとして、この歌は”旅立ち”の場面について歌われている歌ですね。

 

で、この歌が面白いな、と思ったのが、”旅に出る”というタイトルでありながら、実際に歌われているのは、旅立ちを見送る者(歌詞の中では、”僕”という一人称で表されている)の心情なんですよね。歌詞を読んでみると、

 


僕は一人いのりながら
旅立つ君を見てるよ

 


ラララ 泣かないで
ラララ 行かなくちゃ
いつでもここにいるからね

(実際は、”ラララ”の部分は、”ララルララルララ”と歌われています)

 

などの部分が、まさに僕が君(魔女)を見送っている場面に重なりますね。

 


あとは、メルヘンチックな表現が、歌詞の中にたくさん出てくるのも、この歌の魅力ですよね。いくつか挙げてみると、

 

”ほら苺の味に似てるよ”
これは、旅立ちに対しての心情でも表しているのでしょうか。君が旅立つことに対する、嬉しさと寂しさの入り混じった複雑な気持ちが、苺の”甘酸っぱい”味と表現されているのでしょうか。

 

”猫の顔でうたってやる”
”歌ってやる”なんていう、投げやりな感じも何か良いですよね。”猫の顔”とはどういうことでしょうか…心中、色んなことを考えてるけど、それを表には出さずに、何食わぬ顔で、みたいな感じですかね。

 

”ガラスの星が消えても 空高く書いた文字 いつか君を照らすだろう”
ここも印象的なんですけどね。”空高く書いた文字”というのは、空に向かって込めた願い言のようなものでしょうか。それが”いつか君を照らすだろう”ですから、いつかきっと叶うよ、みたいな感じですかね。

 


などなど。こういうメルヘンチックな歌詞によって、余計にこの歌から”魔女感”を感じることができますよね。

 

…”魔女感”?って何だろう?笑