188時限目:野生のチューリップ
【野生のチューリップ】
■スペシャルアルバム『花鳥風月』に収録されている曲です。個人的ランキング、195曲中126位でした。
同アルバムには、カップリング曲が多く収録されていますが、この【野生のチューリップ】という曲に関しては、当時は未発表曲でした。wikiの説明によると、この曲はアマチュア時代からあった古い曲だそうですが、作品として世に発表されることはありませんでした。そして、1995年に、遊佐未森さんという方に提供されたそうです。
ちなみに、女性が歌うということで配慮され、“サカリの頃の”という詞は問題があるとして、“祈りを込めた”に変えてあるんだそうです、笑。
そして、それから時を経て、『花鳥風月』に、本家スピッツの【野生のチューリップ】が収録され、ようやく日の目を見ることになったわけです。これはあれですかね、【流れ星】がたどった道と全く同じですね。(アマチュア曲→他アーティストに提供→自身で発表 という流れ)
■さて、早速、この曲の解釈ですが…さすが初期の曲、意味が解りません!
まぁ、全体的なイメージは何となく浮かび上がりそうなんですが、最大の謎というのが、タイトルになっている、”野生のチューリップ”ですよ。
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真夜中の風に乗って
野生のチューリップ探しに
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これがサビに出てくる歌詞ですが、まず”真夜中の風に乗って”って、真夜中に探しに行くのも謎ですし、”野生のチューリップ”を探す?何で?何のために?って感じですよね。
そして、調べてみたんですけど、日本にはチューリップは自生しないみたいなんですね。あくまで日本にあるチューリップは、栽培されたものであり、現生地はスペイン、北アフリカ、イタリア…まぁその辺りですね。中でも原産地としては、トルコが知られているそうです。
とにかく、日本には”野生のチューリップ”は無いわけなんですよ。この辺りをどう考えるかですよね。日本で作られた日本語の歌なので、歌の舞台として、日本を自然と思い浮かべるわけですけど、じゃあ、日本にない野生のチューリップを探すってどうなのさ?見つからないじゃん?ってね。そしたら、ひょっとしたら、チューリップは何かを比喩したものなのかな?とも考えたりします。
■ひとまず、全体的に読んでみますか。ということで、最初の歌詞がこんな感じです。
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夜空にいつもの星が見えない
ポケットに破れた地図をつめ込んで
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僕は、ここから何となく、この主人公には”何も残ってない”感が溢れているなって思ったんです。”星が見えない”=願いをかける星が見えない=夢や希望が絶たれてしまった、そしてそこからの、”破れた地図”=もう行き先が残っていない、という流れ。
で、この後、先ほどの”野生のチューリップ”の部分に繋がるわけです。
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僕の目はどこへ行く 君のにおいがする
真夜中の風に乗って 野生のチューリップ探しに
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夢や希望が絶たれてしまった、そして、行き先も残っていない…それでも、主人公は、夜中に”野生のチューリップ”を探しに出かけるわけです、何か奇妙ですよね。
そして、ここで唐突に”君”の出現です。ただし、実態としての君ではではなくて、君の”におい”になっています。
あとは、
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いますぐ行くよ まわっているよ
いますぐ行くよ 壊れた時計の力で
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それから、最後の”さよなら さよなら…”の連呼。”いますぐ行く”の主語は僕(主人公)でしょうね。とすると、”さよなら”と言っているのも、僕だと考えられるでしょう。
■これらをつなげて考えてみます。
真っ先に思い浮かべたのは、君は故人であり、僕(この歌の主人公)も自ら命を絶って、君の居るあの世へと行こうとしている、という解釈でした。
まぁ、上述の断片的な解釈を繋げると、そうなりますよね。冒頭で、夢や希望が絶たれた、行き先が残っていないと言っているのは、君を失くしたからなのか、それとも、別の要因があったのか…自然なのは前者ですかね。
君を失くした、という根拠は、やはり実態として君が出てこないこと。あくまで、”君のにおいがする”なんですよね。生きていた頃の名残りを思い出すしかない、ということになるわけです。
そこから、最後の”いますぐ行くよ”や”さよなら さよなら”の部分。命を絶って君の元へ”いますぐ行くよ”、だから現世に”さよなら さよなら”、という流れです。
あとは、駆け落ち説や、隠れて君に会いに行く説などを思い浮かべました。
この2つの解釈だと、例えば、真夜中に出かけたのは忍んでいるからだとか、”さよなら…”は、今の自分の生活に別れを告げ、君と過ごすことを選んだとか、色々考えられると思います。
■メロディーだけ聴くと…まぁタイトルに”チューリップ”と入っていることとも相まってですけど…どこかピクニックにでも行くような、メルヘンで楽しそうな感じですよね。僕もそうでした、少年少女の冒険物語みたいなものも思い浮かべたりしました。しかし、歌詞を読むと、やっぱり一筋縄ではいかないんですよ。
もっとも、これは他アーティストに提供された曲ですので、上述のような解釈は相応しくないかもしれませんね、苦笑。
ちなみに、チューリップの花言葉は、全般的には「思いやり」、あとは色によって異なりますが、赤は「愛の告白」、黄は「望みのない恋」、白は「失われた愛」、紫は「不滅の愛」などがあります。全体的に、”愛”に関する花言葉になっていますかね。
無理矢理、タイトルの意味を回収してみるとすると、例えば、”野生のチューリップ”は日本には無い、つまり、いくら探しても見つからない…これは、もう自分の恋愛は叶うことはないんだ、ということ。だってそれは、根本的に、その対象である君がもう居ないのだから。もう”この世”には野生のチューリップはない、だから僕は君への「不滅の愛」を胸に抱いて命を絶ち、”あの世”に野生のチューリップを求めよう、と…こんな感じでしょうか。