スピッツ大学

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239時限目:はぐれ狼

【はぐれ狼】

はぐれ狼

はぐれ狼

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■アルバム『見っけ』の9曲目に収録されている曲です。

 

一番最初に通して聴いてみたときに、アルバムの中の曲だと、これぞスピッツロック!というものに一番近い曲だと感じたのが、この【はぐれ狼】(と【ラジオデイズ】)でした。

 

勢いのあるイントロから曲がはじまり、Aメロはブリッジミュートのギターの音とともに少し抑え、アルペジオがきれいなBメロを経て、疾走感の溢れるサビへ…もうどこを取っても完璧です。聴いていて、本当に気持ちがいいロックチューンです!

 

音楽雑誌「MUSICA」のインタビューの中でも、メンバーはこの曲を、ライヴで映える曲、盛り上がる曲と期待していました。

 


■個人的に、アルバム『見っけ』の核となる曲として、この【はぐれ狼】と、次の記事で書くことになる【まがった僕のしっぽ】を考えています。表題曲である【見っけ】に関しては、アルバムの核というよりは、(最近のスピッツのアルバムの表題曲は)本でいうところの”表紙”のような感じが強いです。

 

このアルバムの特徴のひとつとしては、物語性の強い曲が多いというところですよね。【花と虫】、【はぐれ狼】、【まがった僕のしっぽ】、あとは【ありがとさん】や【快速】なんかも、割と具体的な物語が浮かびやすい感じの曲になっています。

 

その中でも、特に物語性を強く感じる曲が、【はぐれ狼】と【まがった僕のしっぽ】でした。さらに、この2つの曲の物語には繋がりも感じていて、これだけ似通ったことを強調して歌っているのだから、割とここらへんで歌われていることが核心なのかなと感じたんです。

 


■最初に、タイトルにもなっています、”はぐれ狼”という言葉について考えてみます。

 

まず、前半の”はぐれ”という言葉についての解釈です。インタビューの中で、草野さんはこのように語っています。

 


インタビュアー「”はぐれ狼”というのはスピッツ自身のことかもしれないし、CDとかそういうフィジカルを感じさせる部分もあると思ったんですが。」

 

草野さん「うん、常にはぐれ狼的な自意識でやってますね。それがロックであるっていう、俺の解釈」

 


草野さん「…こうやって音楽である程度認めてもらえて普通に生活できてるけど、それがなかったら俺ヤバかったなと思うことがあって。ほんとにダメダメな人生だっただろうなと思う。そういう意味では凄く恵まれてると思うし、それだけにはぐれ狼的な自意識というのは失わないようにしていきたいなと思うし。」

 

”はぐれ狼的な自意識”という言葉が印象に残りますが、この辺りを読んで、スピッツのことを色々と考えてみると、僕は”はぐれ”という言葉から2つの意味を受けとりました。

 


一つ目は、ロックバンドという職業的視点から見た場合です。

 

一般的な職業とは違って、ロックバンドで生計を立てていくことって結局は、キャリアの長さに関わらず、売れるか売れないかにかかっています。売れて生活が出来れば良いが、そうでなければ下手をすると路頭に迷ってしまうことになります。

 

いわゆる、普通の仕事…つまり、職場に行って、時間内で一生懸命働いて、それに見合った給料をもらうという、おそらく大多数の人がしているであろう”普通の仕事”とは、違うことをしているわけですよね。

 

そういう側面を見て、社会から”はぐれ”ているということを表現しているのかなと思いました。

 


二つ目は、スピッツというバンド特有の視点で見た場合です。

 

30年以上も長く活動をしてきて、本当に稀有な存在になったスピッツですが、その道のりは紆余曲折あったのだろうと、ここスピッツ大学で記事を書くために色々と調べていくとよく分かりました。

 

インディーズ~デビュー初期の不遇な時代、ミリオンヒットを連発した黄金時代、マイアミショック(過去記事参照)、あとは同時多発テロ東日本大震災を起因として、音楽をやる意味を自問自答・葛藤したことなどが挙げられると思います。

 

それらと、(特に僕が考えるのは)草野さんが書く詩の世界観が合わさって、本当に唯一無二の”スピッツロック”を確立させていきました。

 

そういう風に見ていくと、音楽業界で見ても、スピッツは”はぐれ”ものだったのではないでしょうか。それは、悪い意味で言っているのではありません。もちろん、孤独で誰とも付き合わないだとか、音楽業界を見放した(見放された)とかいう意味でもありません。ただ素直に、自分たちのスタイルを貫いてきた結果だという意味です。

 


■そして、後半の”狼”という言葉について。これに関しては、まだその衝撃が記憶に新しい、【1987→】の歌詞を真っ先に思い出しました。

 


らしくない自分になりたい 不思議な歌を作りたい
似たような犬が狼ぶって 鳴らし始めた音

 

”狼”という言葉を使って、こんな風に草野さんは歌っていました。恐らく、”狼”というのは、なりたいと願っている”らしくない自分”の象徴…本当はそんなに大した存在でもないのに、強がって見せている自分の姿を表していると思っています。

 

まだ、スピッツがインディーズ界隈で活動していた頃は、たくさんのロックバンドが生まれては消えていく、まさにロックバンドブームの時代であったと、草野さん自身も話していました。そんな中で、スピッツも含めて、たくさんのバンド(似たような犬)がしのぎを削りつつ、他のバンドを出し抜いて売れることを目標にして、必死に自分たちの音を鳴らしていた(狼ぶって 鳴らし始めた音)と想像しています。

 

じゃあ、スピッツは”狼”になれたのか、というと…どうなんですかね。もちろんスピッツはある時期に爆発的に売れ、多くの人が名前を知る存在になりましたが、でも”狼”かと言われると、そんな感じもしないですよね。決して大御所ぶることもなく、謙虚に自分たちの音楽を追い続けました。

 

ただし、精神的な部分は、”狼”のようにいつだってとがらせていたと思います。つまり、いつだってスピッツの根底にあるのは、ずっとロックンロールだったのです。もっと言えば、パンクロックの精神も残っているはずです。だから、”狼”という言葉は、ロックンロールを象徴している言葉(動物)なのかもしれません。

 


■では、歌詞ではどのように書かれているのか、読みながらもう少し考えみます。

 

まずは、出だしの歌詞から。

 


誰よりも弱く生まれて 残り物で時をつなげた
誇りなどあるはずもなく 暗いうちに街から逃げた

 

散々、スピッツと”はぐれ狼”を関連付けて話をしてきましたが、別に、スピッツと切り離してみても、物語が想像できそうですよね。

 

例えば、みにくいアヒルの子や、ワンピースのトニートニーチョッパーなど、集団の仲間たちとは、少し違った姿形で生まれてきてしまい、そのせいで、生みの親や集団の仲間たちから疎まれ、見捨てられてしまう。

 

生きるために、”残り物”(残飯など)を食べて命を繋ぎ、そういう自分の人生には”誇り”を持てないまま、ひっそりと”暗い”場所で生き続けている、とか。

 



はぐれ狼 乾いた荒野で 美しい悪魔を待つ
冬になっても 君を信じたい まどろみの果てに見た朝焼け

 

サビの歌詞です。僕は、ここの”乾いた荒野で 美しい悪魔を待つ”という部分を読んで、真っ先に思いついた話があります。それは、ロバート・ジョンソンという人の”クロスロード伝説”という話です。

 

ちなみに、ロバート・ジョンソンはミュージシャンなのですが、この人の楽曲を僕は一曲も知りません。なので、付け焼刃的な知識なのですが、”クロスロード伝説”というものを、情報を頼りに自分なりに要約してみると、こんな感じです…

 

ロバート・ジョンソンは、1930年代のアメリカで活躍した、ブルース音楽の偉人だそうです。ロックンロールの原点を作った人だとかいう話もあります。

 

ロバート・ジョンソンは、アコースティックギターでブルースを弾き語りをして色んな所を旅していたそうですが、めちゃくちゃギターのテクニックがすごかったそうです。

 

そんなすごいギターのテクニックを、一体どこでどうやって手に入れたのかということについて残っている話が、俗に言う”クロスロード伝説”で、ロバート・ジョンソンは「十字路(クロスロード)で、悪魔に魂を売っぱらった引き換えに、ギターのテクニックを手に入れた」という話です。

 

まぁ、彼がものすごいギターのテクニックを持っていたことと、彼が話した冗談などに尾ひれがついて、このような逸話ができあがったんだと思います。

 

(ちなみに、僕は”クロスロード伝説”の話を、マンガ「20世紀少年」で知りました。)

 

…どうでしょうか。”乾いた荒野”を”クロスロード”、”(美しい)悪魔”は言葉通りに捉えれば、この部分の歌詞は、何となく”クロスロード伝説”をなぞっているのかな、と思いました。…まぁ、無理矢理すぎですかね、すみません。

 



はぐれ狼 擬態は終わり 錆び付いた槍を磨いて
勝算は薄いけど 君を信じたい 鈍色の影を飛び越えていく

 

これも、別のサビの歌詞ですが、ここに出てくる”擬態”という言葉が、この歌の肝になっているようです。再び、インタビュー記事より紹介してみると、

 


草野さん「これは<擬態>という言葉が結構、肝なんです。コミュニティの中で浮かないようにみんなと同じ普通の人ですよっていうフリをしてる人のことなんだけど。浮いちゃうことを恐れないみたいなことは前からひとつテーマにして歌ってるけど、今回もそういうのが入っている」

 

草野さん「自分を殺す時間は終わった、と」

 

草野さん「それがロック魂です」

 

という感じで語っています。この辺りは、表題曲【見っけ】でも歌われていましたが、

 


人間になんないで くり返す物語
ついに場外へ

 

この辺りにも繋がるのかなと、【はぐれ狼】のこの記事を書きながら思っているところです。

 

周りから浮いてしまうことを恐れずに、自分らしく生きていこう(”擬態は終わり”が表わしていること)、それで周りからはぐれてしまっても、”狼”の気持ちは忘れずに、常に自分を貫いて生きていく(”錆び付いた槍を磨いて”が表していること)ということを歌っているのだと思います。

 

そして、そういう風にロック界の”はぐれ狼”として生きていく、スピッツの決意や誇りを感じられる曲です。

238時限目:YM71D

【YM71D】

YM71D

YM71D

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■アルバム『見っけ』の8曲目に収録されている曲です。

 

ギターのカッティングの音が印象に残る感じで、こういうのを、ファンクっていうんですかね。何か、これまでのスピッツにあったようで、あんまりなかったような珍しい曲です。

 

スピッツの曲だと、何に似てますかね…インタビューでは、【ヘビーメロウ】が引き合いに出されてますけど、AOR系のちょっと大人っぽい、おしゃれな感じの部分は、個人的には【夏が終わる】とかに近いかなって思いました。

 


音楽雑誌「MUSICA」のインタビューによると、この曲は山下達郎さんに影響を受けて作られた曲だそうです。

 


