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集中講義:草野正宗 ~詩の世界への招待~ 第27回

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果てしなく どこまでも続く くねくねと続く細い道の
途中で立ち止まり君は 幾度もうなづき 空を見た
飛べ ローランダー
飛べ ローランダー
棕櫚の惑星へ 棕櫚の惑星へ たどり着くまで

 

 

■アルバム『惑星のかけら』に収録されています、【ローランダー、空へ】という曲です。

 

アルバム『惑星のかけら』の最後の曲は、【リコシェ号】という、珍しくインストゥルメンタルの曲なので、何となくアルバムを締め括る歌、と言われると、どちらかと言うと、【ローランダー、空へ】を思い浮かべます。

 

壮大なバラードで、草野さんのボーカルにもエフェクトが加わっているのか、天から降ってくる声のようにも聞こえてきます。

 

この歌で歌っていることは何なのか。個人的には、”死”について歌っているのだと思っています。具体的には、”成仏”であったり、”死後の世界”みたいなものが描かれていると思っています。

 


■人は死んだら、どうなるのか。

 

これは、僕らにとって、永遠の問いであり、今のところは、その答えなどは存在しません。死後の世界があるのか、新しく別の生き物に生まれ変わるのか、同じ自分として別の場所でセカンドライフがはじまるのか、それとも、ただの”無”が続くのか…。

 

考え出すとキリがないし、眠る前に考えすぎて、眠れなくなってしまう、なんて経験をしたことがある人も居るのではないでしょうか。

 

僕は子どもの頃、”眠る”ということ自体が怖くなったことがありました。眠って意識がない状態…あれって、結局は”無”の状態だなって思ったんです。つまり、死んだ状態って、ああいうのがずっと続くのかなぁ、とか思っていたら、何だか眠るのが怖くなったことがありました。

 


■そういう意味では、この歌には、死ぬとどうなる?という問いの、草野さんなりの答えが、ひとつ示されているような気がしています。

 

何度も言ってきたように、草野さんが書く歌詞のテーマとして、「セックスと死」というのがありますが、この【ローランダー、空へ】は、個人的には”死”をテーマとした歌だと思っています。というより、”死”をテーマに書かれていると思われる歌詞の中で、一二を争うくらい、この歌詞は印象に残っています。

 


紹介している部分を、改めて載せてみると、

 


果てしなく どこまでも続く くねくねと続く細い道の
途中で立ち止まり君は 幾度もうなづき 空を見た
飛べ ローランダー
飛べ ローランダー
棕櫚の惑星へ 棕櫚の惑星へ たどり着くまで

 

亡くなった人が降り立ったのは、果てしなく広がる広野みたいなところ。火星みたいに、見渡す限り何にもなくて、そこには前へ伸びる道がずっと続いている。

 

その道を歩きながら、自分が生きていた時の思い出などを回想しつつも、少しずつ自分が死んだことを受け入れていくと、身体が宙に浮かび上がっていく。

 

そして、徐々に大地から身体は離れていき、無限の宇宙へと旅立っていく、”棕櫚の惑星”なる場所を目指して…

 

とまぁ、こんな感じの物語でしょうか。

 


■”ローランダー”とは、英語で”Lowlander”とでも書くのでしょうか。直訳すると”低地に住む人”となり、これはまさしく、地に足つけて生きている我々を指しているのかなと思っています。

 

その”ローランダー”は亡くなってしまって、魂となって空へと浮かび上がっていく、そういう光景をこの歌で描いているのだと思います。

 

謎なのは、”棕櫚の惑星”という場所…棕櫚は”シュロ”と読みますが、調べてみると、ヤシの木みたいな植物が出てきましたが、分かったところで、”棕櫚の惑星”の意味は分かりません。

 

ただ、アルバムのタイトルが『惑星のかけら』であり、”惑星”という言葉が共通しており、さらに”ホシ”と読ませるところも被っているので、意味合いとしても、同じものを指すんじゃないかと思っています。

 

僕は、このアルバムや歌における”惑星”という言葉は…一言では表せないけど、生命の誕生や死、人々の妄想や夢、この世の中の真理などがごちゃごちゃになったような場所…と言うより概念的なものを想像しています。人間の考えなどは、到底及ばないような、そういう超越的なもの、としか説明がつきません。

 

”ローランダー”は、そういうところを目指して旅をしている…それがまさに、この歌で意味するところの”死”なのだと、そういうイメージですかね。

 


■それから、【ローランダ―、空へ】に出てくる歌詞では、

 


このまま静かに羊の目をして終わりを待つコメディ
疑うことなど知らずに 何かに追われて時はゆく

 

という歌詞も、めっちゃ印象に残っているのですが、あんまりうまく説明ができそうになかったので(人生はコメディみたいなもので、何にも知らないでただ笑っているだけで終わっていく、みたいなことを歌っているのでしょうか)、この歌のイメージがよく湧くような歌詞として、冒頭の部分を選びました。