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252時限目:i-O(修理のうた)

ひみつスタジオ

 

i-O(修理のうた)

i-O(修理のうた)

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【i-O(修理のうた)】

 

■アルバム『ひみつスタジオ』の1曲目に収録されている曲です。

 

僕は、仕事帰りにCDショップに寄ってフライングゲットし、そのまま待ち切れずに、車の中で開封してCDをカーステレオにぶち込んで聴きながら帰ったのですが…おいおい、いきなり1曲目からこの曲かよ!と。やばすぎでしょう!!!と。

 

車の中で、感動のあまり震えながら運転して帰った、というのが、正真正銘このアルバムとの、そして1曲目なので必然的に、【i-O(修理のうた)】との出会いでした。

 


■最初に、このアルバム『ひみつスタジオ』の収録曲が発表された時に…まぁいつもそうなのですが…もう収録曲のタイトルの羅列を見ただけでも、ワクワクしますよね。

 

その時から、このタイトルの曲はロックな曲だなとか、この曲はバラードだなとか、この曲はちょっとおかしな曲かな、とか想像するところからまず入ります。

 

で、最初にこのタイトル”i-O(修理のうた)”を見た時に、「あれ?これインストの曲じゃね?」と何故か思ったんです。または、インストじゃないにしても、割と機械的というか電子的と言うか、何かそういう曲調を思い浮かべたんです。まぁ、完全に”修理”という言葉に引っ張られてのことでしたが…

 

ただ、そういう想像とは少し違った曲でしたね。しっとり聴かせる、重厚でドラマチックなバラード…でも、バラードではあるんだけど、しっかりロックな曲で…やっぱりこういう感じの曲って、スピッツ唯一無二だなって感じます。

 


■曲のイントロで聴こえてくる音は、クレジットによると、”hammond b3”と表記がありますが、ハモンドオルガンという楽器のようです。

 

いわゆる、電子オルガンの一種なんですかね、小学生の頃に聴いた懐かしい音に聴こえるような、でも電子的でちょっと近未来的な感じにも聴こえるような、不思議な音です。

 

そのオルガンの優しい演奏の後に、ひっそりと草野さんのボーカルとギターが入ってくると、一気に広がってくるスピッツの世界観…その安心感と、これからアルバムが始まるんだっていうワクワク感がたまりません。

 

そして、そこからBメロ、サビへと、少しずつ音が足されていって、落ち着いている雰囲気ではあるんだけど、ダイナミックな演奏が印象的です。全体的に、別に暗い曲調ってわけではないのですが、まぁ歌詞の雰囲気と相まってなのかもしれませんが、どこかしんみりして寂しく感じます。

 


■ということで、この曲がどういうことを歌っているのかという、個人的な解釈なのですが…

 

そもそも、この曲名”i-O(修理のうた)”を見たときから、タイトルの印象が強い曲でした。”i-O”とは何なのか。そして、こういう書き方も初めてのことだと思うのですが、わざわざカッコつきで(修理のうた)とありますが、”修理”とはなんなのか。

 

まず、”i-O”というアルファベット表記を見ると、何かの機械の”型番”っていうんですかね、そういう印象を受けます。例えば、僕のスマホは”Galaxy A51 5G SC-54A”というメーカー?モデル名?なんですけど、名前って感じじゃないですよね、無機質で脈絡も意味も感じない、ただの文字の羅列という感じです。

 

そこで、真っ先にイメージとしてつながったのは、アルバムジャケットに女性(井上希美さんという方らしい)と共に映っているロボットでした。このロボットの名前が”i-O”なのでは…と、思っていたところで、ネットで見つけた、J-WAVEスピッツのインタビューで、草野さんがこのように話されていました。

 

news.j-wave.co.jp

 


草野:『i-O』は「アイ・オー」と呼んでいます。ジャケットのロボットの名前がi-Oっていう。

 

ということで、イメージとして、ロボットと”i-O”がつながりました。

 

そして、”修理”というと、やっぱり壊れた機械を直す作業として使われる言葉ですよね。だから、(一旦は)この曲のイメージとしては例えば、”i-O”はジャケットのロボットであり、共に映っている女性は”i-O”を作った?管理する?エンジニア的な人であり、”修理”とはこの”i-O”を修理すること、とつながっていきました。

 


何度故障しても直せるからと

 


マニュアル通りにこなしてきたのに

 