草野さん「これはね、実は山下達郎さんの”SPARKLE”みたいな曲を作りたいと思って作ったんですよ。それで”Y&T”って仮タイトルにしてたんで、タイトルを付ける時にYで始まるタイトル考えようと思って。さすがに”Y&T”のままだと”山下&達郎”になっちゃうから」

 

少し聴いてみましたが、なるほど確かに、意識していらっしゃる笑 山下達郎さんが、AOR系の代表格のような人ですからね(多分…)。

 

ちなみに、何で山下達郎さんの【SPARKLE】っだったのかというと、古くは草野さんが高校生の時に、1年間ギター教室に通ったことがあったそうで、その時の課題曲が【SPARKLE】だったことがあって、その曲を最近ラジオ番組でかけて、かっこいいと感じたから、という話もインタビューで語っておられました。

 


■あとは、そもそも謎の曲名”YM71D”についてですが。

 

このアルバムが発売になる前に、当然のことながら収録曲が先に発表されました。スピッツだけに限りませんが、好きなアーティストの新しいアルバムの収録曲発表はワクワクしますよね。

 

スピッツには、おかしな曲名も多く、それはアルバム『見っけ』にも当てはまることでした。その中でも、さらに異彩を放っていた【YM71D】という曲名…もはや読めないというね笑。ツイッターなどでは、この曲の名前の読み方の予想が発売前から始まったほどでした。

 

答えは、”YM71D”で”やめないで”でしたね。歌詞の中に、”やめないで”というフレーズが出てくるので、自然とゴロ合わせ的に読むことができました。まぁこの読み方にしたって、実際には草野さんは「そこはなんでも大丈夫」とインタビューで語っていますので、別に決まったものはないのかもしれません。

 


■では、この曲の解釈を考えてみます。

 

しかしまぁ、多少独特な表現はあるものの、この曲は分かりやすい感じの歌詞だというのが結論ですかね。

 

歌詞を追って読みながら考えてみると、まず1番の出だしの歌詞から。

 


誰かと一緒にいたいけど 誰でもいいわけじゃなく
演じてた君に恋して 素の君に惚れ直して
平和だと困る街 駆け抜け
新しいヨロコビが ここにある

 

まず、始まりがこんな感じなんですが、ここだけ読むと、まぁまぁ健全で普通な恋愛と読める気がします。

 

”演じてた君”と”素の君”の対比に関しても、ここだけだと例えば、みんなの前に居て自分をよく見せるために演じている君と、そういう集団から離れて僕と居る時にだけ見せる素の君、という対比と考えることができます。そして、そういう君に、僕は恋に落ちたという展開ですね。

 



反則の出会いなんだし 目立たぬようにしてたけど
きまじめで少しサディスティックな 社会の手ふりほどいた

 

続いて、2番のAメロの歌詞ですが、”反則の出会い”、”目立たぬように”、”社会の手ふりほどいた”などの、ちょっと怪しいフレーズが続きます。

 

とくれば、これはもうスピッツの歌詞によく出てくる、例えば不倫のような、不貞な恋愛関係を考えることができそうです。

 

”反則の出会いなんだし 目立たぬようにしてたけど”というところは、”反則”という言葉が、いわゆるルール違反を意味する言葉なので、この2人は、何かしらのルールを破ってしまっていると…つまり、すでに結婚相手や恋人が居るにも関わらず、逢瀬を楽しんでいるということでしょう。

 

”社会の手ふりほどいた”も同様ですね、”社会”とはルールを守る場所や人の象徴であるので、その手を振りほどく=これもやはり、ルールを破って不貞な恋愛に走ると考えることができそうです。

 


■あとは、タイトルになっている”YM71D”、つまり”やめないで”という言葉が出てくるサビの歌詞としては、

 


やめないで 長すぎた 下りから ジャンプ台にさしかかり
マグレにも 光あれ どこまでも 跳べるはずさ二人

 


やめないで 僕らまだ 欠片すら 手に入れちゃいないさ
初めては 怖いけど 指と指 熱を混ぜ合わせよう

 

この辺りは、性交渉中の表現と読むこともできそうですね。”ジャンプ台にさしかかり”や”跳べるはずさ二人”という表現は、今まさに絶頂を迎えようとしていることを表現していたり、”指と指 熱を混ぜ合わせよう”も、ベッドの上での行為中を表現している言葉だと考えることができそうです。

 

だから結局、”やめないで”の意味は、”性交渉を止めないで”という意味になるんですかね。

 

ただ、この曲に関しては、先述の通り、ファンキーでおしゃれな大人っぽい曲調とも相まって、そういう解釈とすごくマッチしているので、全然いやらしくは聴こえませんよね。

237時限目:快速

【快速】

快速

快速

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■アルバム『見っけ』の7曲目に収録されている曲です。

 

最初にアルバムを一通り聴いた時に、すぐに好きになった曲の一つでした。今でもすごい大好きな曲です。

 

曲名通り、疾走感あふれる曲調がすぐに気に入った曲でした。何となく、車のCMが思い浮かびました笑

 

合わせて、スピッツでも、これまでありそうでなかった曲だなとも感じたんですよね。アルバム『見っけ』は、「新しいスピッツ」を見つけることができることも楽しみなのですが、この曲もそのひとつかなと思います。

 


■まず、例のごとく、音楽雑誌「MUSICA」のインタビュー記事を引用しつつ、この曲を紹介してみたいと思います。

 


草野「この曲は、実は『ハチミツ』ぐらいの時にもうアイディアがあって、1回曲出し会議に持ってきたことがあるんですよ。でも当時は何となくスルーされて。あの時は笹路さん(笹路正徳スピッツの初期のプロデューサー)の判断が大きかったから、『この曲イマイチだよね』とか言われたらもう流れてしまうっていう(笑)…」

 

ということで、何とアルバム『ハチミツ』時代からあった、とても古い曲だったんですね。アルバム『ハチミツ』が発売になったのが1995年ですし、あの名曲【ロビンソン】もこのアルバムに収録されています。

 

今から25年前には、もうすでにアイディアがあったことになります。そんな古い曲のアイディアも、大切にずっと持っていて、陽の目を見る時をずっと待ち続けていたことを考えると、草野さんやスピッツメンバーが、自分たちの作った1曲1曲に本当に愛着を持っていたことをうかがい知ることができます。

 

それでも、こんなに昔からあった曲でも、古く聴こえないのがすごいところですよね。もちろん、歌詞や曲の構成などは、今回改めた部分は大いにあるんでしょうけど、古いどころか、印象的なイントロとか、キーボードの音などが加わって、むしろ最先端のスピッツの曲として仕上がっています。

 



田村「こういう曲だからこそ、イントロとかでCzecho No Republicのタカハシさん(タカハシマイ)の声をエフェクティブに使って印象的にして、そこをちゃんと聴かせたかったから曲中でオーバーアレンジにならないようにいろんな面で気をつけた感じかな」

 

Czecho No Republicチェコ・ノー・リパブリック)のタカハシマイさんと言えば、前アルバム『醒めない』に収録されている【子グマ!子グマ!】という曲でも、コーラスとして参加していました。自分が書いた記事を振り返ってみても、あまりの良さに感動して、田村さんが鼻水を出して泣いていたという逸話を載せていますけど笑 

 

とにかく、そのタカハシさんが再び参加ということになります。具体的には、イントロ・アウトロと、随所のコーラスに、タカハシさんの声が聴こえてきます。

 

イントロ・アウトロについては、インタビューで田村さんが”エフェクティブ”と形容している通り、日本語の言葉としてよりエフェクトのような響きの感じが強く、どこか近未来的な駅のアナウンスのように聴こえます。

 

それで、ちょっと調べてみたんですが、どうやらこのイントロ・アウトロについては、この曲のAメロの部分を逆再生した音源が使われているようですね。実際に逆再生をして調べた人が居られて(ツイッターにて見つけることができました)、その音源を聴くことができました。どうやら、タカハシさんがAメロを歌っている音源、草野さんがAメロを歌っている音源、ギターの音などを重ねて逆再生しているようです。

 


■では、歌詞を読みつつ、どういう曲か考えてみます。

 

この歌詞については、素直に読んでいます。そうすると、結構分かりやすい感じだと思うんですが、どうですかね。例えば、

 


無数の営みのライトが輝き もどかしい加速を知る
速く速く 流線型のあいつより速く

 

タイトルの”快速”という言葉の回収ですが、これは”快速列車”や”快速電車”を表わしていると思われます。それと対比されて、”流線型のあいつ”という言葉が出てきていますが、これはおそらく”新幹線”のことですね。新幹線の形状(頭の先の部分)を指して、”流線型”と表現するので、それを表しているのでしょう。

 

”無数の営みのライト”とは、窓から見える街の明かりをイメージしました。人々が営んでいる家々やお店やビルなどに灯る明かりを、主人公は快速列車から見ているのでしょう。

 

その快速がゆっくり動きだし、少しずつスピードを上げていくところで、隣を流線型のあいつ…新幹線が、自分の乗っている快速を、実際に追い抜いて行く、あるいは、追い抜いていくところを想像している。自分の急く気持ちを、ノロノロと加速していく快速に重ねて、速く速くと焦っていると、そういう場面ですね。

 



県境越えたら 君の街が見えて
細長い深呼吸をひとつ

 


身の程知らずの 憧ればっか抱いて
しばらく隠れていた心
吊り革揺れてる ナゾのポジティビティで
迎え入れてもらえるかな

 

この辺りを読むと、主人公がなぜ速く速くと焦っているのか、少しずつ想像が膨らんできます。”県境越えたら 君の街が見えて”から始まって、”憧ればっか抱いて”や”迎え入れてもらえるかな”という表現、しかも、主人公は快速に乗っていると…これらを繋ぎわせると、色々と物語が作れそうですよね。

 

例えば、遠距離恋愛の男女。主人公は男性をイメージしていますが、遠距離恋愛の恋人に会いに行くために、快速電車に揺られているシーンが思う浮かびました。

 

ただ、”細長い深呼吸をひとつ”とか”迎え入れてもらえるかな”などの言葉から、何かもうひとつ展開があるような気がしています。

 

例えば、この主人公は、恋人にプロポーズするつもりで快速に乗っているとかね。だから、深呼吸をして気持ちを整えていたり、(自分のプロポーズを)迎え入れてもらえるかな、と懸念している様子がうかがえます。

 

”身の程知らずの 憧ればっか抱いて”という言葉も、これは、今までは自分の身の程を知らないで、理想ばっかり高い恋愛や相手を望んでいたということを表していると捉えれば、先程のプロポーズを決心したところにもつながりそうです。ようやく、自分の本当の気持ちに気づいて、その気持ちを打ち明ける勇気を手に入れた、と。個人的には、この解釈が一番しっくりきています。

 

ちなみに、この曲の歌詞には、”インパラ”という言葉も出てくるのですが、これについて、先に紹介した音楽雑誌のインタビューにて、おじさんたちは何故か盛り上がっていました笑

 

