スピッツ大学

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集中講義:草野正宗 ~詩の世界への招待~ 第2回

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君のベロの上に寝そべって
世界で最後のテレビを見てた
いつもの調子だ わかってるよ
パンは嫌いだった

 

 

スピッツのメジャーデビューアルバム『スピッツ』に収録されている【テレビ】という曲のはじまりの歌詞です。

 

前回の記事でも触れましたが、草野さんの書く詩のテーマとしては、"セックスと死"というものが知られています。

 

特に、このテーマが色濃く反映されているのは、初期の頃の楽曲であると思っています。というより、初期の頃の楽曲は、ほとんど"性"か"死"かどちらかに分類できるのではないか、とさえ思うのです。

 

そういうことを踏まえて、【テレビ】という曲です。デビューアルバムに入っている曲なので、紛れもなく初期の楽曲ですが、まさにマニアック、奇曲中の奇曲です。"テレビ"なんていう、誰もが知る言葉をタイトルにしながら、どういうことを歌っているのか、さっぱり分かりません。

 

冒頭で紹介したのは、1番のAメロの始まりの部分の歌詞ですが、皆さんだったらどういう風に読みますか?ここで紹介しているのは、【テレビ】の歌詞のほんの一部に過ぎませんが、全体的に読んでみると、さらに変テコな、草野さんの世界観を感じることができます。

 


■ここスピッツ大学がまだなかった頃の話ですが、およそ10年前くらいだと記憶しています。

 

スピッツ大学がなかっただけで、特に僕の思いは変わってなくて、僕は子どもの頃からずっと、スピッツの楽曲を歌詞を重視して聴いていて、この歌はどんなことを歌っているんだろうと、考察したり想像したりするのが好きでした。

 

その頃は、スピッツの歌詞を考察しているサイトなどに足を運んで、色んな人の色んな考察を読んだり、自分でも掲示板に書き込んだりしていた時期がありました。

 

例えば、m○xiや●chなどには、スピッツの歌詞を考察するスレッドみたいなのがありましたし、一個人が作った、野生のブログやサイトなどを探せば、さらにたくさんの考察に出会うことができました。

 

で、あれは確か、m○xiのスピッツの歌詞考察系のスレッドを見ていた時だったと記憶していますが、そこにどなたかが書いた【テレビ】の考察が書かれていたのです。そのまんまの文章はもう覚えていないのですが、このように書かれていました。

 

「テレビというのは、棺桶の窓のことで、その棺桶の窓から、亡くなった人の顔を見ている描写」

 

もちろん、本当のところはどうなのか不明ですが、自分でもそういう解釈を元に、改めて【テレビ】の歌詞を読んでみると、結構腑に落ちるところがあって、そういう考察へ進めてみました。記事に書いている考察は、実はそういう経緯があってできた考察なんです。

 


■あくまで、個人的な解釈ですが、少しだけ紹介してみると、

 

テレビ…棺桶の窓
世界で最後…亡くなった人が映っているから最後
パンは嫌い…仏壇に供えられたご飯

 

今回は紹介していませんが、他の部分の歌詞について、少し触れてみると

 

錆びたアンテナ…線香
不思議な名前…戒名(死んだ人につける名前)
君が描いた油絵もどき…遺影
ブリキのバケツに水…墓参り
マントの怪人叫ぶ夜…お経を読むお坊さん

 

などなど。かなり都合の良いように解釈している部分もありますが、繋げて考えてみると、【テレビ】は”葬式”や”墓参り”について歌っている歌だと考えることができました。まぁ、もちろん、全然違う可能性は大いにありますが。

 


■さらに、個人的には、この歌の主人公には、まだ幼い子どもの姿を当てはめています。棺桶の窓を"テレビ"と呑気に言っているのも、マントの怪人叫ぶ夜に(お経に)耳を塞いで怖がっているのも、どこか子どもの姿が浮かんできます。

 

まだ、"死"というものが何なのかよく分かっていない子どもは、無邪気に尋ねるかもしれません…「ねぇねぇ、おじいちゃんは何で箱の中で寝てるの?いつ起きるの?」と。

 

さらに言うと、草野さんは子どもの頃に、立て続けにおじいさんを2人亡くされた経験があるようで、ともすると、この子どもの姿には、草野さん自身もタブって見えてきます。

 


■ということで、【テレビ】の歌詞を紹介しました。何度も言いますが、あくまで個人的な考察です。

 

ただ、スピッツの歌詞はもっと色んな考察ができるのではないか、と考えるきっかけになったので、自分にとっては大切な歌詞のひとつとして紹介しておきます。