13時限目:田舎の生活
【田舎の生活】
ミニアルバム「オーロラになれなかった人のために」に収録されている曲。個人的に、「オーロラ…」に入っている曲は、弾き語りのようでもあったり、ストリングスやオーケストラを多用している曲だったりして、他の作品とは少し異質の感じがします。全体的に、好みが分かれるかもしれませんね、コアなスピッツファンには好まれているような気がします。
その中の一曲、【田舎の生活】。アコギと、木琴(?)と鉄琴(?)、ヴァイオリン、ベース等の音がゆったりと鳴っていて、それがマサムネさんのきれいな声を引き立たせています。
Aメロは5拍子(「1・2・3・1・2…」とカウントしていくと分かりやすい)、サビになると4拍子に変わるという、少し変則的なリズムの曲です。
歌詞の解釈について。この曲は、解釈がしやすいようで、少しわかりにくい曲でした。
全体的にみると、Aメロの歌詞は、タイトルにもなっています、田舎での生活の様子の描写になっています。
しかし、サビは、”さよなら”だったり、”幻”だったり、そういう言葉が現れてきて、雰囲気を一転させます。
サビの、”さよなら”や、”幻”は、歌詞を読んだ限りでは、君と過ごした、あるいは、過ごすはずだった生活へと向けられている言葉だということが読みとれます。つまり、君や”僕らの子供”との生活が叶わなくなってしまった、ということになります。
ここで僕は、解釈として2パターン考えました。それは、タイトルにもなっている【田舎の生活】が、過去に行われていたものなのか、それとも現在行われているものなのか、に大別したものです。
前者、つまり、もしも田舎の生活が過去に行われていたものだとすると、僕が現在居るのは、おそらく「言葉にまみれたネガの街」だと思われます。
”ネガ”という言葉の意味は、ネガティブ(negative)の略で、フィルムを現像して得られる、被写体と明暗が逆になった画像のことらしいです。このイメージから、田舎と対応させて、その逆の、”都会”の景色が浮かびました。
つまり、僕は、君や子供と田舎で質素に暮らしていたけど、何かがあって、それが叶わなくなってしまった。僕は一人、田舎の生活を離れて、都会で暮らし始めた、という解釈です。
後者であるとすると、現在僕は、田舎の生活をしていて、そこから、君や僕らの子供が居なくなっている、ということになります。君や僕らの子供が出ていったのか、あるいは僕だけが、田舎にやってきて生活を始めたのか、どちらかですね。
うーん、前者が有力でしょうか。
サビの歌詞の中に、「窓の外の君に…」という言葉が出てきます。窓の外…これは、もう君はこの世に居ないということかもしれません。もしかしたら、子供たちすらも、妄想の産物なのかもしれません。
子供ができたら、田舎に家でも買って、自然の中でゆっくり暮らそうと話していた二人。しかし、奥さんが亡くなってしまって、それが叶わなくなってしまった。失意の底で、僕は一人、都会で暮らしている、という解釈もできそうですね。
本当に色々な物語が想像できそうな曲ですが、どの物語も最終的には、寂しいものになってしまいそうです。
ところで。
スピッツのトリビュートアルバム「一期一会」の中で、LOST IN TIMEというバンドが、この【田舎の生活】をカバーしています。
トリビュート自体、本家を超えているのかだとか、そういう気持ちで聴くものじゃないとは分かっています。しかし、どうしても僕にとってスピッツは唯一無二なので、違和感を感じながら聴いていました。
結果、個人的な意見ですが、しっくりとくる曲は一つもありませんでした…ただ一曲を除いて。
僕は、LOST IN TIMEがカバーした田舎の生活は、本家の田舎の生活よりも、個人的には好みです。海北さんの優しくも強い声と、榎本さんのギターのアレンジは、本当に素晴らしかったです。カバー曲が、本家の曲を超えた(個人的な意見で)非常に稀有なケースだと思っています。スピッツファンにこそ、聴いてもらいたい曲です。