スピッツ大学

ステイホームしながら通える大学です!

194時限目:夢じゃない

【夢じゃない】


夢じゃない

夢じゃない

 

■アルバム『Crispy!』に収録された曲で、後に、16作目のシングル曲として、シングルカットされました。個人的ランキング、195曲中60位でした。

 


■まずは、この曲が辿った歴史を、少しまとめておきます。

 

1993年、4枚目のオリジナルアルバム『Crispy!』が発売になりました。ここでも何度か話していることですが、この作品は、草野さんが特に売れ線を意識して作ったアルバムでした。しかし、良い結果を残すことができず、草野さんは意気消沈してしまったそうです。

 

まぁ結局は、このアルバムから【君が思い出になる前に】という名曲が生まれて、スピッツの名前が知れ渡り始めたという意味では、あながち悪い結果ではなかったんでしょうけどね。

 

【夢じゃない】は、そんなアルバムの一収録曲でした。

 


そして時が経ち、1997年…アルバム『Crispy!』が発売されてから4年後のこと、【夢じゃない】が、テレビドラマ『ふたり』の主題歌に選ばれました。また、【君だけを】も同ドラマの挿入歌に選ばれました。

 

僕は、ドラマの内容は全然覚えていないんですが、【夢じゃない】よりも、【君だけを】の方を微かに覚えているんです。何故か、ドラマの中で流れていた記憶が、こちらの方にだけ微かに残っているんです、苦笑。

 

ドラマ起用に伴って、ここでようやく【夢じゃない】がシングルカットされるわけです。そして、【君だけを】も、このシングルのカップリング曲として収録されました。ちなみに、僕自身は【君だけを】派です!

 

【夢じゃない】はアルバム音源をリミックスしたものが収録され、【君だけを】はアルバムのオリジナル音源が収録されました。

 


これはあれですね、【空も飛べるはず】が辿った歴史に近い…というより、ほとんど同じですかね。まぁ、爆発的なヒットを記録した【空も飛べるはず】には及ばないですけど、【夢じゃない】の方も、スピッツの曲としては認知度の高い曲だという印象なんですが、どうでしょうか。

 


■また、この曲を語る材料のひとつとして、何と言っても、MVは欠かせません。見てもらった方が早いので先に載せておきますが…これは何て言うんだろう、人形劇のような作りで、物語の世界観もとても独特なため、とても惹きつけられます。

 

ということで、今回、このMVの物語を考察してみました!すみませんが、長いですので、あらかじめご了承ください!


夢じゃない MV

youtu.be

 

 

【序】
見渡す限りに砂漠が広がった、荒廃した終末的な世界で、人型のロボットが暮らしています。
(※男性にみえるので、便宜上"男ロボット"と呼ぶことにします)
(※朽ち果てた建物の残骸が、至るところに残されているのを見るに、かつては、街や村として機能していたのかもしれません)

 

男ロボットは、自分の住処から出て歩いて、たくさんの金属片のガラクタが積み上げられて山を作っている、ごみ捨て場のような場所に辿り着きます。
(※もしくは、そこを訪れることが、男ロボットの毎日の日課だったか?)

 

ごみ捨て場の空中には、太い金属管のようなものが突き出ており、男ロボットの回想シーンの中で、男ロボット自身が、その金属管を通って落ちてきたような描写が出てきます。そんなことを思い出しながら、男ロボットが金属管を見上げているちょうどその時、金属片のガラクタが落ちてくるところを目撃します。

 


【破】
男ロボットが、ごみが落ちてきた場所に回ってみると、そこには、自分と似た姿をしているロボットが横たわっていました。ただし、原型は少し留めている様子ですが、腕や足が破損しており、もう動かなくなっています。
(※落ちてきたロボットは、女性に見えるので、便宜上"女ロボット"としておきます)
(※ひょっとしたらこんな風に、本来は動かなくなったロボットなどが捨てられる場所なのかもしれません。しかしながら、男ロボットは、生かされたままそこに落とされてしまった?…と想像してみると、男ロボットが抱えていた孤独は、とてつもないものだったと思えるのです)

 

またここで、男ロボットの回想が入ります。その中で、かつて男ロボットと女ロボットが一緒に過ごしていた描写が挟まれます。両ロボットの周りには、たくさんのロボットが映っています。両ロボットは"夫婦"や"恋人"に、ロボットの集団は"家族"や”仲間”に見えるので、このロボットたちには、"家族"や"仲間意識"という概念があったと推測します。
(※落ちてきた壊れた女ロボット=回想の中のロボット、という解釈で進めています)