どうやら、”インパラ”という言葉で、この歌の主人公を”草食系男子”と表しているようですね。ここも何となく、プロポーズをためらっていたけど、ようやくその決心がついた、というところに繋がるようですね。

 

 

■あとは、恋人同士という関係を取っ払ったら、例えば、恋人になりたいと片想いしている相手に告白しに行くストーリーも思い浮かびました。

 

もう少しひねって、恋愛関係というものも取っ払ったら、この曲を作った人物がまさしく草野さんだということを鑑みると、ライヴの全国ツアーで日本中を回っているという物語も想像しました。

 

この場合だと、この歌の主人公は、草野さんやスピッツメンバーとなり、”君”にはライヴに来てくれるリスナーを当てはめてみるとどうでしょうか。この物語に関しては、

 


記録に残らない 独自のストーリーだって
たまに忘れそうになるけど

 

という歌詞があるのですが、ここの部分が何となく、草野さん自身やスピッツに当てはまりそうな言葉だなと思ったのがきっかけでもありました。

236時限目:ブービー

ブービー

ブービー

ブービー

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■アルバム『見っけ』の6曲目に収録されている曲です。

 

アップテンポな曲が多い中、【ブービー】はしっとりと聴かせるバラードになっています。

 

冒頭から、ギターの音と草野さんのボーカルでしっとり始まってドキッとするんですけど、バラードと言いながらも、サビからピアノの音が目立って聴こえて、曲調に反してすごく盛り上がっていて、壮大に聴こえてきます。何となくですけど、【魚】みたいな雰囲気の曲だと思ったのが第一印象でした。

 


■ひとまず、音楽雑誌「MUSICA」のインタビュー記事を引用しつつ、この曲を紹介してみます。

 


草野「これ、一番最後に録ったんだよね。ちょっとサイケっぽい曲がもう1曲あるといいなと思って足した曲かな」

 

田村「いつもそうなんだけど、曲が出揃ってきた最後の頃に草野がこんなピースが足りないんじゃないかって作ってくる曲があるんだけど、それが今回はこれだった。前回の”醒めない”もそうだったよね」

 

ということで、アルバムにアップテンポな曲が多い中、しっとりとしたバラードで、むしろ目立って聴こえたと自分が感じたことの理由は、そういうことだったんだなと合点がいきました。

 



草野「歌詞って結局、自分だったらこういうことを歌われたいなっていうのが常に基準としてあるので。ドラマとかでよく『あなたの優しさは、優しさじゃなくて弱さだよ!』みたいなこと言うけど、『いや、弱さでいいじゃん』って思ったりするんですよ。俺だったらそういう風に言って欲しいかもって……そういう基準ですかね。(後略)」

 

ここの部分は、この曲のみならず、草野さんの歌詞観や、ひいては、もっと大きな人生観に通じるものだと思います。

 


■ということで、この曲がどんなことを歌っているのか、考えてみます。

 

まず、曲名の”ブービー”という言葉についてですが、日本語では、”最下位から二番目”を表す言葉として知られていますよね。しかしながら、英語で”booby/ブービー”というと、ずばり”最下位”を表す言葉のようです。

 

その他、”ブービー/booby”には、まぬけ、馬鹿、という意味もあるようです。この曲に当てはめるとしたら、どれが相応しい感じになるんですかね。

 

(ちなみに、”ブービー賞”なんていう言葉もありますが、ブービーを”最下位”とすると、わざと最下位になろうとする人が出てくるかもしれないし、そもそも最下位に賞賛を与えること自体おかしいだろう…ということで、意図的には取りにくい”最下位から二番目”に重きを置いた結果だということです。日本らしいですね!)

 


歌詞を見ると、”ブービー”という言葉はこんな風に出てきます。

 


いつもブービー 君が好き 少し前を走る
水しぶき 中休み 高く跳ねる

 

唐突に、”君が好き”という言葉が出てきて、これはラブソングなのかなと思ったりするんですけど、その後に続く”少し前を走る”とか、他の部分では、”追いつかなくて”という言葉から察するに、要は、追いかけても追いつけない…叶わない恋愛を比喩しているんだと思われます。

 

しかしながら、その後の、”水しぶき 中休み 高く跳ねる”という言葉が少しエロく聴こえてきたりして…独りで何をしてるんだろう?何がしぶいているんだろう?どうして高く跳ねているんだろう?と、深読みしてしまいますねぇ。

 

そうすると、やっぱりブービーには”最下位”を当てはめるとしっくりくるんですかね。何ていうか、一生懸命走って追いかけても、ずっと”最下位”で追いつけない、と解釈するとどうでしょうか。

 

でも、そうなると、”少し前を走る”という表現が不思議ですよね。”最下位”ならば、”少し前”どころか、背中すらも見えないくらい遠くを走って居そうな感じなんですけどね。

 


■その他、印象に残っている歌詞を紹介しておくと、まずはいきなり出だし、

 


破れかけた 地図を見てた 宇宙から来た 僕はデブリ

 

デブリ”という言葉は、この歌にも出てきている宇宙という言葉とくっついて、”スペースデブリ”という風に使われますが、意味としては、”宇宙ゴミ”という感じです。

 

(完全に余談ですが、僕はこの言葉を、漫画「プラネテス」で覚えました。超名作です!時々読みたくなるので、ずっと手元に持っています。)

 

つまり、自分のことを”ゴミ”と言って自虐しているわけですね。

 

何ていうか、宇宙という場所的なイメージから、とてつもなく広い場所で迷子になっていることや、光の当たらない暗闇にいることを表していて、それがそのまま、「追いかけても想い人に追いつけない」という、この歌の主人公の心情に繋がっているような気がしています。

 


あとは、最後の歌詞、

 


暗闇にも 目が慣れるはず 弱さでもいい 優しき心
薄着の心 消さないほのほ

 

ここの歌詞は、本当に草野さんらしいなって思ったんです。例えば、この手の歌詞だったら、”暗闇”には”光”という言葉が常套句のようにくっついてくるじゃないですか。”暗闇に光が差してきた~”みたいな感じですよね。

 

でも、草野さんはそうはしていないんですね。読んでの通り、”暗闇にも 目が慣れるはず”と書いているんですよ。あくまで、暗闇からは抜け出していないんですね。でも、それでもいいんだよと、それにも慣れるよと…これも草野節なんですかね。

 

そして、先程インタビュー記事でも紹介しましたが、”弱さでもいい 優しき心”という歌詞があります。

 

弱さや醜さや変なところや、時にはエロさや…思えば草野さんの歌詞は、いつだってその人の”あるがまま”を肯定してくれているような気がしています。それは、”弱者の側に立つ”というのとはちょっと違うと思っていて、まぁ自分なりに言うなれば、”弱者を認めている”という感じでしょうか。

235時限目:花と虫

【花と虫】

花と虫

花と虫

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■アルバム『見っけ』の5曲目に収録されている曲です。

 

この曲を聴いて真っ先に思ったことは、物語性が強いなぁということでした。それはもちろん、大いに歌詞によるところが大きかったのですが、16ビートの明るい曲調とも相まって、おとぎ話というか、アニメのワンシーンというか、そういうものが浮かんできたんです。

 

この【花と虫】という曲は、朝ドラの主題歌に選ばれた【優しいあの子】よりも前に、朝ドラを意識して作られた曲だったようで、もちろん歌詞はできていなかったんだと思いますが、なるほど、自分が感じた物語性については、そういう経緯があったからかと合点がいったんです。

 

そもそも、前作『醒めない』や前々作『小さな生き物』などに関しては、アルバム全体で1つの物語を感じて聴いていたんですけど、アルバム『見っけ』に関しては、アルバム全体というより、1曲1曲ごとに語られている物語が強いなって思ったんです。もうこの辺りが、最終的にも、アルバム全体に関する感想になると思います。

 


■さて、では音楽雑誌でこの曲はどんな風に語られているのか、ちょっと紹介しつつ考えてみます。

 

まずは基本情報として、この【花と虫】という曲は、先述しましたが、朝ドラでスピッツの曲が使われるとしたら…というイメージで、【優しいあの子】よりも先に作った曲だったようです。

 


草野「朝ドラの話をいただいた時、最初はどういう曲がいいとかあんまり聞いてなかったんですよ。でも『スピッツでドラマで流してもらえるっていうことは。こういうのを求めているのかな』っていうイメージが自分の中にぼんやりあって。…………その状態で作った曲が実はこの曲(これは【優しいあの子】のこと)ではなく、”花と虫”なんですけど」

 

音楽雑誌「MUSICA」では、このように語られています。で、その後に、オープニングでアニメが流れると聞いて、もう1曲作ったのが【優しいあの子】だったということだそうです。

 

まぁ結局、朝ドラには【優しいあの子】が選ばれたわけですが、ひょっとしたら、この【花と虫】が朝ドラの主題歌になっていたのかもしれません(歌詞やタイトルは変わっていたかもしれませんが)。

 

こういう話を聞くと、何かまた色々と想像が膨らんで面白いですよね。【花と虫】の歌詞は、後に作詞されたものでしょうけど、朝ドラのイメージも不思議と浮かんでくるようになりました。

 


それから、冒頭で触れました、この曲の物語性については、このように語っています。

 


インタビュアー「”花と虫”って、言ってみれば花が女性で虫が男性とも取れる……。」

 

草野さん「逆でもいいんですけどね、メタファーとしてはそういう。あとは故郷と都会っていうところもあるし」

 

インタビュアー「何かモチーフになったものってあります?」

 

草野さん「日本だけじゃないかもしれないけど、今って地方の街とか元気ないじゃないですか、シャッター通りとか多くなってるし」

 

僕はあんまり、”花と虫”を男女のメタファーとして聴いてはいなかったんですけど、まぁとにかく、”花”と”虫”を対比する何かに置き換えて考えてみると、色んな物語が想像できるって感じですよね。

 

僕は、”花”は元々いた場所で、”虫”はそこから離れて行った人、みたいな感じで聴いていたんです。

 

”花”っていうものは、それ自体は動くものではなくて、最初に咲いた場所でひっそり生きていく感じですよね。だから、そのもの自体のイメージというより、場所的なイメージですかね。その一方の”虫”のイメージとしては、これは”花”との対比ですからね、やっぱり蜜蜂とか蝶とか、そういう羽を持っていて、花が咲く場所を自由に飛び回るイメージです。

 


■ということで、そういう物語を意識しながら、歌詞を読んでいってみます。

 


おとなしい花咲く セピア色のジャングルで
いつもの羽広げて飛ぶのも 飽き飽きしてたんだ

 

1番の出だしの歌詞はこういう感じです。”花”と”ジャングル”という言葉は、両方とも同じような意味を表わしていて、両方とも、"元々いた場所"や"故郷"などのイメージで聴いています。

 

つまり、元々居た場所に飽き飽きして、そこから飛んでいきたい、離れていきたいと”虫”が思っているということを表していると考えています。

 

