【Sandie】
■アルバム『ひみつスタジオ』の10曲目に収録されている曲です。
アルバム『ひみつスタジオ』が発売になったのが、2023年5月17日なのですが、その発売前の2022年11月に行われたファンクラブ限定ライヴ「Spitzbergen 30th Anniversary Tour "GO!GO!スカンジナビア vol.8"」にて、この【Sandie】は新曲として披露されたようです。
■曲名の【Sandie】についてですが、読み方は”サンディ”と読みます。この曲の由来について、ネットのJ-WAVEのインタビューで草野さんが話しています。
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草野さん:このメロディーのアイデアとかは本当に昔から、20年くらい前からあった曲で、引っ張り出してきて。サンディ・ショーっていうイギリスの60年代に人気だったシンガーの『Tomorrow』って曲のリズムパターンに近いなって思って、「Sandie」って仮タイトルを付けて。
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そのものずばり、サンディ・ショー(Sandie Shaw)という方の名前がそのまま曲名になっているようですね。そして、【Tomorrow】という曲も、YouTubeの公式チャンネルで聴くことができます。
何と言うか、僕は初めて聴くと思うのですが、何だか懐かしく思えるのはとても不思議な感覚です。個人的には、The Monkeesの【Daydream Believer】なんかがすぐに思い出させれました。
■曲の感じとしては、とても明るくポップな感じの曲です。イントロからピアノやラッパ(トランペット)の音が聞こえてきて、リズムとも相まって、どこか行進曲のように弾む感じが楽しい曲です。
ただ、このラッパの音などについては、最初にライブで行ったときにはそういうホーンの音は入っていなかったことを、先述のインタビュー記事で離されています。
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草野さん:そのときのライブではホーンとか入ってなかったから、ホーンアレンジバージョンはこのアルバムで初めて聴いていただけてると思います。ちょっと60年代のイギリスのポップスみたいなイメージかな。
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ライヴで披露した後に、またアレンジなどを加えて収録したのでしょうか。このアルバムの中には、ロックな曲も割と収録されているとは思うんですけど、またそれらとは違う感じのポップな曲ですよね。
■そして、歌詞の考察なんですけど…その前に、ここまでも何曲か紹介しているんですけど、何ていうかこのアルバムのそれぞれの曲の主人公って、”君”に救われ過ぎ感がありますよね笑
そもそも1曲目の【i-O(修理のうた)】から、”僕”の心が”故障”した状態を、”君”が”修理”したような描写に読めましたし、【手鞠】も【未来未来】も”君”が出てきて、その”君”との出会いにより、歌の主人公が何らか変化するような描写が読み取れます。この辺も、アルバムのテーマみたいなものになっているのでしょうか。
まぁ、その”君”に抱いた感情や、”君”との関係性というのは曲によって色々とあると思うんですけど…恋愛感情や、自分とは違う考え方や生き方に触れて自分が変わっていったりなど…今回の【Sandie】についてはどうでしょか。
というところで、【Sandie】の出だしの歌詞を見てみると、
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初めて君に 出会った時から
僕の心は桃のようなカタチのまんまだよ
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こんな感じで始まります。”僕”が”君”に出会ったことで、”心は桃のようなカタチ”になったということですが、”桃のようなカタチ”という言葉で思い浮かぶのは、その”桃のカタチ”を上下逆にすることで、ハートのマークが思い浮かびます。
というわけで、”心”がハートのカタチになった=”僕”は”君”に恋に落ちた、という表現に読むことができそうです。
ちなみに、そのものずばり、スピッツには【桃】という曲があるのですが(結構な人気曲です!)、この曲に関しても割と恋愛系の曲なのかなという感じですね。”桃”という言葉に、草野さんはそういうイメージを持っておられるのでしょうか。
で、そこから続く歌詞についてですが、
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しがみついてた 枝を離れて
抜け道はすぐそばにあるって教えてくれたっけ
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という感じです。先程紹介した冒頭の歌詞は、先述の通り”僕”が”君”に恋に落ちた描写に読めましたが、続くここの部分は、何て言うか恋愛にのみならず、”君”との出会いが”僕”を変えてくれた、という描写に読めます。
他の部分を読んでいっても、例えばサビの部分
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違う世界があったから救われた
欲望とか悔しささえ 手に入れたし
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違う世界を知ったから今日までも
明日からの自由な荒野も 楽しめそうさ
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やけに”違う世界”という言葉が度々出てきて目立つのですが、それも”君”との出会いによって、自分が今まで知らなかった世界や、(恋愛)感情やそれによってもたらされる欲望や願いが叶わない悔しさなどを思い知った、と読み取ることができます。
■という風に読んでいくと、先程も「このアルバムのそれぞれの曲の主人公って、”君”に救われ過ぎ感」と冗談っぽく書かせていただきましたが、例えば、【手鞠】という曲、
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可愛いね手鞠 新しい世界
弾むように踊る 君を見てる
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かなり思ってたんと違うけど
面白き今にありついた
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だったり、1曲目【i-O(修理のうた)】
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愛をくれた君と 同じ荒野を歩いていくよ
ロンリーが終わる時 黄色い光に包まれながら
偽りのむこうまで
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など、まぁ【さびしくなかった】や【未来未来】もそうですけど、”君”との出会いによって、今まで知らなかった世界や感情に触れて、”僕”が変わっていくという描写で、曲がつながっているように読めてきます。
■特に、【i-O(修理のうた)】において、”同じ荒野を歩いていくよ”という風に”荒野”という言葉が出てきていますが、今回の【Sandie】にも、”明日からの自由な荒野も 楽しめそうさ”と、共通して”荒野”という言葉が出てきています。
またアルバム全体の紹介として書くことになると思うのですが、アルバム全体を通して、1曲目の【i-O(修理のうた)】がずっと見え隠れしてる感じ…この辺が、結局アルバム全体の考察に繋がっていくのかなと感じています。