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集中講義:草野正宗 ~詩の世界への招待~ 第3回

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それは恋のはじまり そして闇の終り
花屋のぞいたりして
それは恋のはじまり おかしな生きもの
明日は晴れるだろう

 

 

■アルバム『スーベニア』に収録されている、【恋のはじまり】という曲のサビの歌詞です。

 

まず、タイトルが潔くて良いんですよね。このタイトル通り、"恋のはじまり"について歌っている歌だと読むことができます。

 

草野さんは、もちろん"恋愛"について詩を書くことがあります。ただしそれは、一筋縄ではいかないものだったり、叶わなかったり、不純なものだったり、性愛に繋がるものだったりと、色んな意味で多岐にわたっています。

 

ただ、そういう場合の相手への気持ちを表す描写として、独特だけど何か分かるなぁっていう例えだったり、格言じみた表現を使ったりして、草野節で面白いなぁと思うんです。この企画の中でも、それを少しでも紹介できたら、と思っています。

 

今回は…そもそも、曲名から珍しく具体的で出オチ的なのですが…"恋のはじまり"においての心情の変化を例えた、面白い表現を紹介します。

 


■まず、後半部分の歌詞。

 


それは恋のはじまり おかしな生きもの
明日は晴れるだろう

 

ここの"おかしな生きもの"という表現、言い得て妙だなって思うんです。

 

基本的に恋愛って、人をおかしくさせるものだと思うんですよね。いつもは絶対にしないだろうっていう言動をしたりだとか、想っている人を目で追ったり、頭で考えたりして何も手につかなかったりと、普段とは違う自分になるものだと。時には、本当に変な行動に走ったりして(違法行為はダメ!絶対!)、それを草野さんは短く、"おかしな生きもの"(になる)と表現しています。

 


で、そういう"おかしな生きもの"になってしまった人のおかしな行動として、前半部分で一つ歌われています。

 


それは恋のはじまり そして闇の終り
花屋のぞいたりして

 

ここの"花屋のぞいたりして"という表現。個人的に、ここの表現がほんとに好きなんですよ。本当に、秀逸なだって思いながらいつも聴いています。

 

いつもは、花屋をのぞくことはおろか、絶対に花すら愛でないだろうって。高校生や大学生の若い人だったら可愛らしいけど、社会人になってたり、ちょっと歳がいったおじさんとかね、普段絶対に花屋なんて行かないだろうって人が花屋に行って、物思いに耽っている様子を想像したら、なんか可笑しくなってしまいます…でも、何だかほっこりするんですよね。

 

好きになった人が花が好きなのか、花をプレゼントするためなのか、それとも、何となく心が穏やかになってふらっと花屋に立ち寄ったのか…具体的に書いていないからこそ、物語を自由に想像ができる、その余白を用意してくれているのは、本当に草野さんの歌詞の特徴だなって思うんですよね。

 


■こんな風に、直接的にではなく、間接的な表現を用いて、恋に落ちたことを描写することは、草野さんが書く歌詞ではたくさんあります。

 

そもそも、草野さんは直接的な表現をあまり好まないところもあるので、本当の思いや伝えたいことが言い換えられている部分が多くあるので、そういう部分を意識して読んでいくと、歌詞を読むのがさらに楽しくなると思います。