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250時限目:祈りはきっと

美しい鰭

 

 

祈りはきっと

祈りはきっと

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【祈りはきっと】

 

■2023年4月12日に発売されました、46作目のシングル『美しい鰭』のカップリング曲です。

 

シングル『美しい鰭』には、A面の【美しい鰭】の他に、【祈りはきっと】【アケホノ】という、2曲のカップリング曲が収録されており、しかも今のところ、アルバム収録の予定はなく、このシングルでしか聴くことができないので、かなり貴重です。

 

 


■まず、この曲を初めて聴いた時からの印象ですが、シングル曲の【さらさら】に曲調が似ているなって思っています。

 

両曲とも、決して明るいわけでもないけど、かといって、暗いわけでもないっていう感じ…と言うより、曲を聴く時の自分の気持ちや調子、置かれている状況などにより、明るくも暗くも聴こえるような、そんな不思議な曲調だなと感じました。

 

ギターの音とボーカルだけのシンプルな始まりから、ベース、ドラムと加わっていき、少しずつ曲にリズムと勢いが増していく感じが、ドラマチックで、どこか追い立てられるような気がしています。

 

間奏に聴こえてくる、なんて表現したらいいか分かりませんが…ドラクエの教会で流れているような音(?)は、クレジットによると、harpsichord(ハープシコード)という楽器だそうです。おそらく、チェンバロという楽器と同じものなのだと思いますが、弾いているところの演奏を見ると、見た目は完全にピアノに見えるのですが、実際を弦を叩いているのではなく、弾いているそうです。弦楽器に近いんですかね。

 

 

 

■それから歌詞の考察については、これは割と普遍的に、そのままな感じで読めるなと思っています。

 

例えば、サビの

 


祈りはきっと届くと思う まだ道が続いてる
あの丘の向こうまで さらに君の所まで
巻き戻せない時を越え 始めよう
新たなる旅路

 

という部分とか、割と読んだまんまで、過去にはもう戻れないけれど、未来には道は続いているから、諦めないで自分の祈りを大切に生きていけば、きっと届くよ、という風に、これは万人に向けられている応援というテーマがあるかと思います。

 

なので、そういう歌ってことで、もうそんなに言えることは正直ないような気もしますが、例のごとく、ちょっと深読みしてみます。

 

 


■まず、まぁこの時勢ならではのことですが、このコロナ禍のことを歌っているような節があるという風に思いました。歌詞を少し挙げてみると、

 


記憶の中の輪郭を 何度でもなぞるよ
弱気が邪魔しても

 

”記憶の中の輪郭”という言葉で、もちろんただ単に、長いこと会っていない、または、会えなくなった人の顔を思い出そうとしているという解釈はできます。

 

ただ、この時勢で考えてみると、もう我々の随分マスク生活も長く続いてきましたよね。最近では、割と意識して外すことを考えることもあるんですけど、近くに居る人でも、その人の輪郭…特に口まわり辺りの形状を久しく見ていないという状況も珍しくありません。”記憶の中の輪郭”という言葉で、そういうことを思ったりしました。

 



日常が幻になり 幻も消え去る
そんな定めを壊せ

 

ここの表現は、このコロナ禍からの脱却を意味しているのかな、と思いました。つまり、

 

”日常が幻になり”…コロナ禍がやってきて、我々の日常は、長いこと大きく変わったものに余儀なくされてきました。

 

”幻も消え去る”…上記の流れから考えると、この表現は、日常を幻のものにしていたコロナ禍が消え去って、日常がまた戻ってくる、と読むことができそうですかね。

 

ただ、”そんな定めを壊せ”…??? この流れだと、どう考えたらいいんでしょうね。

 


まぁとにかく、そういう大きく”コロナ禍からの脱却”というテーマを当てはめても、先程のサビの歌詞も不自然ではないかなと思いました。

 

”祈り”とは、これも色々と考えられそうですが、そもそもこのコロナ禍を抜け出したいということ自体が”祈り”ですし、コロナ禍を抜け出して”新たなる旅路”へと赴きたいという”祈り”、この歌の歌詞に”君”という人物が出てきていますが、それこそ長いこと会えていない、誰にとっても居るであろう”君”に会えますようにという”祈り”など、人によって様々考えられると思います。

 

 

 

■という、割と上記のような解釈でこの歌を僕は聴いているのですが、あと考えているのは、先程も紹介しましたが、この歌における”君”という人物の存在ですかね。

 


祈りはきっと届くと思う まだ道が続いてる
昨日記した戯言 蝶になり羽ばたくだろう
それまで無事でいて どんな罠もよけ
新たなる旅路

 

終わりのサビを紹介してみましたが、そもそもこの歌の中の”祈り”は、”君”という人物に向けられたものであると考えることができますが、じゃあ”君”って何者なの?って考えてしまうわけです。

 

そこは、先程も言った通り、この歌を聴いている人にとっての”君”を当てはめればいいと思うのですが、例えば、”祈り”を”君”との恋愛の成就と考えると、この歌は、そういう”君”への好意が届くようにと歌われていると考えられることができるかもしれません。

 

不穏な深読みをするならば、”君”はもうすでに亡くなっており、”新たなる旅路”というのが、この現世を離れて、あの世への旅路を表わしていると考えることができるかもしれません。

 

と考えると、この歌の主人公は、”君”を亡くした人生を1人で生きていると…そう考えると、Aメロの”忘れたくなかった 色々なシーン”とか、”記憶の中の輪郭を 何度でもなぞるよ”、先程の”日常が幻になり 幻も消え去る そんな定めも壊せ”なども、もっと違う感じに聴こえてきます。