ここから続く1番の歌詞には、”痛くても気持ちのいい世界が その先には広がっていた”とあるので、もう”虫”の気持ちは、自分が元々居た場所よりも別の場所へ向いているということなのでしょう。

 


それで、2番の歌詞ではどうなっているかというと、

 


それは夢じゃなく めくるめく時を食べて
いつしか大切な花のことまで 忘れてしまったんだ
巷の噂じゃ 生まれ故郷のジャングルは
冷えた砂漠に呑まれそうだってさ かすかに心揺れるけど

 

ここも、具体的で分かりやすいですよね。”花”や”ジャングル”、つまりは元々自分が居た場所から離れて、時間が経っていることが描写されています。時間が経過したことを、”時を食べて”と表現しているのが面白いですよね。

 

”生まれ故郷のジャングル”という風に、そのものずばり”故郷”という言葉が使われているところも、”花”や”ジャングル”を、そのまま”故郷”という言葉に繋げやすい理由になると思います。

 

しかも、その”生まれ故郷のジャングル”は、”冷えた砂漠に呑まれそうだ”ということで、これは先程の草野さんの言葉をそのまま借りるとするならば、元気のなくなった地方の街を指していると考えることができそうです。

 

シャッター通り、ということもおっしゃっていますが、要は人口も減って、若者も居なくなって、活気がなくなっていくことを、”冷えた砂漠に呑まれそう”と表現していると考えています。

 


その一方で、Cメロやサビでは、

 


「花はどうしてる?」 つぶやいて噛みしめる
幼い日の記憶を 払いのけて

 


終わりのない青さは 終わりのある青さで
気づかないフリしながら 後ろは振り返らずに

 

という風に、そういう自分の廃れていく故郷のことを思い出し、葛藤しながらも、今の自分が居る場所で生きていくことへの決意も歌っているのだと思います。

 


■ここまでの流れになるきっかけとしては、色々と想像ができると思います。

 

例えば、自分の夢を追いかけるためだとか、就職や進学のためにだとか、そうういう理由で、自分の故郷である地方の街から、都会へと出てきたと。

 

夢を追いながら、あるいは、ある程度その夢は叶ったかもしれない、とにかく都会で生活をし続ける間で、自分がかつて暮らしていた故郷は廃れていく。そんな地方の街を横目に(忘れたわけではないとは思うが)、都会で生活をしていく、という感じの物語ですかね。

 


■あるいは、これも先述の通り、この曲は朝ドラをイメージして作られた曲だということを意識すると、僕は何となく、【優しいあの子】のアンサーソングっぽくも思えるのです。

 

例えば【優しいあの子】では、(北海道の)自然の美しさを”優しいあの子”に伝えたい、と僕が思っている歌でしたよね。なので、自然の美しい故郷である町を”花”、都会へ出てきた優しいあの子は”虫”とすると、【優しいあの子】は、花→虫という方向の歌になりますよね。

 

で、【花と虫】は逆に、都会へ出ている優しいあの子が、故郷の町のことを思っている、という風に思えば、虫→花という方向の歌であると考えることができます。

 


■あとは、サビの冒頭ごとに”青さ”という言葉が出てくるのですが、音楽雑誌「音楽と人」において、草野さんはこのように語っています。

 


草野さん「(”青さ”という言葉について)この曲の中に出てくるのは、やっぱり大人になれない、なりたくない、って気持ちがおじいさんになっても続いていくような感じですね。…(中略)…自分もこの歳でバンドなんてものをやらせてもらってますから。…」

 

ということで、これまたありきたりな考えになりますが、”虫”は他でもない、草野さんやスピッツメンバーであるという物語も浮かんできそうですね。

234時限目:ラジオデイズ

【ラジオデイズ】

ラジオデイズ

ラジオデイズ

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■アルバム『見っけ』の4曲目に収録されている曲です。

 

とにかく、アルバム『見っけ』のアルバム曲(アルバムで初めて聴ける新曲)には超名曲が多くて、あれもこれも大好きなんですけど、【ラジオデイズ】はその中でも特に大好きな曲です。初めて聴いた時から、これは良い曲だ!って瞬発的に感じました。

 

それで、曲名が”ラジオデイズ”と、そのものずばり”ラジオ”という言葉が使われているので、この曲を聴く前から…何なら曲名が初めて解禁された時から、この曲には、何らか”ラジオ”が関係しているんだろうと…つまり、草野さんやスピッツメンバーの、ラジオに対する想いが込められているのではないかと、自然と想像したんです。

 

 

 

■ということで、音楽雑誌「MUSICA」のインタビュー記事には、草野さんやスピッツメンバーが、【ラジオデイズ】に対する想いを語っていますので、個人的に印象に残ったところを引用させていただきます。

 


草野さん「そうですね、しかも完全にラジオ世代で(笑)。情報源がまずラジオだったところが凄く大きかったので。…(中略)…俺が暇があれば聴いてたTBSの『デイ・キャッチ!』という番組が終わっちゃったのが結構ショックだったのもあったし……そういうのもあってできた曲ですね。でもやっぱり、自分がラジオ番組を始めたのがこの曲のきっかけとしては大きいかな。”ラジオ・スターの悲劇”(The Bugglesの1980年の曲)みたいな、ラジオをテーマにした曲を作ってみたいと思ってた」

 


三輪さん「ガキの頃から。土曜になると『今日は深夜まで起きてるぞ』って思うんだけど、でも寝てるんだよ。だから俺は19時から22時ぐらいの間の番組をよく聴いてたかな」

 


田村さん「他に情報がなかったから、DJが紹介してくれるもので音楽が広がっていった部分は大きかったよね。で、この曲の歌詞は結構ストレートじゃないですか。ここまで草野の気持ちがストレートに出る曲ってなかった気がするの」

 

※ちなみに、Video Killed The Radio Star(ラジオ・スターの悲劇)/ The Buggles

youtu.be

 


それから、書籍「スピッツ」にも、草野さんの幼少期のエピソードとして、ラジオの話が少し出てきます。

 


草野さん「だから小学校5年ぐらいから洋楽とか聴き始めて。やっぱり最初はチャートものですね。ウチは家の中にずっとAMラジオが鳴ってて。お袋もずっと鼻歌を歌ってたりとか、親父もカラオケが根づく前にもうデッカいカラオケ装置を買ってきて部屋で歌ってたから」

 


などなど、各メンバーに、それぞれのラジオの思い出を語っていますが、やはりこの曲の制作について一番大きな影響を及ぼしたのは、草野さん自身が、”自分がラジオ番組を始めたのがこの曲のきっかけとしては大きい”と語っているように、ご自身のラジオ番組「SPITZ 草野マサムネのロック大陸漫遊記」だったのでしょう。

 

その昔は、今のようにYoutubeなどの動画サイトはおろか、インターネットやコンピューターも発達していなくて、テレビはもちろんあったのでしょうけど、音楽番組などが今ほど盛んだったかはよく分かりません。

 

そういう時代に、音楽の情報を得るのにラジオは重要なツールだったのでしょう。まさしく、スピッツメンバーが音楽に触れはじめた、その原点だったと察します。

 

 

 

■では、【ラジオデイズ】に対して、個人的な想いなどを語ってみます。

 

冒頭に書いた通り、僕はこの曲が本当に好きなんですけど、特に印象に残ったところなどを語ってみますね。

 


まず、イントロとアウトロ。ここがね、僕はすごい好きなんですよ。この部分を聴いただけでも、胸がグッとなります。甲高い感じに聴こえるギターのメロディーが余計に琴線に触れます。

 

特にアウトロは、何ていうか、思い出のスライドショーとでも言いますか、自分の思い出の場面が、一枚一枚の写真となってパッ、パッ、と次々に変わっていくところを想像しました。

 

イントロも、ノリノリで疾走感があるんですけど、そこからAメロの始まりで、そのノリが少しトーンダウンする(気がする)んですよね。そういう、ちょっとひねくれ、一筋縄ではいかないようなところも好きなんです。

 


それから間奏には、これもスピッツでは初めてのことですよね、”ラジオデイズ”というタイトルにちなんでいるのでしょう、ラジオのチューニング音がした後に、ラジオで草野さんがしゃべっている音源が聴こえてきます。

 

はっきりとしゃべっている言葉は聞き取れないんですけど(断片的に「さぁここでリスナーからのお便りを紹介しましょう…」、「今人生の岐路に立っている」、「ラジオネーム、夜の…」などが聴こえる?)、おそらくこの音源は、「SPITZ 草野マサムネのロック大陸漫遊記」のだと思うんですけど、こういう遊び心も面白い曲ですよね。


※追記。今ちょうど「ロック大陸漫遊記」を聴いていたのですが、【ラジオデイズ】の間奏のラジオ音源は、この曲のために、新たに録音したものだそうですね!で、少し切れて聞こえているラジオネームは「夜に咲く朝顔」と言っているそうです!

 

そこから続く、個人的には”さだまさしさんっぽい”(何か、スピッツ大学でよく使ってる表現のような気がする苦笑)って思った、しゃべっているように歌っているCメロも、また珍しいですね。

 

 

 

■あとは、何と言っても歌詞ですよ。

 

一番印象に残るのは、やっぱりサビにおける、これでもかってくらい貫いている”ラジオ”という言葉での体言止めです。サビの一節一節の終わりが、全て”ラジオ”という言葉で終えられていて、草野さんのラジオに対する想いが、色んな言葉に変えて歌われています。

 

例えば、こんな風に歌われています。先述のとおり、”ラジオ”という言葉で締めくくられているサビの歌詞です。

 


どんな夢も近づけるように 道照らしてくれたよラジオ
危なそうなワクワクも 放り投げてくれるラジオ

 


こんな雑草も花を咲かす 教えてくれたんだラジオ
したたかに胸熱く 空気揺らしてくれるラジオ

 

前者の2行は、これはまさしく草野さんが幼少時代に、ラジオを通じてロック(を初めとするたくさんの音楽)に触れ、やがてご自身がミュージシャンへの夢を持ち始めたところから始まり、そこから”道照らしてくれた”と、つまりは自分が進む道を”ラジオ”から流れる音楽が導いてくれたと歌っているのでしょう。

 

後者の2行も良い表現ですよね。特に”こんな雑草も花を咲かす”という表現がすごい好きです。”雑草”という言葉からは、色んなものを想像できるのですが、例えば、自分が抱いた夢や目標が、最初は何の色も個性も無かったところから始まって、そこから少しずつ育てていくことで、やがてそれが”花”を咲かせたというのを考えたとすると、これはスピッツの物語と重なる部分もあります。

 


その他、印象に残ったフレーズをもう少し紹介しておきます。

 


笑顔を放棄して そのくせ飢えていたテンダネス
美しい奴らを 小バカにしてたのに変だね

 

Aメロの歌詞ですが、気にっている2番の歌詞を紹介しておきます。まず、韻を踏んでいるのが分かりますよね、ここでは”テンダネス”と”変だね”ですか。ちなみに1番では、”貴族”と”記憶”で韻を踏んでます。

