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アルバム講義:16th Album『見っけ』

見っけ(初回限定盤)(SHM-CD+DVD付)

16th Album『見っけ』
発売日:2019年10月9日

 


■収録曲(→の先より、各曲の紹介へと飛べます)

 

01. 見っけ
→ 232時限目:見っけ

 

02. 優しいあの子
→ 230時限目:優しいあの子 - スピッツ大学

 

03. ありがとさん
→ 233時限目:ありがとさん - スピッツ大学

 

04. ラジオデイズ
→ 234時限目:ラジオデイズ - スピッツ大学

 

05. 花と虫
→ 235時限目:花と虫 - スピッツ大学

 

06. ブービー
→ 236時限目:ブービー - スピッツ大学

 

07. 快速
→ 237時限目:快速 - スピッツ大学

 

08. YM71D
→ 238時限目:YM71D - スピッツ大学

 

09. はぐれ狼
→ 239時限目:はぐれ狼 - スピッツ大学

 

10. まがった僕のしっぽ
→ 240時限目:まがった僕のしっぽ - スピッツ大学

 

11. 初夏の日
→ 241時限目:初夏の日 - スピッツ大学

 

12. ヤマブキ
→ 242時限目:ヤマブキ - スピッツ大学

 

BONUS TRACK
13. ブランケット
→ 243時限目:ブランケット - スピッツ大学

 


■前作『醒めない』から3年2ヶ月を経て、今作『見っけ』は発売されました。スピッツのオリジナルアルバムの発売周期としては、およそ3年というのが知られているので、割とその通りになりましたね。

 

2017年、スピッツは結成30周年を迎えました。前作『醒めない』は、その幕開けを飾る作品で、そこから30周年イヤーが本格的に始まりました。

 

30周年記念のライヴツアー…通称”3050ライヴ”が開催、シングルコレクションの発売、そして早くも30周年ライヴツアーの映像作品の発売など、それらの全てが、僕らスピッツファンにとっては嬉しいものでした。

 

しかし、何より嬉しいことは、当たり前ですが、まだこれからも”スピッツが続いていく→→→→→”ということだったはずです。僕も、初めてライヴに参加したのですが、そこで草野さんは、「30年やってきましたが、まだ通過点です。これからも面白い歌を作っていきますので、よろしくお願いします」という風に、声高らかに宣言していたことが、何より嬉しく覚えています。

 

30周年が過ぎていき、じゃあ30年経った後の、その先のスピッツは、一体どんな”面白い歌”を発表するのだろう…と、先述の”スピッツ3年周期法則”に則り、2019年に入った頃から、何となくソワソワしていたのを覚えています。

 


■まず動きがあったのは、2019年の2月頃のこと。スピッツの新曲【優しいあの子】が、NHK連続テレビ小説(通称:朝ドラ)「なつぞら」の主題歌に選ばれたことが発表されました。

 

なつぞら」は、朝ドラでも記念すべき通算100作目であるらしく、その朝ドラの主題歌をスピッツが担当するということに、とても自然のことのように、ピッタリだな!と思ったことを覚えています。

 

そして、2019年4月1日。世の中的には、新しい元号”令和”が発表された日としても記念すべき日でしたが、その日に「なつぞら」が始まり、同時に【優しいあの子】も解禁されました。ちなみに、2019年4月1日は、僕個人的にも新しい環境での仕事を始めた日だったので、色々と噛みしめながら仕事をスタートさせたことを覚えています。

 

【優しいあの子】を初めて聴いた時に、タイトル通りに優しい、スピッツらしい曲だと思ったことを覚えています。しかし、程なく発売されたシングル『優しいあの子』では、僕は完全にカップリングの【悪役】派です!

