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アルバム講義:17th Album『ひみつスタジオ』

ひみつスタジオ (初回限定盤)(SHM-CD+DVD)

17th Album『ひみつスタジオ』
発売日:2023年5月17日

 

 


■収録曲(→の先より、各曲の紹介へと飛べます)

01. i-O(修理のうた)
→ 252時限目:i-O(修理のうた) - スピッツ大学

 

02. 跳べ
→ 253時限目:跳べ - スピッツ大学

 

03. 大好物
→ 248時限目:大好物 - スピッツ大学

 

04. 美しい鰭
→ 249時限目:美しい鰭 - スピッツ大学

 

05. さびしくなかった
→ 254時限目:さびしくなかった - スピッツ大学

 

06. オバケのロックバンド
→ 255時限目:オバケのロックバンド - スピッツ大学

 

07. 手鞠
→ 256時限目:手鞠 - スピッツ大学

 

08. 未来未来
→ 257時限目:未来未来 - スピッツ大学

 

09. 紫の夜を越えて
→ 245時限目:紫の夜を越えて - スピッツ大学

 

10. Sandie
→ 258時限目:Sandie - スピッツ大学

 

11. ときめきpart1
→ 259時限目:ときめきpart1 - スピッツ大学

 

12. 讃歌
→ 260時限目:讃歌 - スピッツ大学

 

13. めぐりめぐって
→ 261時限目:めぐりめぐって - スピッツ大学

 

 


■16枚目のオリジナルアルバム『見っけ』の発売から、およそ3年半の時を経て、17枚目のオリジナルアルバム『ひみつスタジオ』が発売になりました。スピッツのオリジナルアルバムは、3年周期で発売になるという”3年周期説”に則れば、割とその通りになった感じです。

 

この2枚のアルバムを隔てている3年半という歳月の中で、世の中は大きく変容していきました。俗にいう”コロナ禍”ってやつですね。

 

もうずいぶん記憶が遠ざかっている気がしますが、改めて調べてみると、2020年1月に日本で初めてコロナウィルス患者が確認されたのですね。そこから、あんな未曽有のパンデミックになるとは予想だにしませんでした。我々が暮らす当たり前の日常が、当たり前ではなかったことを、長く考えさせられる日々が続きました。

 

ちなみに、僕自身のプライベートも、特に仕事の面で(多分良い意味で)大きく変わっていった時期だったので、コロナ禍を思い出すことが、同時に、あの頃の自分自身の変化も思い出すきっかけになっています。

 

アルバム『見っけ』の発売が2019年10月9日のことだったので、今考えるとその発売後すぐにコロナ禍に入ったって感じだったのですね。そして、それが理由となり、2019年~2020年に行われる予定だった『SPITZ JAMBOREE TOUR 2019-2020 “MIKKE”』が途中から延期になったりして、スピッツも大変な思いをしたのだろうと察します。

 

そんな、今までにないような特別な状況をくぐり抜けて、アルバム『ひみつスタジオ』は生まれました。

 


■アルバム『ひみつスタジオ』が発売になるまでの流れを、しみじみと思い出しながらこの記事を書いているわけですが、その流れの始まりがどこにあったのか考えてみると、43thシングル曲の【猫ちぐら】まで記憶がさかのぼりました。

 

2020年6月14日、草野さん自身がパーソナリティーを務めるラジオ番組『SPITZ 草野マサムネのロック大陸漫遊記』の中で、いきなり新曲【猫ちぐら】が発表されました。

 


草野さん「(前略)スピッツ、リモートでどこまでレコーディングできるかっていうのをやってみまして、一度もメンバー同士顔を合わせることなく、時間差で音を重ねて、データのやり取りなんかで、結構できちゃうもんだなという感じで、何かできちゃったんで、今日はそれを聴いていただこうと思います。」

 

という感じで急に草野さんが語り始め、新曲【猫ちぐら】がさらっと発表されたのでした。

 

この歌が歌っていることもそうですけど、リモートでメンバーが顔を合わさずに作ったという制作背景そのものが、まさにあの激動のコロナ禍を象徴しているような曲だなと、改めて思い出します。

 

しかし、こんだけ書いておいてなんですが、【猫ちぐら】はアルバム『ひみつスタジオ』に入っていません…残念っ!