 

”テンダネス / tenderness”で、優しさ、親切さ、という意味ですが、ここの部分は、この歌の”歌い手”のひねくれ人生を物語っているようですよね笑

 

つんつんととがっていて、誰かの優しさや親切心も、うざったく思うだけ…それでも、どこかでそういう優しさに飢えていた、と。いわゆる反抗期や思春期と呼ばれる時期を思わせますが、こういうこともきっと、子どもが大人に成長していくためには必要な過程なんですよね。この辺りは、ロックンロールにも通じる部分があるような気がします。

 



遠い国の音楽 多分空も飛べる
ノイズをかき分けて 鼓膜に届かせて
同じことを思ってる 仲間を見つけたよ
何も知らないのに 全てが分かるんだ

 

先述の、しゃべっているように歌っているCメロの歌詞ですけど、ここもストレートな歌詞ですよね。

 

国を越えて、ジャンルを越えて、ラジオから流れてくる様々な音楽に触れていた幼少時代・少年時代。そこから、少しずつ自分の夢を育てていった、ちょっとひねくれている青年は、やがて同じ夢を共にする仲間たちと出会い、本格的に夢を追いはじめた、と。

 

そういう風に考えると、やっぱりこの【ラジオデイズ】も、物語的な曲なんですよね。

 

 

 

■という風に、この曲の解釈としては、草野さんやスピッツメンバーのラジオに対する想いが込められている、いわば原点回帰な曲だという解釈で十分なのですが、最後に前提を崩すようですが、こんな風に思うわけです。

 

おそらく、この歌の中に出てくる”ラジオ”という言葉は、聴き手によって色々と違うものに変換できるのでしょう。

 

子どもの頃からいつもそばにあって、くじけそうになった時に励ましてくれたもの、自分へ道を示してくれたもの、夢を与えてくれたものなど、聴き手のそれぞれの心の中にある大切なもの…それらに変換してこの曲を聴くと、この曲との距離が、よりぐっと近づくような気がします。

 

例えば、好きなスポーツだったり、好きなゲームだったり、好きな音楽だったり…あるいは、自分が夢を持ち続け、今の就いている仕事なんかも当てはまると思います。何でもいいんだと思います。

 

そして、僕(ら)にとっては、他でもなくスピッツそのものが、この歌の”ラジオ”とすり替わって聴こえてきます。僕にとっては、20年以上も長くずっと好きで居続けられているものは、スピッツ以外にはありませんからね。

 

そういう、自分にとって長く好きで居続けられている”大切なもの”を思い出させてくれる、大切なものの大切さに、改めて気づかせてくれる、優しいロックナンバーだと思います。

 

 

 

■というところで、【ラジオデイズ】という曲に対する研究を終えたいと思います…

 

…が、ここからは、少し趣旨を変えて、せっかくですから、「僕とラジオデイズ」というテーマで語ってみたいと思います。楽曲とは、まったくかけ離れた話になりますので、もう十分だと思われる方は、ここで回れ右をしてくださいね。

 

とは言っても、僕は決して、いわゆるラジオが大好きで毎日聴いている人間というわけではなくて、その時その時に、特定のラジオ番組を聴いていた程度になります。

 

それでも、自分とラジオの距離が近づいた時期っていうのが、この人生の中で何度かあったので、少し話をさせていただきます。

 

 


■おそらく、僕とラジオの距離が一番近かった時期は、中学生・高校生の頃ですね。結構、家で学校の勉強をしながら、ラジオを聴いてました。

 

僕は中学生の頃、L'Arc~en~Cielがすごく好きだったんです。ちなみに、初めて買ったCDは、ラルクの『DIVE TO BLUE』でした。

 

それで、当時やっていたラジオ番組で、「やまだひさしのラジアンリミテッド」(1999年4月~2002年9月 月曜~金曜 22時〜23時25分)というのがあったんですけど、そのラジオ内に、FLYING~L'Arc~ATTACK(フライング ラルク アタック)というコーナーがあり、それを聴く目的を主として、ラジアンリミテッドを毎回聴いていました。

 

割と、新曲がそのコーナーで初解禁されたり、下ネタ多めでしたが、メンバーの話も面白く聴いていました。

 

【Pieces】が新曲として解禁された時は、何か記憶に残っていますね。ちょうど初解禁(ではなかったかも…?)の日に、僕は中学校の修学旅行に行っていたので、夜にホテルの部屋でラジオをつけて(本当は禁止行為だったんですけどね…)、友達と聴いたことを思い出します。

 

あと【NEO UNIVERSE】とかね、確か1999年が終わって、2000年になった瞬間に初解禁されたんじゃなかったですっけ?なんか、そういう記憶もあるんですけど、曖昧です。

 

まぁ、当ラジオ番組は、そもそもがやまだひさしさんの語りが面白かったですし、他にも「モーニング娘。スーパーモーニングライダー」というコーナーを、モー娘。のなっちこと安倍なつみさんが務めていたので、それなんかも聴いていました。友達がなっちの熱狂的ファンで、毎回番組に電話をかけていたんですが、一回も選ばれませんでした笑。

 

ちなみに現在は、「やまだひさしのラジアンリミテッドF」という後継のラジオ番組が、めっちゃ深夜にやっています。

 

 

 

■その他、記憶に残っているのは、例えば「SCHOOL OF LOCK!」なんかは、大学生~社会人になってから聴いてましたね。

 

バンプの新曲とか結構解禁になったり、バンプのメンバー自身が番組に出たりして、そういう情報を得た時なんかは聴いたりしました。amazarashiがスタジオライヴをしたのも、この番組内でしたね。

 

あとは、「ミュージック・スクエア」とかね、確かこれは、先述の「ラジアン…」の前に放送されていたので、流れで聴いていました。

 


そして、最近は何と言っても、「SPITZ 草野マサムネのロック大陸漫遊記」ですよね!

 

もうすっかり、毎週ラジオを聴く習慣が、再び定着しましたよ。(広島では)日曜が終わる瞬間の0時からっていうのも良いですよね。月曜から始まる戦いの1週間を前に、日曜最後の景気づけって感じで聴いてます。これが終わったら、あ、日曜も終わりか、寝よ…ってなるんです。

 

あんまり興奮して、記事でも書いていますが、「BUMP OF CHICKENで漫遊」の回なんかは、永久保存版です。

 

 

 

■そう言えば、僕は一度、ラジオ番組に出たことがあるんです。と言っても、ローカルのラジオ番組で、その地域でしか聴けない感じのラジオ番組でした。

 

ちょうど、以前の仕事を辞める辞めない辺りの頃、僕はバンドを組んだんですが、僕はボーカル(時々ギタボ)を務めました。GREEN DAYMr.BIG(ボーカルが死ぬ)やメタリカ(メタルは僕には合わないと分かりました笑)などをやったりしました。スピッツは…やりませんでした、てか邦楽すら全くやりませんでした。

 

それで当時、地域の祭りのステージでアマチュアのバンドが集まって行われるライヴフェスのようなものがあって、それに僕たちのバンドが出ることになったんです。その時に、そのフェスの主催団体が放送するラジオ番組に出たことがあるんです。時間にして、30分~1時間くらいでしたかね。貴重な体験でしたよ。

 

 

 

■昔なんかは、ラジオのスピーカーに、カセットに録音できる機械を直接近づけて録音したもんです。

 

今は便利になりましたよね。僕はもっぱら、radikoでラジオを聴いているんですけど、タイムフリーで少しさかのぼったりして、たまに聴きそびれた新曲なんかを聴いたりしていますよ。

 

ちなみに、中学生の頃、とある学校の企画で、自作のラジオ番組をテープに吹き込んで作ったことがあります。その時に流行っていた、ラルク宇多田ヒカルやB'zや、ゆずや19なんかの楽曲も入れたりしてね。

 

その時は、なんか調子に乗って、しばらくの間、「俺は将来、ラジオのパーソナリティーになる!」みたいに豪語してましたね。懐かしいなぁ。

233時限目:ありがとさん

【ありがとさん】

ありがとさん

ありがとさん

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■アルバム『見っけ』の3曲目に収録されている曲です。

 

この曲に関しては、アルバム曲(アルバムで聴ける新曲)の中では、確か一番早くフルで解禁になった曲でしたね。改めて調べてみると、10月9日がアルバムの発売日だったのに対して、9月2日にラジオで【ありがとさん】のフル音源が解禁されました。

 

今の時代は、かなり便利な世の中になりましたよね…僕は、ラジオでのフル音源をリアルタイムで聴くことができなくて、ラジオのタイムフリー機能を使って、過去に流された【ありがとさん】の音源を聴きました。

 

初めて聴いた時の感想は、優しい曲ではあるんだけど、ドスの効いたベースの音と、鍵盤の音が印象に残る曲だなって感じでした。あとは、”ありがとさん”というタイトルについても、不思議なタイトルだなと思いつつ、断片的に聴き取れた歌詞から考えて、詳しくは後述しますが、”死”によって訪れる別れを歌った曲なのかな、と感じ取っていました。

 


それから時間が経ち、アルバムの発売を間近に控え、MVも解禁になりました。



スピッツ / ありがとさん

 

色んな装飾物でごちゃごちゃしている、狭い部屋の中で演奏をしているのが印象的なMVです。リーダーの、ヘッドレスベースでのアグレッシブな演奏が目立ちますね。(特に、イントロ・アウトロ)

 

そんで、こういう時には、そのごちゃごちゃの中にスピッツに縁がある物が隠されていないだろうか(見つけてやるぜ!)…という目線で見てしまうのですが、特に発見には至ってません。

 

まぁ強いてあげるならば、時々差し込まれる金魚に関しては、アルバム『醒めない』では【コメット】という曲があったし(そのものずばり、comet/コメットで金魚という意味)、アルバム『小さな生き物』ではジャケットに金魚が写っていたり、【りありてぃ】の歌詞の中にも”金魚”という言葉が出てくるので、スピッツに縁があるものと考えても良いんですかね。

 

スピッツとの縁から離れて考えてみると、リーダーの側に置いてあるカラフルな頭蓋骨は、メキシコで「死者の日」(日本で言うお盆のような日)に飾る”カラベラ”というものを思い浮かべます。これも、この曲における”死”のイメージにも繋がっているのかなと、ちょっと思ったりしました。

 

それにしても、このMVの4人とも、本当に50歳過ぎかよ…これこそ何より貴いと言えることですよね!

