【空も飛べるはず】
■8作目のシングル曲です。そして、アルバムとしては『空の飛び方』に収録されています。言わずもがな、日本の音楽史に大きく名前を残している名曲ですね。
個人的ランキング、195曲中65位でした。文句なしの名曲ですが、散々聴いてきたので、正直飽きてしまった感が半端ないです。それでも、今でもテレビ番組なんかで流れているのをたまに聴くと、すごくうれしく思います。普段、もうあまり聴かなくなってしまった分、今は逆に新鮮に感じます。
この曲は、僕が初めて、アコースティックギターで弾けるようになった曲です…多分。最初は、Fのコードが弾けずに、苦労しましたよ。コード進行にFをつなげられるようになったのは、僕は不器用なもので、1ヶ月くらいかかりましたかねぇ。今アコギを練習している人には言っておきますけど、あれね、徐々にではなく、練習していて、ある日突然に弾けるようになるんです、驚くほどすんなりとね!頑張ってください、Fのコードが弾けるようになれば、曲の幅はぐんと広がります!
■この曲が歩んできた歴史を、wiki(など)を頼りに、僕なりにまとめました。
まず、この曲が発売されたのは、1994年のことです。後に、ドラマ「白線流し」の主題歌になりますが、この曲は元々、違うドラマの主題歌として作られた歌だったんだそうです(何のドラマだったかは不明)。しかし、結局その時は、主題歌にはならなかったそうです。そして、発売した当時は、オリコン最高28位だったそうです。
発売されてから2年が過ぎ、ここでドラマ「白線流し」の主題歌になりました。それによって、売り上げも伸び、ランキングもぐんぐんと上昇していき、見事オリコン1位を獲得します。オリコン1位獲得は、スピッツにとって初めてのことだったそうです。それもそうか、【ロビンソン】よりも前ですもんね。
長い時間をかけて、【空も飛べるはず】は、実に148万枚を超える大ヒットを記録しました。今(2015年)で言うと、とんでもない数字ですが、日本歴代売上シングルランキングによると、これは第85位に位置しています。20位以上にはダブルミリオン、トリプルミリオン達成のシングルもたくさん犇めいていますので。
スピッツのシングルの中で、100万枚以上売れたシングルは、発売した順番に書くと、【空も飛べるはず】【ロビンソン】【チェリー】の3作です。こう呼ぶことはふさわしくないかもしれないですが、僕はこのシングル3枚をまとめて、「シングル御三家」と呼んでいます、笑。
スピッツファンのみならず、広く世に知られるようになった【空も飛べるはず】。スピッツの代名詞、スピッツと言えばこの曲!として、シングル御三家の他の曲とともに、世間に定着していますね、嬉しい限りです。
■あと、【めざめ】という曲に関しての話です。
この曲は、いわゆる【空も飛べるはず】の原曲バージョンで、1993年にレコーディングされた曲らしいです。【めざめ】は、2006年に発売されたベストアルバム『CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection』の初回盤に収録されていて、聴くことができます。
…が、僕はこのベストアルバム、買っていません。ベスト盤は、自分には必要ないと判断したから買わなかったのです。中古ショップに行って、安く売ってあるのを見るたびに、買おうかなぁって思うんですが、買えずに今に至ります。ただ、【めざめ】だけは聴いたことが何度かあります。どうやら、歌詞とアレンジが若干違っているようです。
歌詞の相違点としては(聴けないので、調べてみました)、
(空:空も飛べるはず め:めざめ)
<Aメロ>
空「おどけた歌で」
め「懐かしい歌で」
<サビ>
空「君と出会った奇跡」
め「君と出会えた痛み」
空「ゴミできらめく世界が 僕たちを拒んでも」
め「やがて着替えた季節が 僕たちを包んだら」
上記の部分において、歌詞が変わっていました。ちなみに、メロディーのアレンジについては、説明するのが難しいですし、あまり聴いたことがないので、各自確認してみてください。確か、イントロから雰囲気が違っていたような気がします。
