アルバム講義:11th Album『スーベニア』
11th Album『スーベニア』
発売日:2005年1月12日
■収録曲(→の先より、各曲の紹介へと飛べます)
01. 春の歌
→ 141時限目:春の歌 - スピッツ大学
02. ありふれた人生
→ 10時限目:ありふれた人生 - スピッツ大学
03. 甘ったれクリーチャー
→ 9時限目:甘ったれクリーチャー - スピッツ大学
04. 優しくなりたいな
→ 187時限目:優しくなりたいな - スピッツ大学
05. ナンプラー日和
→ 122時限目:ナンプラー日和 - スピッツ大学
06. 正夢
→ 167時限目:正夢 - スピッツ大学
07. ほのほ
→ 160時限目:ほのほ - スピッツ大学
08. ワタリ
→ 208時限目:ワタリ - スピッツ大学
09. 恋のはじまり
→ 50時限目:恋のはじまり - スピッツ大学
10. 自転車
→ 70時限目:自転車 - スピッツ大学
11. テイタム・オニール
→ 97時限目:テイタム・オニール - スピッツ大学
12. 会いに行くよ
→ 1時限目:会いに行くよ - スピッツ大学
13. みそか
→ 180時限目:みそか - スピッツ大学
■通称「マイアミ・ショック」から、すっかり時間も経過して、ロックバンドとして生まれ変わったスピッツが、個人的に”板につきはじめた”、”ちょうどよくなってきた”などと感じたのが、今回のアルバム『スーベニア』辺りだったかなと記憶しています。
荒々しさで半ば押し切った部分もあった『ハヤブサ』から始まり、再度音楽をする意味を考えさせられた(であろう)『三日月ロック』で荒々しかった部分を少しずつ研磨していき、それらを経ての『スーベニア』は、色んな書籍やインタビューで語られていることによると、メロディーや言葉を、よりシンプルに伝えるように作られた作品のようです。
■アルバム『三日月ロック』では、プロデューサーとして新たに、亀田誠治さんを起用しましたが、引き続きアルバム『スーベニア』でも、亀田さんがプロデュースを務めました。
それに加えて、今回の作品では、レコーディング・エンジニアを、高山徹さんという方が務めました。高山さんが、初めてスピッツの作品に携わったのは、シングル曲の【夢追い虫】だったそうですが、その時の印象が強烈に残っていたようで、それから兼ねてより、スピッツメンバーは、高山さんと一緒に作品を作ることを望んでいたようです。
高山徹さんと言えば…というより、スピッツをプロデュースするまで知らなかったのですが、調べてみると、この人もまた、僕でも知っているような有名なアーティストをたくさん手掛けていることが分かりました。書籍の中で、スピッツメンバーが、高山さんを”日本一の”エンジニアと評していましたが、そう言われるのもうなづけます。
高山徹さん(とスピッツの関係について)の話は、下記の動画でたっぷり見ることが出来ます。時期としては、アルバム『とげまる』辺りですが、アルバム『スーベニア』についても少し話をしています。
中でも、草野さんのボーカルについての、倍音構成云々の話は、専門的なお話でしたが、とても面白かったです。
これを聞くと、草野さんと対極に居るボーカルの一人として、どうやらBUMP OF CHICKENの藤原基央さんが挙げられるかなと、個人的には思いました。草野さんは、レストランなどの雑踏で抜けにくい声の持ち主で、藤原さんは逆に、メンバーの誰が呼んでも店員が来ない中、一声で店員を呼ぶことができたというエピソードを聞いたことがあります。
ということで、プロデューサー亀田誠治さん×レコ―デングエンジニア高山徹さんという、いわゆる”黄金コンビ”が、アルバム『スーベニア』で誕生しました。ちなみに、この2人のコンビは、現時点(2018年)での最新アルバム『醒めない』まで、ずっと引き継がれています。
■では、アルバム『スーベニア』がどういう作品だったか、考えてみます。エキサイト・ミュージックのサイトに、アルバム『スーベニア』についてのインタビューがあって、それも参考にさせていただきました。色んなことが書いてあって面白いです。
Excite エキサイト : ミュージック (音楽) インタビュー・スピッツ
まず、先述したとおり『スーベニア』は、メロディーや言葉をよりシンプルに伝えるように作られた作品だったようです。何でも、ツアー(おそらくゴースカ?)で弾き語りのコーナーをしたことをきっかけに、ストレートなメロディーや言葉を重視したようです。