 

他に、何か発見はありますか?何かあれば、コメントください。

 


ちなみにタイトルについては、”ありがとさん”という曲名が解禁されて初めて目にした時に、個人的には、先にTHE BLUE HEARTSの【ありがとさん】という曲を思い出しました。

 

 

この曲自体は、THE BLUE HEARTSが解散を決定した後に発表した、最後のアルバム『PAN』に収録されている曲で…まぁこれをTHE BLUE HEARTSの曲と言って良いのか…ヒロトマーシーもこの曲に参加していないし…色々あったアルバムなので…は割愛します。

 

ただ実際には、”ありがとさん”というタイトルについては、例えばNHKの「SONGS」に出た際に語っていたこととしては、”ありがとう”というと恥ずかしいので、ちょっと近しい感じで”ありがとさん”という言葉を使ったとのことです。

 

 

 

■先述した通り、この曲については、最初に聴いた時からもう”死”のイメージがありました。音楽雑誌『MUSICA』でも、やはりそのことには触れていました。

 


草野「そうね。”雪風”を作った時もそうだったんですけど、死んじゃった人の目線で曲を作るのっていうのはドラマとしては作り甲斐があると思って。でも”雪風”をリリースした時、感想をいっぱいSNSで見たけど、死者目線っていうことに気づいた人がいなかったんですね。だからもっとわかりやすく、<化けてでも>っていう言葉を入れたんですけど(笑)」

 


草野「もしくは死んじゃった愛犬のことを思いながら歌ってるとかにも取れるだろうし、あと聴き進めていくうちに『パートナーが死んじゃった……え、死んじゃったの俺かよ!?』みたいな、歌い手が死んじゃったのか!とも取れるだろうし。…」

 

こんな感じで語っています。”死者目線”というのは、結構キーワードになりそうですよね。

 


これまでのスピッツだったら、”死者目線”というと、どんな曲がありましたかね…【雪風】は公式であるとして、あくまで勝手な解釈ですが、スピッツ大学的には、【Y】とか【ローランダー、空へ】とか【月に帰る】とか【サンシャイン】とか、そういう風に語っていたような気がします。何かもっとあったかもしれませんけど。

 

普通だったら、大切な人を亡くして残された側の人間の目線で曲を作りそうなんですが、その逆で、亡くなった人の目線に立って歌詞を書くということですよね。生きている人には、決して”死ぬ”という経験はできることではないので、そういう意味でも、草野さんの詩の世界観や想像力は、とても広く深いものなのでしょう。

 

 

 

■そういうことを踏まえつつ、歌詞を読んでみます。

 


君と過ごした日々は やや短いかもしれないが
どんなに美しい宝より 貴いと言える

 

これが始まりの歌詞ですが、ここを読んだだけではどうでしょうか。別に無理矢理、死別に繋げなくても、今まで長く一緒に居た友達や恋人が居て、その友達の別れと、単に読めるかもしれません。例えば、通っていた学校の卒業だったり、恋人関係の解消だったり色々考えられるかもしれません。

 

とにかく、何らかの理由で”君”と過ごした日々が終わりを迎えて、それが何よりも”貴い”ものだったと振り返っている様子が分かります。

 

”やや”短いという表現と、”貴い”という言葉を選んだところも、目立たないかもしれないけど、何か良いですよね。

 



あれもこれも 二人で 見ようって思ってた
こんなに早く サヨナラ まだ寒いけど
ホロリ涙には含まれていないもの
せめて声にして投げるよ ありがとさん

 

この辺りから、何となく死別のイメージが湧いてきました。まぁそれでも、先述と同じく、離ればなれになってしまう友達や恋人との別れ、と単に読むこともできるのですが、やっぱり”こんなに早く サヨナラ”というフレーズが浮いていて、何か悲しいなって思ったんです。”サヨナラ”もカタカナで表記されているので、何か特別な意味を持たせているのかな、と考えられます。

 

しかし、僕は”死者目線”として読むことができなかったんです。単に、”こんなに早くあなたを亡くしてしまった、まだ二人で見たかったものがたくさんあったのに…”という感じで、生きている人が、大切な人を亡くした悲しみを吐露していると読みました。それは、大切な人が若くして亡くなってしまったのでしょうか、それとも、単に二人が一緒に居た時間が短すぎたのでしょうか。

 



いつか常識的な形を失ったら
そん時は化けてでも届けよう ありがとさん

 

草野さんが語っているように、”死者目線”であることを強調したいがための、”化けてでも”というフレーズが出てきている部分です。

 

この辺りを読んでから、改めて振り返って歌詞を読んだときに、あぁやっぱり死別なのかな、と個人的には思ったんです。しかし、”化けてでも”というフレーズが出てくるので、ん?となるわけです。

 

”化けて”出てくるということは、化ける側(この歌の歌い手)が亡くなってしまっており、とすると逆に、”君”の方が生きているということなんだと考えられるわけですね。これが、”死者目線”が意味することなんでしょう。

 

 

■これはきっと、アルバム『見っけ』をこれからスピッツ大学で語っていく上でも、何度も僕が出すであろうキーワードだと思うんですけど、『見っけ』の収録曲は、どれも割と”物語性”が強いような気がするんです。1曲1曲の短編の物語が、たくさん入っているって感じでしょうか。

 

それは、この【ありがとさん】にも当てはまっていると思います。最後まで読むと、一気に解釈が逆転するのは、いかにも物語って感じがしますよね。

 

何ていうか、最後の最後に自分が死んでいることに気がついて大どんでん返しの、あの映画の主人公的な感じですかね?…ちょっと違うか笑。

232時限目:見っけ

【見っけ】

見っけ

見っけ

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■16枚目のアルバム『見っけ』に収録されている曲です。見ての通り、アルバムの表題曲です。

 

前作『醒めない』から、時を経ること実におよそ3年2ヶ月、16枚目のオリジナルアルバム『見っけ』は発売になりました。

 

そのアルバムの表題曲ですよ。個人的には、これまたタイトル・歌詞ともに、いきなり結構謎だなって思うんですよね。久々の丸ごと1曲の記事なんですが…ハードルが高いです苦笑。

 


■アルバム『見っけ』の収録曲にも、アルバム発売前にすでに聴けた曲がいくつかありました。この【見っけ】もその一つで、アルバム発売前に、NTT東日本のテレビCMで起用された曲でした。

 

youtu.be

 

アルバム発売前に、スピッツの新曲がCMで起用されるという情報が発表され、確か最初は曲名は明かされなかったのですが、早い段階から、歌われている部分の歌詞の中に”見っけ”というフレーズが見出され、この新曲が【見っけ】であることが判明していました。

 

NTT東日本のテレビCMと言えば、前にスピッツの【みなと】が起用されたことがありましたよね。僕はそのことを覚えていたので、てっきり結構ゆったり聴かせる感じの曲、バラードチックな曲が選ばれるのかと思っていたのですが、個人的な予想に反して【見っけ】は、明るいイメージの曲でした。

 


■さて、何はともかく”見っけ”という、これまた印象に残るタイトルなんですけど、どういう想いが反映された言葉なんでしょうか。

 

音楽雑誌「音楽と人」にて、草野さんは色々と語っておられますが、個人的に特にこの”見っけ”という言葉を表していると感じた部分を紹介しておきます。

 


草野さん「(前略)流れ的には、ロックミュージックにはまった気持ちが今も続いてるよっていう前回の『醒めない』から、さらに新たな何かを見つけたよ、みたいな感じですかね」

 

インタビュアー「ロックミュージックで見つけたものは何ですか?」

 

草野さん「まぁずっと変わらないんですけど、ロックミュージックはオルタナティブなものだ、ってことですね」

 

この辺りでしょうか。

 


じゃあ結局、”Alternative / オルタナティブ”って何なんだ?って思うんですけど、これは至極単純に言うと、「代わりとなるものがなく、型にはまらない」という意味なんだそうです。(そういえば、スピッツはその昔、スペシャルアルバム『おるたな』という作品を発表しましたね。)

 

そもそも、スピッツロックはもともと唯一無二のものであり、オルタナティブ以外の何物でもないんですが、今回アルバム『見っけ』を聴いて、びっくりしましたよ。

 

個人的には、バンド以外の演奏やエフェクトが積極的に使われていたり、プログレとでも言うのでしょうか、曲の展開が途中でがらっと変わったりする曲が収録されていたからです。

 

30年以上も続けてきて、スピッツはまだ、新しい扉を開けるのかと。個人的な括りですが、ずっと続いてきた、スピッツ第四期(アルバム『とげまる』~)が終わり、新しい時代に入ったのか、とさえ思うわけです。

 


■とまぁ、上述のようなところを総称して、”見っけ”と表現しているのかな、と思うわけですが、肝心の楽曲はどういう感じになっているんでしょうか。

 

まず、イントロから、曲が始まってもずっと鳴っていて耳に残るのが、電子ピアノと言えばいいんですかね、”テラテラテラテラ…”って感じで鳴っている音ですよね。

 

もちろん主体は、本来のスピッツロックではあるんですけど、この音のおかげで随分印象が変わって聴こえます。明るく聴こえるというか、神々しさすらを感じるというか、そういう役目を担っているんだと思います。

 

あと印象に残るのは、サビの草野さんのファルセットですかね。低い音階から徐々に上がっていって、ファルセットまで到達すると、何か突き抜けた感があって気持ちいいですよね。

 


■そして、歌詞についてですが、これまた不思議な歌詞ですよね。

 

個人的に一聴して印象に残ったのは、一曲目から”再会”という言葉が使われていたところでした。

 

アルバム『醒めない』を思い出してみると、収録曲には、割と別れの曲や会えない状況を歌った曲が多かったような気がします…例えば、【みなと】や【子グマ!子グマ!】や【コメット】や…今思うとほとんどですかね。そして、そういう曲を経ていって、最後の【こんにちは】で”再会”を果たすという、一つながりの物語のような作品であったと思います。


それと比較すると、アルバム『見っけ』では、表題曲であり1曲目である【見っけ】から、いきなり”再会”という言葉が使われています。

 


再会へ!消えそうな 道を辿りたい
すぐに準備しよう

 


再会へ!流星のピュンピュンで 駆け抜けろ
近いぞゴールは

 

”見っけ”という言葉の説明として、「ロックミュージックの中に新しいものを見つけた」というものを先述しましたが、もう一つ、長く会えなかった人との再会を、「あなたを”見っけ”た」とも歌っているのかな、と思ったんです。

 


■ただ、そうなってくると、歌詞を改めて読んでいくと、気になる箇所がたくさん出てきます。

 


人間になんないで くり返す物語
ついに場外へ

 


再会へ!生ぬるい運命を 破りたい
未来をひっかいて

 

また過剰な反応を…と思われるかもしれないですけど、でも特に最初の2行はかなり引っ掛かる表現ですよね。

 

”人間になんないで くり返す物語”=この辺は、何となく輪廻転生の物語をイメージしますよね。人間という括りを越えて、もっと色んな生き物に生まれ変わって、繰り返している物語って感じでしょうか。

 

”ついに場外へ”…で、そういう輪廻転生という括りをも飛び越えたと。そうなると…どうなるんですかね、もう想像だにできません。

 

例えば、死して肉体は滅びてもなお、その魂は、誰か大切な人との”再会”を願い続けていた。その想いだけをずっと留めたまま、色んな生き物に生まれ変わりながら、ずっとずっとその大切な人を探していた。そして、そういう物語が報われてゴールへと…ついに大切な人との再会を果たす。だから、もう生まれ変わる必要がなくなった、と。

