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アルバム講義:Special Album『花鳥風月』

 

花鳥風月

Special Album『花鳥風月』
発売日:1999年3月25日

 


■収録曲(→の先より、各曲の紹介へと飛べます)

 

01.流れ星
→ 112時限目:流れ星 - スピッツ大学

 

02.愛のしるし
→ 3時限目:愛のしるし - スピッツ大学

 

03.スピカ
→ 78時限目:スピカ - スピッツ大学

 

04.旅人
→ 87時限目:旅人 - スピッツ大学

 

05.俺のすべて
→ 35時限目:俺のすべて - スピッツ大学

 

06.猫になりたい
→ 126時限目:猫になりたい - スピッツ大学

 

07.心の底から
→ 52時限目:心の底から - スピッツ大学

 

08.マーメイド
→ 176時限目:マーメイド - スピッツ大学

 

09.コスモス
→ 53時限目:コスモス - スピッツ大学

 

10.野生のチューリップ
→ 188時限目:野生のチューリップ - スピッツ大学

 

11.鳥になって
→ 105時限目:鳥になって - スピッツ大学

 

12.おっぱい
→ 32時限目:おっぱい - スピッツ大学

 

13.トゲトゲの木
→ 102時限目:トゲトゲの木 - スピッツ大学

 


■アルバム『フェイクファー』発売から、ちょうど1年後に発売になったアルバムです。詳しくは後述しますが、”スペシャルアルバム”という、ちょっと特殊な形態で、(当時の)スピッツのこれまでの楽曲を振り返るようなアルバムになっています。
(ちなみ、『フェイクファー』と『花鳥風月』の間、1999年1月1日に、『99ep』という3曲入りのEPが発売になりました。アルバム『色色衣』を紹介する時に、ちょっと詳しく話します)

 

当時、世の中は、ベストアルバムブームでした。しかしながら、ひねくれ者のスピッツメンバーたち、ベストアルバムに良い印象を抱いてはいませんでした。それどころか当時、「自分たちがベストアルバムを出す時は、解散する時だ!」と公言するほど、アンチベストアルバム派だったようです。

 


ちなみに、2017年に僕が参戦した、『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR "THIRTY30FIFTY50"』の広島公演にて、リーダーがベストアルバムというものについて語っていました。

 

まず、2017年当時に発売になった『CYCLE HIT』については、”ベストアルバム”なのではなく、あくまでも、過去のシングルを収録した”シングルコレクション”なのだと強調をしておられました。

 

合わせて、アーティスト側から出される、自薦の”ベストアルバム”についての違和感を指摘しつつ、「ベストアルバムは他薦で作られるべきだ!」と主張。そして、「”ベストアルバム”と言うならば、いつだって自分たちの一番新しいアルバムが”ベストアルバム”だ!」と言っておられました。しびれましたね!

 


■そういうわけで、アンチベストアルバム派のスピッツが、ベストアルバム(のブーム)に対抗するように発表した、アンチベストアルバム的な作品こそ、スペシャルアルバム『花鳥風月』だったのです。

 

最初は、この作品を”カップリング曲集”として制作を進めようとしたそうです。実際、このアルバムには、たくさんのカップリング曲が入っています。
(ちなみに皆さん、どの曲がどのシングルのカップリングだったか、正確に覚えていらっしゃるんですかね?僕は…曖昧です!)

 

【鳥になって】(c/w 3rdシングル『魔女旅に出る』)
【マーメイド】(c/w 4thシングル『惑星のかけら』)
【コスモス】(c/w 5thシングル『日なたの窓に憧れて』)
【心の底から】(c/w 6thシングル『裸のままで』)
【猫になりたい】(c/w 9thシングル『猫になりたい』)
【俺のすべて】(c/w 11thシングル『ロビンソン』)
【旅人】(c/w 14thシングル『渚』)
【スピカ】(両A面シングル『楓 / スピカ』より)

 

