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スピッツ大学

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79時限目:スワン

【スワン】

 

■アルバム『小さな生き物』に収録されている曲です。新しい曲なので、まだ個人的ランキングには反映されていないけれど、結構好きな曲です。

 

草野さんの弾き語りから始まり、音が集まってバンドサウンドになる瞬間には、いつもワクワクします。最初は、あんまり自分の中では目立っては無かったですが、何度か聴いているうちに、この曲も非常に大切なことを歌っているんだなって感じることができるようになりました。

 


■このアルバムをレビューしようとしたとき、残念と言うべきか、それもまた宿命となってしまったというべきか、東日本大地震のことが思い浮かびます。

 

未曽有の災害が起こって、それによって草野さんが体調不良で休まれて、一旦立ち止まった(のではないかもしれないが…)スピッツが、復活を遂げる意味でシングル『さらさら / 僕はきっと旅に出る』を発表して、そしてそこから満を持してのアルバム発売だったので、本当に、待ちに待った感が強かったです。改めて、音楽の力を感じることができましたし、新曲を聴けることを素直に喜んだことを、よく覚えています。

 

アルバムのタイトル『小さな生き物』通り、このアルバムに収録されている曲のタイトルや歌詞の中には、たくさんの”生き物”、もしくは、生き物を思わせるフレーズが出てきます。その中から、今日は【スワン】という曲の紹介です。

 


■上述に記したようなことから、アルバム『小さな生き物』を作る際に、スピッツのメンバー、特に草野さんが、震災の影響を受けなかったということはまずないでしょう。影響を受けることの方が、むしろ自然と言っても過言ではないでしょう、それだけ大きな出来事でしたから。

 

そこで、この【スワン】という曲です。スワンは、英語で”swan”と書き、その意味は”白鳥”…というのがよく知られていますが、実はこの”swan”には、別に意味があるんです。僕は、今回調べてみて初めて知りました。”swan”には、歌手、詩人、という意味もあるそうなのです。これを知った上で、草野さんがタイトルをつけたのかは分かりませんが、もしかしたら意図しているのかもしれないな、と感じるようなフレーズは出てきます。

 


■この歌の始まりはこうです。

 


星空を 見るたびに思い出す
さよならも 言えないままだった

 

さよならも言えない別れ、というものがイメージされるフレーズだと思います。星空を見上げて思い出すのは、遠くにいる人のことか、もしくは、故人か、どちらかになると考えることができそうですが、やっぱり、後者をイメージせざるを得ません。だとすると、さよならも言えない別れ…それは、予期せぬ別れだったのでしょう。

 



森が深すぎて 時々不安になる
指で穴あけたら そこにはまだ世界があるかな?

 


助けが欲しいような 怖い夢のあとで
呼吸整えて 記憶をたどった君の笑顔まで

 

この辺りの詩も、色々と考えさせられる部分ではあります。特に、後者の部分に関しては、もう何とも言えない気持ちになりますね。”怖い夢”…何かがトラウマになってしまっていて、苦しんでいるのでしょうか。夜中に暗い部屋で一人、はっと目を覚ます、そして、自分自身に必死に、大丈夫、大丈夫だから、と言い聞かせているのでしょう。そんな時に、思い出すのはいつも、”君の笑顔”だったのです。

 


■そんな、苦しんでいるような描写が多い中、改めて詩を読んでみた時、目についたのはこのフレーズでした。

 


少し苦く 少し甘く もらった言葉消さないもう二度と

 

どこかのラジオで草野さんが、震災に際して(震災後)、音楽をやること自体へ疑問を感じたとしゃべていました。音楽をやることに葛藤をたくさん感じて、もしかしたら、何にもできない無力感を感じたこともあったのかもしれません。

 

それと同時に、音楽がやれてることが幸せなんだ、ということを感じることができているとも喋っていました。

 

この【スワン】という曲は、先述したような、苦しんでいる描写も多いですが、曲の雰囲気としては、言い方は安っぽいかもしれませんが、曲からは”光”を感じることができるんです。苦しいところから、一歩踏み出そうとしている、そういう印象です。ドアを開けて、光を全身いっぱいに浴びている感じです。

 

”もらった言葉消さないもう二度と”、これは、まさしく草野さんの音楽に対する、作詞に対する思いが込められているのだと感じます。今まで出会った全ての人、場所、出来事からもらったものを言葉にして繋いで、歌い続けていくよ、と。いつも思ってはいるけど、今だからこそ、大きな声で歌わないといけない大切なことを、この歌では歌っているのだと感じます。