 


■そして、またそこから程なくして、アルバム『見っけ』の情報が少しずつ解禁されていきました。

 

いち早く、アルバム発売前にラジオで解禁された【ラジオデイズ】と、MVまで解禁になった【ありがとさん】、ファンクラブ会員限定ライヴですでに披露されていた【ヤマブキ】(【悪役】未収録は残念!)、古くからあって未発表曲だった【初夏の日】、そして、NTTのテレビCMソングに選ばれた表題曲の【見っけ】など。

 

ヘンテコなアルバムタイトルと、ヘンテコな曲名がそこに並んでいていましたね…いつも通り笑。

 


さて、そのヘンテコなアルバムタイトル『見っけ』についてですが、インタビュー記事によると、最初は「人と違う自分、人と違うあなたを認めたい」という気持ちを込めた「まがった僕のしっぽ」というタイトルが候補に挙がりつつも、

 


草野さん「…でもアルバムタイトルとしてはちょっと長いから、やっぱり『見っけ』かなと。………ユリイカって言葉あるじゃないですか、あれ『見っけ』って意味なんですよ。発見した、私は見つけた!っていうような意味でアルキメデスが叫んだ言葉らしいんだけど…」

 

ということだそうです。”ユリイカ”としても(した方が?)十分かっこいいと思うんですけどね、あくまで日本語にこだわりたいということで、”見っけ”というタイトルが採用されたそうです。


では、そもそも、この”見っけ”という言葉や作品には、どんな意味が込められているのか。作品の情報を雑誌やネットで集めつつ、実際に作品を聴いていく中で、個人的には2つの意味を受け取りました。その辺りを紹介しつつ、アルバム『見っけ』がどんなアルバムだったのかを、書いてみます。

 

 

 

①また新たなロックを”見っけ”た、新しいスピッツの始まり

 

■アルバム『見っけ』を初めて一通り聴いた時のことを思い返すと、最初に抱いた印象は、「新しい!」でした。もちろん、初めて聴く曲がほとんどだったので、新しいと感じることは当然なんですけど、それを差し置いても、曲の展開だったり、歌詞の感じなどが、これまでのスピッツになく新しいと感じたところがたくさんありました。

 

例えば、特に【花と虫】【はぐれ狼】【まがった僕のしっぽ】などで顕著に感じたのは、1曲1曲の物語性が強いというところでした。

 

前作『醒めない』も、確かにコンセプトとして”死と再生”という物語があったんですけど、それよりもより具体的だなと思ったんです。



まずは、【花と虫】。

 

これは、何となく【優しいあの子】との対比になっているような気がしています。


”故郷”に残った…あるいは”故郷”に戻ってきた者と、その故郷を離れ、”都会”で生活をしている者が居て、【優しいあの子】は”故郷”→”都会”という方向で歌われている歌に対して、【花と虫】は”都会”→”故郷”という方向で歌われている歌だという印象です。

 


■そして、個人的には、この辺りがこのアルバムの核になっているんだろうと感じ、”はぐれ狼クロニクル”と勝手に呼んでいる物語があります。

 

具体的には、【はぐれ狼】と【まがった僕のしっぽ】の2曲については、完全にひとつながりで聴いています。つまり、両曲とも”はぐれ狼”が主人公だという印象です。何なら、【ヤマブキ】も繋げて、”はぐれ狼クロニクル”として聴いています。

 

群れからはぐれるように生きていた”はぐれ狼”が、”暗いうちに街から逃げた”ところから始まって、そこから旅を続けてたどり着いたのが、”(ロック)大陸の隅っこにある街”だった。そして、”はぐれ狼”として生きていく決意を胸に、”崖の上”で孤高に咲く”ヤマブキ”に憧れを抱き、さらに高みを目指して"よじ登っていく"という物語です。

 

そう考えると、【ラジオデイズ】は、”はぐれ狼”がロックに目覚めるところと考えることもできそうです。

 

さらに言うと、”はぐれ狼クロニクル”は、そのままスピッツや草野さんの物語として読むこともできそうです…というより、インタビューなどを読むほど、ほとんどそうなんだろうなって思えてきます。

 


■他に、”新しい”と感じたところについては、曲の展開に驚いたところもたくさんありました。

 

【ラジオデイズ】では、間奏で草野さんがラジオでしゃべっているような音源が差し込まれていたり、【快速】では、イントロで近未来的な駅のアナウンスのようなエフェクトがなされていたり、【見っけ】や【ヤマブキ】でもプログラミングやキーボードの音が印象的でした。

 

極めつけは、【まがった僕のしっぽ】のCメロの展開ですよね。当曲は、そこまでも、結構今までのスピッツで聴いたことのないような、昔話を語るような曲調で進んでいくんですが、Cメロで一転、悪魔的でハードロックな曲調に変わるのです。

