スピッツ大学

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213時限目:あかさたな

【あかさたな】

 

■アルバム『小さな生き物』のデラックスエディション盤にのみ付属された、ライヴDVD/Blu-ray”撮りおろしスペシャルライヴ at 横浜BLITZ”に、ライヴ映像として収録されている曲です。CD音源での発表は今のところなく、現時点ではこのライヴ映像でのみ聴くことができるレアな曲です。

 

このブログでも何度も取り上げていますアルバム『小さな生き物』ですが、改めて紹介しておくと、同アルバムは「デラックスエディション 完全数量限定生産盤」「期間限定盤」「通常盤」の3形態で発売されました。こういう試みは、スピッツにとって初めてのことでした。

 

そして、アルバムの形態により、少しずつ収録内容が違っているんですが、デラックスエディション盤が一番豪華な内容になっています(それだけに値段も少し張りますが…)。件の【あかさたな】や、前講義(212時限目)で紹介しました【エスぺランサ】についてもそうですが、このデラックスエディション盤でしか聴くことが出来ないので、よりたくさんの新曲を聴きたい方は、こちらを購入することをおすすめします。

 


■さて、【あかさたな】という曲。

 

まず、一聴するだけで感じますが、「これぞスピッツ!」っていう感じですよね。個人的に、この歌は”ラブソング”に大別されるかと思っているんですが、明るくてかわいらしくて、それでいて、かっこいいという、まさにスピッツ流のラブソングだと思います。

 

アルバム『小さな生き物』の中だと、【オパビニア】や【エンドロールには早すぎる】や【潮騒ちゃん】などの曲が入っていますが、それらと何の遜色もない、何なら、どれかと収録内容が入れ替わっていたとしても、全然違和感が無かっただろうなって感じです。

 

というより、今回の【オパビニア】【エンドロールには早すぎる】【潮騒ちゃん】そして【あかさたな】は、ラブソングだという解釈に基づき、どこか世界観がつながっているような感じがするんですよね。まぁ同じ時期に作られた曲なので、そういうところはあるかもしれません。

 


例えば、歌われている物語の舞台として、どの曲にも”海”の風景が見えてくるんですが、どうでしょうか。

 


あかさたな 浜辺から 陸に上がってからは
怖がりですり傷だらけさ

【あかさたな】の出だしの歌詞

 


二人浜辺を 歩いてく
夕陽の赤さに 溶けながら

【エンドロールには早すぎる】のサビの歌詞

 

ご覧の通りですが、どちらにも、”浜辺”という言葉が出てきます。

 

それから、【潮騒ちゃん】は、もうタイトルが一番海っぽいんですけど、この歌詞にも”沖”という言葉が出てきますし、【オパビニア】も、これは太古の海に生息していた生物の名前が曲のタイトルになっています。

 


■その中で、【あかさたな】という歌は、個人的には、今まで恋愛に消極的で居た主人公が恋に落ちて、その相手に自分の気持ちを伝えようとしているようなシーンが浮かんできます。

 


あかさたな 浜辺から 陸に上がってからは
怖がりですり傷だらけさ
プライドのかけらなど よせ集めて得意気
笑われる事にも慣れてった

 


ほら全然ライブな手が 届きそうな距離で
今生のうちに会えた ハニー 気づいてる?

 

それぞれ、先程紹介した出だしの歌詞と、サビの歌詞の一部分です。

 

前半の4行は、恋愛に臆病だった、消極的だった主人公が、閉じこもっていたところから這い出てくる、まさにその時の描写のように読めます。ここでいう”浜辺”とは、まぁ”浜辺”というと”海”がセットだと考えると、”海”は主人公が閉じこもっていた場所の比喩表現として、そこから這い出た場所を”浜辺”と表現しているのだと読むことができます。

 

あるいは、”陸に上がってからは”という表現から、何ていうか生物的な進化と、人間的に新しい一歩を踏み出したことをかけているとも読めますかね。その辺りは、先ほど紹介した【オパビニア】にも通ずるものを感じます。

 


別に、前半4行ならば、恋愛に限らず、とにかく自分が閉じこもっていた場所から踏み出そうとしている描写になりますが、ここから、後半2行のような表現を読むと、それが恋愛の力によるものだったと考えることができそうです。

 


さあさあ行きましょう あそこが 消えちゃうより前に
人間になれたベムのフィーリング わかるかな?
残念知らないままで 通り過ぎるとかイヤでしょ
ずっとそばにいるからベイビー もう泣かないで

 

この辺とかも、面白い歌詞ですよね、”人間になれたベムのフィーリング”とかね、笑。恋に落ちたことをきっかけに、閉じこもっていた人間が変わろうと頑張るというのは、スピッツの歌によく出てくる描写だと思いますが、この歌はその王道って感じです。この部分は、【りありてぃ】にも通じる部分を感じます。

 

(※ちなみに、”ベム”とは、”妖怪人間ベム”のことですよね。昔やっていたアニメのタイトルであり、そのアニメの主人公の名前でもあります。あまりにも、昔のアニメなので、おじさんである僕も知らないんですけどね、苦笑。)