Tribute Album『JUST LIKE HONEY ~『ハチミツ』20th Anniversary Tribute~』
発売日:2015年12月23日
■収録曲
(オリジナル曲 / カバーアーティスト)
01. ハチミツ / 赤い公園
02. 涙がキラリ / 10-FEET
03. 歩き出せ、クローバー / NICO Touches the Walls
05. 愛のことば / indigo la End
08. ロビンソン / 9mm Parabellum Bullet
09. Y / GOOD ON THE REEL
10. グラスホッパー / ASIAN KUNG-FU GENERATION
bonus track. 俺のすべて / SCOTT MURPHY
■スピッツのトリビュートアルバムとしては、前作『一期一会 Sweets for my SPITZ』に続き、第2作目ということになります。
アルバムのタイトル通りですが、今作は、スピッツのオリジナルアルバムの中で一番売上枚数が多い(恐らく今後も越えられることはない)、6枚目のアルバム『ハチミツ』の発売20周年を記念して作られたトリビュートアルバムです。ちなみに、アルバム『ハチミツ』は、1995年9月20日に発売されました。
前作『一期一会』の収録曲(カバーされている曲)については、シングル曲が多いものの、例えば【猫になりたい】や【田舎の生活】や【Y】とかっていう風に、カップリング曲もアルバム曲も、割と自由に収録されていました。
一方の今作については、先述の通り、アルバム『ハチミツ』の発売20周年の記念作品でもあるので、収録曲(カバー曲)は、曲順もそのまま、アルバム『ハチミツ』に入っている曲が収録されています。(+ボーナストラックとして、【俺のすべて】が入っています)
また、前作『一期一会』については、カバーアーティストとしては、ソロアーティストや女性アーティストなどが多かったのに対して、今作については、いわゆるロックバンドの比率が高くなっています。
それも、スピッツよりも随分若手のバンドが、カバーアーティストを務めています。このことについては、スピッツのディレクターであり、今作のプロデューサーでもある竹内修さんが語っておられます。
インタビュー記事はこちら↓
https://sp.universal-music.co.jp/compi/hachimitsu20/concept.html
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当初はそんなに意図していたわけではなかったが、参加アーティストはバンド率が高くなった。そして男性比率も。どうしても「トリビュート」という側面を考えると、バンド編成、男性ヴォーカルのほうが企画意図と合致しやすいのだろう。これも、ソロ・アーティスト、女性ヴォーカルが半数くらいを占めた『一期一会』との大きな違い。
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要するに、ロックバンドとして活動しているスピッツの楽曲をカバーするのに、同じ形態のロックバンドの方が自然だろうということでしょうか。
また、若手がたくさん参加していることに対しても、例えば、indigo la Endは、バンド名を”インディゴ地平線”から取ったものだということが知られているし、また、Nico Touches the Wallsのボーカルの光村さんも、スピッツに影響を受けて音楽活動を始めた、ということが知られていたりするので、”憧れのスピッツ”という感覚は前作より強くなっているのだと推測されます。アルバムの”トリビュート感”は、より強まったのではないでしょうか。
■ということで、このアルバムの感想については、前に書いたことがあるのですが、ゆっくり振り返る意味で、前の記事をコピペしつつ、書き直してみます。
01. ハチミツ / 赤い公園
もうずいぶん昔のことになりますが、確か、テレビ番組「LOVE LOVE あいしてる」だったと記憶しています。Kinki Kidsの番組で、毎回ゲストを招いて、色々とトークなどを繰り広げる番組でした。その番組で、Every Little Thingの持田香織さんがゲストで呼ばれた際に、スピッツの【ハチミツ】をカバーしていて歌われていました。
そん時に、あっいいなって思った記憶があって、絶対に【ハチミツ】は、女性にカバーしてほしいと思っていました。歌詞がもかわいいですしね。
赤い公園はあまり聴いたことないんですけど、女性バンドということで、女性にカバーして欲しいという願いが叶ってよかったと思っています。少しサイケデリックで激しい演奏をバックに、かわいらしいボーカルが引き立っていて、そのギャップが楽しめるカバーになっています。原曲の【ハチミツ】は、ただただかわいらしい曲なのですが、赤い公園がカバーすると、そのかわいさの中に、どこかピリッと狂気を感じるようです。
02. 涙がキラリ☆ / 10-FEET
広島にかつてあった”SETSTOCK”という夏フェスに、僕はある時期毎年行っていたのですが、10-FEETはその夏フェスの常連でした。もう毎年のように出ていたので、最初はあんまり知らなったんですけど、知らない曲でも飛び跳ねて盛り上がって、会場もとても盛り上がっていたので、段々愛着も湧いてきました。10-FEETを見るのが毎年の恒例のようになって、毎年楽しんでいました。
そういう思い入れが割と強いバンドだったので、10-FEETのトリビュートはとても楽しみにしていました。10-FEETがスピッツをカバーすることは、とても意外だったのですが、原曲とは決してかけ離れることなく、されど10-FEETらしい、パンクロックの力強さと優しさを兼ね備えたトリビュートになりましたよね。
そういえば、スピッツの3050LIVEにて、【涙がキラリ☆】をスピッツがやったのですが、その時に僕個人的には、この10-FEETバージョンの【涙がキラリ☆】を思い出したんです。いかんせん、スピッツのライヴに行ったのが初めてのことだったので、さすがライヴだけあって、どの曲も普段聴いている時よりも、ダイナミックでロックな感じがしたのです。そういうわけで、【涙がキラリ☆】も、10-FEETバージョンっぽさを感じたのだと思います。何ていうか、逆カバー的な感じですかね?
