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255時限目:オバケのロックバンド

ひみつスタジオ

 

オバケのロックバンド

オバケのロックバンド

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【オバケのロックバンド】

 

■アルバム『ひみつスタジオ』の6曲目に収録されている曲です。

 

もう何度も話をしていますが、僕はこのアルバムを仕事帰りにフラゲし、そのまま車の中で流しながら帰った、というのが最初の出会いなのですが、その時に、とりあえずこの【オバケのロックバンド】までを聴くことができました…そこまでで家に着いちゃって、後は家で聴いたっていう意味です。

 

そして、この曲に関しては、もうそれはそれはびっくりしましたね!車を運転しながら、ひっくり返りそうになりました。詳しくは、後述します。

 


■曲の雰囲気としては、かなりロックな曲ではあるのですが、すでに紹介しました【跳べ】とは、また少し雰囲気が違うロックチューンだという印象です。

 

【跳べ】は、疾走感あふれる中にも、ハンドクラップが入っていたり、サビではベルの音が聞こえてきたりと、色々とロックな曲にプラスの要素が加えられていて、少し一筋縄にはいかない感じでした。

 

一方の【オバケのロックバンド】は、こちらもパンクロックっぽいところはあるのですが、どちらかというと、ギターの音がよく聴こえるギターロックって感じですかね。

 

うまく表現できないですが、曲名の”ロックバンド”という言葉通り、ロックバンドサウンドというんですかね、ロックバンドとしての演奏と歌唱を、ひねらずにそのまま素直に前面に出しているという感じです。

 

ちなみに、この【オバケのロックバンド】という曲は、スピッツのインディーズ時代の曲で【こどもおばけ】という曲があるのですが、その曲のメロディーの一部分を自らオマージュしています。これはあれですね、【1987→】でインディーズ時代の曲の【泥だらけ】を引用したのと同じですね。

 


■という感じに、上述の説明のみだと、ロック調の曲かと、そういう説明で終わるのですが、この曲ではこれまでのスピッツではありえなかった、これはもうスピッツ史に残る事件と言っても過言ではないことが起こっているのです。

 

ずばり、この【オバケのロックバンド】では、ボーカルの草野正宗さんだけではなく、草野さんを含むスピッツメンバー4人…草野さん、﨑山さん、田村さん、そして三輪さんの4人全員が、何とボーカルを務めているのです!コーラスじゃないですよ、全員にソロパートが用意されていて、しっかりとボーカルを務めちゃってます。

 

これにはね、本当にびっくりしましたよ、先程の運転中の最初の出会いの時は、リアルで「えーーーーっ!!!」って叫んでました笑

 

スピッツの魅力と言えば、やはり草野さんのボーカルにあって、それは別にスピッツの熱心なファンでなくても、いわゆるシングル御三家(【ロビンソン】、【空も飛べるはず】、【チェリー】)などの有名な曲しか知らなくても、分かっていただけるのではないかと思います…「スピッツのボーカルって、とてもきれいな声をしてるねー」と、誰もが聴けばそう思うはずです。

 

それだけ、草野さんのボーカルは唯一無二であり、”スピッツ=草野さんのボーカル”がずっと当たり前だったからこそ、良い意味での裏切り、遊び心ですよね。

 

こういう感覚っていうのは、長くスピッツを聴いてきた人ほど、感じるはずです。スピッツは、今年で結成36周年を迎える、本当に長く活動をしているバンドであり、僕も25年以上もスピッツを聴いてきたのですが、まだこんな引き出しがあるのか!まだこんな面白いことをしてくれるのか!と、感動したものです。

 


■しかし、最初は正直なところ、コミックソング的に、ただの遊び心満載の曲という感じでしか、この【オバケのロックバンド】は聴いていませんでした。アルバムの曲の中の箸休め的な、BUMP OF CHICKENでいうところの”隠し曲”的な感じでしか聴いてなかったんです。

 

ただですねー、やっぱり聴いていくうちに不思議と、それが感動に変わっていったんです。特に、この【オバケのロックバンド】のMVを見た時に、曲に対する印象ががガラッと変わったことを覚えています。

 

(ちなみに、【オバケのロックバンド】のMVは、アルバム『ひみつスタジオ』の初回限定盤かデラックス・エディションに付属している、MV集のDVD/BDでしか見ることができないので、ご覧になりたい方は、何とか手に入れてください!)

