スピッツ大学

ステイホームしながら通える大学です!

集中講義:草野正宗 ~詩の世界への招待~ 第12回

f:id:itukamitaniji:20211123223652j:plain

 

 

ささやいて ときめいて
街を渡る 羽のような
思い通りの生き物に変わる

 

 

■26作目のシングル曲【ハネモノ】の歌詞です。ちなみに、26枚目のシングル『ハネモノ』と、27枚目のシングル『水色の街』は、同じ日にリリースされました。

 

【ハネモノ】という曲自体は、2002年に発表されましたが、2001年にアメリ同時多発テロがあって、草野さんは一時期”音楽をやる意味”に疑問を抱いていたようですが、この【ハネモノ】を制作するにあたって、人々の不安を和らげることができたら…と、気持ちを新たにしたという経緯があったようです。

 

全体的に歌詞の内容も、紹介している部分もそうですけど、後述しますが、人が生まれる瞬間だったり、あるいは逆に、魂が成仏していくような、そういう人の生死に関するような歌詞だという印象です。

 

タイトルになっている”ハネモノ”という言葉は、草野さんの造語であり、”羽のような生き物”という意味だそうです。具体的に、これが一体何を指す言葉なのか、という言葉は、やはり想像するしかありません。

 


■僕は、【ハネモノ】の歌詞を読むといつも思い出す映画があって、それは「フォレスト・ガンプ/一期一会」という映画なんです。

 

(ちょっと映画のネタバレすみません…ストーリーには触れていませんが)


タイトル通り、フォレスト・ガンプという1人の人物の人生を、自らが語っていくという形で物語が進んでいくんですけど、フォレストは映画の冒頭からバス停のベンチに座っていて、その足元に一枚の羽が舞い降りてくるんです。ガンプはそれを拾い上げて、自分のカバン(だったかな?)に入れるんです。

 

そして、ストーリーが進んでいって、自分の息子をバス停から送り出すというシーンで映画は幕を下ろすんですけど、その時にまたカバンの中から、再び羽が風に吹かれて、空に舞い上がっていくんです。

 

ストーリーもめちゃくちゃ面白いので印象に残っているんですけど、この羽の存在も同じくらい印象に残っているんです。

 

まだ見たことがない方は、興味がありましたら、是非見てみてください。色々、考えさせられる作品です。

 


■個人的には、フォレスト・ガンプに出てくる羽と、スピッツの”ハネモノ”が表している”羽のような生き物”が、何か繋がっているように思うんです。

 


ささやいて ときめいて
街を渡る 羽のような
思い通りの生き物に変わる

 

”ささやいて ときめいて”…ここの言葉の意味はよく分かりませんが、続く”街を渡る 羽のような”という歌詞について。

 

何ていうか、ここの”羽”は、人の命であったり魂であったり、そういう概念的なものを象徴しているのかなと思っています。天国かあの世か、そういう場所があったとして、そこで一つ一つの魂に指令が下るわけです…「お前は、あの生物に宿れ」「お前は、あの母親のお腹の中の赤ちゃんに宿れ」みたいな感じで。

 

指令が下った魂は、空からフワフワと舞い降りてきて、宿るべき宿主の下へ向かっていく、というシーンを思い浮かべています。

 

あるいは全く逆で、今まさに一生を終えた”肉体”から、魂が浮かび上がって、あの世的な場所へと帰っていくというシーンも思い浮かべます。

 


■それから、映画「フォレスト・ガンプ」でも、フォレストが自分の半生を語り始めるところで羽が舞い降りてきて、その物語が息子へと引き継がれたときに、羽は再び舞い上がっていった、ということを思えば、”バトン”のような役割っていうことも思い浮かべました。

 

輪廻転生と言われるように、ひとつの命が繰り返されたり、または、一つの命や人生がまた別の命や人生に影響を与えるものだとしたら、命というものは、廻っているもの、巡っているものだと考えることができます。そういうことを、”羽”は象徴しているのかもしれません。

 

うまく表現できないけど、そういう草野さんの壮大な死生観を感じる歌詞ですね。