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251時限目:アケホノ

美しい鰭

 

アケホノ

アケホノ

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【アケホノ】

 

■2023年4月12日に発売されました、46作目のシングル『美しい鰭』のカップリング曲です。

 

シングル『美しい鰭』には、A面の【美しい鰭】の他に、【祈りはきっと】【アケホノ】という、2曲のカップリング曲が収録されており、しかも今のところ、アルバム収録の予定はなく、このシングルでしか聴くことができないので、かなり貴重です。

 


■まず、このタイトル”アケホノ”という言葉の意味についてですが、漢字で”曙”と書いて”あけぼの”と読む言葉があります。

 

”曙”とは…その昔、相撲力士の横綱に曙という人がいましたが…本来の”曙”という言葉の意味は、①夜がほのぼのと明けていく頃、②新しい時代や変革のはじまり、みたいな意味です。

 

”曙”は、通常は”あけぼの”と濁って読むのですが、今回の楽曲は”あけほの”、さらにカタカナ表記で”アケホノ”と、おそらく言葉の響き的に柔らかさを表わしたくて、わざと濁点を取って、さらにカタカナ表記にしたんだと思います。”あけぼの”と”アケホノ”では、文字の字面で読んでも、実際に口に出して読んでみても、両者は違う印象を受けます。

 

(ちなみに、日本書紀という、奈良時代の歴史書・神話の中には、”会明”と書いて”アケホノ”と読む言葉が出てきますが、関連性は不明…)

 

 


■冒頭で書いた通り、このシングルには新曲が3曲も入っているのですが、この【アケホノ】が、3曲の中で一番のお気に入りです。最初に3曲を流しで聴いてみた時に、もうすでにひと耳惚れしていました。

 

【アケホノ】は、ガンガンなロックナンバー!という感じではないけれど、優しくて明るい、まさにスピッツのギターロックが来た、という感じで、もうとにかく全編めっちゃギターの音とフレーズが好きです。

 

何かの記事でしゃべったような気がするんですけど、僕はギターのブリッジミュートの音が好きなんですよ。ブリッジミュートっていうのは、ギターを弾くと同時に弦に手を当てることで、ギターの音が短く「ベン・ベン・ベン・ベン」って鳴っているあれです。

 

スピッツだったら、他の曲だと【潮騒ちゃん】とか(他にもあるはずなんだけどな…)にも使われているあれです。

 

 


■さて、シングル『美しい鰭』のspecial thanksの欄を見てみると、”フラワーカンパニーズ”という表記があることに気づきます。

 

まぁ知っている人には説明は不要だと思いますが(かく言う僕も、ほとんど知らないんだけれど…)、フラワーカンパニーズとは日本のバンドの名前です。略して、フラカンと呼ばれたりします。

 

スピッツは、2023年現在で考えると、結成36周年目&メジャーデビュー32年目を迎える、本当に長く活動をしているバンドなのですが、フラワーカンパニーズも1989年に結成されているため、今年で結成34周年を迎える、スピッツと同様に、長く活動をされているバンドです。

 

何て言うか、スピッツも十分熱くて男らしいロックバンドではあるんですけど、フラカンはそれ以上に、もうこれでもかというくらい熱いバンドです。THE BLUE HEARTSのような、王道のパンクロックバンドという印象ですかね。

 

両バンドのメンバーの年齢も同じくらいですし(スピッツがちょっと上か?)、その長いバンド活動の中でも、メンバーが変わっていないなどの共通点もあります。

 

それから、スピッツのアルバム『小さな生き物』に入っている【野生のポルカ】という曲において、その収録にフラカンが参加し、曲の最後の”細道駆ける最高の野生種に”という部分をシンガロングしています。

 

こんな風に、スピッツフラカンはお互いにリスペクトし合う関係性で、交流があるのだと思いますが、2019年にフラカンが結成30周年を迎えた際には、フラカンスピッツが対バンでライヴをしたことがあるので、その交流はとても深いものだったことがうかがい知れます。

 

※この辺りのことは、もうちょっとだけ詳しく、自分の別の記事で触れていますので、よかったら読んでみてください。フラカン×スピッツのライヴの動画も、期間限定でyoutubeにあったのですが、今はありません。おそらく、コロナ禍のステイホーム時代の期間限定動画だったのでしょう。

 

itukamitaniji.hatenablog.com

 


■それで、今回の【アケホノ】とフラワーカンパニーズの関係なのですが、(おそらく)今回はどうやら収録にフラカンが参加した、というわけではないようですが、その一方で、【アケホノ】の歌詞を読んでみると、Cメロにこんな歌詞が出てきています。

