【ミカンズのテーマ】
■アルバム『三日月ロック』に収録されている曲です。個人的ランキング、195曲中155位でした。
まず、何と言っても、目を引くこの曲名ですよね、笑。もう、出落ち感が半端ないんですけど、wikiの情報では、「もしも新しくバンド名をつけるとしたら、という発想のもとで架空のバンド「ミカンズ」を設定してつくったという曲」ということです。
この辺り、個人的な考えも含めて、書いてみようと思います。
■まず、スピッツ史に残る出来事として、”マイアミ・ショック”というものがありました。
この出来事は要するに、自分たちの意向に反して、レコード会社がスピッツのベストアルバムを発売することを決定し、そして実際に発売になってしまった、という出来事です。ちなみに、ここで発売されたベストアルバムとは、『RECYCLE Greatest Hits of SPITZ』のことで、こういった経緯から現在は廃盤になっています。
このレコード会社の決定に、スピッツは、憤りや悲しみを感じたそうです。裏切られた、とも感じたそうです。
そして、スピッツの考え方として、「ベストアルバムを発売する時は解散する時」というのがあったので、ベストアルバム発売=解散という公式が成り立ったので、発売と同時にスピッツを解散させるなんていう話まで及んだそうです。
■この辺りについて書かれていることを、書籍「旅の途中」から、少し引用してみます。
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「スピッツを解散して、四人で違うバンド名で出直そう。」
そんな話で盛り上がった。新バンド名を考えて、ノートに書き出していった。いろんなくだらないバンド名を出し合って、みんなで笑った。たしか、ハナムグリ―ズとか、ダメダメなバンド名ばっかりだったけど。
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確かにマイアミショックという出来事に、スピッツは苦しんだのだろうとは思いますが、ここの文章を読んで、僕は不謹慎にも嬉しくなったんです。まぁ、”ハナムグリ―ズ”にも、クスッときますけどね。
”四人で”違うバンド名で出直そう…”みんなで”笑った…僕はこのようなフレーズを読んで、こんな出来事があっても、スピッツメンバー四人の結束は、少しも揺らいでいないように思えたんです。スピッツメンバーにとっては、四人がバラバラになるという考えは、毛頭なかったことだったんでしょうね。何か、それが分かっただけでも、嬉しかったんです。
■そして、ここからは、僕の想像も入りますが…
僕は思いました。ひょっとしたら、先述のノートに書き出していった”くだらないバンド名”の中に、”ミカンズ”があったのではないか、と。そうでなくても、この出来事の時に思いついたバンド名のひとつが、”ミカンズ”であったのではないか、と。まぁ、時期的に考えても、そうだとは思うんですが、どうですかね。
(※本当のところ、どうなのでしょうか。本人たちが語った事実があったのかは、僕は知らないのですが…この辺り、事実を知っておられる方がいましたら、ぜひコメントください!)
■ということで、もうあんまり解釈することもないかもしれませんが、笑。【ミカンズのテーマ】がどんな曲であるか、考えてみます。
上述のとおりですが、架空のバンド名”ミカンズ”を思い浮かべ(おそらく、自分達がそういうバンドでやっていたとしたらと考えた)、そのバンドのテーマソングとして、【ミカンズのテーマ】は作られました。
多少、分からない表現はありますが、それに沿って歌詞を読んでいけばいいかと思います。少し抜き出してみますね。
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はじめましてのご挨拶 余計なことも紹介しよう
誰もが驚く野望を 隠し持ってる前頭葉
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出だしが、いきなりこういう歌詞なのですが、実は一番ここが印象に残ったりします。メロディーのリズムも何か良いんですよ、軽快に歌っていく感じが気持ち良いんです。
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あたり前過ぎる人生を 切り貼りしてこのざま
好きだと言えたら良かった そんな記憶でいっぱいだ
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架空バンドのテーマソングと言いながらも、”好きだと言えたら良かった”や、他の部分だと、”あの娘のハート つかもう”や”実は恋も捨てず”など、恋愛に関するフレーズも多々出てきます。何ていうか、かつて想いを伝えることができなかったあの娘を振り向かせるため、ひいては、もっと広い意味で自分の人生を変えるためバンドを始めた、みたいな想いが読み取れます。
あとは、サビはこんな感じです。
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ミカンズ 甘くて 酸っぱい言葉 かますぜ
ミカンズ 俺達 虹の橋を渡ろう
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”かますぜ”なんていう、ちょっと強がっている感じがかわいらしいですね。”甘くて 酸っぱい”は、架空のバンド名”ミカンズ”の由来でしょうか…「どうしてミカンズなんてバンド名付けたの?」→「いやぁ、甘くて酸っぱい言葉をかましたいということで、それを”ミカン”に例えまして…」みたいな感じでしょうか、笑。
■とにかく【ミカンズのテーマ】は、かなり陽気な歌になっているんですけど、陽気に歌えてよかったですね。だって、本当にミカンズになっていた可能性も…ってあれ?何だか違和感がない?笑
まぁ…僕は別に、ミカンズになっていたとしても、あるいは、ハナムグリ―ズになっていたとしても、四人が揃っているのならば、聴き続けたでしょうね、笑。陽気な歌に隠された、四人の確かな絆を感じることができます。