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集中講義:草野正宗 ~詩の世界への招待~ 第25回

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変わっていく空の色と 消えていく大好きなにおい
だけどこんな日にはせめて 僕のまわりで生き返って
プカプカプー プカプカプー プカプカプー ラララララ
プカプカプー プカプカプー プカプカプー

 

 

■インディーズ時代のとても古い楽曲である、【晴れの日はプカプカプー】の歌詞です。

 

インディーズ時代に発表した、『ハッピー・デイ』というカセットテープに収録されているようですが、そのカセットテープはレア物過ぎて、現在はほとんど入手が不可能である代物です。

 

しかし、2016年に発売されました、スピッツ日本武道館公演を収録した、映像作品『THE GREAT JAMBOREE 2014 ”FESTIVARENA” 日本武道館』において、【晴れの日はプカプカプー】のライヴ映像や、(限定CDには)ライヴ音源が収録されており、この曲を聴けるようになりました。

 


■そんなインディーズ時代の楽曲【晴れの日はプカプカプー】ですが、さすがインディーズ時代、歌詞の世界観が非常に奇天烈なんです。

 

メジャーデビューした後の初期の楽曲、例えば【テレビ】や【ビー玉】など、デビュー初期の歌詞の雰囲気に近いというか、そのもっと根源にあるような世界観ですね。

 

そもそも、タイトルから当たり前に出てきていますが、”プカプカプー”ってなんだよって思うわけです。幼い子どもが読む絵本なんかにも出てくる言葉や、赤ちゃんをあやすためのオノマトペみたいにも読めます。

 

最後の”プー”は分かりませんが、”プカプカ”という言葉から連想されるのは、何かが浮かんでいるような状態ですよね。水の上だったり、空の上だったり、”プカプカ浮かんでいる”みたいな感じで使ったりします。

 

あとは、たばこを吹かすときに、”たばこをプカプカ吸う”みたいな感じに使ったりしますよね。実際に、どこで読んだか忘れましたが、この【晴れの日はプカプカプー】の”プカプカプー”は、たばこを吹かしている状況、みたいなのを読んだことがあります。確か、草野さんがそう語ったのをどこかで見たことがあります。

 


■個人的には、全体を読んだ感じから想像したのは、”プカプカ”からは、何かが空に浮かんでいる様子が連想されました。で、何が浮かんでいるかなんですけど、僕は”魂”を当てはめています。

 


変わっていく空の色と 消えていく大好きなにおい
だけどこんな日にはせめて 僕のまわりで生き返って
プカプカプー プカプカプー プカプカプー ラララララ
プカプカプー プカプカプー プカプカプー

 

紹介している部分だと、”僕のまわりで生き返って”という表現がありますが、こんな風に全体を通して、この曲の歌詞からは、人の”死”が見え隠れして読めて仕方がないんです。

 

そこで、”魂”が浮かぶ、とはどういうことが想像できそうかと言うと、具体的には、①魂が成仏してあの世へと帰っていく場面、②魂があの世からこの世に帰ってくる場面、この二つを考えました。

 

①だと、これは集中講義の第2回で紹介しました、【テレビ】の歌詞に近い考え方ですね。こちらの解釈でいくと、この歌の始まりが、”自転車走らせてる”という歌詞なので、【テレビ】と同様、この歌の主人公にも、子どもの姿を当てはめています。

 

身近な人が亡くなって、その人の魂が成仏して空に浮かんでいくところを想像しているのですが、こっちの解釈だと、火葬場から上がる煙が空へと舞いあがっていく光景も想像しました。

 

ちょっと不穏なのが、”見えない翼で舞い上がる”のところが、後追い自殺という解釈へ繋がりそうなところですかね。

 


■個人的には、②の解釈を当てはめて聴いています。

 

例えば日本には、故人を偲ぶ風習のひとつとして、お盆がありますよね。古くから、お盆には故人の魂が、あの世からこの世へ帰ってくると言われており、色んな方法で故人を迎えます。

 

タイトルにもなっている”晴れの日”だから、夏の暑い、雲一つない青空をイメージしていますが、そこから故人の魂が降りてきて、一緒に過ごすことを願っていると、そういうことですよね。

 

ただ、紹介している歌詞には、”変わっていく空の色と 消えていく大好きなにおい”というのが出てきていますが、ここは時間の経過とともに、故人との思い出が薄れていってしまっている、ということを意味しているのかなと思いました。

 

それでも、”僕のまわりで生き返って”や、他の部分だと、”今日は眠りの奥深く 逃げ込んだりしなくていい”という歌詞にある通り、今日1日だけは、故人の在りし日に想いを馳せながら過ごすという光景が浮かんできます。