03. 歩き出せ、クローバー / NICO Touches the Walls
ニコのボーカルの光村龍哉さんは、スピッツに憧れて、何と小学3年生の頃から曲をつくり始めたそうです(wiki情報より)。そういうわけで、スピッツのトリビュートアルバムに参加できることは、とても嬉しかったでしょうね。また逆に、スピッツ自身も、リスナーも(少なくとも僕は)、そういうスピッツに憧れを持つ人にカバーしてもらうことは、きっと嬉しかったのではないでしょうか。
ニコも、個人的にはとても好きなアーティストだったので、カバーはすごく楽しみにしていました。夏フェス(また先述のSETSTOCKにて)でですが、生ニコを一度だけ見たことがあります。かなり良かったです!
カバー曲の感想ですが、原曲はかなりゆったりした感じの曲なんですが、カバーはそれよりもテンポが速くなっていて、アグレッシブになっています。アコギの演奏が目立って聴こえてくるのが印象的で、アコタッチテイストを感じます。やっぱり、光村さんは声が良いですよね、特に好きな声のボーカルの一人です。
04. ルナルナ / 鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)
原曲の【ルナルナ】っていうのは、かわいさとかっこよさが混在した曲ですよね。その曲には、この人の声はクセが強すぎて、似合わなかったんじゃないでしょうか。女性ボーカルにでも歌ってもらった方が、もっとかわいかったんじゃないかなぁって思うんですけどね。…まぁつまり、僕はこの人(の声)が、好きではないということです。
バックの演奏はとても素敵でしたね。クレジットを見ると、かなり豪勢な演奏になっているようです、ホーンや鍵盤の音なども派手でかっこいいです。
05. 愛のことば / indigo la End
先程も紹介しましたが、indigo la Endというバンド名の由来は、スピッツのアルバムタイトルであり、その表題曲でもある”インディゴ地平線”が由来になっているそうです。indigo la End=インディゴラエンド=インディゴの終わり・果て、という感じのつながりになるのでしょうか。
何ていうか、indigo la Endなどで活躍されている川谷絵音さん(の音楽や声)も、そんなに好きではないのですが、このカバーに関しては、サビの感じがすごい好きです。こういうサビみたいな雰囲気って、indigo la Endに近いんじゃないかなって思うんですけど、どうですかね?【心雨】とか、こういう感じの曲じゃなかったですっけ?
だから、Aメロ・Bメロなどの感じは、ちょっと残念かなって思っちゃったんですよね、まぁ好みの問題ですけど。サビの雰囲気がかなり好みだったので、それで全編アレンジしてくれたら、もっと好きなカバーになってたかもしれません。
06. トンガリ'95 / LAMP IN TERREN
バンド名は、「ランプ・イン・テレン」と読むそうです。名前は聴いたことあるのですが、楽曲はあんまり聴いたことはありませんでした。
ROCKIN'ON JAPANが主催する、アマチュアのロックバンドの大会「RO69JACK」にて、2013年にグランプリを獲得して、そこから本格的に活動が広がっていったようです。
原曲の【トンガリ95'】は、ノリノリのギターロックの曲で、スピッツ屈指のライヴ盛り上がり曲ではあるのですが、どこかその中にかわいらしさを内包しています。一方のテレンの【トンガリ95'】は、ワイルドさが何割も増していると言いますか、曲名通りとがってますよね。またボーカルの声がかっこいい!
07. あじさい通り / クリープハイプ
1番のAメロのアレンジが、ちょっと変わっていて面白いですね。2番からは、また普通に戻るんですけど、これは曲に似合うアレンジだと思っています。
尾崎世界観さんの声も、クセが強くてそんなに得意ではないのですが、【あじさい通り】という曲に、このアレンジとボーカルは似合っていると思います。
08. ロビンソン / 9mm Parabellum Bullet
何ていうか、良い意味でも悪い意味でも、原曲崩壊ですよね。9mmらしいと言えば9mmらしいってことになるんですかね、こういう爆音のアレンジは。僕はあまり好みではないですけど。それでも、スピッツで一番のヒット曲で、ここまで挑戦的に崩壊させるのは、かなり勇気がいることだったと思うのですが、どうなんですかね。
ちなみに、9mmはストレイテナーのトリビュートアルバムにも参加しており、そこでは【Melodic Storm】という、結構テナーの中でも人気の高い楽曲をカバーしているのですが、そのインタビューにて、ボーカルの菅原さんはこんな風に語っていました。
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Melodic Stormは、他のどれよりも「みんなの曲」だというイメージがあったから、それを壊したくなかった。9mmの可能な限り真っ直ぐにカバーさせていただきました。
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…おい、【ロビンソン】はどうしたんだよ!?