つまり、これまでのアルバムに未収録になっている、カップリング曲(+両A面の片割れの曲1曲)を網羅したということですね。このアルバムに入っていないカップリング曲も、それまでのアルバムで聴くことはできるようになっています。

 


■ただし、単純な”カップリング曲集”にするにはちょっと地味であるとして、未発表曲やインディーズ曲も収録し、”特別感”を演出したようです。カップリング曲以外の収録曲も、少し紹介しておきます。

 


【流れ星】
これは、インディーズ時代からあった古い曲で、元々はレゲェバージョンの曲であったそうです(どこかの動画サイトで聴けましたが…)。元々は、辺見えみりさんに提供された曲ですが、長い時を経て、ついに自分たちの曲として発表したのでした。この後、シングルカットもされました。

 

愛のしるし
元々は、PUFFYに提供した曲です。ちなみに、シングル『流れ星』のカップリングには、【愛のしるし (LIVE '98 version)】が収録されています。

 

【野生のチューリップ】
元々は、遊佐未森さんに提供された曲で、【流れ星】と同様、とても古くからあった曲であったそうです。

 

【おっぱい】【トゲトゲの木】
インディーズ時代のミニアルバム『ヒバリのこころ』に収録されていた、インディーズ楽曲です。

 


■ちなみに、このアルバムは、”スペシャルアルバム / Special Album”と名付けられています(と呼びましょう!)。他のアーティストでは、”スペシャルアルバム”なんていうのは、あんまり聞かないですよね、スピッツならではの呼び方なのでしょうか。

 

収録曲が、カップリング曲や未発表曲・インディーズ曲で構成されているので、他のオリジナルアルバムと差別化を図る意味で、特別なアルバムと名付けられたということなのでしょう。

 

また、草野さんが、”sp”とアルファベットが続く単語が好きだという、ちょっと変わった趣向をお持ちなので(これは、spitz / スピッツというバンド名の由来にもなっているようですが)、それとも関係して、”Special Album”という名前をつけたのかもしれません。

 


■またまた同じ話をしますが、個人的に、アルバム『インディゴ地平線』『フェイクファー』『花鳥風月』は、小中学生の時に、カセットテープに吹き込んで何度も聴き込んだ作品であり、僕がスピッツへの愛を深めていった、一番古い記憶として残っています。

 

当時、僕はスピッツの作品として、シングルを買ったりレンタルしたりする習慣がなかったんです。その時代の8cm盤のスピッツのシングルは、数える位しか持っておらず、スピッツの曲は、主にアルバムを聴いて楽しんでいました。

 

なので、シングルのカップリング曲を聴く機会がそんなになかったので、『花鳥風月』でカップリング曲がたくさん聴けるのは嬉しかったです。スピッツのカップリング曲にも名曲が多いなと、その時思いました。

 

ただし、カップリング曲も含めて、初めて聴く曲ばかりで、僕にとってはもうほとんど、新作のオリジナルアルバムを聴いている感覚でした。印象に残っている曲がたくさんあるので、ちょっと紹介してみます。

 


【流れ星】
まず、僕はこの曲がとても好きなんです。こういう静かな曲から、アルバムが始まるっていうのは良いですよね、【エトランゼ】とか【夜を駆ける】とかもそういう感じですけどね。

 

個人的に、この曲に対しての解釈として、”眠る前の想像タイム”を当てはめています。眠る前って、やけに壮大な想像をしたりすることありませんか?人は死ぬとどうなるんだろうとか、宇宙はどうなっているんだろうとか…子どもの頃は、そういう想像をしてしまって、眠れなくなったこともありました。

 

何かそういう、壮大な死生観みたいなものを、いつも考えさせられる曲だと思います。個人的に、とても大切な曲のひとつです。

 


【スピカ】
スピッツファンにとって、とても人気のある曲のひとつです。ここスピッツ大学にて、(2018年7月現在)つい最近まで行っていた、ブログを訪れてくださったスピッツファンの方々で、スピッツ人気曲ランキングを作る、”スピッツ大学ランキング企画”にて、なんと【スピカ】が第1位に選ばれました!!!

