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217時限目:子グマ!子グマ!

【子グマ!子グマ!】

 

子グマ!子グマ!

子グマ!子グマ!

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■アルバム『醒めない』の3曲目に収録されている曲です。

 

【醒めない】でテンションが上がって、【みなと】でちょっと感傷的になって、いよいよこのアルバムのストーリーへ!ってなってからの、【子グマ!子グマ!】ですからね。こ…子グマ!?ってなっちゃいますよね、笑。

 

そんな、不思議でかわいらしいタイトルにも表れていますが、草野節満載で、スピッツお得意(?)の、”かわいい”と”かっこいい”が、なぜかこんなにも共存するロックナンバーになっています。

 


■草野ボーカルとともに、終始聴こえてくる女性ボーカルは、Czecho No Republicチェコ・ノー・リパブリック)というバンドのタカハシマイさんが担当しているそうです。その辺りのことは、MUSICAのインタビューにおいて、少し触れられています。

 


田村「…”子グマ!子グマ!”でCzecho(No Republic)のタカハシさん(タカハシマイ)が歌ってくれたんだけど…凄い緊張してるのはわかったんだけど、一発目が完璧だったの。たぶん結構練習してきたんだろうし、いろんなことを想定してやってくれたんだろうなって思ったら、聴いてる時にすげぇ感動しちゃって」

 

三輪「泣いてたもんね」

 

草野「鼻水出てた」

 

田村「そこは別にいいんだけど(笑)。…」

 

こんなやり取りが、インタビューの中でされています。もう、ほんとにいいおじさんたちですよね、笑。田村さんが感動で涙を流すほどの、素晴らしいバックボーカルを聴くことができます。

 


あとは、皆で”子グマ”に応援のエールを送っているようなCメロには、スピッツメンバーに加えて、亀田誠治さんもコーラスとして参加してるそうです。

 


■では、【子グマ!子グマ!】が、どんなことを歌っているのか、考えてみます。

 

まず、これも同じくMUSICAのインタビューにおいて、正確には、アルバム『醒めない』全体に対して、草野さんが語っていることなんですけど、特に【子グマ!子グマ!】に繋がっていることのように感じますので、紹介しておきます。

 


草野「『シートン動物記 くまの子ジャッキー』ってアニメを知ってます?あのストーリーが自分の心に残ってて。もしかしたら違うかもしれないけど、俺が覚えてるストーリーだと、親熊を殺された小熊を、ネイティブアメリカンの子供が育てることになるんですよ。でも紆余曲折あって、サーカスに売られちゃったりして、離れ離れになっちゃうんですけど、最後は再会して抱き合うっていう。その時は小熊はもうデカい熊になってるんだけど、でも熊もその子のことを覚えてて……」

 

「くまの子ジャッキー」とは、また古いものを、笑。古いアニメなので(1977年にテレビ放送されたアニメ)、リアルタイムではさすがに僕も見たことありませんが、幼い頃にどこかで少しだけ見た記憶が、微かに残っています。ただし、アニメの物語は詳しくは知らないですね。


しかし、草野さんがそう言うならば、曲のタイトルが【子グマ!子グマ!】なので、否応なく、アニメの物語と曲の関連を繋げて考えてみました。

 


それで、今回は調べてみても、詳しい物語(あらすじ)を得ることが出来なかったのですが、wikiには各話のサブタイトルは一覧として載っていましたので、そこから多少の物語は想像できそうです、笑。

 

「くまの子ジャッキー」の物語は、まず、母熊を殺された(これは人命救助のために、やむなく主人公の父親が撃ったそうです)子熊のジャッキーとジルを、息子のラン(熊を撃ったのが父親)が引き取って、子熊を育て始めるところから始まります。

 

そこから、ランとジャッキーが友情を深めていく物語が進んでいき、草野さんの言う通り、物語のどこかでランとジャッキーの別れ(おそらく、望まれない形の別れ)があるようなのです。そして、物語の終盤で、ランと大きくなったジャッキーが再会を果たし、おそらくそのまま、ジャッキーを自然に返し大団円という流れになっていくと思います。

 


