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アルバム講義:6th Album『ハチミツ』

ハチミツ

6th Album『ハチミツ』
発売日:1995年9月20日

 


■収録曲(→の先より、各曲の紹介へと飛べます)

 

01.ハチミツ
→ 131時限目:ハチミツ - スピッツ大学

 

02.涙がキラリ☆
→ 120時限目:涙がキラリ☆ - スピッツ大学

 

03.歩き出せ、クローバー
→ 11時限目:歩き出せ、クローバー - スピッツ大学

 

04.ルナルナ
→ 202時限目:ルナルナ - スピッツ大学

 

05.愛のことば
→ 2時限目:愛のことば - スピッツ大学

 

06.トンガリ'95
→ 106時限目:トンガリ'95 - スピッツ大学

 

07.あじさい通り
→ 6時限目:あじさい通り - スピッツ大学

 

08.ロビンソン
→ 203時限目:ロビンソン - スピッツ大学

 

09.Y
→ 206時限目:Y - スピッツ大学

 

10.グラスホッパー
→ 45時限目:グラスホッパー - スピッツ大学

 

11.君と暮らせたら
→ 41時限目:君と暮らせたら - スピッツ大学

 


■前作『空の飛び方』からちょうど1年後に、六枚目のアルバム『ハチミツ』は発売されました。このアルバムで、ますますスピッツは、栄華を極めます。

 

まず、このアルバム『ハチミツ』で以って、アルバムにおいては、初のオリコンチャート1位を獲得しました。結果、数あるスピッツのオリジナルアルバムの中で、このアルバム『ハチミツ』こそ、一番売上枚数の多いアルバムになりました(どの時点での数字か、169万枚という数字を見つけました。)

 

収録曲には、シングルで一番の売上枚数を記録した【ロビンソン】、惜しくも100万枚には及びませんでしたが、これもスピッツの人気曲である【涙がキラリ☆】、シングル候補曲でもあった【愛のことば】、スピッツスピッツファンにとっては重要な楽曲【トンガリ'95】など、まさにスピッツの代名詞とでも呼ぶべき曲が、これでもかと揃っています。

 


売り上げが波に乗っていたのは明らかですが、書籍やネットの情報などで、”この頃の自分たち(スピッツ)はノリに乗っていた”であるとか、”(ハチミツは)満足のいく出来”などの言葉もよく見かけることができます。

 

そして、どうやらこれ以後、アルバム『ハチミツ』の出来映えが、良い意味で(悪い意味でも?)ひとつの壁、ひとつの基準として機能するようになっていたようです。例えば、アルバム『色色衣』に同封されている「色色衣座談会」において、

 


草野「それまでは『ハチミツ』っていう壁があって。『ハチミツ』の音がいいって思うのは、単にその時俺らがいちばん輝いていたからなのか、とかそういうネガティブな(笑)。」

 

草野「…俺らだけとかじゃなくって、笹路さんや宮ちゃんも乗りに乗っている時にたまたま当たったのかな、とか。その後ミックスがだんだん満足行かなくなってきたのは、俺の声が変わってきて、ミックスしにくくなっているのかな、と自分の声のせいにするようになってもいたので。」

(※笹路さん=アルバムのプロデューサーの笹路正徳さん、宮ちゃん=エンジニアの宮島哲博さん)

 

と語っています。自分たちが手掛けた作品が良い評価をされたことで、気持ちも乗ることは、当然のことでしょうね。しかも、このメンバー(笹路さん、宮島さん)は、前作『空の飛び方』も手掛けているので、チームで得た名誉ということで、なおのことだったでしょう。

 


■僕が『ハチミツ』に出会ったのは、前作『空の飛び方』同様、僕がスピッツを好きになった初期のことです。僕が小学生の時に、この『ハチミツ』は発売になったようですが、多分中学生の時に初めて聴いたと記憶しています。前作の『空の飛び方』同様、子どもの頃の記憶がよみがえる作品の一つです。

 

子ども心に、まずこのアルバムに対して抱いた印象は、”かわいらしいアルバム”というものでした。

 

タイトルがまず、かわいらしいですよね。アルバムタイトルの”ハチミツ”はもちろん、”ルナルナ”とか”トンガリ'95”とか”涙がキラリ☆”の☆マークとかもそうですけど、そういう部分にも引っ張られて、”かわいらしい”アルバムという印象を得たのかもしれません。

 

歌詞はともかく、メロディーや楽器の演奏が優しい曲が多い印象なんです。荒々しいロックな曲と言えば、【トンガリ'95】と【グラスホッパー】くらいじゃないですかね。

 


■しかし、思い返してみると、このアルバムが発売になった1995年は、地下鉄サリン事件、そして、阪神淡路大震災という、2つの凄惨な人災と天災があって、日本中が悲しみに包まれた年でした。僕も、子ども心にですが、とんでもないことが起こっているんだ、ということは理解していました。

 

そういう悲しい出来事に包まれた日本や人々に寄り添って、元気づけるために作られたような曲が、このアルバム『ハチミツ』に入っています。

 