09. Y / GOOD ON THE REEL
この曲は、前作『一期一会』でも、GOING UNDER GROUNDがカバーしていましたが、その時のは、かなり陽気なアレンジがされていました。僕は、GOINGが大好きなので、GOINGっぽいのは嬉しかったのですが、【Y】が纏っている、壮大な感じだったり、どこか寂しい雰囲気だったりっていうのは失われていました。
そこへ来て、このGOOD ON THE REELのアレンジは、とても良いですね!今回は、ちゃんと本家の【Y】の曲に漂う切なさを残しつつ、でもそんなにバラードバラードしてない感じが好きです。ボーカルの声にちょっと癖があって、それがさらに曲の切なさを強調するのに、一役買っています。
あんまり聴いたことがなかったので、ちょっと聴いてみたのですが、良いバンドですね!
10. グラスホッパー / ASIAN KUNG-FU GENERATION
原曲にないシンセサイザーの音が目立って聴こえてきますが、このアルバムのカバー曲の中では、一番原曲に忠実なカバーかなって感じます。ゴッチの声も曲に合ってると思うんですけど、サビで喜多さんにボーカルチェンジしているのが印象的です。
そういえば、アジカンのラジオ番組にスピッツが出演した時(逆かな?スピッツのラジオ番組にアジカンが出た?)の音源を、どこかで聴いた記憶があるのですが、そこで草野さんと喜多さんのしゃべる声がとてもよく似ていて、しばしばシンクロしているようなことが起きていました。
この曲では、実際に喜多さんが草野さんのボーカルを歌っているのですが、何となく高音が似ているような感じがしますよね。
11. 君と暮らせたら / 初恋の嵐 feat. 曽我部恵一
アルバム『おるたな』の記事でも少し紹介させていただいたのですが、初恋の嵐というバンドは、メジャーデビューを間近に控え、ボーカルの西山達郎という方が亡くなってしまうという、悲しい道を辿ったバンドです。
それでも、活動休止から9年が経ち、2011年に活動を再開させたそうなのですが、この【君と暮らせたら】のカバーは、その活動再開後の初めての音源なのだそうです。この楽曲では、ソロで活動をしておられる曽我部恵一という方がボーカルを務めています。
2012年に発表したアルバム『おるたな』において、初恋の嵐の【初恋に捧ぐ】という曲を、先にスピッツがカバーしています。今回の【君と暮らせたら】のカバーも、そういう経緯(お返し的な?)があって実現したものなんでしょうか。
さて、カバー曲の感想ですが…本当に素晴らしいんですよ。LOST IN TIMEカバーの【田舎の生活】と同様、個人的には本家より好みのカバーです。琴線に触れるとは、まさにこのことでしょうか。
【君と暮らせたら】は、個人的な解釈としては(と言うより、割と公式か?)”夢落ち”を当てはめました。歌詞を読むと、結構寂しい感じがするのですが、メロディーとしては結構明るめになっているんですよね。
そこへきて、この初恋の嵐バージョンの【君と暮らせたら】については、その寂しさをそのまま表現しているような感じのアレンジになっています。元々の”夢落ち”という解釈を当てはめるならば、実際にはこの歌の中の2人は一緒に居ないはずなので、何ていうか、街に独りきり取り残されて、2人の思い出がつまった街を、独りで歩いて回っているような、そういう光景が浮かんできて、胸がぎゅっとなるんです。
bonus track. 俺のすべて / Scott Murphy
【俺のすべて】は、シングル『ロビンソン』のカップリング曲であり、スペシャルアルバム『花鳥風月』にも収録されていますが、スピッツのアルバム『ハチミツ』には入っていない楽曲です。おそらく、この曲がスピッツのマスト曲・人気曲の一つであることなどを考慮されてのことでしょうか、今作にはbonus trackとして、Scott Murphyにカバーされたものが収録されています
Scott Murphyといえば、ALLiSTERというバンドのボーカルで、現在は細美武士さんんの属するバンドの一つである、MONOEYESにも所属しています。
ALLiSTERについては、その昔、スピッツの【チェリー】をカバーしたことがありました。それを初めて聴いた時は、良い意味でも悪い意味でも衝撃を受けたことを覚えています。【チェリー】のパンクロックバージョンという珍しいものが聴けます。マーフィーは、本当に日本がお好きなんでしょうね。