 

(勝手ですが)僕はこんな風に考えると、アルバム『小さな生き物』やアルバム『醒めない』で長く続いてきた、東日本大震災という大きな出来事を背景に紡いでいた、いわゆる”死と再生”の物語の終焉を想像したんです。何かもう、究極なエンディングって感じがしませんか?言い方が難しいんですけど、全ての”死”が報われるエンディングって感じです。

 

そして、じゃあ”死と再生”が終わるとどうなるのか…その次は、また新しいものを”見っけ”る物語へと続くのではないでしょうか。

 


■ということで、”見っけ”に込められた意味を、僕は2つ受け取りました。

 

①「ロックミュージックの中に新しいものを”見っけ”た」という想い
②長く続いた”死と再生”の物語の終焉と、新しい”見っけ”の物語の始まり

 

まとめるとすると、こういう感じですかね。

 


ちなみに、

 


ランディーの歪んだサスティーンに 乗っていく

 

というところについてですが、まずサスティーンとは、「演奏によって楽器が音の発生を開始した後に聞こえる余韻」だそうです。

 

で、ランディーについては、(おそらく)ランディー・ローズという人が当てはまるんですかね。wikiで調べただけの、付け焼刃的な知識で申し訳ないのですが、「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のギタリスト」で、2003年で85位、2011年で36位にランクインしている、世界的にも超有名なギタリストですね。

 

ちなみにランディー・ローズは、飛行機の墜落事故により、25歳の若さでこの世を去ったのだそうです。【見っけ】の歌詞に、”ファントム”というフレーズが出てくるのですが、これもこの人のことを表しているんですかね。

初めての『見っけ』


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■お久しぶりです、生き延びております、学長のitukamitanijiでございます。

 

いやぁ、ついに発売になりましたね。スピッツ待望のニューアルバム…通算16枚目のオリジナルアルバム『見っけ』です!

 

幸いなことに、僕はアルバムを、いわゆるフライングゲットすることができまして、その日から丁寧に聴き込んでいるところです。やっぱり大好きなアーティストの新しいアルバムというのは、いつになっても特別嬉しいですね。へへへ!

 


■さて、ここスピッツ大学。

 

ここで一番重きを置いてやっているのは、”スピッツ全曲研究セミナー”でございます。わざわざ仰々しい名前をつけておりますが、要するに、スピッツの楽曲全曲を、個人的な解釈なども踏まえつつ、紹介するというものです。

 

そういうわけで、アルバム『見っけ』発売を機に、新曲がたくさん発表されましたので、スピッツ全曲研究セミナーにて、少しずつ紹介していきたいと思います。

 

一応、毎週末に1曲くらいのペースを考えていますが、リアルで割と忙しいので、とりあえずの目標にしておきます。自信があんまりないので、とりあえず不定期とさせてください、すんません。逆に、たくさん書ける時期とかがあったりすると思いますので、まとめて書いたりします。

 


ということで、今日はその決意表明として、この記事を書きました…と言って締めようかと思ったのですが、せっかくなのでほんの少しだけでも、アルバム『見っけ』を聴きはじめた、まさに今の感想を語っておきます。

 

※ここからは、アルバム『見っけ』を聴いたことを前提として話をしますので、ネタバレがまだ嫌だと言う人は、ここで回れ右をしていただくようお願いいたします。

 

 

 

 


■まず、このアルバムを最初に聴いて真っ先に思ったのが、何か短編小説集みたいなアルバムだな、ということでした。

 

これは良い意味で思っているんですけど、1曲1曲のストーリー性が強くて、しかもそのストーリーが1曲ごとで完結していく感じが、まさに短編小説集みたいだなって思ったんです。

 


前作『醒めない』は、草野さん自身が語っていたように、”死と再生”という一つコンセプトがあって、収録曲がひとつながりの物語のように思えました。

 

また、前々作『小さな生き物』にしても、収録曲の内容自体にはそんなにつながりは感じなかったけど、やっぱりバックグラウンドに東日本大震災という大きな出来事があったので、全曲をどうしても同じように関連付けて、聴いていたんです。

 


そこへきて、新作『見っけ』は、そういう縛りから解放された感じがするんですよね。もっと自由に、もっとロックに、もっと色んなジャンルで、ただただ1曲ずつスピッツの音楽を詰め込んであるという感じでしょうか。

 

しかも、その1曲1曲のストーリー性をとても強く感じるんです。結構、物語調の曲が多いと感じませんか?例えば、【花と虫】とか【はぐれ狼】とか【まがった僕のしっぽ】とか。

 

すごい具体的に物語を語ってるなって思ったんです。昔々あるところに…みたいな、まるでおとぎ話・昔話でも聴かせてくれているみたいに感じました。

 

 

 

■あとは、曲の展開に「おぉ!?こうなるの!?」って驚いたところがたくさんあったアルバムでした。

 

例えば、【ラジオデイズ】。サビとか、初めて聴くのに懐かしい感じがしたんですけど、途中でラジオのチューニングをしているようなノイズが入ったかと思うと、Cメロでは歌詞を語っているような、個人的にはさだまさしみたいだなって思ったりしました。

 

極めつけは、一番衝撃的だった【まがった僕のしっぽ】ですよ。これは本当にスピッツがまた新しい扉を開けたって感じですよね。まるで、吟遊詩人が遠い昔話を聴かせてくれているような、異国風の曲調で(何故か僕は、ロマサガの吟遊詩人が歌っているところをイメージしていました)、もうそれだけで新しいと感じるんですけどね。

 

そこから、Cメロで突然曲調は一変…まるでハードロックのように曲は激しくなり、勢いを増していくのです。そして、その曲調がしばらく続いた後、また突然、何事も無かったかのように、元の曲調に戻るんです。そこで僕が思い出したのは、the pillowsの【Smile】という曲でした。

 


30年以上も長く活動をしているのに、スピッツはまだまだ新しい扉をバンバン開けていくんだなって、やっぱりすごいなぁって思ったんです。

 

そういう新しいことをしたときって、あからさま過ぎると、何ていうか従来のそのバンドの音楽性と適合せずに、違和感を感じてしまうことってあると思うんです。でも、スピッツは違うんですよ。新しいことを取り入れつつ、でもやっぱりスピッツだなって思わせてくれるのがすごいところだなって、つくづく思うんですよね。

 

 

 

■はい、今はこういう感じのことを思って聴いています。全然、短い記事にならなったですね苦笑。

 

あ、現時点で好きな曲は、【ラジオデイズ】、【まがった僕のしっぽ】、【ヤマブキ】あたりですかね。【ヤマブキ】なんかは、最近は朝に欠かさず聴いています、なんか元気が出てくるんですよね。

 

まぁ、また個々の曲の紹介は、少しずつやっていきたいと思いますので、良かったらまた読みに来てください。

 

youtu.be

 

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やばい、音尾さんのCMが面白すぎる笑

ロック大陸漫遊記「BUMP OF CHICKENで漫遊編」を聴いての感想

■現在2019年9月1日、時刻は夜9時を回ったところです。広島からこんばんは。広島カープを見ながら、この記事を書いていました。

 


先日、ツイッターを眺めていたら、このような情報が流れてきました。ツイートを引用させていただきます。

 

 

要約すると、まず、スピッツ草野マサムネさんがパーソナリティーを務めているラジオ番組「ロック大陸漫遊記」というのがあるんですけど、草野さんはその番組において、毎回ひとつのテーマを決めて、楽曲を選んで流していくのです。

 

ある時は、ひとつのバンドの楽曲に絞ってみたり、またある時は、バンドの形態でくくってみたり、またまたある時は、こういうリズムの曲で…みたいに縛ってみたりなど、毎回テーマを絞って楽曲を流していくわけです。

 

そこで、(広島では)リアルタイムで本日0時から放送される、今週のロック大陸漫遊記においてのテーマが、何と「BUMP OF CHICKENで漫遊」になっているのです!

 


■もうね、これに関しては、僕にとっては本当に”奇跡”としか言いようがないんです。スピッツ×BUMP OF CHICKENなんて、もうこれは”奇跡”ですよ。

 

僕の中でスピッツは、小学生の時に好きになって、未だに一番好きで聴き続けているバンドなのですが、BUMP OF CHICKENも、大学生の時にハマって、これも未だに大好きで聴き続けているバンドなんです。BUMP OF CHICKENに関しては、今まで何度もLIVEに行かせていただきました。

 

スピッツBUMP OF CHICKENは、自分にとって一番大切な2バンドであり、これまで何度も救われてきたし、これからもずっと聴き続けていくであろうバンドです。そんな2バンドが、奇跡の共演(というのは少し違うかもしれませんが)をいよいよ果たすわけですね。

 

何でも、草野さんが好きなBUMP OF CHICKENの楽曲も紹介されるということで、これはとても興味があります。とにかく、大好きなスピッツ草野マサムネさんが、これまた大好きなBUMP OF CHICKENを紹介する…これを”奇跡”と呼ばずに何と呼ぶのだろうか!今回のロック大陸漫遊記は、もう”奇跡の回”になること間違い無しですよ!

 


…という興奮を抑えきれず、実はもうすでに、記事を一つ書いています。別ブログでの記事なのですが、「BUMP OF CHICKENで好きな曲ランキングBEST10」を選んでみました。良かったら、読んでみてください。

 

itukamitaniji.hatenablog.jp

 

 

 

■はい、ということで、ここからは聴いた後になります。改めまして、こんばんは。ここからは、紹介された曲とか、がっつりネタバレになっちゃいますので、もしもそれを避けている方が居られましたら、ここで一旦回れ右をしてください、すみません。

 

 

はい、ではいきますね。

 

まず、本編に入る前に一応…漫遊前に流れたスピッツ曲は、【夏が終わる】でしたね。大好きな曲ですが、今回は語るのは止めておきます。詳しくは、よろしかったら、以前書いた別記事をご覧ください。

 

itukamitaniji.hatenablog.com

 

ということで早速、本編に入ります。紹介された個々の曲に対して、草野さんが語ったことと、僕なりの感想や思い出などを書いていこうと思います。

 

 

 

1曲目 オンリーロンリーグローリー

 

草野さん
バンプの曲の中でね、この曲一番好きですね。初めて聴いた時は、ほんと泣きそうになっちゃって。これ多分、思春期に聴いてたら、俺ね泣き崩れたと思います。何か、肥大化した自我に許しを与えてくれる歌って感じですかね。個人的にはあと、これ2004年の曲なので、球界再編のゴタゴタともリンクしてるんですけども、記憶ではね。俺の中で、BUMP OF CHICKENといえば、まず【オンリーロンリーグローリー】って感じかな」

 

***

 

いきなり、個人的にも大好きな曲が来ました。この曲が発売になった頃、僕は確か大学2年生でした。ちょうどその頃、僕は初めてアルバイトを始めるんですよ、チェーン店の居酒屋の厨房での仕事でした。

 