例えば、映画「フォレスト・ガンプ」を見て日本を思い、”幸せ”や”生きること”をテーマに歌った【歩き出せ、クローバー】、巷では”反戦歌”という解釈が広まっていますが、これも人の生き死にを歌ったような節がある【愛のことば】、個人的には【Y】なんかも、大きくこちらのテーマが含まれているような気がします。

 

そして、歴史的名曲【ロビンソン】に関しても、歌の内容については全然違うことを歌っている印象ですが、当曲のレコーディングが、まさに阪神淡路大震災が起こった日に行われたという秘話があり、そういうことだったんだと改めて【ロビンソン】を聴くと、色々と感じることが変わってきます。

 



だんだん解ってきたのさ
見えない場所で作られた波に
削りとられていく命が

【歩き出せ、クローバー】より

 


雲間からこぼれ落ちてく 神様達が見える
心の糸が切れるほど 強く抱きしめたなら

【愛のことば】より

 


やがて君は鳥になる ボロボロの約束 胸に抱いて
悲しいこともある だけど夢は続く 目をふせないで
舞い降りる 夜明けまで

【Y】より

 

何かこういうドキっとするような、胸に刺さるような歌詞が、ところどころに出てきて、現実の世界にふっと引き戻されるんです。

 


■これまでのスピッツのアルバムは、書籍などを見ても、草野さんの思想に基づいた、ファンタジーや妄想による歌が多かったように思えます。前作『空の飛び方』にしろ、さらにさかのぼって『Crispy!』や、『惑星のかけら』なんてのはいかにもって感じがしますよね。

 

もちろん、『ハチミツ』にも相変わらずそういう曲は多いと思いますが(ちょっとエッチな曲が多いか?笑)、気持ちとしては、これまでの閉じた世界ではなく、外へ向かって開いている、という印象も受けます。

 

これは僕の想像もあるけれど、先述の通り、日本で色んなことがあった時代に、少しでも寄り添おうとした結果でもあったのではないだろうか。あるいは、スピッツという名前が日本に広まっていった中で、自分たち(スピッツや、引いては、スピッツチーム)が見てる世界が大きくなっていって、そこへ向けて歌うようになったということもあるかもしれない。

 

だから、『ハチミツ』という作品は、今までの作品と比べ、より現実に近い(ところを歌っている)作品だとも言えるかもしれない。



草野「『わかる奴にだけわかればいいよ』っていうのから、『結局わかんない人はいないんだ』っていうとこにもっと近くなってきたんじゃないかな。今は聴き手の顔も何となく見えるし。そう考えると『ハチミツ』っていうのは、空を飛ぶということから一歩こう歩み出た形かなぁ。…」

 

(【歩き出せ、クローバー】についてのインタビューにて)
草野「『フォレスト・ガンプ』にしても、アメリカっていう物に恵まれた社会で生活してきた人が、戦場でいきなり生きるか死ぬかの場面に立たされたわけで。僕らにいつそういうことがいつ起こってもおかしくないっていう風に思ったし、俺は大ケガしたことも手術したこともないから、なんか弾丸の痛みって耐えられるのかなって。…」

 

書籍「旅の途中」で、このように草野さんが語っていますが、特に後者の話なんかは、先程の阪神淡路大震災サリン事件に通じる想いを感じますが、現実に起こったことに対して影響を受けた部分も大きかったんだろうかと想像します。

 


子ども心に感じたかわいらしさは未だに感じつつも、大人になるにつれて、何ていうか、その裏に隠された現実や悲しみ、そして、その悲しみに寄り添おうとした草野さんの想い…そういうものを(少しは)想像することができたから、今はそういう”二面性を感じる”アルバムという感想に落ち着きました。

 


■ちなみに。

 

1995年に発売になった当アルバム『ハチミツ』の発売20周年を記念して、『ハチミツ』に収録されている曲に【俺のすべて】を加えた12曲を、様々なアーティストがトリビュートした、トリビュートアルバム『JUST LIKE HONEY ~『ハチミツ』20th Anniversary Tribute~』が発売になりました。

 


曲とカバーアーテイストだけ紹介しておきますと、

 

01. ハチミツ / 赤い公園
02. 涙がキラリ☆ / 10-FEET
03. 歩き出せ、クローバー / NICO Touches the Walls
04. ルナルナ / 鬼龍院翔ゴールデンボンバー
05. 愛のことば / indigo la End
06. トンガリ'95 / LAMP IN TERREN
07. あじさい通り / クリープハイプ
08. ロビンソン / 9mm Parabellum Bullet
09. Y / GOOD ON THE REEL
10. グラスホッパー / ASIAN KUNG-FU GENERATION
11. 君と暮らせたら / 初恋の嵐 feat. 曽我部恵一
Bonus track. 俺のすべて / Scott Murphy

 

となっています。どの曲をどのアーテイストがカバーするか、その組み合わせを全て当てるという企画があったりして、それなりに盛り上がったりしました。

 

このアルバムに関しては、このブログで以前取り上げたことがありますので、良かったらそちらも参考にしてください。

→ 特講:「JUST LIKE HONEY ~『ハチミツ』20th Anniversary Tribute~」を聴いて - スピッツ大学

 

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