 

itukamitaniji.hatenablog.com

 


■そして、その【猫ちぐら】の発表以降も、スピッツは精力的にシングル曲を発表していきました。そして、そのシングル曲たちはみな、映画やテレビ番組の主題歌になっていきました。ちょっとまとめてみると、

 

【紫の夜を越えて】…『news23』エンディングテーマ
【大好物】…映画『劇場版「きのう何食べた?」』主題歌
【美しい鰭】…映画『劇場版「名探偵コナン 黒鉄の魚影」』主題歌
あとはシングル曲ではないですが、
【ときめきpart1】…映画『水は海に向かって流れる』主題歌

 

という感じです。これらの曲は、全てアルバム『ひみつスタジオ』に収録されていますが、映画の主題歌が同じアルバムに3曲も入っているのは驚きです。

 


これらの曲の中だと、【紫の夜を越えて】が最近のスピッツでは、ダントツで印象に残っています。

 

【紫の夜を越えて】が、ニュース番組のテーマ曲になったのも記念すべきことなのですが、何よりも、スピッツがメジャーデビュー30周年を迎えた2021年3月25日に発表されたという特別な背景があります。

 

その【紫の夜を越えて】については、シングルバージョンはもちろん大好きなんですけど、2022年に発売になった映像作品『SPITZ JAMBOREE TOUR 2021 "NEW MIKKE"』のLIVE CDで聴くことができる、【紫の夜を越えて(NEW MIKKE ver.)】の方をめちゃくちゃ聴きました。

 

個人的な話になっちゃいますが、今の自分が音楽を聴く場面といったら、もう車の運転中くらいしかなくなっちゃいました。ちなみに、『ひみつスタジオ』を初めて聴いたのも、CDショップ(をはしごしてようやく見っけて笑)でフラゲした帰り道に車を運転しながらでした。

 

仕事帰りとなると、8時とか9時とかになっていて、もうすっかり夜なんですけど、そんな中を車を運転して1日を振り返りながら帰る際に、【紫の夜を越えて(NEW MIKKE ver.)】をかけると、もうこれが染みるのなんの。

 

車という閉鎖空間だからなおさら、スピッツと1対1で対話しているような、労をねぎらってくれている(ねぎらい合う)ような、疲れた日にはえらく感傷的になったりして…何とも言えず、心が浄化されるような心地になりながら帰っていました。

 


■さて、じゃあ結局アルバム『ひみつスタジオ』がどういう作品だったんでしょうか。個人的な想いを書いてみます。

 

まず、ちょっとさかのぼって、前作『見っけ』や前々作『醒めない』のことを思い出してみると、アルバムという一つの作品に、一つのコンセプトが込められている、という印象が強く残っています。

 

具体的には、東日本大震災の影響を受けて、”死と再生”というテーマで物語を紡いだのが、(アルバム『小さな生き物』と)アルバム『醒めない』、そしてそこから、また新しい音楽、新しい人、新しい自分との出会いを紡いだのが、アルバム『見っけ』であったと思っています。

 

その一方で、アルバム『ひみつスタジオ』は、割と自由な作品だなという印象です。時勢的には、アルバム『ひみつスタジオ』は、コロナ禍の内容に寄る感じになるのかなと勝手に思っていましたが、もちろんその影響を感じる曲はあるのですが、別に1枚のアルバムで一つのコンセプトとして…みたいな偏った感じにはあんまり思いませんでした。

 

そういう意味では、このアルバム『ひみつスタジオ』は、掴みどころがコロコロと変わる作品だとも思っています。

 

アルバム『ひみつスタジオ』には、いわゆる表題曲というものがありません…つまり、【ひみつスタジオ】という曲が存在していないんです。で、表題曲がないアルバムについてはいつも思うんですけど、(まぁ表題曲があっても)収録曲のどの曲を中心に添えて聴くかで、そのアルバムの感じ方って変わってくるような気がするので、色んな聴き方ができると思っています。

 


聴き方①

 

書籍「スピッツ2」を読んでいると、草野さんはこんな風に語っています。

 


草野さん「俺としては、昔から出したいなと思ってたものを、思いっきり出せるようになってきた!と。だから、ちょっと気持ち悪いって思われてもいいから、かわいいものとかを入れていこうってのはここ10年ぐらい思ってますね。『還暦近いおっさんがこんなかわいいことやってんのかよ』みたいに思われたら、それはそれで本望かなと(笑)」

 

草野さん「今回、さっきの話じゃないけど、『優しい』とか『かわいい』が良いんですよね。だから、ああ、そういうモードなんだなっていう。かわいいものを愛でて、優しい人になりたい(笑)」

 

という風に、”かわいい”というのが、一つアルバムのテーマにもなっているのかなという印象です。

 

先述したシングル曲だと、【大好物】【美しい鰭】【ときめきpart1】、あとは【手鞠】や【Sandie】なんかもそうですけど、それらの曲に寄って聴いてみれば、ロックでかっこいいというよりは、ポップで明るくかわいらしい感じの曲が多いことに気が付きます。

 

もう40年近くも活動しているベテランバンド(草野さんによるところが強いのかも?)が、こんなにかわいらしくてみずみずしい曲を作るとはびっくりですよね。

 

僕の職場にも、あきらかにおじさんなのに、机上にちいかわの置物を飾っていたり、かわいいスタンプをたくさん持っていたり、猫のシールをいっぱい持っていたり、パソコンの壁紙が新海誠の「君の名は。」だったり…かわいいおじさんたちがたくさんいます笑 かわいいという文化も、割と年齢や垣根を越えつつあるんですかね。

 


聴き方②

 

