スピッツ大学

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集中講義:草野正宗 ~詩の世界への招待~ 第29回

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君の大好きな物なら 僕も多分明日には好き
そんなこと言う自分に 笑えてくる
取り戻したリズムで 新しいキャラたちと踊ろう
続いてく 色を変えながら

 

 

■現時点では、スピッツの最新曲である【大好物】の歌詞です。やっぱり、一番新しいスピッツの歌詞も紹介したいということで、【大好物】を選びました。

 

これが、今年メジャーデビュー30周年、結成から数えると実に34周年を迎えたスピッツの最新作です。それにしても、なんと言うみずみずしさ、まだこんなにも爽やかな歌詞を書くんだってね、驚きです。

 

しかも、そういう爽やかさがありつつ、それと同時に、こんなにかっこよさを表現できるとは、こういうところが、まさにスピッツだなって思うんです。

 


■この集中講義でも、草野さんが書いた、いわゆるラブソングを新旧問わずいくつか紹介してきましたが、草野さんの書くラブソングは、時代と共にどういう変化をしてきたのか…そんなことを考えながら聴いていました。

 

皆さんはどう思いますか?草野さんが作るラブソングは、時代と共に、どのように変わっていったと思っていますか?

 


■個人的に思ったのは、基本的にはずっと変わっていないのかなぁ、ということでした。

 

大前提としてあるのは、恋に落ちることや、想い人のことを考えることなどは、基本的には”おかしなこと”なんだと歌ってきたんだと思います。

 

今までの自分が、想いを寄せる相手によって変わっていく…今まで好きじゃなかったものを好きになったり、今まで絶対にしなかったような行動をとってみたり…

 

時には、好きになるべきではない相手を好きになってしまったり(もとい、好きになってはいけない相手など居ない、という考え方かもしれませんが)、ストーカー(?)みたいなことをしてみたり、果てには、相手と心中したり、後を追って命を経つような描写があったり…

 

かなり個人的な解釈も含めますが、そういう恋によってもたらされる変化を、全部ひっくるめて”おかしなこと”だと歌っているのかな、と思いました。

 

だから、直接的に相手のことを”好き”だとか”愛してる”とか言わずに、その”おかしなこと”を歌詞にすることで、恋に落ちていることや、相手のことを想っているということを、間接的に歌っている節があると思っています。

 


■今回の【大好物】においては、

 


君の大好きな物なら 僕も多分明日には好き
そんなこと言う自分に 笑えてくる
取り戻したリズムで 新しいキャラたちと踊ろう
続いてく 色を変えながら

 

これなんかも、まさに恋によってもたらされる変化を描いていますよね。素直に、”君が大好き”と言えばいいものを、”君の大好きな物なら 僕も多分明日には好き”ですからね笑。

 

君にとって大好きな物があって、ひょっとしたら、僕にとっては嫌いだった物なのかもしれないけど、一緒に時間を過ごすことで、気持ちが通じ合ってきたのか、自然とその物が、僕も好きになってきた、と。

 

例えば、音楽や食べ物の好みだったり、趣味だったり、本や映画だったり、何でもアリだと思います。

 

ただし、ここに”多分明日”という言葉が引っ付いているのも、絶対じゃないんかい!?今日じゃないんかい!?と思ってしまいますが、これも草野節なんですかね。

 

あとは、”取り戻したリズム”という表現がありますが、これは逆に考えると、これまではリズムを乱していたと捉えることもでき、やはりここも、君との生活によって、僕が変わっていくことを歌っているのだと思います。

 

”新しいキャラたちと踊ろう”、この”新しいキャラ”とは、紛れもなく”君”に恋をしたことで、また”君”と過ごすようになって、変わった”僕”のことを指しているのだと思います。

 


■とまぁこんな感じで、恋愛をしていない状態を通常の状態として、恋愛をしている状況を、その通常の状態から変わった状態だとして…つまり、”おかしな状態”だとして、草野さんはそれを描くことで、人が恋に落ちることがどういうことなのかということを示してきました。

 

【大好物】は、それでも割とストレートですよね。自分の好みが、想いを寄せているその人と似通ってくると。自然とそうなるのか、それとも、気を引きたいがためにそうなるのかはともかくとして、そういうことって誰しもあるんじゃないでしょうか。