当然、夜の仕事なので、終わるのが深夜1時とか過ぎるのもザラだったんですよ。しかも、やっぱりきつかったですよ、でも頑張ってやってましたよ。結局は、大学を卒業するまでずっと続けたアルバイトでした。まぁ、最後の最後には、店自体が潰れちゃったんですけどね。今の自分の原点ですね、”働く”ってこと、”お金を稼ぐ”ってことは、しんどい思いをしないといけないんだってね、身を持って知った経験でした。

 

この曲を聴いていたのは、そんなアルバイトを始めた当初でした。だから、この曲(と【ギルド】)は、個人的には”アルバイト頑張ろうソング”ですね笑。カラオケでも、死ぬほど歌っていました。

 

この曲については、何となくそれまでのBUMPの曲とは違う雰囲気を感じたことを覚えています。かなりBPMが早い曲調とか、藤原さんがまくしたてるように早口で歌うところとか、それまでと違う雰囲気が一気に印象に残りました。

 


歩き出した迷子 足跡の始まり
ここには命がある
選ばれなかったなら 選びにいけ
ただひとつの栄光

 

歌詞では、ここら辺が好きです。ここの”選ばれなかったなら 選びにいけ”というフレーズが、力強くて今でも勇気をもらっています。

 

 

 

2曲目 グングニル

グングニル

グングニル

  • provided courtesy of iTunes

 

草野さん
「インディーズの頃からね、何かすげぇバンドが居るらしいという噂はね、あったんですよ、俺らのところでも。(中略)当時、スピッツのツアーの楽屋でよく流していたんですけども、キーボードのクージーと、『このバンドなんか聴いていて飽きないよね』っていう話をしてましたね。(中略)2枚目のアルバムに入っている曲ですね。サビの高揚感が素晴らしい、歌詞もね、物語がすごい映像になって見えてくる、そんな曲ですね」

 

***

 

ちょっとね、感動です。こんなに熱心に、草野さんもBUMPを聴いていたんだってね。この【グングニル】を選ぶところとか、本当にガチですよね!

 

個人的に、【グングニル】も大好きな曲です。この時期のBUMPの曲は、特にアルバム『THE LIVING DEAD』に関して、物語調であるのが特徴的であり、この【グングニル】に関しても、草野さんが語っている通り、歌詞が映像になって見えてくるような感じです。まさに、読み物としての歌詞です。

 


そいつは酷い どこまでも胡散臭くて 安っぽい宝の地図
でも人によっちゃ それ自体が宝物

 


誰もが口々に彼を罵った
「デタラメの地図に眼がくらんでる」って

 


ホントにでかい 誰もが耳疑うような夢物語でも
信じ切った人によっちゃ 自伝になり得るだろう

 


誰もがその手を 気付けば振っていた
黄金の海原を走る 船に向けて
自らその手で 破り捨てた地図の 切れ端を探して
拾い集め出した

 

何ていうか、信念を持って突き進もうとしている人と、それを罵って馬鹿にする人たちっていう構図で、でも実はその人たちも本当は、信念を持って突き進んでいる人を羨ましく思っていて、妬んでいるという、現代の風刺みたいな要素も含んでいるような曲です。

 

まだまだ荒削りで、しかし疾走感が素晴らしい、若い頃のバンプを象徴するような曲です。Cメロでは、今はもう割と珍しい、藤原さんのしゃがれた声の荒々しいシャウトが聴けます。

 

ちなみに、”グングニル”とは、北欧神話における最高神(神々の王)のオーディンが持つ、何物も貫くとされる最強の槍の名前です。この歌の中では、貫く信念を表しているのだと思います。

 

 

 

草野さんと藤原さんの出会いの話

ちなみに、ラジオの中で、草野さんは藤原さんとの出会いについても話されていました。以下、まとめてみると…

 

・2000年に、下北沢でスピッツくるりが対バンしたことがあって、その時の打ち上げで草野さんと藤原さんが初めて会ったそうです。ただし、何を話したか覚えていないようです。

 

・2008年に、ロッキンオン・ジャパンの表紙を、草野さんと藤原さん、そしてストレイテナーのホリエさんの3人で飾ったことがありました。

 

・その雑誌では、草野さんと藤原さんは初対面と書かれていたが、2000年のことがあったので、それは事実と違うのでは?と指摘をされていました。

 

ということを語っていました。ちなみに、その雑誌の表紙とは、これですね!かなりレアな3ショットですよね!

 

ROCK IN JAPAN FESTIVAL (ロック・イン・ジャパン・フェス) 2008年 09月号 [雑誌]

 

 

 

3曲目 ハルジオン

ハルジオン

ハルジオン

  • provided courtesy of iTunes

 

草野さん
「メジャー1作目のアルバム『jupiter』から聴いてみようと思うんですけども、ここは【天体観測】ではない曲をいこうかな、天の邪鬼的にね。名作の絵本を読んだ後のような、心が浄化されるような名曲だと思います」

 

***

 

【天体観測】が大ヒットして、一躍有名になったBUMP OF CHICKENですが、その【天体観測】の次のシングル曲が【ハルジオン】でした。

 

この曲も、僕にとっては、BUMPを知った初期の頃に聴いていた曲でした。【天体観測】も【ハルジオン】も、どちらも疾走感のあるギターロックって感じはするんですけど、【ハルジオン】の方が、何となくドスが効いていて、腹に重たいパンチを食らわされているような感じです。

 

ちなみに、この【ハルジオン】という曲は、藤原さんが夢の中で見た光景が詩を完成させるきっかけになったそうです。この歌詞の完成には、長い時間が費やされたそうです。

 

 

 

4曲目 才悩人応援歌

才悩人応援歌

才悩人応援歌

  • provided courtesy of iTunes

 

草野さん
「このアルバム、ブックレットが「星の鳥」という絵本になっているんですが、このイラスト藤原くんが書いていて、めちゃめちゃかわいくて、とっても好きなんですけど、スピッツのジャケのイラストもお願いしたいくらいですね、シークレットで良いから。(中略)バンプの”究極ツンデレソング”とでも言いましょうか。AメロBメロでツンとされて、サビで抱き締められるような感じの曲だと思います。曲は、しっかりロックで最高です」

 

***

 

これも大好きな曲です。アルバム『orbital period』の中だったら、一番好きな曲です。やっぱり、この歌詞が素晴らしいんです。

 


得意なことがあった事 今じゃもう忘れてるのは
それを自分より 得意な誰かが居たから

 


大切な夢があった事 今じゃもう忘れたいのは
それを本当に叶えても 金にならないから

 


隣人は立派 将来有望 才能人
そんな奴がさ 頑張れってさぁ

 

そして、草野さんも語っていた部分、

 


ファンだったミュージシャン 新譜 暇潰し
売れてからは もうどうでもいい
はいはい全部綺麗事 こんなの信じてたなんて
死にたくなるよ なるだけだけど

 

本当にすごい歌詞ですよね、究極の自虐といいますか、ミュージシャンとして生きていくことに対する覚悟っていうんですかね、そういうものも感じます。

 

 

 

5曲目 HAPPY

HAPPY

HAPPY

  • provided courtesy of iTunes

 

草野さん
「この曲は、泣きそうになったんじゃなくて、まじに泣いた曲ですね。震災の年に、移動の飛行機とか新幹線で繰り返し聴いていました。【オンリーロンリーグローリー】と、どっちが一番かなって迷う曲なんですけど、(中略)今でも元気出したい時、たまに聴いています。」

 

***

 

これも大好きな曲です。僕は、この曲を最初ラジオで聴いたんです。それで、その音源を録音して、発売前までずっと聴いていたのを覚えていますね、発売前に、もう完全に覚えちゃったりしてね。

 

で、この曲の個人的な思い出としては、もうこの曲の頃には僕は社会人になっているのですが、その時やっていた仕事を辞めたいなって思っていた頃に聴いていました。ただ、その時はこの歌に励まされて、一旦は辞めたいって気持ちが落ち着いて踏み止まったんです。まぁ、また時間が経った後、結局は辞めちゃうんですけどね。

 


続きを進む恐怖の途中 続きがくれる勇気にも出会う
無くした後に残された 愛しい空っぽを抱きしめて

 

消えない悲しみがあるなら 生き続ける意味だってあるだろう
どうせいつか終わる旅を 僕と一緒に歌おう

 

この辺りが、かなりパワーワードですよね。”続きを進む恐怖の途中 続きがくれる勇気にも出会う”って、この辺りに妙に納得させられたことを、よく覚えているんです。そっか、まぁそう言ってくれるなら、もう少しだけ頑張ってみようかなって、自然に思えたんです。

 

youtu.be

 

 

 

6曲目 Aurora

Aurora

Aurora

  • provided courtesy of iTunes

 

草野さん
「タイアップのドラマ「グッドワイフ」、これも見てたんですけども、すごい面白いドラマだったけど、バンプの曲が始まると、そっちに気持ちが持ってかれちゃって、ドラマに集中できないというね、感じでしたね。ドラマのBGMにはね、バンプの曲あまり向いてないんじゃないっていう…単にバンプが好きだからってだけかもしれないですけど、そんなことを思いながら聴いていました」

 

***

 

何とまぁ、古い曲はインディーズ時代の曲から、最新シングル曲の【Aurora】まで、幅広く網羅していて、本当に草野さんのBUMP愛がよく分かる選曲ですよね。今でも、最新のBUMPまで、草野さんはチェックされているんですね、もうそれだけで嬉しい限りです。

 

【オンリーロンリーグローリー】以外は、曲の発表の順番が、古い方から並んでいて、僕も自分自身のBUMPとの思い出を、時系列的に思い出しながら聴くことができました。本当に、ニクいことをしてくれますねー、草野さんは。

 

スピッツと同様、BUMP OF CHICKENも、ずっと僕のそばに居て、その歴史と共に僕も生きてきたんだなって、改めて感じることができました。

 

youtu.be

 

 

 

おしまいに…

 

草野さん
「多分ね、俺、BUMP OF CHICKENでは、何かバラード的なのとか、エレクトロニカ的なものは、あんまり求めてないのかもしれない。しっかり、ロックなBUMP OF CHICKENが好きなんですね」

 

という風にも語っておられて、もう僕も首が外れるくらい、縦にうなづきましたよ。ここまで語るなんて、本当に草野さんは本当にすごい、BUMP愛に溢れているんだなって思います。

 

僕も、特にエレクトロニカ的なものは、ちょっと苦手ですかね。キラキラしすぎて眩しすぎるというか、何となく、おっさんが入りづらい感じにさせられているというか。もっと渋くゴリゴリしていて、内向的な感じで良いんですけどね。

 

 


ということで、これくらいにしておきましょう。とにかく、とっっっっっっても幸せな時間でした!スピッツ×BUMP OF CHICKENの回、本当に素晴らしかったです。

 

今度は、ぜひ「THE BLUE HEARTSで漫遊」や「the pillowsで漫遊」などをよろしくお願いしたいですね。