 


【急】
男ロボットは、自分の住処に、女ロボットを持ち帰り、何とかして直そうと試みます。金属片を持ってきては、腕や脚など破損した箇所に、ごまかしごまかし繋いでいきます。しかし、根本的にロボットを動かす動力が欠けているようで、女ロボットは動きません。

 

そこで、男ロボットは、自らの体から金属棒のようなものを抜き出し、女ロボットの胴体に差し込みます。おそらく、この金属棒が、ロボットの動力(電池のようなもの?)だと思われます。

 

男ロボットの動力により、女ロボットは動き始めますが、早急的に作られた体ではバランスが取れずに、すぐに傾いて倒れてしまいます。
(※ここで、女ロボットも力尽きたのかは不明。バランスがとれずに倒れただけなのか?)

 

そして最後は、動力を失って床に倒れた男ロボットのカットで終わります。その背中には、MVの冒頭より男が大切にしていた、どこに行くにも肌身離さず大切に背負って持って行った機械が、男ロボットの背中で、男ロボットが力尽きてもなお動き続けているのでした。
(※僕は、この機械を、"音楽プレーヤー"の一種であると想像しています。この機械の動きに合わせて、男ロボットがリズムを取るように横に揺れている描写があったからです。さらに、回想の中で、これを背負ったまま女ロボットと踊っている描写もあったので、二人の思い出の品だったのかもしれません。さらにさらに、この音楽プレーヤーが流していた歌こそ、【夢じゃない】だとしたらと考えると…)

 


■じゃあ、この歌はどういうことが歌われているのか、考えてみます。

 

どうしてもMVの印象が強すぎて、曲を聴くとその映像が浮かび上がるのですが、歌詞を読んだ限りでは、繋がりはなさそうです。

 

僕は、深読みとかはせずに(と言うより出来なくて)、割と素直に、この歌の歌詞は読んでいます

 


まず、草野さんの歌は、いつだって出だしの歌詞が魅力的です。この歌も、とても印象的な歌詞で始まります。

 


暖かい場所を探し泳いでた
最後の離島で
君を見つめていた 君を見つめていた

 

"泳いでいた"とか"離島"とかいう言葉は、きっと何かの比喩になっているのだと思われますが、"探し…"とか"最後の…"とかいう言葉は、言葉通りに捉えてみることにします。

 

主人公には、何となく男を当てはめていますが、男に何があったのかは分かりませんが、何もかも諦めてしまおうかと思っていたところで、最後の最後に、君との出会いがあったと、そういうことでしょうか。

 

続く歌詞には、"同じリズムで揺れてたブランコ"という言葉が出てきますが、これは、主人公と出会った君の心が、シンクロしたことを表現しているのかもしれません。例えば、同じような悩みや悲しみを抱えていたとか、それを互いに慰めあったという風に考えられると思います。

 

自分が悲しみに暮れていて、そこに自分と同じような悲しみを共有できる"君"に出会った場面というものを想像しました。

 


■あとは、サビの部分についてです。

 


夢じゃない ひとりじゃない 君がそばにいる限り
汚れない獣には 戻れない世界でも

 

夢じゃない ひとりじゃない 君がそばにいる限り
いびつな力で 守りたいどこまでも


"汚れない…"とか"いびつな…"とかいう言葉は、ひょっとしたら恋愛にかかっているのかもしれません。

 

前者は、"汚れない獣には 戻れない世界でも"と歌われていますが、これはどこか性的な意味合いも含めているような気もします。つまり、君と性的に交わってしまったことを、"汚れた"と表現しているとも考えられ、逆に言えば、君を知ってしまった今はもう、君なしの世界には戻れない、ということでしょうか。

 

後者の、"いびつな力"も、前者と同様のことを感じます。"いびつ"とは、漢字では"歪"と書きますが、これは"歪んだ(ゆがんだ)"という意味ですから、君(人)を好きになること(恋愛)は、どこか歪んだことであるのかもしれないということなのかもしれません。

 


しかし、いずれにせよ、最後には"守りたいどこまでも"と、しっかりと歌われています。

 

最初は、自分自身がいっぱいっぱいで、最後だと思いつつ探していたわけですからね。そう考えると、君との出会いはとても大きなきっかけになり、主人公が大きく心変わりしたであろうことが読み取れます。

 

これは何となく、【空も飛べるはず】だったり、【ロビンソン】における"誰も触れない 二人だけの国"などにも通じているような気がしますね。