簡単な工具でゆがみを正して
少しまだ完璧じゃないけれど

 

ちょっと意図的に歌詞を選んでいますが…確かに、”故障”、”マニュアル”、”工具”など、まぁ言葉のままですが、故障した機械を…つまりは、ロボットのi-Oくんを直しているという表現に読めます。

 

女性にとって、i-Oくんはとても特別な存在であり、そしてまた、i-Oくんにとっても女性はとても特別な存在…お互いがお互いを大切に想い合っているということは、ジャケットの両者の笑顔が物語っています。i-Oくんの笑顔が本当にかわいい!(てか、そこが口だったんだ…そこ動くんだって思ったりしましたが笑)

 

だから、そんな風に女性とi-Oくんの日常や物語を歌っている歌として、この曲を聴くことができますし、それだけでも想像が膨むところではあります。

 


■ただですね、やっぱりそういう一筋縄にいかない部分は感じます。歌詞をもっとちゃんと載せてみると、

 


何度故障しても直せるからと 微笑みわけてくれた
どんな答えなら良いのか解らず 戸惑うのもまた楽しくて
今も僕は温かい

 


マニュアル通りにこなしてきたのに 動けなくなった心

 


愛をくれた君と 同じ空を泳いでいくよ
ロンリーが終わる時 黄色い光に包まれながら
偽りの向こうまで

 

とにかくタイトルは無機質で、歌詞にも”故障”だの”マニュアル”だのって言葉が出てきている割には、実際は全体的な歌詞としては、人間くさいんですよね。

 

例えば、”マニュアル通りにこなしてきたのに 動けなくなった心”の”心”とか、まぁ”心”っていうのは、人間に宿っている物なので、この歌で”故障”してしまったのは、機械やロボットではなくて、人間なのではないか、と。

 

例えば、仕事とか学校の勉強とか、もとい、この時勢では「生きていくことそのもの」かもしれませんが、”マニュアル通り”頑張ってきて、頑張りすぎちゃったのかもしれないですけど、ちょっと精神的に参ってしまったと…そういう状態を”故障”と呼ぶとするならば、”何度故障しても直せるからと 微笑みわけてくれた”という、最初は機械的にしか読むことができなかった冒頭の歌詞の捉え方がガラッと変わるようで、本当に身震いしたんです。

 

だから、こういう風にも思うようにもなりました…i-Oくんっていうのは、ジャケットではロボットの姿で映っているけど、実際は人間を象徴しているものなのでは?と。

 


■あとは、これも見逃せませんね。”i-O”と”愛を”のダブルミーニング

 

だから、故障した心を救うのは、やっぱり”愛”の力なんですかね。両親からの、家族からの、恋人からの、友達からの、そういう”愛”を受けて、また再び頑張っていくことができると。

 

さらにいうと、先に紹介した、J-WAVEスピッツのインタビューで、草野さんはこうも話されています。

 


草野さん:「修理」っていう言葉も象徴的というか。いろんなものの不具合とかが世の中で出てきていて、特にコロナ禍で。それをまた修理しながらやっていきましょうっていう歌だと思います。

 

何も、人間だけにはとどまらず、この社会や世の中が、コロナ禍によって変わっていった状態を”故障”とするならば、i-Oくんはもっと大きなものを象徴しているのかもしれません。

 

この辺りは、この曲にならず、このアルバム全体に広がっているテーマなのかもしれません。

 


■という感じの解釈で十分なのですが、深読みするならば、

 


忘れ去られてく 闇に汚れてく
坂の途中で聴いた声は
再び一つずつ 記憶呼び覚まし 身体じゅう駆けめぐる

 

とか、サビにでてくる”黄色い光に包まれながら 偽りの向こうまで”などの表現が、ちょっと”死”を思わせるなぁ、とも思っています。

 

途中で出てくる”ハレの日”という、カタカナ表記の”ハレ”は、天気としての”晴れ”とは別の意味があって、”晴れ舞台”や”晴れ着”など使うような、要は年中行事やお祭りなどの特別な日のこと、非日常という意味なんです。

 

この”ハレの日”に、例えば、葬式などの不幸を含む(かは割れているようですが…)ならば、”可愛くありたいハレの日”=故人を着飾っている?、そして”愛をくれた君と…”からの”黄色い光に包まれながら”という言葉の下りは、亡くなった人が、”愛をくれた君”とあの世で再会して、また一緒に歩きはじめる、と読むこともできるかもしれません。