 


生きていて良かったそんな夜を 探していくつもの
夜更かしして やっと会えた朝

 

ここの歌詞なんですけど、実はフラカンに【深夜高速】という曲があって、そのその歌詞に同じフレーズが出てきます。

 


生きててよかった 生きててよかった
生きててよかった そんな夜を探してる
生きててよかった 生きててよかった
生きててよかった そんな夜はどこだ

 

【深夜高速】という曲は、僕も唯一フラカンで知っている歌なのですが(自分でも歌えるレベルという意味で…)、おそらくフラカンでは一番有名な曲なのではないでしょうか。

 

その真意は不明ですが、その【深夜高速】の歌詞を、自らの楽曲に引用して、しかもスペシャルサンクスの欄にフラカンの名前を入れているので、さすがに何か意図があってのことでしょう。

 

youtu.be

 

youtu.be

 


■そういう風に考えていくと、この曲の解釈としてはやはり、スピッツにとってのフラカンのような、”盟友”に当てたアンサーソングというのが自然に浮かんできました。

 

歌詞を読んでいくと、何て言うか、お互いの労をねぎらうようなフレーズが随所に出てきています。

 



つながっていた 僕らはたぶんいつも
それぞれ闇の奥にいた時でさえ

 

”つながっていた 僕らはたぶんいつも”という表現で、離れていても、一緒には居なくても、ずっとお互いにお互いを気にかけているような、そういう関係性が浮かんできます。

 

そして、”それぞれ闇の奥にいた時”という言葉からは、お互いの人生がいつも順調にいっていたわけではないということも、伺い知ることができます。

 



否定の中に なんとか理由を拾って
高級な笑顔の渦に飲まれてみたり
嫌いな自分を 無理やり正当化しようと
もがいて穴の外へ逃れてからは

 


ザラザラで冷たい地面を這ってきた
汚れた腕を讃えあって

 

この辺りは全体的に、歩んできた道の苦労を読み取れるような気がします。

 

”高級な笑顔の渦に飲まれてみたり”…これは、自分の感情は隠して笑ってみたりしたことや、お偉いさん方の機嫌を取ったりしたことなどを表しているのでしょうか。

 

”ザラザラで冷たい地面を這ってきた”…この辺りからも、相当な苦労があったんだろうことが伺えます。

 

”汚れた腕を讃えあって”…そして、そういう苦労がお互い様であったこと、そういう苦労をねぎらい合える仲間が居たことが読み取れます。

 


そしてサビの歌詞

 


アケホノに誓いましょう 昔じゃありえないあの
失ったふりしてた愛の言葉
諦めるちょい前なら 連れて行くよ怖いかな
もう大丈夫泣いちゃうね ほわんと淡い光

 

再び、フラカンや【深夜高速】を引き合いに出して読んでみると、まず【深夜高速】という歌は、歌詞に”生きててよかった そんな夜を探してる”とある通り、状況としてはずっと夜という感じですよね。

 

一方の【アケホノ】では、”影はグレーから徐々に白くなり”だったり、”やっと会えた朝”だったり、何より”アケホノ”という言葉自体が、「夜が明けていくさま」を表している言葉だということなどを考えると、その言葉通り、夜が明けて朝がやってくる、まさにそういう状況を歌っていると考えることができます。

 

というところを考えていくと、【深夜高速】で、”生きていてよかった”と思えるような場所・時間・人…何でもいいと思うんですけど、そういうものを探してさまよっていた夜は明けて白々と明けていき、そして【アケホノ】へと繋がっていくと考えると、すごい胸熱な物語じゃないですか。

 

 


■という感じで、上記の解釈で十分成り立つと思いますし、僕自身もこういう解釈で聴いているのですが、その一方で、

 


影はグレーから徐々に白くなり
二人の頬も染まる頃

 


アケホノに誓いましょう 昔じゃありえないあの
失ったふりしてた愛の言葉

 


アケホノに誓いましょう この気持ちはもうなんなの?
上書きされる初恋の定義

 

などを注視して読んでいくと、恋愛に関係する言葉も多く出てきていることにも気づきます。

 

”失ったふりしてた愛の言葉”や”上書きされる初恋の定義”などで、何て言うか、例えば長いこと恋というものには無縁だった人物が、久しぶりに恋に堕ちていくような様子が想像できるかもしれません。

 

あるいは、”失ったふりしてた愛の言葉”で、これはプロポーズのセリフなんじゃないかとか、色々想像することができますね。