231時限目:悪役
【悪役】
■シングル『優しいあの子』のカップリング曲です。
A面の【優しいあの子】は、朝ドラの主題歌に選ばれており、タイトルとも相まって優しい曲だということが早々に分かりました。
そこからのカップリングが【悪役】ですからね。シングルが発売になると決まり、曲自体は聴いていない状態でも、このタイトルが出ただけで、またカップリングでひねくれているな!と、吹き出しそうになりました。朝ドラの主題歌ということで、A面では”優しい”スピッツを演出しつつも、カップリングで舌を出して、少し”本性”を見せてやろうと、そういう感じですかね笑。
■何でも【悪役】は、スピッツファンクラブ限定のライヴイベントである「Spitzbergen tour 2018 ”GO!GO!スカンジナビア vol.7”」にて、発売前からもうすでに披露されていたそうですね。僕はライヴには行っていませんが、そういう噂だけは聞いていました。(【悪役】以外の新曲も披露したとか?)
そしてその後、シングル『優しいあの子』が発売になる直前に、草野さんがパーソナリティーを務めるラジオ番組『SPITZ 草野マサムネのロック大陸漫遊記』にて、初めてオンエアされました。僕も、このオンエアで【悪役】を初めて聴いたんですけど、いやぁ、初めて聴いた時からもうしびれましたね。これは来た!と思ったわけです。
正直なところ、【優しいあの子】は良い曲ではあったんですけど、ちょっと物足りなさは感じていました。もっとゴリゴリなスピッツロックが聴きたいな…と思っていた矢先、この【悪役】ですよ!
まず、何と言っても、ギターのリフがかっこ良すぎですよね。本当に、最初に聴いた時からクセになってしまいました。曲調は、パンクロックって感じでしょうか、単純には括れないような気はしますが、ギターリフと疾走感がとにかく気持ちがいい、これスピッツロックという感じの一曲です。
■では、歌詞の考察をしてみます。
まず、何と言っても、タイトルの”悪役”という言葉ですよね。何を・誰を表すものなのか、どういう意味で使っているのかというところが、この歌の肝だと思います。
本来の意味を調べて見ると、「映画などで悪者の役(をする人)」や「人に嫌われる・憎まれる役(をする人)」という感じです。”悪”という言葉が使われている分、そんなに良い意味では受け取れないですが、必要に迫られて”役を演じている”だけと考えれば、本当は根はイイ人の可能性は大いにあります。
歌詞では、どういう風に使われているかというと、
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うれしい時も 悲しい時も 僕のそばにいて欲しいのさ
悪役になる覚悟はある 果実に手が届くなら
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チャラけた時も 悩める時も 君の話を聞きたいのさ
英雄に蹴られて強くなれる 若葉の匂いの中で
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こういう感じですね。”悪役”という言葉と、その対比(であろう言葉)として”英雄”という言葉が出てくる部分を抜き出してみました。
どちらも、最初の一行からは、”僕のそばにいて欲しい”とか、”君の話を聞きたいのさ”などという風に、僕の君に対する特別な想いを感じ取ることができます。まぁ一番素直に考えると、恋愛感情が当てはまりそうですかね。
しかし、ここで謎なのは、”悪役になる覚悟はある”とか”英雄に蹴られて強くなる”という表現です。素直な恋愛として片づけてしまうには、何かが引っ掛かる表現です。
”悪役”(になってしまう者)という言葉は、この歌の中の”僕”を指しているとして、僕と君が一緒にいると、僕は”英雄”に蹴られたり、”悪役”になってしまうという状況があると…つまり、僕と君が一緒に居ることは許されていない、あまり良いこととされていない、ということになります。
例えば、君には(もしくは僕に、ひょっとしたらどっちにも)恋人や結婚相手など、もうすでに相手が居るという状況でしょうか。そうであるならば、確かに僕と君が一緒にいることが許されないという状況に繋がり、僕が相手の居る君と一緒にいることで”悪役”になってしまうという表現にも繋がりそうです。
そう考えると、”英雄”とは、君の本来の相手だったり、僕のことを許さない周りや世間の人が当てはまりそうですかね。ちなみに、”果実”や”若葉”は、君を象徴している言葉でしょうか。
ただし、”悪役になる覚悟はある”という風に、僕は自分自身が”悪役”になることに、並々ならぬ覚悟や決意を秘めていることが分かります。こういうのは、結構草野さんの歌詞に出てきますよね。当事者的には、別に”悪役”に思われても、相手のことを本気で考えていると、そういうことですよね。
■その他、印象に残った歌詞としては、ここら辺ですね。
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チラシの裏に描いた 夢の世界へ
オリジナルな方法で 心配かけるけど
一緒に行こうぜ 手をつないで
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チラシの裏のアレを ぶち込んでみたいんだ
越えちゃおうぜ 心開いて
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印象的なのは、”チラシの裏”という言葉ですよね、いきなりなんのこっちゃ?って思うんですうけど…。
個人的には、”チラシの裏”は僕の妄想の世界を象徴しているものと考えて聴いていました。実際に”チラシの裏”に描いたのかは分かりませんが、とにかく自分の妄想に、君を誘っているという感じです。
”ぶち込んでみたい”(男性器を思い浮かべる表現か?苦笑)とか”越えちゃおうぜ”(”一線を越える”という意味で使っているか)とか、ちょっと過激で卑猥とも取れるような言葉も並んでいますが、”チラシの裏”なんていう言葉も、そもそも意味深に感じます。
ちなみに、スピッツに【ラクガキ王国】という歌があるのですが(タイトル通り、”ラクガキ”という言葉を僕の精神世界の象徴として使っているか?)、何となく歌詞の感じが似ているなって思いつつ聴いていました。
まぁ、歌詞だけではなくて、曲調の似ているし、さらにはカップリングに入っているという点も一致している両曲です。両曲に何か関係はあるのか、果たして…。