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■アルバム『見っけ』の7曲目に収録されている曲です。

 

最初にアルバムを一通り聴いた時に、すぐに好きになった曲の一つでした。今でもすごい大好きな曲です。

 

曲名通り、疾走感あふれる曲調がすぐに気に入った曲でした。何となく、車のCMが思い浮かびました笑

 

合わせて、スピッツでも、これまでありそうでなかった曲だなとも感じたんですよね。アルバム『見っけ』は、「新しいスピッツ」を見つけることができることも楽しみなのですが、この曲もそのひとつかなと思います。

 


■まず、例のごとく、音楽雑誌「MUSICA」のインタビュー記事を引用しつつ、この曲を紹介してみたいと思います。

 


草野「この曲は、実は『ハチミツ』ぐらいの時にもうアイディアがあって、1回曲出し会議に持ってきたことがあるんですよ。でも当時は何となくスルーされて。あの時は笹路さん(笹路正徳スピッツの初期のプロデューサー)の判断が大きかったから、『この曲イマイチだよね』とか言われたらもう流れてしまうっていう(笑)…」

 

ということで、何とアルバム『ハチミツ』時代からあった、とても古い曲だったんですね。アルバム『ハチミツ』が発売になったのが1995年ですし、あの名曲【ロビンソン】もこのアルバムに収録されています。

 

今から25年前には、もうすでにアイディアがあったことになります。そんな古い曲のアイディアも、大切にずっと持っていて、陽の目を見る時をずっと待ち続けていたことを考えると、草野さんやスピッツメンバーが、自分たちの作った1曲1曲に本当に愛着を持っていたことをうかがい知ることができます。

 

それでも、こんなに昔からあった曲でも、古く聴こえないのがすごいところですよね。もちろん、歌詞や曲の構成などは、今回改めた部分は大いにあるんでしょうけど、古いどころか、印象的なイントロとか、キーボードの音などが加わって、むしろ最先端のスピッツの曲として仕上がっています。

 



田村「こういう曲だからこそ、イントロとかでCzecho No Republicのタカハシさん(タカハシマイ)の声をエフェクティブに使って印象的にして、そこをちゃんと聴かせたかったから曲中でオーバーアレンジにならないようにいろんな面で気をつけた感じかな」

 

Czecho No Republicチェコ・ノー・リパブリック)のタカハシマイさんと言えば、前アルバム『醒めない』に収録されている【子グマ!子グマ!】という曲でも、コーラスとして参加していました。自分が書いた記事を振り返ってみても、あまりの良さに感動して、田村さんが鼻水を出して泣いていたという逸話を載せていますけど笑 

 

とにかく、そのタカハシさんが再び参加ということになります。具体的には、イントロ・アウトロと、随所のコーラスに、タカハシさんの声が聴こえてきます。

 

イントロ・アウトロについては、インタビューで田村さんが”エフェクティブ”と形容している通り、日本語の言葉としてよりエフェクトのような響きの感じが強く、どこか近未来的な駅のアナウンスのように聴こえます。

 

それで、ちょっと調べてみたんですが、どうやらこのイントロ・アウトロについては、この曲のAメロの部分を逆再生した音源が使われているようですね。実際に逆再生をして調べた人が居られて(ツイッターにて見つけることができました)、その音源を聴くことができました。どうやら、タカハシさんがAメロを歌っている音源、草野さんがAメロを歌っている音源、ギターの音などを重ねて逆再生しているようです。

 


■では、歌詞を読みつつ、どういう曲か考えてみます。

 

この歌詞については、素直に読んでいます。そうすると、結構分かりやすい感じだと思うんですが、どうですかね。例えば、

 


無数の営みのライトが輝き もどかしい加速を知る
速く速く 流線型のあいつより速く

 

タイトルの”快速”という言葉の回収ですが、これは”快速列車”や”快速電車”を表わしていると思われます。それと対比されて、”流線型のあいつ”という言葉が出てきていますが、これはおそらく”新幹線”のことですね。新幹線の形状(頭の先の部分)を指して、”流線型”と表現するので、それを表しているのでしょう。

 

”無数の営みのライト”とは、窓から見える街の明かりをイメージしました。人々が営んでいる家々やお店やビルなどに灯る明かりを、主人公は快速列車から見ているのでしょう。

 

その快速がゆっくり動きだし、少しずつスピードを上げていくところで、隣を流線型のあいつ…新幹線が、自分の乗っている快速を、実際に追い抜いて行く、あるいは、追い抜いていくところを想像している。自分の急く気持ちを、ノロノロと加速していく快速に重ねて、速く速くと焦っていると、そういう場面ですね。

 



県境越えたら 君の街が見えて
細長い深呼吸をひとつ

 


身の程知らずの 憧ればっか抱いて
しばらく隠れていた心
吊り革揺れてる ナゾのポジティビティで
迎え入れてもらえるかな

 

この辺りを読むと、主人公がなぜ速く速くと焦っているのか、少しずつ想像が膨らんできます。”県境越えたら 君の街が見えて”から始まって、”憧ればっか抱いて”や”迎え入れてもらえるかな”という表現、しかも、主人公は快速に乗っていると…これらを繋ぎわせると、色々と物語が作れそうですよね。

 

例えば、遠距離恋愛の男女。主人公は男性をイメージしていますが、遠距離恋愛の恋人に会いに行くために、快速電車に揺られているシーンが思う浮かびました。

 

ただ、”細長い深呼吸をひとつ”とか”迎え入れてもらえるかな”などの言葉から、何かもうひとつ展開があるような気がしています。

 

例えば、この主人公は、恋人にプロポーズするつもりで快速に乗っているとかね。だから、深呼吸をして気持ちを整えていたり、(自分のプロポーズを)迎え入れてもらえるかな、と懸念している様子がうかがえます。

 

”身の程知らずの 憧ればっか抱いて”という言葉も、これは、今までは自分の身の程を知らないで、理想ばっかり高い恋愛や相手を望んでいたということを表していると捉えれば、先程のプロポーズを決心したところにもつながりそうです。ようやく、自分の本当の気持ちに気づいて、その気持ちを打ち明ける勇気を手に入れた、と。個人的には、この解釈が一番しっくりきています。

 

ちなみに、この曲の歌詞には、”インパラ”という言葉も出てくるのですが、これについて、先に紹介した音楽雑誌のインタビューにて、おじさんたちは何故か盛り上がっていました笑

 

どうやら、”インパラ”という言葉で、この歌の主人公を”草食系男子”と表しているようですね。ここも何となく、プロポーズをためらっていたけど、ようやくその決心がついた、というところに繋がるようですね。

 

 

■あとは、恋人同士という関係を取っ払ったら、例えば、恋人になりたいと片想いしている相手に告白しに行くストーリーも思い浮かびました。

 

もう少しひねって、恋愛関係というものも取っ払ったら、この曲を作った人物がまさしく草野さんだということを鑑みると、ライヴの全国ツアーで日本中を回っているという物語も想像しました。

 

この場合だと、この歌の主人公は、草野さんやスピッツメンバーとなり、”君”にはライヴに来てくれるリスナーを当てはめてみるとどうでしょうか。この物語に関しては、

 


記録に残らない 独自のストーリーだって
たまに忘れそうになるけど

 

という歌詞があるのですが、ここの部分が何となく、草野さん自身やスピッツに当てはまりそうな言葉だなと思ったのがきっかけでもありました。