(今回の曲紹介ですが、メインは【空も飛べるはず】で進めて、【めざめ】とセットで紹介したことにさせてください。単体で【めざめ】の方が好きだ、あれはあれで単体と判断すべき、という方には、申し訳ございません)
■ということで、この曲の感想・解説です。
まず、何と言っても印象的なのは、イントロ(アウトロも)です。一度聴くと、本当に頭から離れなくなるほど、印象に残ります。そこから続くメロディーもキャッチ―で、初期のスピッツから考えると、柔らかくて優しい雰囲気が漂っていて、聴きやすいなぁと思います。
この曲は、草野さん曰く、「一応シングルってことで、(ネガティブな部分を)引っ込めた部分もあるんです」と語っていました。この時期のシングル辺りからは、売れ線を意識して、メロディーも割とポップでキャッチ―なものを意識して作っていたのかな、という印象です。
それでも、売上100万枚を超えて、世によく知られているにも関わらず、相変わらず、詩の世界観は変わっていません、まぁそれが魅力ではあるんですが。こんなに有名な曲であるのに、解釈を明確に定めるのが難しい曲です。「白線流し」の影響から、卒業ソングの印象もつきましたし(詩を読んでも、あまりそんなこともないですが)、他にも、恋愛ソングや、引いては自殺(死のイメージを思わせる)の歌にも思えてきます。色んな側面を見せてくれる、不思議な歌です。
■歌詞を読んでいくと、まず1番のAメロに、”神様”という言葉が出てきます。僕の勝手な印象かも知れませんが、草野さんが”神様”という言葉を使う時には、”死神”、つまり、死の象徴として、この言葉を使うと考えています。
*
幼い微熱を下げられないまま 神様の影を恐れて
隠したナイフが似合わない僕を おどけた歌でなぐさめた
*
”神様の影を恐れて”ですからね。僕の上述の解釈とつなげると、ここは、”死ぬこと”を恐れている、という描写に繋がります。
”隠したナイフが…”の解釈は、その”死”への恐怖から、自ら命を絶とうとでもしているのでしょうか。そうでないとしても、じっと一人ナイフの切っ先を見つめて、不安な気持ちと戦っているような、そんな印象を受けます。
そこへきて、”おどけた歌でなぐさめた”です。そういう不安な気持ちを、なぐさめて、和らげてくれる存在(歌詞の中でいうと”君”)が居た、ということになると思います。
そして、2番Aメロには、”満月”という言葉が出てきています。草野さんは、丸い物に”死”をイメージしているらしく、ともすると、ここの”満月”からも、やはり”死”のイメージがつきまとってきます。
*
切り札にしてた見え透いた嘘は 満月の夜にやぶいた
*
これは、”満月の夜にやぶいた”ですからね、”死”の不安に打ち勝った、払拭した、ということでしょうか。
■あとは、サビのフレーズですね。2番のサビを載せておきます。
*
君と出会った奇跡が この胸にあふれてる
きっと今は自由に空も飛べるはず
ゴミできらめく世界が 僕たちを拒んでも
ずっとそばで笑っていてほしい
*
もう何回読んでも、本当に素晴らしい歌詞ですよね。
まず、”ゴミできらめく世界が 僕たちを拒んでも”という表現。ここは、何か事情があって、”僕たち”は世界に見放されてしまっている、という意味ですかね。
それでも、”ずっとそばで笑っていてほしい”と。君さえいてくれれば、僕はそれだけで生きていけるんだ、ということを歌っているという印象です。
■全体的に考えて、いくつか解釈をまとめてみます。
例えば、ここに出てくる僕は、何らかの病気に侵されていて、”死”の恐怖と日々戦っていると(PVの舞台が、廃病院であることは、これを示唆?)。それは、自分で命を絶ってしまおうかと思うほどの不安だったけど、そこで君との出会いによって、救われたという物語だと考察するとどうでしょうか。
まぁ、病気うんぬんの話はともかく、世界や人生に、希望や期待を持てずにいた状況を、君が変えてくれた、ということに対する喜びを歌っているという印象です。