そう言われると、歌詞が分かりやすいかなと思ったりします。あと、全体的に前向きな歌詞が多いです。暗いなって感じる曲は無いですよね。
特に、恋愛系の曲は、ストレートで前向きに感じます。と言って、何がありますかね…【ありふれた人生】、【優しくなりたいな】、【正夢】、【恋のはじまり】辺りでしょうか。もうタイトルから、イメージがしやすいですよね。
■その一方で、このアルバムを形容する言葉として、”旅”を意識したアルバムということも、先述のインタビューの中で語られています。
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(タイトルの”スーベニア”という言葉の意味について)
草野さん:これは“お土産”っていう意味なんですけど、13曲並べてツルッと聴いた時に“旅”を思わせるような言葉とかがあったりしたのと、沖縄風やジャマイカ風の曲があったところからつけました。いろんなところを旅してるようなアレンジあり、ということで、旅を思わせるようないい言葉がないかなって思いまして。
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沖縄風の曲と言えば、【ナンプラー日和】でしょうか。なんつータイトルなんだろうって思いますけどね笑。 三線の音や琉球音階を使ったりして、沖縄風になっているんですが、それでもスピッツになるのはさすがです。
ジャマイカ風と言えば、【自転車】ですかね。民族楽器のようなパーカッションの音は、崎山さんが実際に叩いている音だそうです。
他にも、【会いに行くよ】がハワイアン風(?)でゆるい感じだったり、【甘ったれクリーチャー】が四つ打ちのリズムでディスコ調だったりします。1曲1曲の雰囲気が、本当にコロコロ変わるので、草野さんの説明にあったように、アルバム一枚で色んな場所を旅しているような気分になります。
なので、シンプルに…ストレートに…とは言うものの、結局は色々と凝ったことをしているんですよね。
■アルバム『三日月ロック』と同様に、アルバム『スーベニア』にも表題曲がありません。つまり、”スーベニア”という曲が存在しないのです。
そして、これもアルバム『三日月ロック』の時に語りましたが、表題曲がないということは、気分によってどの曲も自分なりに表題曲(のよう)に添えることができて、色んな気分でアルバムを聴くことができると思います。
さらに、『スーベニア』には、シングル曲が1曲しかないんですよね。【春の歌】は、後にシングルカットされたものなので、アルバム発売時ではシングル曲ではなく、具体的にはシングル曲は【正夢】だけでした。
だから、初めて聴いた時は、知らない曲(新曲)がこれでもかと続いていくので、たくさんの新曲が聴ける、お得感が満載のアルバムという印象でした。
■ここまででも(アルバム紹介の記事にて)、スピッツのオリジナルアルバムもたくさん紹介してきたんですが、その時その時の気分によって変わりつつも、個人的には、このアルバム『スーベニア』が一番好きなアルバムだったりします。
個人的に、アルバムで印象に残っているのは、【ほのほ】、【ワタリ】、【テイタム・オニール】、【みそか】の、超ド級のロックナンバー達ですかね。これらの迫力は、どれを取ってもすさまじいものがあります。紛れもなく、スピッツがロックバンドであることを示している曲たちです。
さらに、この中でも特に好きなのが、【ほのほ】と【ワタリ】の、ドラマチックロックナンバーコンビ(って何だろう?笑)ですね。両曲とも、これまでの荒々しかったロックに留まらず、長い長い物語や冒険の1ページを切り取ったような、壮大でドラマチックな世界観を感じます。
この時点で、もう20年近くやってきたスピッツですから、こういうところには年季を感じます。このアルバムには入っていませんが、【夢追い虫】とかもそうですが、重厚さや渋さを感じるようになってきました。
ちなみに【ほのほ】については、元々アルバムのタイトルは「炎」とする予定だったそうなので、それとも関連があるのでしょうか。
それから、【会いに行くよ】なんかも名曲ですよね。これは、打って変わって、ゆったりとしたハワイアン調のように感じる曲ですが、何でも最初は、弾き語りで演奏されたそうです。色んなストーリーが想像できる曲なんですが、個人的には、悲しいかな、この歌には”墓参り”を当てはめましたが、果たして。大好きな曲です。
もちろん、シングル曲の【春の歌】も【正夢】も名曲ですが、やっぱりロックな曲のインパクトが残っていて、全体的にもロックなアルバムという印象が強いです。