 

【オバケのロックバンド】のMVは、言葉で説明しますと、花いっぱいのスタジオの中に、メンバー4人が円形になって、真ん中を向き合って演奏しているという、まぁよくあると言えばよくあるシンプルなMVではあるんですけど、これがまたシンプルがゆえに、4人の演奏シーンを余すことなく楽しむことができて良いんです。

 

そして、先述したように、この曲は4人ともがボーカルを取り、それぞれがソロで歌うパートがあるのですが、このMVではそのパートをそれぞれがソロで歌うシーンが描かれます。具体的には、﨑ちゃんがドラムを叩きながら、リーダーがベースを弾きながら、テッちゃんがギターを弾きながら、それぞれがソロで歌うシーンが挟まれます。

 

もうこれがメンバーが本当に楽しそうでね、草野さんなんかは、まるで「おーおー、みんな歌ってる歌ってるwww」って感じで、どこか満足気に半笑いで眺めてるのが、これまた面白いんです。

 

それを最初は、僕も微笑ましく見てたんですけど、何か段々感動に変わってきちゃって…ああそうか、この人たちはずっとこうやって、大学生の頃から変わらず、4人でロックンロールを奏でてきたんだね…と、しみじみ感じてしまうんです。特に、長くスピッツを聴いてきた人ほど、ここはそういうことを思うのではないでしょうか。

 


■という感じで、もう延々と語っていますが、とにかくこの曲は4人でボーカルをチェンジしながら歌っていく、という構成になっています。

 

具体的には、1番のAメロを、草野さん→﨑山さんと繋いで歌い、2番のAメロを、田村さん→三輪さんと繋いで歌っています。そして、サビは4人でユニゾンで歌っています。

 

で、それぞれのパートで歌われていることなんですけど、自己紹介?ではあるのかもしれませんが…おそらく、4人が”オバケ”になってしまったという設定の下での自己紹介…みたいな、聴いていない人にとっては、ちょっと何言ってるのか分かんない状態だと思いますけど、ほんとにそんな感じです。

 

歌詞を全部紹介するとキリがないので割愛しますが、それぞれのメンバーのイメージにあった言葉が、歌詞の中に散りばめられています。

 

草野さん…”誰もが忘れてた”とか”物置き小屋の奥”など、割と卑屈な言葉が並んでいるのも、これまた草野さんらしさでしょうか笑

 

﨑山さん…”木霊”や”雷神”、”ゴミ箱叩くビート”などから、太鼓などの何かをドカドカ叩くイメージが浮かんできます。

 

田村さん…”爆音で踊ってたら”という言葉は、もうライヴ中に動き回るリーダーの姿が浮かんできます。

 

三輪さん…”暗闇に紛れて”でサングラスをイメージしました。あとは、”壊れたギター”という、あからさまに”ギター”という楽器名が出てきます。

 

などなど。そして、各パートの終わりは必ず”オバケ”という言葉で締めくくられている徹底ぶりも面白いです。それぞれのメンバーを”オバケ”に見立てて、そのイメージで草野さんが詩を書いたのでしょうか。

 


■じゃあ、そもそもこの歌の”オバケ”という言葉に込められた想いというのは何なのでしょうか。そもそも、”オバケのロックバンド”ですからね、どういう意味が込められているのでしょうか。

 

というところで、この歌を全体的に聴いて、また、MVを見て、”オバケ”という言葉に感じた想いというのが、個人的には2つあったので、紹介しておきます。

 


①活動をずっと長く続けてきた / 続けていくことに対する決意表明

 

サビの歌詞にこんな歌詞が出てきます

 


