スピッツ大学

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集中講義:草野正宗 ~詩の世界への招待~ 第7回

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「きっとまだ終わらないよ」と 魚になれない魚とか
幾つもの作り話で 心の一部をうるおして
この海は 僕らの海さ
隠された 世界とつなぐ

 

 

■言わずもがな、スピッツには名曲が多いんですけど…こういう表現はあまり好きじゃないのであまり使わないけど、"隠れた名曲"というと、例えば今回紹介する【魚】という曲はどうでしょうか。

 

スピッツファンにはもちろん、全然隠れてないですが、特にファンというわけではない方々には、あんまり知名度は高くないかもしれません。ただ、僕はこの歌が本当に好きなんです。

 

この歌詞も、はっきりとした意味が捉えづらいのですが、色々と物語を想像できそうな歌詞だという印象です。何て言うか、短編の映画を見ているような、そんなイメージです。

 

タイトルは、【魚】という何とも潔い感じはしますが、抽象的でもあるんですよね。意味を伝えられることなく、突き放されてる感じが堪りません笑

 


■皆さん、【魚】という歌詞を読んで、どんな印象を受けますか?本当にきれいな歌詞ですよね。

 

歌詞を読んだ感じ、まぁ当然と言えば当然なんですが、"魚"という言葉を、本来の意味の"魚"として用いていないのは分かるのですが、とすると、"魚"という言葉を何かの例えたものとして使っているのでは?と考えました。

 


「きっとまだ終わらないよ」と 魚になれない魚とか
幾つもの作り話で 心の一部をうるおして
この海は 僕らの海さ
隠された 世界とつなぐ

 

特徴的なのは、"魚"という言葉を使いながらも、"魚になれない魚"という表現をされています。それって結局、魚なの?魚じゃないの?何者なの?って感じですよね。

 

そもそも、"魚になる"ってどういうことなんでしょうか。その生物として生まれてきたからには、最初っから"魚"は"魚"でしょうよ、って思いますよね。

 


■という風に考えて、じゃあ、この歌詞では"魚"という言葉はどんな意味合いで使われているのか、僕なりの解釈です。

 

個人的に思い浮かべたのは、街中にあるちょっと高い建物(ビルとか商業施設とか)の上から、街を見下ろしているシーンです。そうすると、交差点や道をたくさんの人たちが歩いているのを、上から見下ろすことになるはずです。

 

高い建物から見下ろすほど、その人たちは小さく見えるはずですよね。その小さな人たちが縦横無尽に、あるいは、横断歩道では規則正しく動いている様は、まさに"魚"が泳いでいる様子とダブって見える…かもしれません。

 

そんな風に、僕はこの歌の"魚"という言葉からは、"都会で生きる人々の姿"をイメージしたんです。紹介している部分には、"海"という言葉も出ていますが、これはまさしく都会を指していると考えています。

 

紹介していませんが、別の部分には、"コンクリートに染みこむ 冷たい陽"という言葉も出てきますが、ここも都会的なイメージを受けますよね。

 


■そうなると、"魚になれない魚"というのも、この解釈に立って考えるならば、何となく都会になじめない、どこか生きづらさを感じつつも、都会という"海"をうまく泳ごうと生きている、そんな人々の姿を想像しました。

 

歌詞の冒頭には、"恋人"という言葉も出てきますが、そんな風に大切な人と、お互いに慰め合いながらも、力強く生きている(生きていこうとしている)人の姿も浮かび上がっています。

 

こんな風に、都会という広い"海"を、様々な事情を抱えつつも、うまく泳ごうとがんばっている人の姿、これを"魚"と表現していると考察しました。

 

この歌詞も、色々と想像が膨らむなぁと思うので、色んな人が想像した物語を聞いてみたいものです。