冒頭でも書いた通り、前作『見っけ』からアルバム『ひみつスタジオ』までの3年半の間は、コロナ禍によって、ミュージシャンが満足に活動できない状況が続きました。

 

そもそも、ミュージシャンの活動っていうのは、”楽曲制作”と”ライヴ活動”の大きく2つから成り立っていていますよね。そのうち、ライヴ活動の方は、コロナ禍によって、色々と制限がかかってしまいました。そういう意味では、”楽曲制作”の重要性が割合として高かったのだろうと考えることができます。

 

で、先述の通り、アルバム『ひみつスタジオ』には表題曲はないのですが、収録曲【めぐりめぐって】の歌詞が、”ひみつスタジオ”という言葉に込められた想いを代弁してくれています

 


秘密のスタジオで じっくり作ったお楽しみ
予想通りにいかないけど それでもっとワクワク

 

まさに、そういう楽曲制作に対する想いっていうのを、この”ひみつスタジオ”という言葉が表しているのだろうと考えられます。

 

書籍「スピッツ2」なんかを読んでいても、本当にスピッツメンバーの仲睦まじい関係を感じますし、スタジオでレコーディングする楽しさや大切さをメンバーが大いに語っています。

 

なんて言うか、”秘密基地”っていう言葉があるじゃないですか。子どもの頃、特に男の子なんかは誰もが一度は憧れたのではないでしょうか。

 

大人になっても、ある人にとっては書斎のような場所だったり、ある人にとってはお酒を飲む隠れ家的な店だったり、ある人にとっては車やバイクをいじるガレージのような場所だったり…そういう場所に憧れますが、言葉通り”ひみつスタジオ”っていうのは、スピッツにとっての”秘密基地”なのでしょう。

 

【跳べ】【オバケのロックバンド】【めぐりめぐって】などのパンクロックナンバーを聴くと、そんな”ひみつスタジオ”で、純粋に音楽を楽しんでいる少年のようなメンバーが思い浮かぶようです。

 

中でも特筆すべきは、【オバケのロックバンド】ですね。何と、ボーカルの草野さんに加えて、ドラムの崎山さん、ベースの田村さん、ギターの三輪さんという、メンバー4人がボーカルを執っているという、初めての試みがされています。

 

最初は、遊び心満載の曲としてしか聴けなかったですが、MVを見て印象が変わりました…ああ、長く活動をしてきたスピッツのメンバーたちは、こうやってスタジオで楽しみながら音楽を作ってきたのだろうって、その様子が垣間見えたようで感動したのです。

 


聴き方③

 

自分にとって、このアルバムの核として聴いている曲としては、【i-O(修理のうた)】【紫の夜を越えて】【讃歌】の3曲です。

 

うまく言葉にはできないですが、1曲目【i-O(修理のうた)】と12曲目【讃歌】については、このアルバムに一つの軸を通しているという感じがしています。

 

【i-O(修理のうた)】の”i-O”というのは、アルバム『ひみつスタジオ』のジャケットに写っているロボットの名前にもなっています、

 

紛れもなく、i-Oくんはロボットの姿をしていますが、実際は、コロナ禍によって病んでしまった人の心や、この社会そのものを表しており、また”修理”という言葉も、人の心や社会を元通りにするという意味として捉えることもできます。つまり、i-Oくんを修理すること=世の中を元通りにしていくという意味が込められているのだろうと、考察することができるかもしれません。

 

そしてそれは、スピッツにとっての願いにもなっているのだと考えられます。古くは、911テロ事件の際にも、音楽をやる意味について疑問を感じたようですが、それでも「人々の不安を少しでも和らげることができる楽曲を作ろう」と、楽曲【ハネモノ】を制作されたようです。

 

そんな風に、(これもどこかで草野さんが語っていた言葉ですが)スピッツの楽曲によって、聴いている人たちが少しでも、気持ちを楽に持ってもらえるようにという想いが、アルバム『ひみつスタジオ』には込められているのだろうと感じます。

 


■という風に、聴き方①~聴き方③をグルグルを回りながら、アルバム『ひみつスタジオ』を聴いています。なかなか一つには絞りにくいんですが、やっぱり聴き方③が、自分にとっては一番重要ですかね。

 

先述の通り、僕は車の運転中にこのアルバムを聴いているのですが、皆さんもそうだと思いますが、通勤中には色んな気分の時があります。よし頑張るかと気合いを入れる時、今日は勝負の日だ!と息巻く時、疲れ果てクタクタな時、良い1日だったと振り返る帰り道、逆にダメダメだった日の不甲斐なさ…そういう色んな日々と共に、アルバム『ひみつスタジオ』がありました。

 

だから、色んな気分で『ひみつスタジオ』を聴いてきたわけですが、どんな気分の時にでも『ひみつスタジオ』は合うようにできていて、どの方向を向いて聴くかで色んな聴き方ができる、そういうアルバムだというのが、最終的な結論です。

 

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