子どものリアリティ 大人のファンタジー
オバケのままで奏で続ける
毒も癒しも 真心込めて
君に聴かせるためだけに

 

”オバケ”という言葉の意味は、”お化け”と漢字でも書くように、死んだ人や時には動物?などが、その言葉通り”化けて”出てきたもの、という感じになると思うのですが、その意味通りに捉えるならば、不謹慎ですが…スピッツメンバーが死んで、”オバケ”になって出てきたと…。

 

そこで、”オバケのままで奏で続ける”とありますが、この辺りを安易に繋げて考えるならば、死してもなお、ロックンロール魂を忘れることなく、スピッツとして4人は活動し続けていると、そういう決意表明のように聴こえてきます。

 

まぁその、”死んでも”とか”死しても”とか、そんな不謹慎なことを言わなくても、”オバケ”という言葉には、スピッツというバンドがこれからも長く続いていくことを示していると思います。

 

”化け猫”ってあるじゃないですか。wikipediaでちょっと調べてみたんですけど、12年とか13年とか長く生きた猫が化け猫になるとか、我が広島県では、7年以上飼われたネコは飼い主を殺す(!?)などの伝承もあるそうです。長く生きた猫は、尾の数が増えるとかいう都市伝説も聴いたことがあります。

 

”化ける”というのは、何も”死んで”とかに限らず、長く生きていくと、その姿形が”異形”と化す、みたいな感じで捉えるとするならば、それって、まさにスピッツそのものじゃん!?って思ったりします。長く活動をしている、そして、これからもそれは続いていく、という自分たちの存在に、”オバケ”という言葉を当てはめたのかも知れません。

 


②ロック界の”化けロックバンド”としての存在表明

 

Bメロの歌詞は、こんな感じです。

 


少しでも微笑みこぼれたら
そのしずくで俺生きていける
忙しけりゃ忘れてもいいから
気が向いたならまたここで会おう

 

ここの後半部分の表現が、すごい好きなんです。”忙しけりゃ忘れてもいいから”なんて、何て自虐的なことか笑 

 

でも、”気が向いたらならまたここで会おう”なんてのも合わせて、押しつけがましくないというか、ついてこいよ!とか、ずっと応援してね!ではなくて、”忘れてもいいから”、”気が向いたら”とかね、あくまでその人のペースを尊重している感じが、スピッツらしさなんでしょうか。

 

そんな風に、”オバケ”という言葉には、これは自虐的な部分もあると思いますが、”居るか居ないのかよく分からないもの”みたいなイメージもあって、それをスピッツに当てはめている、という解釈もできました。

 

そもそもスピッツ自体が、そんなにグイグイ前に出てくることなく、むしろ自分たちのペースを守りつつ、(だからこそ)長く活動を続けることがでてきているバンドです。

 

控えめで、それでいて愚直で、真ん中というよりは、どちらかというと、控えめに隅っこの方…そんな存在自体が、まさに”化けロックバンド”的な、まさにロック界の”オバケ”的な存在であるスピッツを、この”オバケ”という言葉は、不思議と言い得て妙だなぁと思うわけです。

 


■そして、再びサビの歌詞のこの部分…

 


毒も癒しも 真心込めて
君に聴かせるためだけに

 

ここにも、”オバケ”という言葉が見え隠れしていて、”君に聴かせるためだけに”ということで、何て言うか、E.T.みたいな”ひみつの友達”みたいな、見つけてくれてありがとう、お礼に君だけに歌ってあげるよ!的にも感じるのですが、そうでなくても、”毒も癒しも”とか”君に聴かせるためだけに”という言葉が、何ともファン泣かせですよね。

 

ちなみに、アルバム『ひみつスタジオ』の楽曲の歌詞を基にした歌画本「ひみつストレンジャー」の帯には、”毒も癒しも 真心込めて”と書いてあったり、この【オバケのロックバンド】の歌詞を基にした歌画も、上述のような”ひみつの友達”的な物語になっているので、良かったら読んでみて下さい!