 

これは、意外でしたね。【スピカ】は人気曲であり、上位に入ることは予想していましたが、1位になる結末は予想してませんでした。結構、ぶっちぎってましたからね、笑。

 


個人的には、”受験頑張れソング”です。

 


この坂道も そろそろピークで
バカらしい嘘も消え去りそうです
やがて来る 大好きな季節を想い描いてたら

 

この辺りのフレーズに励まされ、当時は高校受験ですかね、頑張って乗り越えることができました。

 


【猫になりたい】
もう最初に聴いたときから、印象に残りっぱなしです。スピッツファンは、きっとここは一度は通る道だと思います、みんな大好きな曲ですよね。

 

大学生の時、この曲をアルバイトの女の先輩が、カラオケで突然歌ったんです。僕が、【猫になりたい】が好きであることはおろか、スピッツファンであることも知らせてなかったのに、突然歌い始めたので、僕は興奮して、そのまま恋に落ちていたのです、笑。

 


【おっぱい】
知らない人には、「こんなタイトルあり?」って思うでしょうね、笑。僕も最初はそうでした。スピッツファンは、みんな一度は通る道…というか、越える壁と言うべきでしょうか。この曲を越えれば、コアなスピッツファンの仲間入りです、笑。

 

もうタイトルから出落ち感が半端ないですが、聴いてみると、とんでもない美メロで、至って真面目な名曲なんです。

 


君のおっぱいは世界一 君のおっぱいは世界一
もうこれ以上の 生きることの喜びなんか要らない

 

とても切実な歌詞ですね、笑。この曲を聴いた初めこそ、何言ってんだって思いましたが、これだけ切実でストレートだと、逆に清々しさを感じるほどです。草野さんは、歌詞のテーマとして「死とセックス」を掲げていますが、まさしくそれを体現している重要な曲です。

 


■ということで、書いてきた通り、収録曲の作られた時代がバラバラな分(10年以上にわたって作られている)、良い意味で一貫性がなく、1曲1曲が特徴的で際立っているアルバムです。

 

オリジナルアルバムだと、僕はそのアルバム1枚で世界観をイメージして聴くのが好きなのですが、『花鳥風月』はそれとは少し違います。オリジナルアルバムが、ひとつの長編小説だとしたら、『花鳥風月』は、たくさんのお話が入っている短編集みたいな感じです。

 


古くは、アマチュア・インディーズ時代の楽曲から、スピッツの不遇の時代の楽曲を経て、スピッツバブル黄金期の楽曲、そして(当時の)最新のスピッツの楽曲まで、スピッツの10年以上の活動を、このアルバム一枚で網羅することができるので、名前の通り、特別な1枚です。

 

しかも『花鳥風月』は、収録曲が発表された時期が新しい方から古い方へと向かうように収録されているので、スピッツの活動をさかのぼっていく形で、作品を聴くことになります。何ていうか、タイムマシンで過去にタイムトラベルしていくような感覚です。

 


■ちなみに、アルバムのタイトル”花鳥風月”についても考えてみました。

 

”花鳥風月”という言葉は、日本人が大切にする(べき)、日本の美しい自然の風景や風流を指すという意味と、もう一つ、詩や歌や絵画などを楽しむという意味もあるそうです。アルバムタイトルの意味として当てはめるとしたら、後者ですかね。

 

あと、”花鳥風月”とは、人間が歳をとっていくにつれて、趣を感じるようになるものの順番であるそうです。若い頃には、花や鳥を愛でて、歳をとっていくと、風の流れや月の満ち欠けにさえ趣を感じるようになると、どこかで聞いた記憶があるのです。(ちなみに、こちらの意味は、調べてみてもそういう情報が得られなかったので、話してくれた方の持論だったのかもしれません。)

 


まぁ、草野さんが書く歌詞や歌のタイトルには、花の名前や鳥の名前、そして天体の名前などがよく出てきますので、そもそも初めから、草野さん自身が一番、”花鳥風月”を大切にしていたんですよね。

 

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