スピッツ大学

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集中講義:草野正宗 ~詩の世界への招待~ 第17回

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君は小さくて 悲しいほど無防備で
無知でのんきで 優しいけど嘘つきで
もうすぐだね 3月の君のバースデイには
ハンティングナイフのごついやつをあげる 待ってて

 

 

スピッツのミニアルバム『オーロラになれなかった人のために』に収録されています、【ナイフ】という曲の歌詞です。

 

スピッツの初期三部作と呼ばれる作品として、1st『スピッツ』、2nd『名前をつけてやる』、3rd『惑星のかけら』があるのですが、ちょうど2ndと3rdの間に、ミニアルバム『オーロラになれなかった人のために』があります。このミニアルバムは、スピッツの作品の中でも、実験作という風に言われ、ロックとオーケストラのサウンドの融合を試みた楽曲がたくさん入っています。

 

ここで何度も話しています、「セックスと死」というテーマが、最も色濃く現れているのが、初期三部作、そして、このミニアルバムであると思っています。長い目で見ると、これら初期の作品群と、これ以降の作品の間には、大きな境界線があるイメージです。

 


■さて、そのミニアルバム収録の【ナイフ】という曲なんですが、第2回で取り上げました、【テレビ】と同様に、誰もが知る日常の言葉をポツンとタイトルにしつつ、でも本来の意味ではその言葉を使っていないんだろうなって感じの曲です。

 


紹介している部分の歌詞を見てみます。

 


君は小さくて 悲しいほど無防備で
無知でのんきで 優しいけど嘘つきで

 

まず、前半部分。ここは”君”がどういう人物なのか、説明している部分ですね。何となく、幼い感じの女の子をイメージします。

 


で、続く歌詞に、(ハンティング)”ナイフ”という言葉が出てきます。

 


もうすぐだね 3月の君のバースデイには
ハンティングナイフのごついやつをあげる 待ってて

 

まぁ、素直に”ナイフ”をそのままの意味で読んでも、誕生日に、一体何をプレゼントしようとしてんだ!?って感じですけどね。

 

おそらく、男性が女性に”ナイフ”をプレゼントしようとしていると思われますが、それって一体どんな状況?ミリタリー趣味の彼女か?って感じなのですが、それは先述の彼女の性格に合っていないような気がします。

 


■第1回でも触れましたが、草野さんは、歌詞の中でとがったものを”性”の象徴として用いているのではないか、という考察があります。

 

ということで、全体的に歌詞を読んでいった結果、個人的な解釈としては、”ナイフ”は男性器を暗喩した言葉なのではないか、と思っています。

 

”ナイフ”=男性器をプレゼントする、とはつまり…包み隠さず言うと、セックスしようね!って、そういうことになりますよね。しかも、その時が来るのをイメージしながら、ナイフをサワサワして毎日過ごしてると…んもう、変態っ!めっ!

 

ただ一点、僕が懸念しているのは、そ…それ…お互いの合意の下でだよね?ってところですかね。

 


■あとは、どっちをメインで紹介しようか悩みましたが、

 


果てしないサバンナを行く しなやかで強い足で
夕暮れのサバンナを行く ふり向かず目を光らせて
血まみれの夢許されて 心が乾かないうちに
サルからヒトへ枝分かれして ここにいる僕らは

 

ここの歌詞も、何だかガチの詩人が書いた現代詩みたいに、すげぇなって思います。

 

何となく、”血まみれ”とか”サルからヒトへ”などの言葉から、初体験の描写なのかなと僕は読んでいます。特に、ナイフをプレゼントする、などと言っている男性の方が優位に立っているっぽいので、女性の方の初体験でしょうか。

 


■ということで、【ナイフ】という曲でした。すごい歌です、もうその一言に尽きます。

 

ミニアルバム『オーロラになれなかった人のために』自体、子どもの頃はそんなに好きではなかったんですけど、大人になり、スピッツの歩んできた道のりを知っていけばいくほど、この作品もとても大切な作品だったんだなと思えるようになりました。