 

30年以上長く活動してきたバンドなのに、歌詞の雰囲気にも曲の展開にも、”新しい”ことに挑戦していくのは、本当にすごいなって思ったんですけど、何よりすごいのは、それでも”スピッツスピッツ”だと思わせてくれるところだと思います。

 

 

 

②”死と再生”を乗り越えた先の、”見っけ”の物語

 

■前オリジナルアルバムの『醒めない』と、前々オリジナルアルバム『小さな生き物』で綴られていたのが、”死と再生”の物語という風に言われています。少し振り返ってみると…

 

14th Album 『小さな生き物』
「未だ、震災の傷跡が残る人々の心をなぐさめる作品。いつかまた旅に出る準備段階」

 

15th Album『醒めない』
「”死と再生”の物語。前作の”いつか旅に出る準備段階”から続く、今作は”旅に出て少しずつ心を取り戻していく”=”再生”の物語」

 

つまり、アルバム『小さな生き物』は、”死”から”再生”に向かっていくその準備段階、アルバム『醒めない』は、どちらかというと”再生”の内容が強い物語、と個人的には考えています。

 

そうすると、16th Album『見っけ』については、”死と再生”の次の物語と考えることができるかもしれません。”死と再生”というのは、どちらかというと、過去の物を元通りにする、失った時間や自分を取り戻す、などの意味合いが強いような気がしますよね。ではその次は…?

 

というと、また新しい出会い、新しい自分の発見などに繋がっていくのではないでしょうか。そして、それを”見っけ”の物語として紡いだのではないでしょうか。

 


■こっちの”見っけ”に関しては、表題曲であり1曲目を飾っている、【見っけ】という曲そのものから、特に感じ取ったことでした。

 

【見っけ】の歌詞には、いきなり”再会”という言葉が出てきます。

 


再会へ!消えそうな 道を辿りたい
すぐに準備しよう
人間になんないで 繰り返す物語
ついに場外へ

 

思い返してみると、アルバム『小さな生き物』~アルバム『醒めない』については、『醒めない』の最後の曲【こんにちは】で、ようやく再会にたどり着いたような感じでした。それを考えると、1曲目で”再会”という言葉が出てくるアルバム『見っけ』は、それだけで特別な感じがしました。

 

ただ、上述の歌詞の後半2行について考えてみると、ひょっとしたら、”死後”に再会ということも考えられなくもないです。例えば、僕自身が【見っけ】の記事で書いたのを引用すると…

 


死して肉体は滅びてもなお、その魂は、誰か大切な人との”再会”を願い続けていた。その想いだけをずっと留めたまま、色んな生き物に生まれ変わりながら、ずっとずっとその大切な人を探していた。そして、そういう物語が報われてゴールへと…ついに大切な人との再会を果たす。だから、もう生まれ変わる必要がなくなった、と。

 

こういう風に考えると、言い方は悪いかもしれませんが、全ての死が、全ての魂が報われる結末…つまり、”死と再生”の物語の終わりにたどり着いたのではないかな、って感じたんです。

 

そして、そこから新しい出会いの物語…”見っけ”の物語が始まった、と。

 

改めて、アルバム『見っけ』の曲には、出会いだったり、新しくどこかにたどり着くような曲が多い気がします。

 

【ラジオデイズ】では、ラジオをきっかけにたくさんの音楽に(草野さんが)出会ったことを、【花と虫】では、故郷を離れて新しい場所で生きていく姿が描かれていたり、【快速】でも、自分がいるところから何処かへ向かっている姿が描かれていたりします。

 

先程紹介した、”はぐれ狼クロニクル”に関してもそうですね。草野さんがロックに出会い、スピッツのメンバーに出会い、唯一無二のスピッツロックを確立していく流れを描いているように読めます。

 


■と、色々なことを書いてきましたが、このアルバム『見っけ』で以って、スピッツはまた新しい時代に突入したんじゃないかな、と思うんです。

 

個人的な分け方として、アルバム『とげまる』からは、スピッツは”第四期”であると考えていたんですが、このアルバム『見っけ』で、”第五期”に突入したのかとさえ思うのです。

 

youtu.be

 

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個人的にツボな、スピッツと音尾さんのコラボ…いつ見ても笑ってしまう笑