■なので、アニメでいうところの、”熊と主人公の別れ”のシーンをイメージして、草野さんはこの【子グマ!子グマ!】を作ったのだと、勝手に想像しています。

 

まぁ、アニメは”熊と人との出会い・別れ”を描いていますが、アルバムの方は、普通に考えると”人と人との出会い・別れ”を描いたものになっているとは思います。だから、そのままアニメの物語を追っていってもいいし、”子グマ”となっていますが、自分にとっての愛しい人の比喩になってるとも思います。

 


ということで、歌詞を少し読んでみます。まずは、出だしの歌詞から。

 


はぐれたら 二度と会えない覚悟は
つらいけど 頭の片隅にいた
半分こにした 白い熱い中華まん 頬張る顔が好き

 

”はぐれたら 二度と会えない覚悟は”という言葉があるように、二人に別れの瞬間が近付いている、という描写に読めます。そして、別れたら、もう”二度と会えない”かもしれない、と”頭の片隅”でちょっと寂しく思っているわけですね。

 

”中華まん”の下りは、面白いですね。これは、過去の思い出を回想しているのでしょうか。はたまた、別れが近付いた時期に、そういう何てことないことも、余計に愛しく感じているのかもしれません。

 


ところで、今まさに別れの瞬間を迎えようとしている二人の関係性はどういうものなのでしょうか。

 

例えば、”子グマ”という言葉や、先程の「くまの子ジャッキー」のストーリーを考えると、親子という関係を当てはめることができるかもしれません。まさに、”巣立つ子を想う親心”というものでしょうか。

 

進学のため、就職のため、あるいは、結婚のため…色んな状況を想像できますが、育ててきた愛しい我が子が、自分の元を巣立っていく瞬間をイメージすることができます。僕のイメージとしては、この方が強いですかね。

 

あとは、”頬張る顔が好き”という言葉は、何ていうか、恋愛感情にも捉えることができそうです。実際に付き合っていた恋人同士だったり、片思いをしていた、ずっと近くに居た友達など、そういう関係も当てはめることができそうです。

 


■そんな二人に、つらいけれど、必然的に別れが訪れます。

 


喜びの温度は まだ心にあるから
君が駆け出す時 笑っていられそう

 


幸せになってな ただ幸せになってな
あの日の涙が ネタになるくらいに

 

それぞれ、サビに出てくるフレーズですが、別れに際して、”君”をこんな風に送り出しています。

 

個人的に、”喜びの温度”という言葉が好きなんです。これは、先程の”熱い中華まん”にもかかっていると思っています。”中華まん”は、二人で分け合ってきた、楽しかった嬉しかった思い出の比喩でもあり、そういう思い出が残っているから、別れる時は笑って君を送り出そうという、優しさを感じることができます。

 



子グマ!子グマ!荒野の子グマ
おいでおいでするやつ 構わず走れ
子グマ!子グマ!逃げろよ子グマ
暗闇抜けて もう少しだ

 

ここが、メンバーと亀田さんがシンガロングしているCメロの部分です。ここは、完全に「くまの子ジャッキー」を意識していますよね。全員で、必死に”子グマ”を応援しているように歌っているのを聴くと、こっちまで「頑張れ!子グマ!」って応援したくなってきます、笑。

 

そのまま「くまの子ジャッキー」の物語に当てはめても良いですし、大切な人との別れを当てはめても良いと思います。

 

いずれにせよ、先程紹介したサビの部分とも繋げて考えて、大切な人と別れるのはつらいけれど、そのつらい気持ちをぐっとこらえて、笑って送り出し、そして、頑張れ!とエールを送っているのです。

 


■毎回この話はするかもしれませんが、笑。

 

アルバム『醒めない』の一つのテーマとしては、「死と再生」というものがあるようですが、それはそのまま「別れと出会い」に置き換えることができるかもしれません。アルバム『醒めない』には、そんな物語がたくさん詰まっています(あるいは、アルバム全体でひとつの物語)。【子グマ!子グマ!】も、その物語の一つと言えるかと思います。

 

それにしても、【子グマ!子グマ!】という、ゆるーいタイトルでこんな曲になるとはねぇ…。