とすると、肝心のタイトルにもなっている”空も飛べるはず”という言葉は、その君との出会いに対する、喜びの気持ちを表しているのだと思います。天にも昇るような、そんな安らぎや幸福感を、ありありと感じているのでしょう。
…もしくは。
やっぱり、僕は恐怖や不安には打ち勝てなかったとします。そして、同じように、その恐怖や不安を感じている君に出会ったとします。世界からつまはじきにされた者同士が出会って、その気持ちを慰め合ったと。
そこで、”空も飛べるはず”です。こっちの解釈だと、例えば、二人の心中を表す言葉と解釈するとどうでしょうか。自分達を拒むこんな世界なんて、こっちからごめんだ、一緒に死んで、新しい世界(あの世や輪廻転生など)で2人で生きようと。だから、”空も飛べるはず”=死んで、新しい世界に行けるはず、という意味合いで使われているという解釈ですね。
■人は、何かとても嬉しい出来事に出会ったり、大きな希望を感じて満ち足りた時に、”あぁ、もう死んでもいい!”と思ったり、思わず口に出してしまうことがあります。それは、もちろん誇張表現に過ぎないとは思いますが…。生きていることで幸福を感じたはずなのに、もう死んでもいい、なんて思うことは、なんとなく不思議な話ですね。
僕にとって、君との出会いは、そういうものだったのではないでしょうか。今まで感じることさえできなかった生きていく希望。それによって、希望を持って生きていこうという気持ちと、もう何もいらない、死んでしまおう、という気持ちは表裏一体だったのではないでしょうか。
とすると、どちらの解釈がふさわしいのでしょうかねぇ。ここから先は、残念ながら、限定することはできそうにありません、ここで終わりですね。
■最後に、【空も飛べるはず】に関して、3つの動画を紹介して終えたいと思います。
まず、この【空も飛べるはず】を、andymoriの小山田壮平(と、NIGERUNAというバンド(?))がカバーしている動画がありますので、載せておきます。
僕は、これはこれで好きで、何度も見てしまいます。壮平さんと、スピッツの曲は、何となく相性がいいと思うので、トリビュートにも参加してくれればいいのにって思ってるんですが、どうでしょうか。壮平さんが、本当に楽しそうに歌っているのが印象的です。
空も飛べるはず 小山田壮平バージョン
https://youtu.be/twJD5183RlA
次に、『偏偏愛上洋葱』という曲の動画です。これは、中国の歌手・大張偉(ダー・チャンウェイ)という人の曲(2009年発売)…なんですが、この曲が、【空も飛べるはず】に似ている、として非常に話題になりました。似ているというより、そのまんまで、いわゆる、”偶然似た”うんぬんという言い訳は成り立ちません。
いけませんよ!もっと曲を生み出す苦労を理解してもらいたいですね、スピッツが世に売れるまでに、どれだけの苦労をしたと思っているのでしょうか…と怒りを抱きつつも、聴いてみると、これはこれでいい曲かもしr…いやいや、惑わされないぞ、原曲が名曲だから当然です!
ちなみに、タイトルの『偏偏愛上洋葱』の意味は、”どうしても玉葱しか愛せない”だそうです、爆笑。タイトルの付け方は天才的ですね!
偏偏愛上洋葱 / 大張偉 PV
https://youtu.be/qtmzHfuounU
そして最後に、お待ちかね、本家PVも載せておきます。スピッツのみなさん、お若いです!そして、三輪さんが、ラーメンズの片桐仁に見えてしょうがないんですが、笑。
そして…
これもある意味有名な話ですが、このPVの4分15秒~4分19秒あたり、老人が草原の上に立っている場面に注目してください。
…おわかりいただけただろうか…後ろにある窓の向こうからこちらを覗き込む人影(?)を…。この4秒の間に、隠れるようにすっと動きます…。それは、このPVが撮影された廃病院で、かつて亡くなった患者の幽霊なのだろうか…。
ま、まぁ…スタッフさんか、撮影機材ですよね?…うん…そう…だよね?ね?ね?そうだよね!?そうだと言ってよ!?ねぇ!ねぇ!?
空も飛べるはず 本家PV